麻雀放浪記2020

麻雀放浪記2020

阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』を原案とした作品。戦後爆発的に人気となった麻雀で、手積みやイカサマ、なんでもアリの高レート麻雀で負け知らずの哲が、2020年にタイムスリップする。ノーレートの全自動卓での勝負に臨む哲の奮闘を描く、「もしも戦後の時代の雀士が現代に現れたらどこまで通じるのか」をテーマにした麻雀漫画。

正式名称
麻雀放浪記2020
ふりがな
まあじゃんほうろうきにせんにじゅう
作者
ジャンル
麻雀
関連商品
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あらすじ

戦後から現代へ

時は昭和20年。浅草の雀荘「オックスクラブ」において、高レート賭け麻雀で名を馳せたドサ健出目徳八代ゆきが卓を囲んでいた。これからの人生を賭け、それぞれが現金のみならず家や土地の権利書まで持ち寄り、文字どおりすべてを賭けた闘いに挑んでいた。哲と出目徳のコンビ打ちにより、役満の連打を受けてドサ健は追い詰められていく。さらに出目徳はヒロポン(覚醒剤)を打ち、感覚を研ぎ澄ませてさらに追い討ちをかける。哲と出目徳の連合の圧勝で終わるかと思えた勝負だったが、ヒロポンの過剰摂取により、対局中に出目徳が急死してしまう。出目徳の亡骸からドサ健は身ぐるみ剥ぎ取り、哲とゆきにも分配する。コンビを組む出目徳の急死に焦る哲を尻目に、ドサ健は調子を取り戻して反撃に出る。次第に追い詰められる哲だったが、大ピンチの局面で、アガったら雷に打たれて死ぬといわれる、役満「九蓮宝燈」をアガりきる。その瞬間、雷がオックスクラブに落ちて哲は意識を失う。意識を取り戻した哲の目に飛び込んできた光景は、2020年の浅草の街並みであった。自分の身に起こったタイムスリップという現象に混乱した哲は、オックスクラブへ向かう。しかし、その場所にオックスクラブはなく、全然違う建物があった。茫然自失とする哲にドテ子が声をかけ、自分が働くメイド雀荘で遊んでいかないかと誘いを受ける。麻雀が打てるならどこでもいいと哲はついて行き、ドテ子らメイドたちと卓を囲むものの、現代では賭け事が法律により禁止され、麻雀はノーレートであることを知って絶望する。さらに店を出る際に、ゲーム代600円を請求されるが、昭和20年の物価では異常に高額であるため、支払いができず警察に通報されてしまう。そこでドテ子が支払いを立て替えたことをきっかけに、ドテ子の自宅に転がり込んで同居することとなる。

昭和20年を求めて

戦後から現代へタイムスリップしてしまった哲は、過去に戻る方法を模索していた。過去と同じように九蓮宝燈をアガりきればタイムスリップが起こるのではないかと考えつき、ドテ子とクソ丸と共に卓を囲み、全局九蓮宝燈を狙ってみごとアガりきる。しかし雷雲が現れたものの、落雷には至らずタイムスリップは不発に終わる。しかし、この結果に手応えを感じた哲は、昭和20年当時の雀荘「オックスクラブ」での面子のような真の強者との闘牌が必要だと考え、強い麻雀相手を求め、ドテ子の勧めでネット麻雀を始める。また並行して、クソ丸のプロデュースにより、ふんどし姿で麻雀を打つ「昭和哲」として麻雀タレントとしてデビューし、「誰の挑戦でも受ける」というコンセプトを掲げて、現実でも強者を探していた。ネット麻雀では、始めて数日で世界2位まで駆け上り、ネット麻雀の神と評される「ミスターK」と対戦して惜敗するものの、確かな手応えを感じる哲であった。芸能界では、昭和哲として瞬く間に売れっ子となった哲だったが、目的の強者がなかなか現れず、解放区(スラム街)の違法賭場に出入りし、警察に逮捕されてしまう。そんな中、同時期に麻雀世界一を決める「麻雀五輪世界大会」の開催が決定される。林田は開発するAI麻雀ロボ「ユキ」の性能を世界に認めさせるため、運営委員と癒着していた。一方で、運営委員にその実力を認められた哲は、日本代表としてエントリーすることを条件に拘置所からの釈放を求められるものの、権力者に媚びないという自身の美学から取り引きを拒否する。後日、九蓮宝燈でのタイムスリップに巻き込まれて現代に飛ばされていたドサ健と出目徳が哲の面会に訪れ、自分たちも大会に参戦することを哲に告げる。また、そこで大会の賞金が3億円であると知った哲は、世話になっているドテ子の借金の返済の目処を立てる。そして昭和20年にオックスクラブに集まった面子と打てることに麻雀打ちとしての血をたぎらせ、麻雀五輪世界大会へ日本代表としてのエントリーを決める。

