概要・あらすじ
夜逃げした元の飼い主に捨てられた白い子猫は、予備校生須和野時夫に拾われ、須和野チビ猫と名づけられた。自分も大きくなったら人間になると信じているチビ猫は、近所の猫たちの神的存在ラフィエルに、猫は人間にはなれないと教えられる。落胆するチビ猫に、ラフィエルは一緒に旅に出ようと誘いをかける。
登場人物・キャラクター
須和野 チビ猫 (すわの ちびねこ)
白い雌の子猫。エプロンドレスを着た幼女の姿に擬人化した状態で描かれる。夜逃げした元の飼い主夫婦に捨てられたところを、須和野時夫に拾われ、須和野家の飼い猫となる。まだ世の中の物事を知らないため、何事もものめずらしく感じる、純真で無垢な性格。時夫に好意を寄せている。ラフィエルによれば、将来はすこぶるつきの美猫になるとのこと。
須和野 時夫 (すわの ときお)
須和野チビ猫を拾った予備校生の少年。大学受験の失敗からノイローゼ気味になっていたが、みつあみに恋をし、チビ猫をきっかけに彼女と付き合い始めたことによって立ち直る。幼少期は金時という幼名があり、当時のことを知っている父須和野飛夫の作家仲間にはその名前で呼ばれる。穏やかで優しい性格。 法科志望だった。
須和野 二三子 (すわの ふみこ)
須和野チビ猫の世話をしている須和野家のお母さん。猫アレルギーだったが、克服した。当初は専業主婦だったが、自分のしていることをまとめようと書いた文章を『フォーウーマン』という雑誌に投稿し、佳作を受賞。次回作を書くよう薦められ、主婦と物書きを両立させるようになる。穏やかな性格で物腰柔らかだが、やや天然なところもあり、執筆などに集中するとチビ猫のご飯を忘れてしまうこともある。
須和野 飛夫 (すわの とびお)
須和野チビ猫の面倒を見ている須和野家のお父さん。ユーモア小説家。普段は家で原稿の執筆をしている。家事は苦手。
ラフィエル
須和野チビ猫の住む街の猫たちのボス猫的な存在として、強いカリスマを持つ雄猫。美しい銀毛の猫。ボリューム感のある長髪に、ローブ姿の美形の青年として擬人化されている。チビ猫に猫は人間にならないということを教えた。猫マニアから狙われており、彼を避けるためにマジッシャンに変装していたこともある。
美津子 (みつこ)
女子大学生。法科の1年。須和野時夫の恋人。須和野チビ猫がきっかけで、時夫と付き合い始めた。父親が母親と結婚する前に、法律の勉強の無理がたたって亡くなったため、私生児。母が勤めに出ているため、家事をしている。
瑠璃 動静 (るり どうせい)
詩人の男性。猫への愛情が高じて、自宅の他にマンションを借り、そこを猫用の調度品をそろえた部屋としている。一年前に見かけたラフィエルに非常に固執しており、なんとかして捕まえて飼おうとしている。彼が猫マニアになったのは、母親の影響が大きい模様。瑠璃動静はペンネームで、本名は不明。
ヨーデル猫 (よーでるねこ)
須和野チビ猫の近所に住む雄猫。長身で黒髪のマントを羽織ったロック歌手風の青年に擬人化されている。発情期で焦っているところではあったが、ラフィエルに護衛されていたチビ猫には親切に接し、猫社会のルールを教えた。
鈴木 ブチ猫 (すずき ぶちねこ)
須和野チビ猫の近所に住む雄の子猫。同じ頃生まれた兄弟のうち、一人だけ貰い手がつかずに残っていた。5ヶ月。二色の髪と斑色の服を着た少年として擬人化されている。チビ猫と共にペルシャを探しに行く。カタカナが読める。
流れ猫 (ながれもの)
須和野チビ猫の近所に住み着いた流れ者の雄猫。黒いぴったりとした服に白い毛皮の襟巻きをつけた青年の姿で擬人化されている。生魚しか食べないという信条を持っており、そこの街のすべての魚屋から魚泥棒をし、警戒がきつくなったところで他所へ行くという暮らしをしている。
しょいかご猫 (しょいかごねこ)
須和野チビ猫の近所に住む雄猫。公園などに住む野良猫グループの一匹。汚れた服に無精ひげ、かごを背負ったホームレス風の男として擬人化されている。仲間ともども、のんびりとした性格で、よくチビ猫の面倒を見たり、物事を教えたりする。
キャラウェイ
須和野チビ猫の近所に住む雌猫。飼い主は九条。ライラックポイントの血統書つきで、マンションで大事に飼われており、外に出たことがなかった。しかし結婚相手を連れてこられたことに動揺し、外に逃げたところをチビ猫に出会う。フレアスカートのパーティドレスのパーティバッグを持ったお嬢様風の擬人化をされている。
九条 (くじょう)
