忍者と極道

忍者と極道

近藤信輔の代表作。悪事を働く極道を殺害する使命を持った忍者の少年、多仲忍者と、世間からはみ出した者たちを愛し、守るために忍者を殺害しようとする極道の輝村極道が、互いが仇敵(きゅうてき)だと知らないまま交流を深めて絆(きずな)を育みながらも、本人たちの認知しないところで対立する姿を描いたバイオレンスアクション。講談社「コミックDAYS」2020年1月20日から配信の作品で、「このマンガがすごい!2021」オトコ編で第8位を獲得。

正式名称
忍者と極道
ふりがな
にんじゃとごくどう
作者
ジャンル
マフィア・ギャング・ヤクザ
 
アクション
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊14巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

序章

江戸時代に起こった明暦の大火以来、忍者と極道は長く対立関係を続けていた。極道の悪事を察知して忍者は極道を殺害し、仲間を殺害された極道は復讐(ふくしゅう)のために忍者を狙う。そして現代、かつて極道に家族を皆殺しにされてから笑うことのできなくなった少年、多仲忍者は、街で偶然、多仲と同じく女児向けアニメ「フラッシュ☆プリンセス」を愛好する社会人、輝村極道と出会う。共通の趣味を持っていたことから話が弾み、初対面で互いに好感を持った二人だったが、多仲は忍者として極道を殺す使命を持ち、輝村もまた、社会人と極道の二足のわらじを履きながら、忍者を根絶やしにすることを企む仇敵の関係だった。しかしそんな事実に気づくことなく、二人は再会を重ね、友情を深めていく。

第一章 赤坂血風狼烟

輝村極道はすべての忍者を打倒するため、東京中の極道を赤坂の高級料亭「京兆」へと召集した。同じ極道といえど対立関係にある組織が集う中、輝村はその巧みな弁舌によって一気に人心を掌握し、対立組織の極道たちからも信頼を獲得していく。しかしいよいよ、無力な極道が圧倒的能力を持つ忍者たちを殺害するための策謀を明かそうとしたその瞬間、京兆へ潜入していた璃刃壊左が、その場にいた極道の半数を殺害する。忍者を打倒するための手駒が減ったことに絶望するかと思われた輝村だったが、むしろ余裕の表情で壊左と対峙する。忍者に対抗するために生み出した紙麻薬、地獄への回数券を服用することで忍者と同程度の身体能力、そして動体視力を得た輝村は、壊左の暗刃を見切り、対等な勝負を見せる。

第二章 燃える仁義のカブチカ

輝村極道によって璃刃壊左が殺害された数日後、多仲忍者は壊左の仇(かたき)とも知らず、輝村に身近な人間の死を経験した苦悩を打ち明けていた。そんな多仲の姿に、感情が欠落しているはずの輝村もまた心を揺さぶられて涙を流し、その事実に輝村自身も驚愕(きょうがく)する。輝村と別れた多仲は、帝都八忍の一人、祭下陽日に出迎えられて烏合の巣へと帰還した。そこでは忍者のリーダー、神賽惨蔵が、新たな極道の悪事の情報をつかんでいた。壊左が極道に殺害された事態を重く見た惨蔵は、陽日に極道討伐を命じながらも、一人で向かわせることに不安を抱いていた。一方その頃、破壊の八極道の一人、夢澤恒星の率いる竹本組の極道たちが忍者をおびき寄せるため、歌舞伎町地下倶楽部を使用し、対立組織や半グレ組織に所属する人間を次々と血祭りにあげていた。

第三章 情愛大暴葬

歌舞伎町地下倶楽部の崩落から1週間、極道たちは悪事の一つも働かず不気味なほど静まりかえり、多仲忍者たちは訝(いぶか)しみながらも、つかの間の平和な日々を満喫していた。覇世川左虎邪樹右龍とも無事に合流し、璃刃壊左が遺した赤坂の惨劇の画像、そして祭下陽日が遺した地獄への回数券の解析を進めていく。そんな中、ひそかに多仲に片思いを続けている病田色は、多仲と輝村極道が友人関係にあり、輝村の言葉で多仲があと一歩で笑えるところだったと知り、輝村に深く感謝する。しかしその直後、色は輝村こそが赤坂の惨劇を引き起こし、壊左を殺害した極道であることを知って激しく動揺し、多仲にこの事実を伝えるべきか苦悩する。一方で破壊の八極道の一人、殺島飛露鬼は、かつて率いていた暴走族、暴走師団聖華天のメンバーに招集をかけ、帝都高速道路を使用した大暴走行為と虐殺を復活させようとしていた。

第四章 幼狂死亡遊戯

多仲忍者輝村極道は、互いが仇敵であることを未だ知らないまま、親しい仲間の死をアニメ「フラッシュ☆プリンセス」を語ることで慰め合っていた。そんな中で多仲は輝村から、また笑えるようになるにはもう一人友人を作るべきだと助言を受ける。友人の作り方がわからず戸惑っていた多仲のもとに、「フラッシュ☆プリンセス」のノベライズ版について書いた読書感想文が内閣総理大臣賞を受賞したという連絡が入った。思いがけない事態に困惑する多仲だったが、輝村は受賞を自分のことのように喜び、祝福する。そんな幸せそうな二人の姿を目撃したガムテは、二人を同時に殺害する計画を思いつく。そんな中、授賞式のために総理官邸を訪れた多仲は、以前プリンセスシリーズの専門ショップで出会って親しくなった総理大臣の愛多間七と再会する。間七と大衆から心からの祝福を受け、笑顔を浮かべかけた多仲だったが、その瞬間、授賞式に割れた子供達が乱入し、舞台を虐殺現場へと変貌させてしまう。その上で場を掌握したガムテは、総理官邸内に生き残っている人間たちと割れた子供達をプレイヤーとした死亡遊戯の開催を宣言する。

単行本の装丁

本作『忍者と極道』の本体表紙には、「フラッシュ☆プリンセス」に関する細かい情報や「フラッシュ☆プリンセス」のシリーズ構成とメインライターを務めた幡随院孤屠に関連するインタビュー、忍者と極道の戦いによって被害が出た地域を取材した新聞記事など、本作中に収まらない情報が記載されている。

外伝

本作『忍者と極道』の外伝作品として、近藤信輔の『忍者と極道 外伝』がある。若かりし頃の璃刃壊左と極道の輝村獅門との友情と対立を描いたエピソードやガムテ舞踏鳥の出会い、地獄への回数券誕生に関連するエピソードが描かれている。ペン入れされていないネーム段階のものとなっており、「コミックDAYS」で無料公開されている。

