人間社会のとなりにある特殊な猫社会が舞台
九生猫は、その名の通り生まれながらにして九つの命を持つ猫の変種。彼らは人間社会のとなりに存在する「九生猫社会」と呼ばれるコミュニティで、人間と同じ姿をして店を営むなど、人間と変わらない生活を送っている。しかし、九生猫社会の外に出ると、彼らはふつうの猫の姿に戻ってしまう。人間社会で人間の姿を保つためには、命を一つ消費する必要がある。また、通常の猫が九生猫社会に入ることは原則として認められていないが、両手の指すべてに指輪をつけた特別なパスを持つ猫だけは、九生猫社会に入ることが許され、人間の姿になることもできる。
名前更新の義務と取り立て屋の仕事
九生の猫たちは、残された命の数に応じた名前を店から与えられている。そのため、名前を見ればあと何回死ぬことができるかが一目でわかり、命の数が多い者ほど無茶な生き方をする傾向がある。命を落として名前が変わった場合、各縄張り(エリア)のボスに報告し、名前の更新手続きを行う義務がある。しかし、中には不真面目な九生の猫もおり、更新を怠ると発狂し、複数の尾を持つ巨大な猫の姿となって暴れ回る。この名前の更新を促しに行くのが、三雲や八潮のような取り立て屋の仕事となっている。
美猫と取り立て屋の恋愛模様
三雲は、一色が管理する九生猫社会にやってくる前から、人間社会と九生猫社会の両方で美猫として知られ、好意を寄せる雄猫たちを巧みにあやつりながら生きてきた。しかし、見た目とは違って肉体的な接触はもちろん、キスすら経験したことがない。ふだんは小悪魔的な態度で他者を翻弄しているが、八潮に対してだけは一途で純情な乙女の素顔を見せる。一方、八潮は無茶な行動ばかりする三雲を冷たく扱いながらも、彼女のことを気にかけている。次第に、雄猫たちが三雲に急接近するたびに、八潮の不機嫌そうな表情はますます険しくなっていく。本作の大きな魅力は、一方通行だった三雲の片思いが、徐々に両思いへと変わっていく過程にある。
登場人物・キャラクター
三雲 (みくも)
九つの命を持つ若い雌猫。ふだんは白いロングヘアの少女の姿だが、本来の姿は白猫で、美猫として知られている。車に轢かれそうになったところを「九曜」と呼ばれる八潮に救われ、その恩を返すために、一色が管理する九生猫社会に入り、取り立て屋に追われる猫たちの動向を探っていた。八潮の役に立ちたいと考え、三雲は自ら取り立て屋となり、彼と共に行動している。かつて人間社会で野良猫として生きていたため、九生猫社会ではお金を持っておらず、ガラクタを使って自宅を建てたり、洋服を自作したりする生活を送っていた。しかし、とある事件をきっかけに八潮の家に下宿することになる。八潮に恋愛感情を抱いており、何度無視されてもあきらめずにアプローチを続けている。
八潮 (やしお)
九つの命を持つ取り立て屋の雄猫。ふだんは気難しそうな青年の姿だが、本来の姿は首に鈴付きの首輪をつけた黒猫。かつての飼い主の李世を不慮の事故で亡くして以来、命を軽んじる行為をひどく嫌うようになる。九つの命を持っていたが、三雲を交通事故から救った際に一度命を落とし、残りの命は八つとなった。ふだんの八潮からは想像できないが、マタタビ酒に酔うと一人でいることを寂しがり、まるで幼児のように甘えた様子を見せる。命が九つあった頃は「九曜」という名前で、ほかの九生猫たちから恐れられる存在だった。







