概要・あらすじ
山口愛に麻雀の素質を見いだされた武田俊は、風間巌率いる学生代打ち集団ZOOに加入。裏社会での麻雀対局を通じ、その才能を開花させてゆく。広域指定暴力団山城組との文字通り命をかけた闘牌に勝利した武田俊とZOOのメンバーであったが、D・D軍という外国人代打ち集団の前に惨敗。
裏社会での仕事の場から閉め出され、ZOOは解散の危機へ追い込まれてしまう。責任を感じた武田俊は、一人でD・D軍への反抗を開始。それにZOOのメンバーも同調し、ついにはD・D軍との最終決戦へ向かうのだった。
登場人物・キャラクター
武田 俊 (たけだ しゅん)
元いじめられっ子であったが、危険を察知するという特性を山口愛に見いだされ、学生代打ち集団ZOOに誘われる。ZOOでのコードネームは「兎」。これは、全感覚器をもって危険を察知するという兎の習性に由来する。当初は「危険牌を察知する」という能力を持つ程度に過ぎなかったが、数々の闘牌を通じて「卓の牌すべてを見通せる」「運気を操作する」「アガリまでの最短手を読む」といった麻雀の才能を開花していく。 山口愛とは卓上の相性がよい「ペア縄張り」を持ち、双方ともに同卓時は実力以上の力を発揮できる。母子家庭で育ったが、実の父親は闇社会の有力者D・D(デイヴィット・ディヴィス)。 この出生が、武田俊とZOOのメンバーを、D・D軍との抗争へ導くことになる。風間優やD・D軍のメンバー(D・D本人を除く)とは異母兄弟にあたる。
山口 愛 (やまぐち あい)
学生代打ち集団ZOOに所属する女子高生代打ち。武田俊の「危険察知」の才能を見いだし、ZOOへと誘う。ZOOでのコードネームは「ユキヒョウ」だが、仲間からはヒョウと呼ばれることが多い。守銭奴で、代打ちをやっているのも、母や弟妹と一緒に暮らすためのお金を稼ぐため。 武田俊とは卓上の相性がよい「ペア縄張り」を持ち、双方ともに同卓時は実力以上の力を発揮できる。精神的に打たれ弱いところを見せることもあるが開き直ると芯は強く、麻雀の実力ではZOOでも上位。卓上の牌から有利不利を計算する「ポイントカウンティング」を駆使した時は、D・D軍のリーダー・ヴィヴィアンをも凌駕してみせた。 『兎―野性の闘牌―』のスピンアウト漫画『ユキヒョウ~白銀の闘牌~』では主人公を務める。
滝沢 隆史 (たきざわ たかし)
学生代打ち集団ZOOに所属する代打ちで、トップクラスの実力者。ZOOでのコードネームは「シャモア」。滝沢証券の御曹司で、組織を使った情報収集なども得意とする。風間巌や武田俊に対抗心を抱くが、それは憧れの裏返しでもあった。広域指定暴力団山城組との麻雀勝負ののち、行き場をなくした風間優とルームシェアをすることに。 D・D軍との最終決戦において、風間優にキスをされ、それで緊張がほぐれたことから、自分がゲイであることを自覚する。多くの情報を卓上から感知できすぎることが逆に災いしていたが、武田俊からのアドバイスもあって、情報に振り回されることなく前に出る麻雀に開眼。 D・D軍のバーニー・バーニーに一矢報いた。『兎―野性の闘牌―』のスピンアウト漫画『シャモア~孤高の闘牌~』では主人公を務める。
久坂 明 (くさか あきら)
学生代打ち集団ZOOに所属する女子高生代打ち。ZOOでのコードネームは「ジャッカル」。麻雀を始めたてのころに山口愛に助けられたことがあり、そのことを恩義に感じている。牌が対子、刻子に寄りやすく、ドラが大量に乗るという、爆発力のある麻雀が特徴。 また、どれほど追い込まれても諦めない闘志も持ち味とする。麻薬中毒者に友人を目の前で殺された過去から、自分を鍛えるため道場に通う。その腕前は道場で百人組み手を完遂し、本職の殺し屋であるケイト・キャンベルとも堂々渡り合えるほど。柏木成駿がプロボクサーであった頃からのファンで、柏木成駿がZOOに加入してからは、周囲に明白なほどに好意を寄せるが、柏木成駿がにぶすぎるせいであまり報われていない。 柏木成駿とは、双方ともに同卓時は実力以上の力を発揮できる「ペア縄張り」を持つ。
柏木 成駿 (かしわぎ せいしゅん)