登場人物・キャラクター

多仲 忍者 (たなか しのは)

忍者の少年。とある高校に通っている。年齢は15歳。肩まで伸ばした金髪を無造作に跳ねさせている。歌舞伎町地下倶楽部で、ガムテと会敵して左目を縦に裂いた大きな傷を負う。忍装束ではラインの入ったフィット素材のスポーツウェアを着用し、覆面として使用できるバンダナを首に巻いている。幼い頃、目の前で家族を極道に皆殺しにされたトラウマから笑顔を作ることができず、そのせいで同級生たちからは気味悪がられ、距離を置かれている。女児向けアニメ「フラッシュ☆プリンセス」をはじめとするプリンセスシリーズのファンで、輝村極道とは互いの素性を知らないまま「フラッシュ☆プリンセス」の話で盛り上がったことで、友人となった。また、愛多間七ともプリンセスシリーズを通して、知人となっている。笑うことのできない多仲忍者だが、輝村と間七の前ではあと一歩で笑える気がしたと話しており、二人目の友人は間七がいいと語っている。忍者の基本技である暗刃を極めており、何度打ち込んでも1ミリもズレずに1か所のみにダメージを蓄積させることができる者として、神賽惨蔵からも一目を置かれている。死亡遊戯においては割れた子供達を撃退しつつ、輝村と間七を救出するため奔走している。黄金球との対戦の際、高所から転落しかけたものの、輝村から「慎太郎」と呼ばれながら救出され、多仲の両親が殺された現場の光景を幻視したことで、より強く輝村に対して奇妙な縁を感じ始める。なお、この「慎太郎」が多仲の本来の名前かどうかは不明。

輝村 極道 (きむら きわみ)

株式会社ダイバンで商品企画部長を務めている男性。破壊の八極道の一人で、本来は男羽會の傘下にある竹本組の極道でもある。通常は黒髪のショートヘアだが、立場によってスタイリングを変化させる。また、上半身には腕三分までの胸割りの刺青が彫られている。竹本組の現組長の夢澤恒星からは組長への就任を望まれているが、現在は竹本組の「裏組長」として組を取り仕切っている。すべてのはみ出し者たちの力になることを誓っており、はみ出し者の集まりである極道を愛している。また、異常なほどの知能と洞察力の持ち主で、その所作と話術で誰もが輝村極道に心を許すと評されている。アニメ「フラッシュ☆プリンセス」をはじめとするプリンセスシリーズのファンで、多仲忍者とは互いの素性を知らないまま「フラッシュ☆プリンセス」の話で盛り上がり、友人となった。かつてとある事故に遭ったため側頭部に大きな傷痕があり、感情が欠落しているが、なぜか多仲に対してだけは自然と心が揺れ動き、涙を流す姿を見せることもある。そのことから多仲を自分にとって特別な存在であると感じており、自分の利害を度外視してでも助けようとする。死亡遊戯においては地獄への回数券を使用しないまま割れた子供達を撃退しつつ、多仲を救出するため奔走している。黄金球との対戦の際、高所から転落しかけた多仲を「慎太郎」と呼びながら救出し、多仲の両親が殺された現場の光景を幻視したことで、より強く多仲に対する奇妙な縁を感じ始める。割れた子供達創設時のメンバーであり、当時リーダーを務めていた。また、当時のMPは80万ポイントとされている。

ガムテ

割れた子供達のリーダーを務める少年。破壊の八極道の一人で、ウェーブがかった金髪で、頰にそばかすがあり前歯が一部欠けており、ツインテールの髪型をしている。殺し屋の時は顔と髪にガムテープを巻き付け、「GLESS CHILDREN」と書かれた黒のパーカーにメンズスカートを身につけている。歌舞伎町地下倶楽部で祭下陽日と夢澤恒星が殺し合いを演じた直後、駆けつけた多仲忍者を襲撃した。その際、左腕を切り落とされている。また、輝村極道が母親を捨てて逃げたと考えており、輝村を激しく恨んでいるため、輝村も多仲と共に殺害する計画を立てている。しかしその内心を隠し、ふだんは輝村に媚(こ)びた様子を見せている。幼少期、母親から毎日のように顔中をガムテープで塞がれた上で暴力を受けて育っていたため、30分以上息をせずに生きていられる。また、虐待で陰茎を切除されている。しかし母親のことは愛しており、自宅にはミイラとなった母親をリビングのソファに座らせて会話している。つねに脳が限界に達しているため、毎日ろくに眠ることができず、舞踏鳥に寝かしつけてもらった時以外は正常に眠ることができない。強い相手に対しては全力で殺しにかかり、死の間際に全力で罵ることが殺し屋としての最大の礼儀だと考えている。スマホの着信音は「フラッシュ☆プリンセス」のオープニング曲を設定している。極道技巧は標的に重病患者のような症状を発症させることのできる「疒」。認知されていないが輝村の息子でもある。本名は「輝村照」で、破壊の八極道としては「殺人の王子様」という通り名が付いている。

愛多 間七 (あいだ かんしち)

日本の総理大臣を務める壮年男性。黒髪混じりの白髪で、お忍びで外出する際には付け髭(ひげ)とサングラスを身につけ、ストリートファッションに身を包む。その容姿は若い女性からも「イケオジ」と評されており、変装していても愛多間七ではないかと見抜かれるほど目立ってしまう。昔から自分のことよりも他人の笑顔を大事にする性質で、それが昔なじみであるレジー・ナッシュや聖川蘆花に心から愛される一因となっている。「打倒(ファック)テロ政策」の連携強化のために来日するレジーに頼まれ、女児向けアニメ「プリンセスシリーズ」の専門ショップを訪れた際に、多仲忍者と出会った。その際にプリンセスシリーズを布教され、レジーが来日するまでに執務をこなしながら徹夜で全シリーズを視聴した。多仲が笑うことができないと知り、なんとか笑顔を取り戻させたいと考えている。死亡遊戯においても自分が逃げることよりも多くの人間を救うことを第一に考え、時限爆弾の捜索に奔走している。その際に素性が露見してはいけないという事情を抱えながらも、リスクを負って間七を救いに来た多仲の姿を見て、自分と多仲はもう親友であると確信を抱いた。多仲の回復時間を稼ぐために、地獄への回数券を服用してガムテと対峙した。多仲と出会った際には本名を口にするのに戸惑い、「徳田新之助」と名乗っている。MPは396332。

