あらすじ
第1巻
何事にも本気にならないように生きている省エネ男子の久留目タロウは、特に恋愛には無関心で、自分はもちろん、友人の恋愛にもかかわりたくないと考えていた。そんなある日、事故で頭を強く打ったタロウは、周囲の男性が心に秘めている思念体「初恋ゾンビ」が見えるようになってしまう。同時にタロウは、自分にも初恋ゾンビが憑いており、それは5歳の頃に出会った指宿凛々澄をモデルにしたイヴである事を知る。ひとまず初恋ゾンビの調査を始めたタロウは、やがて各自の初恋ゾンビを成仏させるには、モデルになった女性との恋を成就させればいい事に気づく。さらにその直後、なんと同じクラスに凛々澄が転校して来るが、実は凛々澄は男性であった。これによってイヴの成仏は絶望的と悟ったタロウは、せめて周囲の初恋ゾンビを成仏させようと、周囲の恋愛を応援し始める。しかし、その直後に衝撃の事実が発覚する。なんと凛々澄にも初恋ゾンビが見えており、凛々澄はその原因となったタロウに復讐するため、この町に戻って来たのだという。驚くタロウだったが、元の生活を取り戻すため、引き続き周囲の恋愛を応援し続ける事にする。
第2巻
久留目タロウは、一体でも多くの「初恋ゾンビ」を成仏させるため、イヴと共に、周囲の恋愛を積極的に成就させる事にした。そんなある日、タロウと指宿凛々澄は、都城静の初恋ゾンビが、創造者に思いを否定されているがために苦しんでいる事に気づく。静は三股希空に思いを寄せており、希空もまた静の事が好きだった。しかし、静は自分に自信が持てないために、希空の方から告白してきても本気にせず、冷たくふってしまうのだった。見かねたタロウは、希空は人をからかって遊ぶような女性ではないし、静もそろそろ自分の気持ちを認めるべきだと叱る。これによって反省した静は、今度は自分から希空に告白し、受け入れられる。こうして苦しみ続けていた静の初恋ゾンビは、無事成仏するのであった。その直後、タロウは多数の初恋ゾンビのモデルとなっている人気者の女性・肆部合みさをの存在を知る。しかしみさをの本性は、わざと男性達の注目を集めては、その初恋相手になる事に快感を覚える「初恋キラー」であった。さらにみさをは、新たなターゲットに凛々澄を選び、凛々澄が実は女性である事を知らぬまま、熱烈なアプローチをし始める。
第3巻
肆部合みさをは、指宿凛々澄の正体を知らないまま無理やり交際を迫っていたが、久留目タロウの機転により、身を引いた。凛々澄はこの件をきっかけに、これまで他人に無関心な、省エネ人間だと思っていたタロウの事を見直す。また、凛々澄は同時にタロウから改めて「初恋ゾンビ」が見える体質にしてしまった事を謝罪され、その償いのためにも、今後いっしょに周囲の恋愛成就活動を行えないかと頼まれる。これによって少しタロウに心を開いた凛々澄は、これまでより協力的になるのだった。こうして二人はイヴも交えて、お互い素直になれずにいる津奈木透と薬院姫夏利の恋を成就させる。そしてその直後、タロウは江火野芽衣達と共に、凛々澄が現在世話になっている八女家のパーティに招かれる。しかしこのパーティは、凛々澄の祖母である八女桃代は凛々澄を女性として、祖父である八女勝馬は凛々澄を男性として周囲に紹介するためのものであった。女性の姿には戻りたくないが、男性として生きる覚悟はまだできていない凛々澄は、ひとまず女性の格好でパーティから抜け出す。しかしそこに偶然、何も知らないタロウがやって来てしまう。
第4巻