プロボクサー。新庄直樹に目をかけられていた山城組の代打ちであったが、ZOOとの対抗戦で敗北。その後、ZOOに加入することになる。ZOOでは、「オオカミ」「ハイイロオオカミ」という案を経て「ウルフ」と呼ばれるようになる。暴力事件を起こしたことによってプロボクサーとしてのライセンスを取り消されていたが、新庄直樹の計らいもあってプロボクサーに復帰。 しかし、リングでの戦いよりも、裏社会の猛者を相手にする麻雀のほうに燃えている自分に気づいてしまう。闘志溢れる麻雀が持ち味で、たとえ相手に打ち込もうと一歩も退かないのが特徴。久坂明とは、双方ともに同卓時は実力以上の力を発揮できる「ペア縄張り」を持つ。
新庄 直樹 (しんじょう なおき)
新庄香那の父。元は広域指定暴力団山城組トップの代打ちで、風間巌に麻雀を教えた人物。裏プロだった6年間は、無敗を誇った。麻雀では、序盤は全体の流れを掴むまで様子見にまわり、個々の状態を把握してから一気に爆発するという打ち方が特徴。状況を整えてから親番に入ったときには、誰にも手がつけられない。 裏プロを引退したあとは山城組の組長・山城雷蔵の側近を務めていたが、学生代打ち集団ZOOとの対抗戦に敗れたあと現役に復帰。風間巌としがらみなく麻雀を打ちたいという思いから、山城雷蔵からの独立をかけた「山城麻雀」に挑み、命を落とす。その亡骸はバラバラにされ、ZOOや山城組傘下の暴力団に送られた。 過去には、D・Dやケイト・キャンベルを相手に麻雀で敗れたことがある。
新庄 香那 (しんじょう かな)
新庄直樹の一人娘。父が山城雷蔵からの独立をかけた「山城麻雀」を挑み、命を落としたことから、その仇討ちのために学生代打ち集団ZOOに助けを求めた。まだ中学生ながら、麻雀の才能は父譲り。ZOOのメンバーとともに挑んだ「山城麻雀」では、自らの手で山城雷蔵を一蹴。 その資質は殺し屋ケイト・キャンベルも化物と認めるほどであった。麻雀のスタイルは、状態を把握しつつ、ピークを親番にもってくるという父同様のものであったが、D・D軍との抗争では「親からの自立」という覚悟の下に、自分の親番がくる前に決着を付けるという凄味も見せた。ZOOのメンバーのうち、馬場券悟とは互いを大切に思う仲。 また、加藤優子とは麻雀の化物同士として双方がライバル意識を抱いている。
風間 巌 (かざま いわお)
学生代打ち集団ZOOを立ち上げた張本人。風間優の異父兄。ZOOのメンバーからは「園長」と呼ばれている。武田俊とはZOOに加入する前から顔見知りで、風間優の面影がある武田俊を、風間巌はなるべく裏社会に引き込みたくなかったそぶりを見せたこともある。 配牌やツモが極めてよく、その運の太さは「豪運」と称されるほど。一方で緻密な打ち回しや大局観も持ち合わせている。D・D軍からは、相手の運を吸い自身の力を増し、なおかつそれがしばらく持続する「持続型相対強運」の持ち主と認められている。施設で育っていたところを、男色家の山城組組長山城雷蔵に、弟の風間優ともども色小姓として買われたという過去を持つ。 ZOOを立ち上げたのも、山城雷蔵からの独立をかけた「山城麻雀」に挑むためであった。
風間 優 (かざま ゆう)
風間巌の異父弟。施設で育っていたところを、男色家の山城組組長山城雷蔵に、兄ともども色小姓として買われた。兄をしのぐ麻雀の才能の持ち主だが、すべての牌のありかがわかるという才能を持つがゆえに、麻雀は「牌を機械的に組み合わせるつまらないもの」と考えていた。 新庄直樹の引退後、山城組の代打ちとして裏プロ界のトップに君臨。しかし山城雷蔵に背いたことから、地下牢に囚われの身になってしまう。山城雷蔵からの独立をかけた「山城麻雀」では山城組の代打ちとしてZOOと対局するも敗北。その後行き場をなくした風間優は滝沢隆史に接触を図り、ルームシェアをするようになった。 その後、滝沢隆史に促されてZOOに加入する。実の父親は闇社会の有力者D・D(デイヴィット・ディヴィス)で、主人公の武田俊とは異母兄弟。ただし、D・Dの血を引く者の中では「劣性」との評価を下されている。
ケイト・キャンベル