神賽 惨蔵 (かさい ざんぞう)

帝都八忍に数えられる中でも、最強最古の忍者の男性。「長」とも呼ばれている。年齢は300歳以上。どんな姿、どんな能力も模倣することができる「全姿全能」という特異体質の持ち主で、本当の姿は誰も知らない。しかし、両目に4片の花びら模様が入っているため、それを見ればどんな姿になっていても神賽惨蔵だと確認することができる。仲間意識が非常に強く、帝都八忍の仲間が極道に殺害された際には、涙を流しながら自らの指揮の過ちを悔いていた。また熱狂的な野球ファンでもあり、Ωが「逢魔賀広偉」として球界デビュー以来、全試合を見ている。警察官の「壱円警視」としての肩書も持ち、その際には黒髪をツーブロックにし、黒ぶち眼鏡をかけて派手な柄のスーツを身につけている。語尾に「~喃(のう)」と付ける癖がある。

璃刃 壊左 (あきば かいざ)

帝都八忍に数えられる忍者の男性。年齢は94歳。長く伸ばした前髪を右側に流しており、鎖に宝石の付いたモノクルをかけている。四肢を自由に伸ばすことのできる特異体質の持ち主で、第二次世界大戦中に極道たちが行った忍者狩りを生き抜き、暗刃を発明した。表の顔として、「でいびす」という喫茶店を営んでいる。神賽惨蔵を除いた帝都八忍や、多仲忍者に忍術を教えた人物であり、名実共に№2の実力者として知られている。悪事を働く極道の情報を仕入れては多仲に殺害の指示を出している。

祭下 陽日 (まつもと のどか)

帝都八忍に数えられる忍者の青年。大学生で、年齢は20歳。ウェーブがかった肩までの黒髪で、たれ目が特徴。多仲忍者をかわいがっており、多仲を笑わせるために、多仲の好きなアニメシリーズの視聴をしている。幼い頃から親兄弟にDVを受け、引き取られた孤児院の院長から殺されかけるなど、壮絶な人生を経験している。不遇な人生や、体や角質から超高熱を発する特異体質に嫌気が差し、自殺しようとしている際に10歳の時の多仲と出会い、忍者としてスカウトされた。標的に灼熱の確執を打ち込むことで発火させることができるほか、体から発する熱によって生じる上昇気流を利用して、宙に浮かぶことができる。

病田 色 (やまだ しき)

帝都八忍に数えられる忍者の女性。年齢は28歳。左サイドの黒髪だけを伸ばしたアシンメトリーヘアで、前髪で両目が隠れている。ふだんはスカートスーツを身につけているが、忍装束では深いスリットと背中側が大きく開いた露出度の高いダークレッドのドレスに、フェイスベールを身につけている。表の顔を持たず、つねに烏合の巣に詰めており、ほかの帝都八忍のサポート役に徹している。生まれながらの特異体質を持っておらず、劇薬を大量摂取することで能力を得たが、その代償として顔の上半分がひどく爛(ただ)れている。しかしその顔を当時5歳だった多仲忍者から「綺麗(きれい)」と言われてキスされたことで、それ以来ひそかに多仲に思いを寄せている。そのため、多仲が笑えないまま生きていることをずっと気にかけており、多仲が輝村極道と共にいる時に一度笑えたという話を聞いた際には涙を流して喜んだ。璃刃壊左が遺した小型カメラの映像を解析し、壊左を殺害した極道が輝村だと知った時には、多仲に真実を伝えるべきか悩んだが、多仲に事実を秘したまま輝村を殺害することを決意した。

覇世川 左虎 (はせがわ さこ)

帝都八忍に数えられる忍者の男性。邪樹右龍の兄。腰下まである長い銀髪を三つ編みにし、忍装束では白い和服に狐の被(かぶ)り物を身につけ、髪はポニーテールに結い直している。表の顔として、聖帝大学医学部附属病院の医者として勤めており、1週間で100件の超絶難度手術を成功させるなど、江戸時代から続く医道の名家の当主としても知られている。メスを持たずに手刀で執刀するその術式は、医者たちからは神技と称され羨望を集めている。また仲間内への観察力も鋭く、病田色が多仲忍者を真剣に愛していることを察した上で、ひそかな恋路を見守っている。また多仲を家族として大切に思っており、多仲が読書感想文で内閣総理大臣賞を受賞した際には「全力で浮かれる」と発言した。

邪樹 右龍 (やぎ うりゅう)

帝都八忍に数えられる忍者の男性。覇世川左虎の弟。肩下までの黒髪で、両腕で五人の女性を抱き抱えることができるほど体格が大きく、背中に風神雷神図屛風の雷神が描かれた黒いスーツを着用している。忍装束ではマントをまとったアメリカンヒーローのような全身タイツを身につけている。表の顔としてホストクラブ男天(ダンテ)に勤めており、1週間で10億円を売り上げるほどの人気ホスト。非常に人なつっこい性格で、他人との距離が近い。常人の数万倍の強度を誇る異常な骨密度で、この骨に圧力をかけることで人間を感電死させるほどの電気を生み出すことができる。

夢澤 恒星 (ゆざわ こうせい)

極道の男羽會傘下竹本組の組長を務める男性。破壊の八極道の一人で、年齢は38歳。肩までの長い黒髪をオールバックにし、非常に大柄な体格をしている。輝村極道に人間として欠落しているものがあることは承知の上で心酔している様子があり、輝村を裏組長として組の実権を譲って、自らは彼の運転手を買って出ている。輝村からは「雄大な優しさを体現したような男」と評されており、忍者によって家族を殺害された忍災孤児の粋田恵介たちを引き取り、親代わりとなって舎弟にしている。極道技巧は「進撃の極道電車道」。破壊の八極道としては「仁義の大侠」という通り名が付いている。

殺島 飛露鬼 (やじま ひろき)

極道の講男會傘下長沢組の若頭を務める男性。破壊の八極道の一人で、年齢は39歳。ウェーブがかった黒髪を、数本の前髪を残してアップにしている。左目尻と唇の右下にほくろがあり、つねに困り眉になっている。暴走師団聖華天の総長を務め、90年代は日本の全暴走族から崇(あが)められていた。また、暴走師団聖華天の総長として振る舞う際には、有刺鉄線を鉢巻のように額に巻き付けている。恩義を受けると精一杯誠意で応えるという処世術のため、人に好かれやすい。そのため仲間意識の希薄なガムテからも心から慕われていた。一人娘の花菜(はな)を溺愛していたが、妻との離婚で親権を奪われた挙げ句、長沢組の組長の継子になった直後、組に忍者が襲撃した混乱の中で組員が放った流れ弾に当たって亡くなる。女好きでナンパな性格ながら、花菜が生まれてからはデートするだけの関係に留めていた。極道技巧は「狂弾舞踏会」と「世界の終わり」。破壊の八極道としては「暴走族神」という通り名が付いている。