登場人物・キャラクター

(てつ)

昭和20年から2020年にタイムスリップした青年。年齢は20歳。タイムスリップ前は賭け麻雀を生業としており、「坊や哲」という通称で雀ゴロたちに名を知られていた。浅草の雀荘「オックスクラブ」に住み込み、経営者である八代ゆきからあらゆるイカサマの技を伝授されている。ゆきを師匠として尊敬し、母親代わりとして愛情を感じている。もともとはイカサマに頼らずヒラ打ちを信条としていたが、ドサ健や出目徳といったすご腕の麻雀打ちに対抗するためにイカサマの技も習得した結果、イカサマ無しでもさらに強くなった。昭和20年にドサ健や出目徳、ゆきと卓を囲み、それぞれがすべてを賭けた勝負の最中に九蓮宝燈をアガり、雷に打たれて2020年にタイムスリップした。右も左もわからない状態で、ドテ子に誘われてメイド雀荘で麻雀を打つものの、現代では雀卓が自動で賭け事が法律で禁止されていることを知り、落胆する。さらに戦後当時との通貨と物価が違うためにゲーム代が払えず、警察に連れていかれる。しかし、ドテ子に支払いを立て替えてもらったことをきっかけにドテ子の自宅に転がり込み、同居することとなる。端正な顔立ちと時代錯誤な不思議なキャラクターに目をつけたクソ丸からアイドル雀士としてのプロデュースを受け、「昭和哲」という芸名で一躍国民的な麻雀タレントとなる。ちなみにメディアでは、ふんどし姿が昭和哲の基本スタイルとして売り出されたが、哲自身はその恥ずかしい姿もまったく気にしていない。過去から現代にタイムスリップしたきっかけである九蓮宝燈を強者との対局でアガることで過去に帰れるという考えに至り、強い者を求めてネット麻雀を始める。アカウントを新規作成してわずか数日で世界ランク2位まで駆け上り、第1位のミスターKに挑む。ギリギリで敗北を喫するもネット越しに強者の手応えを感じる。その後、解放区(スラム街)での違法賭博によって一度逮捕されるが、「麻雀五輪世界大会」の賞金が3億円であると知り、ドテ子の借金の返済と、強者との対局を目的に日本代表選手として出場する。その際、目的のためには自身のプライドを捨て、哲が嫌う権力者に土下座までして警察から保釈してもらう。好物はどじょう。

ドテ子 (どてこ)

アイドル活動をしながらメイド雀荘で働く女性。年齢は22歳。「ドテ子」は芸名で、本名は「江島多加子」。だが、公的な手続き以外で本名を使うことはない。頼まれれば誰とでも場所を選ばず、土手でもセックスすることからドテ子と呼ばれて定着している。一人称は「あたい」で、かわいらしい外見をしている。優しく素直な性格だが、頭はあまり賢くない。クソ丸が経営する芸能事務所に所属する唯一のタレントであり、クソ丸と肉体関係を持っている。ちなみにアイドルとしての活動の場は、ネット配信の麻雀番組1本のみである。両親の残した借金が1億円あり、働けども楽にならない暮らしと、売れないながらもドテ子自身の夢であるアイドル活動を続けるべきかという悩みを抱えている。ちなみに誰にでも体を許すがキスはできず、相手を人間だと認識すると拒否反応を起こすため、セックス中はVRゴーグルを着用し、シマウマの映像を見ている。体を求められた際に、断ると相手に嫌われるのではないかと恐れているほど自己評価が異常に低い。麻雀は弱いため、唯一の仕事である深夜帯の麻雀番組も毎回降板ギリギリだが、クソ丸の指示により、プロデューサーに体を売ることでなんとか出演をつなぎ止めている。ドクちゃんという熱狂的かつ唯一のファンがおり、無許可でテレビ局の出待ちをされてもファンを大切にする優しさを持って笑顔で対応するサービスを忘れない。

ドサ健 (どさけん)