生粋の殺し屋。広域指定暴力団山城組に客分として雇われていた。戦闘能力もさることながら、麻雀の腕も化物級。山城雷蔵からの独立をかけた「山城麻雀」では、主人公の武田俊らZOOの対局相手として立ちふさがったが、一方で炎上する山城組屋敷からZOOメンバーが脱出するのを手助けしたりもした。 闇社会の有力者D・D(デイヴィット・ディヴィス)の娘であり、主人公の武田俊の異母姉にあたる。
デイヴィット・ディヴィス
闇社会の有力者。主人公の武田俊や、風間優の実父。武田俊が優性か劣性かをテストするため、D・D軍とZOOとの抗争を引き起こした。自分の優れた遺伝子を残すために世界各国を巡り、三十二人の子どもを作ったが、本気で口説いた相手は武田俊の母だけだという。D・D軍のメンバーは全員、D・Dが優性と認めた実の子ども。 劣性の子どもの中には大統領や国家主席もおり、それがD・Dの権力の裏打ちにもなっている。戦闘力も極めて高く、肉体一つで一個小隊を殲滅するほど。麻雀では、運、駆け引き、大局観など、あらゆる面で桁外れの強さを誇る。
ヴィヴィアン
小学生ながら、D・D軍を統べるリーダー。D・Dの子の中で最高傑作であり、生まれながらの王。主人公武田俊の異母妹にあたり、D・Dがなにかとこだわりを見せる武田俊に嫉妬じみた感情を抱いている。性格は子どもっぽく、わがままで残酷。ZOOメンバーとD・D軍との最終決戦を前に、ZOOメンバーに襲撃をかけさせたり、山口愛の弟妹を誘拐するなどして揺さぶりをかけた。 麻雀の打ち方はかなり独特で、各色の「7」をツモりやすいという特性を持ち、まず各色の「7」ばかりを集める「7並べ」で自分の運気を調整。そののち、予告した巡目通りに上がることができ、なおかつそのアガリ巡が1ずつ減っていくという「カウントダウン」で仕留めるというやり方を取る。
山城 雷蔵 (やましろ らいぞう)
広域指定暴力団山城組の組長。男色家の老人で、施設育ちの風間巌・風間優兄弟を、色小姓として買い取った。自分への反抗を許さない性格で、逆らった者を始末することになんら躊躇を見せない。花牌を使った麻雀を得意とし、花牌を晒してからの嶺上牌ツモでは常人はるかに越える強い引きを見せる。
ZOO (ずー)
風間巌が結成した学生代打ち集団。「園長」の風間巌以外は、原則的には高校生のみをメンバーとするが、中学生も在籍しているなど例外もある。匿名性を高めるために、代打ちする際は本名ではなく動物からとったコードネームを使用する。「兎」武田俊が加わった段階でのメンバーは、「園長」風間巌、「ユキヒョウ」山口愛、「シャモア」滝沢隆史、「チャップマン」馬場券悟、「ジャッカル」久坂明、「サーバルキャット」山根こずえ、「ニホンザル」佐々木彰久、「タンチョウ」加藤治、「アライグマ」田島涼、「フェネック」加藤優子の合計11名。 のちに「ウルフ」柏木成駿が加入。 コードネームはないが、新庄香那、仙道真澄、風間優もZOOメンバーとしてD・D軍との抗争に参戦することになる。
山城組 (やましろぐみ)
広域指定暴力団。組長は山城雷蔵。東日本の極道界を統べる大組織であり、傘下には大小数多の暴力団が属している。警察・消防委員長のポストを掌握し、実質都政与党の民労党の支持母体である宗教法人を牛耳っていることもあり、多大な政治権力を有する。麻雀で勝ち抜けば山城組から解放される、「山城麻雀」という仕組みを用意しているが、実際は、敗北者を残忍に処刑することによって、山城雷蔵の嗜虐心を満たしつつ、傘下への見せしめにするためのものでしかない。
D・D軍 (でぃーでぃーぐん)
外国人代打ち集団としてZOOの前に現れるが、実際は闇社会の有力者D・D(デイヴィット・ディヴィス)が「優性」と認めた実子達の集団。リーダーはD・Dの子の中の最高傑作であるヴィヴィアンであり、D・Dすら兵隊の一人にすぎない。メンバーは、ヴィヴィアン、D・D、ケイト・キャンベル、カルロス・ロドリゲス、アマンダラ・カマンダラ、バーニー・バーニー、ルーシー・リー。 クリス・スミスも当初はメンバーであったが、武田俊に敗れたことによって「劣性」の烙印を押され、追放されてしまった。