流島 椿沙 (ながしま つばさ)

極道の男性。金髪を角刈りにしており、額の左側に丸い銃創が残っている。極道技巧は早撃ちで、相手がすでに銃を構えている状態でも、相手が引き金を引くより速く、さらしから銃を抜き、相手を撃ち抜くことができる。忍者をおびき寄せるために東京都知事と、その孫娘をさらう。

粋田 恵介 (いけだ けいすけ)

夢澤恒星が面倒を見ている忍災孤児の少年。ハネ癖のある金髪を肩まで伸ばしている。祭下陽日が歌舞伎町地下倶楽部を襲撃した際、夢澤恒星によって現場から逃がされた。多仲忍者と出会い、多仲に歌舞伎町地下倶楽部を襲撃させまいと地獄への回数券を服用して立ちはだかった。事務所に置かれていた「フラッシュ☆プリンセス」のブルーレイを視聴しており、キャラクターのキーホルダーを所持しているが、そのことがきっかけで多仲と、わずかだがフラッシュ☆プリンセスについて話している。その際、忍者と極道もちゃんと話し合えばわかり合えるのではないかと希望を抱く。極道技巧は腕が非常に強靱になる「鉄腕男志」。

高志 (たかし)

夢澤恒星が面倒を見ている忍災孤児の少年。背が高く、金髪のツーブロックを全体的に逆立てており、左目の下に刀傷がある。祭下陽日が歌舞伎町地下倶楽部を襲撃した際、夢澤恒星によって現場から逃がされた。しかしその後、ガムテに出会っている。

仏茶 (ぶっちゃ)

夢澤恒星が面倒を見ている忍災孤児の少年。肥満体型で足が遅く、髪にパンチパーマをかけている。祭下陽日が歌舞伎町地下倶楽部を襲撃した際、夢澤恒星によって現場から逃がされた。しかしその後、ガムテに出会っている。

α (あるふぁ)

暴走師団聖華天の副総長だった男性。殺島飛露鬼の元舎弟で、非常に体格が大きく、胸元に「α」の形に抉ったような傷痕がある。飛露鬼やΣとは中学校からの不良仲間で、家庭環境の悪さからグレていた。投資詐欺に遭い1億円の借金を背負ってから妻に愛想を尽かされ、不倫相手と共に逃げられた。それ以来生きる気力が湧かず、ゴミ屋敷のような家の中で呆然(ぼうぜん)と暮らしていた際に飛露鬼から連絡を受け、生気を取り戻した。極道技巧は素手のパンチで人間の骨を粉砕することのできる「仏破砕拳(ブッパブロウ)」。本名は「有羽汰駆」。

Σ (しぐま)

暴走師団聖華天の副総長を務めていた男性。殺島飛露鬼の元舎弟で、黒髪を肩まで伸ばして、左目を中心に「Σ」の形に抉(えぐ)ったような傷痕がある。飛露鬼やαとは中学校からの不良仲間で、家庭環境の悪さからグレていた。漆黒生命保険で思うように契約が取れず、無能と蔑まれてひどいパワハラを受け続けていたが、αから連絡を受けたのを機に、上司を半殺しにして退職している。日本刀を武器にしており、剣豪を自負している。極道技巧は日本刀でパトカーでも両断することのできる「官憲斬棄(ポリストラッシュ)」。本名は「詩隈殴偉人」。

Ω (おめが)

暴走師団聖華天の特攻隊長を務めていた男性。殺島飛露鬼の元舎弟で、顔を横断するように、「Ω」の形に抉ったような傷痕がある。小学生の頃はいじめに遭っており、不良中学生だった飛露鬼やα、Σをいつもあこがれの目で見ていた。18歳で単身渡米してからはメジャーリーグで大人気の選手になったが、難病の少年、ブライアン・ギブソンに「ホームランを打ってくれれば元気になれる」と請われてホームランを打ったものの、ブライアンが回復することなく死亡したことから野球に絶望していた。前人未踏の800本塁打を目前にするものの空虚感に襲われていた際に、Σから連絡を受けたことで記録達成を投げ出して日本に舞い戻る。極道技巧はバット1本を振るだけで猛烈な旋風を巻き起こす「黄金の旋風(かぜ)」。本名は「逢魔賀広偉」。

レジー・ナッシュ

アメリカ合衆国の大統領を務める壮年の男性。襟足が長めの黒髪で、たれ目が特徴。女児向けアニメ「プリンセスシリーズ」のファンで、「Yeah!プリンセス5」に登場するプリアクオスのグッズを愛多間七にねだっていた。日本で多発している忍者と極道の戦いをテロ行為と位置づけ、有事の際には在日米軍が即協力できる体制を整えようとしている。間七とは同じ中学校の生徒会を務めた親友同士。拳崎真虎の故郷をダムに沈めた大企業の御曹司(おんぞうし)として育ち、間七たちにもひどい仕打ちを行っていた。しかしなんらかの事情で父親に見限られ窮地に立たされた際、間七に命を救われた。死亡遊戯においては重傷を負いながらも、間七と共に時限爆弾捜索を続けていたが、限界を悟り割戦隊と対峙(たいじ)した。国の内外から「自己中大統領」とあだ名されている。MPは473521。

聖川 蘆花 (ひじりかわ ろか)

内閣官房長官を務める壮年の男性。頭頂部が禿げ上がっており、黒ぶちの眼鏡をかけている。愛多間七とは同じ中学校の生徒会を務めた親友同士。中学生の頃、拳崎真虎の故郷をダムに沈めた大企業が極道と手を組み、中学校が建つ町の地上げを企んだ際、間七が中学生ながらに地上げ屋撃退を決めた頃から間七を支え続けている。死亡遊戯の開始直前、姿を現した割れた子供達の一人がガムテの指示を無視して間七に襲いかかった際、身を盾にして守った。MPは257413。

四刃 有数 (よつば ありかず)