戦後を代表する麻雀打ちの男性。鋭い眼光でいかにもアウトロー然とした風貌をしている。昭和20年にすべてを賭けて哲や出目徳、八代ゆきと対局した。イカサマ技もさることながら、ヒラ打ちでも相当強い。どんなに劣勢でも決して勝負をあきらめないスタンスを貫き、哲と出目徳のコンビ打ちに苦戦するものの、出目徳の急死を契機に劣勢を覆す胆力を見せた。「死んだ奴は敗者」という理念を持ち、対局中に死んだ出目徳の身ぐるみを剥ぐほど容赦がない。哲が九蓮宝燈をアガった際にタイムスリップに巻き込まれ、2018年の日本に飛ばされた。現代では麻雀が世界的に人気ゲームとなっていたため、ネット麻雀で世界一となったあとは、「ミスターK」というハンドルネームでネット麻雀の神として君臨している。昭和からの因縁の相手である哲、出目徳と共に卓を囲むために世界一の麻雀打ちを決める「麻雀五輪世界大会」にエントリーする。

出目徳 (でめとく)

戦後を代表する麻雀打ちの男性。柔和な外見ながら勝利のためなら手段を選ばない非情な性格をしている。昭和20年にすべてを賭け、ドサ健を潰すために哲と組み、八代ゆきと共に卓を囲んだ。哲とのコンビ打ちが型にハマり、さらにヒロポン(覚醒剤)を打って感覚を研ぎ澄ませてドサ健を追い詰めるものの、薬物の過剰摂取によって対局中に死亡してしまう。亡くなったあとはドサ健によって身ぐるみ剥がされた状態で卓の近くに放置されるが、哲が九蓮宝燈をアガったことでタイムスリップに巻き込まれ、2017年の中国へと飛ばされ蘇る。戦時中に大陸にいたことから言葉の問題もなく、「麻雀五輪世界大会」に「ヤン」という名で中国代表として参戦し、ドサ健との勝負に挑む。

クソ丸 (くそまる)

ドテ子が所属している芸能事務所の社長兼マネージャーを務める初老の男性。モヒカン頭で派手なファンキーな格好を好む。所属しているタレントはドテ子一人で経営的には破綻している状態だったが、ドテ子が連れてきた哲を見て、哲を芸能人として売り出すことを思いつく。ちなみにドテ子とは肉体関係がある。イケメンがふんどし姿で麻雀を打つという絵面がウケるという思惑は大当たりし、瞬く間に哲を売れっ子タレントにする手腕を発揮した。また、仕事を取ってくるだけでなく、フィギュアやDVDなどのグッズ製作のプロデュースも手がけるなど商根たくましい。しかし、哲が売れてからは、今まで芸能事務所に所属してくれていたドテ子を邪険に扱うようになったりと、人情味に欠けている。哲が違法賭博で逮捕されてからホームレスまで堕ちるものの、まだ哲でもう一儲けすることをあきらめていない。

八代 ゆき (やしろ ゆき)

戦後の昭和に浅草にあった雀荘「オックスクラブ」の経営者を務めていた女性。周囲からは「ママ」と呼ばれていた。住み込みで働いていた哲にイカサマ技を教えるほどの麻雀の腕前を誇る。哲に対して師として厳しく指導すると同時に、女性として優しく接していた。昭和20年に哲やドサ健、出目徳と共に自らのすべてを賭けて卓を共にし、哲が九蓮宝燈をアガったことがきっかけで起こったタイムスリップに巻き込まれ、1988年に飛ばされる。そこで食い扶持に困って高級クラブで働くようになり、当時の財界の有力者の愛人となったあと、2002年に癌に冒されて生涯を終える。その時にできた子供が林田であり、母親の面影を求めた息子により、AI麻雀ロボット「ユキ」として2020年に蘇る。八代ゆきの記憶まではないものの麻雀の技術は受け継いでおり、「麻雀五輪世界大会」の決勝戦で哲やドサ健、出目徳の前に立ちはだかる。

林田 (はやしだ)

麻雀世界一を決める「麻雀五輪世界大会」に出場するAI麻雀ロボット「ユキ」の製作者である男性。父親は財政界に顔が利く有力者で、母親は昭和20年からタイムスリップしてきた八代ゆきである。母親の面影を求めてユキを製作したため、外見も生前の八代ゆきとそっくりにデザインされている。あらゆる雀士の打ち方を研究し、AIに組み込むことで、イカサマなしのヒラ打ちでは誰も対応できないほどの高性能麻雀ロボットを作り上げた。ユキに搭載した能力はヒラ打ちだけでなく、相手の打ち方をラーニングする能力も搭載しているため、二、三度見ただけで手積み麻雀でのイカサマ技も使えるほど高性能な仕上がりになっている。

クレジット

原案

阿佐田 哲也

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