キャラウェイの飼い主。病没した妻が可愛がっていたキャラウェイを、マンションの外にも出さず、大事に育ててきた。猫の専門家に交配の時期と聞き、ライラックポイントの雄をキャラウェイの結婚相手に連れてきたところ、キャラウェイが逃げ出してしまう。
タマヤ
須和野チビ猫の近所に住む2歳の雄猫。古いアパートに出没する化け猫として近所の主婦の間で噂となっていた。病院で亡くなった飼い主のお婆さんを待っている。化け猫風の顔に、飼い主であるお婆さんとおそろいの、ストールにスカートという格好の擬人化をされている。
ニャーニャ
須和野チビ猫の近所に住む4歳の雄猫。女子高校生新田美柑の飼い猫で、美柑を恋人だと思っている。三つ揃いのベストに蝶ネクタイをした、美形の中年男性として擬人化されている。
新田 美柑 (にった みかん)
ニャーニャの飼い主である少女。高校2年生。ニャーニャを連れて学校をエスケープしているところを早川に見られてしまう。
早川 (はやかわ)
新田美柑と同じ高校に通う3年生の男子。不良であるという噂が立っている。ニャーニャに習って猫の振りをしている美柑を見て、彼女の映画を撮りたいと考えるようになる。
ビー
雄の子猫。目も開かないうちに捨てられていたところをママに拾われるが、一家に赤ん坊が生まれ、誤って赤ん坊を引っ掻いてしまったために、山奥に捨てられてしまう。半ズボンの少年の姿で擬人化されている。
ド・シー
鈴木ブチ猫の年の離れた兄弟猫。生まれたばかりの赤ん坊。自分で子猫を育てたくなった須和野チビ猫が、母猫に嘘をついて引き取り、須和野家に連れてきたが、須和野二三子の高校の同級生である女性に見つかり、彼女にもらわれていく。
舟橋 千歳 (ふなばし ちとせ)
須和野飛夫のファンを名乗り、須和野家を訪ねてきた女性。19歳。去年四国の高校を出た後、東京で就職したが長続きせず、色んな職業を転々としていた。小説家志望として飛夫の内弟子になりたいと申しでる。
フン
百済が面倒を見ていた野良猫。雄で、茶色のトラジマ模様をしていた。百済に飼われた後も、野良猫の時の癖が抜けず、いつも慌ててご飯を食べていた。現在行方不明。
百済 (くだら)
フンを飼っていた男性。長年別居していた妻と正式に離婚した後、フンと半年暮らしていた。偶然出会った須和野チビ猫にハンバーガーや日本酒を味わわせる。隣に住む女子中学生歌音に想いを寄せられているが、応えることができずにいる。
歌音 (かおん)
百済の隣の家に住む女子中学生。百済に想いを寄せ、毎日のように百済の家に上がりこんでいる。猫になれば百済と暮らせるのだろうかと思いつめ、猫の演技をし始める。
佐山 シロ猫 (さやま しろねこ)
須和野チビ猫の近所に住む雌猫。生まれたばかりの我が子を食べてしまった猫として、近所の猫たちの間で噂になっている。カーディガンを着て編み物をしている若い母親の姿で擬人化されている。
ドラム
須和野チビ猫の近所に住む雌の野良猫。四匹の子供を産んだが、一匹が車に轢かれてしまったのを見て以来、精神不安定な状態になっている。残ったチン、トン、シャンの三匹を厳しく躾けている。神経質そうな中年女性の姿で擬人化されている。
シャン
須和野チビ猫の近所に住む雌の野良猫。ドラムの娘。チビ猫にそっくりな容姿をしている。そのため自分はドラムの居なくなった娘かもしれないと思い込んだチビ猫に、お互いの立場を入れ替えてみようと提案、須和野家へ行く。
モルド、グリン
須和野チビ猫の近所に住む双子の雌猫。年老いた老女の飼い主に非常に大切に育てられてきた。グリンの方は最近ややイライラしている。まったく同じ顔の長袖セーラー服を着た少女として擬人化されている。
トラマル
須和野チビ猫の近所に住む雄猫。かくれ飼い猫。モルドとグリンに恋をしているが、両方好きでどちらを選ぶということができないでいる。トラジマの布を肩にかけた少年の姿で擬人化されている。
病猫 (びょうにん)
しょいかご猫たちが隔離していた病気の雄猫。猫を一斉に保健所へ処分したトコハル団地の猫の生き残り。夢の中に出てくるトコハル団地の模型型もぐら叩きで、住民の人形を叩くと、現実の同じ住民にもダメージが行くという能力を持っている。
点茶 (てんちゃ)
須和野時夫が拾ってきた雌の捨て猫。衰弱から回復しているのにも関わらず、仮病を使っており、須和野家で暴れてそれを須和野チビ猫のせいにしようとした。今までに五所帯に飼われてそのたびに捨てられていた。水玉模様のエプロンドレスを着た少女として擬人化されている。