経団連会長を務める壮年の男性。常人の倍ほどもあるふくよかな体型で、つねに笑顔を絶やさない。愛多間七とは同じ中学校の生徒会を務めた親友同士。地主の息子でボンボンだといじめられており、中学生の頃は自宅に引きこもっていた。しかし、拳崎真虎の故郷をダムに沈めた大企業が極道と手を組み、中学校が建つ町の地上げを企んだ際、不動産取引に詳しいことを間七に見込まれ、協力を仰がれたのを機に、引きこもりから脱却している。そのことから間七には強い恩を感じ続けていた。死亡遊戯においては定員ギリギリのエレベーターに間七、レジー・ナッシュ、窓香荒来を押し込み、割戦隊と対峙した。

拳崎 真虎 (けんざき まこ)

警視総監を務める壮年男性。白髪をオールバックにしており、つねに険しい表情を浮かべている。愛多間七とは同じ中学校の生徒会を務めた親友同士。中学生の頃、故郷をダムに沈めた大企業が極道と手を組み、中学校が建つ町の地上げを企んだ際に、極道と一人で戦おうとしたことがある。しかしその戦いの最中に、助けに駆けつけた間七から「友を助けるのに理由はいらない」と断言され、友情を深めた。死亡遊戯の開始直前、総理官邸に割れた子供達が侵入したことに最初に気づいた人物でもあり、間七たちになんとか危機を知らせようと、瀕死の体で鼠坊衆に助けを求めた。MPは256313。

窓香 荒来 (まどか あぐる)

総合幕僚長を務める壮年男性。黒髪を七三分けにして、関西弁で話す。愛多間七とは同じ中学校の生徒会を務めた親友同士。学生時代から、つねに前を向いて走り続けるような生き方をしている間七にあこがれていた。拳崎真虎の故郷をダムに沈めた大企業が極道と手を組み、中学校が建つ町の地上げを企んだ際には、違法な地上げの証拠が書かれた裏帳簿を手に入れるべく、単身で地上げ屋事務所に忍び込んだことがある。死亡遊戯においてはエレベーターの扉が開く際に先陣を切ったため、待ち伏せていた割戦隊に重傷を負わされるものの、間七やレジー・ナッシュたちを逃がすため囮(おとり)となった。

舞踏鳥 (ぷりま)

割れた子供達に所属する少女。背中まである黒髪で、スネ丈のセーラー服を身につけている。ガムテに対しては厳しい態度を取ることが多いが、食事の世話や寝かしつけなど、母親のように接している。死亡遊戯においては時限爆弾の番人を務めており、隠し場所に辿(たど)り着いた輝村極道と対峙している。極道技巧はクラシックバレエの『白鳥の湖』の曲に合わせて踊ることで標的に白鳥の舞い飛ぶ幻覚を見せ、そのスキにバレエジャンプで敵の体を蹴り貫く「夢幻燦顕視(むげんさんけんし)」。MPは5301800で、本名は「偉藤幽華」。

黄金球 (ばろんどーる)

割れた子供達に所属する少年。浅黒い肌を持ち、金髪ショートヘアを逆立てている。物心ついた頃に母親から「姿を消した父親は凄(すご)いサッカー選手だった」と聞かされたことで、父親と再会するためにプロサッカー選手を志していた。しかし、自分以外が幸せになることを許さない母親によってプロ契約を勝手に断られ、さらに父親の話は適当についたウソだったと嘲笑(あざわら)われたことで激昂し、母親を蹴り殺した。割れた子供達に所属してからもフラッシュバックに苦しんだが、ガムテが誰よりもイカれている姿に「お前だけじゃない」と励まされた気分になり、救われる。ガムテの左腕を自負しており、ガムテを喜ばせることをなによりも望んでいる。惚(ほ)れやすい性格で、一度男と理解していながらも天使に告白したこともあったが、現在は舞踏鳥に恋心を抱き、何度も告白しては軽くあしらわれている。割れた子供達の№3だが、膂力(りょりょく)だけなら夢澤恒星にも匹敵する剛の者だと評されている。極道技巧はコンクリートすら削ることのできる鋼鉄でコーティングされたサッカーボールを思うままの軌道にあやつる「蹴球地獄変(ビバ・ラ・ファンタジスタ)」。死亡遊戯においてはガムテの役に立つことを望み、「無視していい」と言われていた多仲忍者と輝村極道に襲いかかった。MPは2519000。

攻手 (あたっかー)

割れた子供達に所属する少年。司令のバディで、非常に大柄で体格がいいが失明しており、顎に長めの髭を蓄えている。親から空手の世界王者になることを望まれていたため反射神経を鍛錬し、司令の指示に迅速な反応を返すことができる。両親の希望に添わない生き方をしようとすると過度な暴力に晒(さら)されていたが、プロゲーマーを夢見てオンラインゲームで司令と組んでいた。企業からスポンサー契約の話が舞い込んだ際、父親に殺されかけながらも司令と二人で自転車に乗って東京へ向かうものの、交通事故に遭って失明した。その後、司令と共にお互いの両親を殺害したのをガムテに発見され、割れた子供達にスカウトされた。極道技巧は徹甲弾でも素手で正確な座標に撃ち出すことができる「剛拳巨砲主義」。死亡遊戯においては総理官邸の屋上ヘリポートから突入者の殲滅(せんめつ)を担当しつつ、神賽惨蔵を徹甲弾で狙撃した。MPは1058788で、本名は「タカヒロ」。

司令 (おーだー)

割れた子供達に所属する少年。攻手のバディで、四肢が途中から欠損しており、眼鏡をかけている。基本的に車椅子で移動しているか、攻手の肩に乗っている。会社の跡取り息子として生まれ、許嫁(いいなずけ)もいた。人より聴覚が鋭く、ふつうの少年だった頃から音で人の位置を把握することができた。両親の希望に添わない生き方をしようとすると、母親が自殺未遂を繰り返すようになるが、プロゲーマーを夢見てオンラインゲームで攻手と組んでいた。企業からスポンサー契約の話が舞い込んだ際、母親が病院に担ぎ込まれることになり、夢をあきらめかけたが攻手と二人で自転車に乗って東京へ向かうことを決意する。しかしその道中、交通事故に遭って四肢を失った。その後、攻手と共にお互いの両親を殺害したのをガムテに発見され、割れた子供達にスカウトされた。極道技巧は視界の効かない場所でも音でモノや人物の配置をレーダーのように把握する「箱庭覗聴(ブラックボックスプロビデンス)」。死亡遊戯においては総理官邸の屋上ヘリポートから突入者の殲滅を担当しつつ、神賽惨蔵を徹甲弾で狙撃した。MPは1058788で、本名は「ヒデユキ」。

天使 (あんじゅ)

割れた子供達に所属する少年。毒のバディで、ウェーブがかったピンク色の髪を高い位置でシニヨンに結っており、膝丈のセーラー服を着て女性言葉で話すため、一見すると少女にしか見えない。幼い頃から美しさを賞賛されていたが、父親から性的虐待を受けていた。14歳の時に母親から「夫を寝取った」として殺されかけ、もみ合いになった結果刺し殺してしまう。美しさが人間の悪意を引き寄せることが身に染みた頃、割れた子供達に加入している。死亡遊戯においては総理官邸2階で邪樹右龍と接敵した。極道技巧は脅威を怪物として視認することのできる「妖精通信(ムシノシラセ)」。MPは1186500。

(ぶす)

割れた子供達に所属する少女。天使のバディ。緑色の髪色をしたベリーショートヘアだが、頭部の左半分が溶け爛れている。これは生まれた直後、父親から「浮気相手の子供ではないか」と疑われて硫酸をかけられたことによるもの。それ以来他人の好奇と畏怖の目に晒(さら)され続けてきたが、ある日不良たちに「化け物退治」の名目で殺されかけた際、意識を失いながらも全員を撲殺した。醜さが人間の悪意を引き寄せることが身に染みた頃、割れた子供達に加入している。死亡遊戯においては総理官邸2階で邪樹右龍と接敵した。極道技巧は強酸で弾丸を溶かすことで空気抵抗を変え、弾道を自在にあやつる「彷徨える厄い弾丸」。MPは1183900。

拳闘大帝 (ぱうんどふぉーぱうんど)

割れた子供達に所属する少年。筋肉質な体型にパーカーのスウェットを着込んでおり、顎から鼻の下にかけて走る傷痕がある。死亡遊戯において総理官邸3階で多仲忍者と戦った。ボクシングスタイルでの戦いを好み、多仲の暗刃をパーリングで弾き飛ばすことができるほどの実力を誇る。親が宗教にハマった結果、ボクサーとしての夢を追うことができなくなった。MPは10252。

偉大 (ぐれーと)

割れた子供達に所属する少年。新人の殺し屋で、眼鏡をかけている。死亡遊戯において総理官邸2階の男子トイレで、輝村極道と遭遇した。しかしすぐに輝村を殺そうとはせず、いかに偉大自身が優れているかを誇示して話し続けたため、輝村の話術にハマり、心を許して時限爆弾が置かれたであろう場所を明かした。色男(カサノバ)という相棒がいる。MPは2021。

傍田 (おかだ)

警察官の男性。金髪をベリーショートヘアにしている。神賽惨蔵の仮の姿である「壱円警視」の部下で、赤坂の惨劇の現場や歌舞伎町地下倶楽部の崩落跡など、極道と忍者が戦った現場に調査に訪れることが多い。忍者をダークヒーローとして尊敬している様子を見せているため、神賽からかわいがられている様子がある。

幡随院 長兵衛 (ばんずいいん ちょうべえ)

江戸時代の男性。極道の始祖として知られている。神賽惨蔵に殺害された子分の仇討(あだう)ちをするため、明暦の大火を引き起こした人物とされている。惜しくも惨蔵に敗れ、瀕死(ひんし)の重傷を負った幡随院長兵衛は、対立関係にあった極道、水野十郎左衛門に介錯(かいしゃく)と忍者を打倒する遺志を託したと伝えられている。実在の人物、幡随院長兵衛がモデル。

幡随院 孤屠 (ばんずいいん こと)

脚本家の男性。享年27歳。いつもハットをかぶり、トレードマークにもなっていた。仕事に対しては生真面目で、言い回しがつねに詩的で浮世離れしていた。つねに物事すべての終わりを夢想しており、終わりがあるからこそ過程が輝き、万物に意味が宿ると考えている。最後に笑って死ねるかどうか、そこに向かうにはどうすればいいかなど「理想の終わり」を模索し続けた結果、集大成として「フラッシュ☆プリンセス」を書き上げた。幼い頃から政変や権力闘争、テロなどの脚本を手がけ、数年前に与党が選挙に敗北し、野党に政権が渡ったのも幡随院孤屠自身の脚本によるものだとインタビューで語っていた。その翌日、自宅アパートが不審火によって全焼、遺体が発見されている。悲劇的ながらも刺激的な作風から「終焉の脚本家」と呼ばれている。

集団・組織

帝都八忍 (ていとはちにん)

東京で活動している八人の忍者の総称。神賽惨蔵がリーダーを務め、ほかに璃刃壊左、覇世川左虎、邪樹右龍、病田色、多仲忍者、祭下陽日が「帝都八忍」を名乗っている。最後の一人は現在渡米しているため直接抗争には参加していないが、忍者の原則を無視した行動を取るため、惨蔵はあまり好ましい人物とは思っていない様子が見られる。

破壊の八極道 (はかいのはちごくどう)

八人の極道の総称。輝村極道がリーダーを務める。東京極道の重要人物がほとんど死亡した赤坂の惨劇において、地獄への回数券を使用して生き抜いた。ガムテ、夢澤恒星、殺島飛露鬼のほか、芸能人や医者、格闘家、富豪がメンバーであることが匂わされている。

暴走師団聖華天 (ぼうそうしだんせいかてん)

かつて殺島飛露鬼が総長を務めていた暴走族。90年代末期に飛露鬼とαとΣ、Ωによって結成された。暴走族同士の抗争を勝ち抜き、全国の暴走族と走り屋を統一し、10万人を超える少年たちで構成されていた。暴走を決行する直前に近隣住宅数百軒に放火し、警察の目をそらすのが定番の手口となっている。帝都高速道路を爆走する暴走師団聖華天に対しては機動隊すら歯が立たず、80年代以来の大暴走族時代を築いた伝説のグループとして知られていた。しかし、忍者によって5万人が殺害され、無念の解散に追い込まれてしまう。それ以来メンバーはふつうの生活を送っていたが、飛露鬼の召集に応じて再結集した。

割れた子供達 (ぐらすちるどれん)

10代以下の子供たちだけで構成された極道最凶の殺し屋軍団。ガムテがリーダーを務める。00年代に急増した未成年者による凶悪殺人事件により、極道たちが「子供ほど殺し屋に敵した逸材はいない」と考えて養成した。輝村極道は割れた子供達創設時にリーダーを務めていた。若くして家族や学校、世界に心を殺されたと自称しており、幸せな人間を殺すことで満たされようとしている。顔全体にガムテープを巻いた殺人狂の子供たちが所属しているが、忍者によってすでに殺害されているメンバーも存在する。ガムテ以外は全員、隅田川沿いにある億ションの上層階に、相棒同士二人一部屋で住んでいる。また私室以外の階にはパーティールームやプール、トレーニングセンターや解体処理上などの施設も完備され、パーティールームには死んだ仲間たちの写真が飾られている。

割戦隊 (われんじゃー)

割れた子供達の中でも、低年齢の男子五人で構成されているグループ。レッド、イエロー、ピンク、ブルー、グリーンと呼ばれる少年たちが所属しており、全員が小型ナイフを武器としている。また、全員ガムテが着用している「GLESS CHILDREN」と書かれたパーカーと色違いのパーカーを身につけ、「じわじわ楽しくブッ殺そう」を信条としている。死亡遊戯においては愛多間七、レジー・ナッシュ、四刃有数、窓香荒来を執拗(しつよう)に追い詰めた。

場所

歌舞伎町地下倶楽部 (かぶきちょうちかくらぶ)

歌舞伎町の地下に存在する、旧在日米軍専用秘密地下キャバレーの跡地。歌舞伎町一丁目を丸ごと飲み込んでしまうほどの広大な敷地を有しており、2階建ての劇場ほどある高い天井をパルテノン神殿のようなエンタシスタイプの柱で支えている。またシャンデリアやカーテンがそのまま残され、レッドカーペットも敷かれている。輝村極道によって爆破され、歌舞伎町一丁目が崩落した。

烏合の巣 (うごうのす)

忍者たちが暮らしている場所。巣鴨にあるマンションのエレベーターで、1階と2階のボタンを同時に、1秒間50連打することで到着できる。広大な空間に柱だけが建っており、多数のべしゃり烏も飼育されている。各人の私室にはそれなりの家具や資料が置かれている様子も見られる。

その他キーワード

暗刃 (あんじん)

忍者が基本形として用いる手刀。手を親指と小指、人差し指と薬指をつけた形で使用される。音速を超えて繰り出されるため、使用した際にはタイヤがパンクしたような衝撃音が鳴り響く。人間の首や胴体も簡単に両断することができ、暗刃で首を切断した場合、あまりの速さで被害者はしばらくのあいだしゃべることもできる。

睡掌髑路 (すいしょうどくろ)

病田色の使用する忍術。手のひらの汗腺から香を出し、その香を嗅いだ者はもっとも幸福な夢を見たまま、母親に抱かれた赤ん坊のような表情で2日間は眠り続けてしまう。その効果はたとえ術にかかった者の体が燃えさかり、爆発四散しても続く。

凍剣執刀 (とうけんしっとう)

覇世川左虎の使用する忍術。複数の毛髪を神速で振動させることで宙空を裂き、複雑怪奇な気流を生むことでそれに伴う気温の急低下を引き起こし、目標を凍結させる。さらにその毛髪が同時に刃のようになることで、凍結した目標を切り裂くことができる。

進撃の極道電車道 (しんげきのやくざらいなー)

夢澤恒星の持つ極道技巧。どんな攻撃を受けても、耐久力のある肉体をもって決して揺るがず止まらず、まっすぐに相手に向かって突き進む。シンプルすぎる極道技巧なため、恒星自身は自分のことを「破壊の八極道の中で一番芸のない男」だと自負している。

(やまいだれ)

ガムテの持つ極道技巧。肝臓の右葉を少し切断してずらすことで、対象者の体中に重度の肝不全患者のような斑点を浮かび上がらせる。また、疒を受けた者は斑点が浮かび上がると同時に脱力感や吐き気などの症状に苦しめられ、呼吸することすら苦痛になる。

狂弾舞踏会 (ぴすとるでぃすこ)

殺島飛露鬼の持つ極道技巧。ピストルから撃ち出した弾丸を跳弾させることで弾道を変幻自在にあやつり、敵を翻弄させた末に殺害することができる。空中を舞う瓦礫(がれき)に狙いどおりの軌道で跳弾させることや、2発の弾丸を目標の自動車にあるガソリンタンクに撃ち込み、タンクの中で弾丸同士をぶつけて火花を出して爆発させるなどの芸当が可能となっている。

世界の終わり (せかいのおわり)

殺島飛露鬼の持つ極道技巧。狂弾舞踏会の応用で、標的に降参し、敵に自殺すると思わせた上で自分の頭部に撃ち込んだ弾丸を頭蓋骨の内部で跳弾させ、目から弾丸を発射する。脳を削り失明も辞さない極道技巧だが、油断している相手をほぼ確実に殺害することができる。

忍者 (にんじゃ)

300年前から極道と敵対している存在。江戸の終わりと共に権力と縁を切っており、現在はどこの組織にも属さず、金銭や権力、法にも縛られることなく、忍者独自の法で悪を殺害するとされている。第二次世界大戦中、米軍と手を組んだ極道によって、東京大空襲に乗じた大討伐が行われたため、一時は壊滅状態となっていた。しかし1990年代末期から、突如として復活を果たす。警察内部でも、警察より早く裏社会の悪事を察知して、悪人を殺害する存在だと認識されている。また、極道のあいだでは「裏社会(ウラ)で悪事(わるさ)かますと忍者が来襲(く)る」という、現代に存在する真実のおとぎ話として伝えられている。原則として「つねに世の陰より民守るべし」という教えにより、他人に顔を見られてはならず、見られた場合は殺害しなければならないという掟(おきて)がある。神賽惨蔵によると、情に心が揺れた忍者はいともたやすく誤断して死ぬ可能性が高いとされている。警察内部からは「マルオシ」と呼称されている。

べしゃり烏 (べしゃりがらす)

忍者が伝達手段として用いているカラスの総称。神賽惨蔵が諜報(ちょうほう)を仕込んでおり、人語を解して話すこともできる。極道たちの悪事の情報を収集して伝えるほか、忍者同士の伝言などにも使用される。しかし、その口調は「マジでェ~?」「オナシャス!」といったヤンキー口調となっている。

鼠坊衆 (ちゅーぼーず)

忍者が補佐役として用いているネズミの総称。べしゃり烏同様に人語を解し、話すこともできる。口調もべしゃり烏と同じくヤンキー口調だが、前足を手のように使ってサムズアップを見せるなど、べしゃり烏よりもフランクに意思疎通をすることができる。

忍災孤児 (にんさいこじ)

極道の家族や組長などを忍者に殺害された未成年者の極道の総称。行き場を失い孤独に苛(さいな)まれていたところを夢澤恒星が組長を務めている竹本組に引き取られ、「殺人は20歳になってから」をルールのもと、舎弟として大事に育てられている。

極道技巧 (ごくどうすきる)

極道の中でも手練(てだれ)の極道が使用することのできる技の総称。各個人がもっとも得意とする分野を極めることで体得することができる、常人では決して到達することのできない技とされている。個人の経験や体質に依るため、基本的に他人が真似(まね)することはできない。ただし殺島飛露鬼から跳弾のコツを教わっていた輝村極道が狂弾舞踏会を模倣するなど、例外も存在する。

MP (まさくうるぽいんと)

割れた子供達が他人を計る指標となっているポイント。個人の戦闘能力や護衛の数と質を考慮に入れた、殺しづらさを数値化したもの。殺した相手のMPによって最低10ポイントから100万ポイントを獲得することができ、1ポイント約1000円で賞金が支払われる。

地獄への回数券 (へるずくーぽん)

液体化した麻薬に浸け込んだ紙を束にした紙麻薬。黒い紙に「HELLS COUPON」という文字と、コウモリの羽が生えた髑髏(どくろ)が描かれている。複数の麻薬と増強剤、漢方などで構成されており、一欠片(ひとかけら)口に含むだけで肉体が異常活性化し、ネズミがヒグマを倒せるほどに強化される。また、忍者と並ぶ速さと力を身につけることができるほか、肉がえぐれるほどの傷も即座に血肉が再生され、半径数十メートル範囲を吹き飛ばす爆発においても、強化された表皮のおかげで無傷でいることができる。ただし、頸椎(けいつい)の隙間を走る0.5ミリメートルの一線だけは強化されておらず、この線を刃物で正確になぞることができればふつうの人間でも地獄への回数券の使用者を殺害することができる。また、地獄への回数券は胃酸に弱く、舌下摂取であれば90分は薬効が続くが、一度飲み込まれてしまったものは胃から取り出しても1秒間しか薬効が続かない。市場には地獄への回数券よりも軽い状態を引き起こす「天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)」が出回っており、輝村極道が忍者討伐に利用する資金源となっている。

明暦の大火 (めいれきのたいか)

1657年に江戸で起こった大火災。300年以上続いている、忍者と極道の抗争のきっかけとなった出来事。神賽惨蔵によって子分を殺害された幡随院長兵衛が惨蔵を誘い出し、仇討ちを挑むためだけに江戸市中に火を放ったのが明暦の大火の原因とされている。

赤坂の惨劇 (あかさかのさんげき)

赤坂の高級料亭「京兆」を中心とする爆発事件。輝村極道の呼びかけに応じ、全東京極道の会長や組長、幹部が一堂に会していたが、赤坂の惨劇によってそのほとんどが死亡している。ただし、輝村が地獄への回数券を配って服用させていた破壊の八極道だけは、爆発の中心地にいたにもかかわらず無傷で生き延びている。

死亡遊戯 (げーむ)

ガムテが、多仲忍者と輝村極道を同時に殺害するために仕組んだゲーム。読書感想文の授賞式に出席していた人間が、総理官邸のどこかに隠されている時限爆弾を探しながら、割れた子供達から逃げ回るというもの。爆弾の破壊力は総理官邸が跡形もなく消し飛ぶほどの威力で、猶予は1時間となっている。途中、総理執務室に監禁した愛多間七を5分以内に救出すれば、爆発が15分延長されるミッションが行われた。

フラッシュ☆プリンセス

女児向けアニメ「プリンセスシリーズ」の1作。孤独から生まれて人間たちを襲う怪物、サビシーナと、三人のフラッシュ☆プリンセスたちの戦いを描いたアクション作品。シリーズ構成とメインライターを幡随院孤屠が担当しており、孤屠が「長年思い描いていた理想の未来であり、「フラッシュ☆プリンセス」が人生の総決算」と語った作品で、孤屠の遺作でもある。17作あるプリンセスシリーズの中でも高いストーリー性で知られており、多仲忍者と輝村極道が熱狂的に支持している。女性幹部として登場するヒースは、孤独に苛(さいな)まれ続けるサビシーナを守るためにフラッシュ☆プリンセスたちと対立しているが、多仲と輝村の共通の推しであり、隠れたファンも多い。また「フラッシュ☆プリンセス」のストーリーは現実の忍者と極道の戦いの様子や、各人物のキャラクター性などと不思議なほどリンクしている。

孤独の唄 (こどくのうた)

「フラッシュ☆プリンセス」の登場キャラクターであるヒースのキャラクターソング。孤独に戦って散っていった仲間たちの命を賞賛するレクイエムとなっており、輝村極道が仲間を失った際に歌う定番の曲となっている。幡随院孤屠が「フラッシュ☆プリンセス」制作陣の初顔合わせの際に、音楽担当の髙梨靖治に対して「私を殺せますか?」の言葉と共にドスを差し出し、手本として自らの腹部を刺したのを目撃したのを機にインスピレーションが働き、作曲された。

友は爆炎の果てに (ともはばくえんのはてに)

幡随院孤屠が脚本家としてデビューする前に、携帯小説サイトに投稿していた小説。第二次世界大戦中の東京で、国民学校に通いながら自警団の組織の一員でもあるという二つの顔を持つ主人公、歌藤砕吾(かとうさいご)が、共通の小説を愛好している極道の貴公子、喜田壱(よしだはじめ)と、互いに仇敵同士と知らないまま交友を深めるものの、やがて互いの素性を知り、殺し合いの末に相打ちになるという悲劇的な内容。「フラッシュ☆プリンセス」の原型ともいわれている。

書誌情報

忍者と極道 14巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2020-04-08発行、 978-4065193655)

第2巻

(2020-07-08発行、 978-4065200988)

第3巻

(2020-10-14発行、 978-4065208526)

第4巻

(2021-01-13発行、 978-4065218358)

第5巻

(2021-02-10発行、 978-4065222010)

第6巻

(2021-07-14発行、 978-4065234556)

第7巻

(2021-10-13発行、 978-4065249765)

第8巻

(2022-01-12発行、 978-4065264508)

第9巻

(2022-04-13発行、 978-4065274835)

第10巻

(2022-09-14発行、 978-4065290569)

第11巻

(2023-01-11発行、 978-4065302972)

第12巻

(2023-10-11発行、 978-4065331071)

第13巻

(2024-06-12発行、 978-4065358610)

第14巻

(2024-11-13発行、 978-4065373668)

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