女性の姿で行動していた指宿凛々澄は、久留目タロウにイヴと勘違いされてしまう。しかし、イヴにしては胸が小さすぎると言われた事で凛々澄は激怒し、思わずタロウを蹴飛ばしてしまう。これによって凛々澄は正体に気づかれる事なく、パーティを終えるのだった。その直後、タロウ達のクラスに、登校拒否状態だった天草亜美が登校して来る。女性であれば「初恋ゾンビ」も連れていないし安心かと思うタロウであったが、亜美がその場に現れた事で何者かの初恋ゾンビが異変をきたす。調べてみるとそれは、タロウの友人である八代龍のものであった。中学時代、龍と亜美は非常に親しかったが、些細な誤解から龍は亜美に嫌われていると思い込んでおり、以来亜美を目にするだけで、悲しみと後悔のあまり初恋ゾンビが暴走してしまうようになっていたのだ。タロウは、二人をよく知る江火野芽衣の協力を得て二人のあいだに生じている誤解を解き、ついに亜美は龍に告白をする。これによって初恋ゾンビは正常な状態に戻り、龍と亜美はすぐに交際を始めるわけではなかったが、また友人としてやり直す事になるのだった。
第5巻
夏。指宿凛々澄は、5歳の頃に親しくしていた二月田朱々子と偶然再会する。凛々澄と朱々子は英語教室で出会い、久留目タロウも交えて三人で親しくしていたが、凛々澄が海外に引っ越した事で、疎遠になってしまっていたのだ。朱々子に英語教室跡に行ってみないかと誘われた凛々澄は、朱々子に頼まれるまま女性の格好で出かけるが、英語教室跡に着くと、そこにはなぜかタロウがいた。朱々子は、凛々澄が当時タロウに何らかの頼み事をしていたが、なぜかタロウはそれを忘れてしまっているらしい事を知り、二人を思い出の場所に連れていく事で、思い出させようとしたのである。こうしてイヴも含めて三人で取り残されたタロウ達だったが、事故でタロウと凛々澄がキスしてしまった事により異変が起き、イヴだけが当時の記憶を垣間見る。当時凛々澄は、タロウにキスしてほしいと頼んだが、なぜか代わりに頭突きをされてしまう。しかしそれは、タロウが凛々澄を拒絶したのではなく、この瞬間、「初恋ゾンビ」が見えるようになったタロウが突如現れたイヴに驚き、転んだだけだったのである。この事実に驚くイヴだったが、その直後タロウが気を失った事により自分も気絶し、これを忘れてしまう。
第6巻
夏休み。久留目タロウ達は、三股希空に誘われ、希空の親戚が経営する民宿「満海」でアルバイトをする事になった。そこで、すぐ近くに別荘があった指宿凛々澄と合流したタロウは、希空からある頼み事をされる。希空のいとこである三股真里南は現在婚活中なのだが、周囲の男性の中で最も自分にふさわしいのは誰なのかわからず、困っているのだという。以前希空と都城静をカップルにした経緯から、希空に優れた恋愛占い師だと思われているタロウは、渋々相談に乗る事にする。しかし、タロウが様子を見ていると、真里南をモデルにした「初恋ゾンビ」を連れた男性・青井岳こそが真里南の真の思い人であり、真里南は岳への思いを断ち切るために、無理やりほかの男性と交際しようとしている事が発覚する。そんな真里南の境遇に、どこか自分に似たものを感じた凛々澄は、このままでいいのかと真里南を必死に説得。これに心打たれた真里南は正直に気持ちを打ち明け、真里南と岳は長いすれ違いを乗り越え、結ばれるのだった。
第7巻
夏休みが終わり、林間学校が始まった。そこで久留目タロウ達は、非常にグロテスクな姿をした門司琥珀の「初恋ゾンビ」に気づく。その姿には指宿凛々澄も参ってしまい、心配したタロウは、早速成仏に乗り出す。そこで琥珀に話を聞くと、琥珀は同じクラスの千綿咲といい雰囲気だったが、告白した場所が悪かったためにふられてしまう。そこで、ロマンチックなシチュエーションで告白し直せばいいと考えたタロウは再告白のシナリオを書くが、それを見た江火野芽衣は、タロウが自分に告白するつもりなのではと勘違いしてしまう。結局誤解は解け、琥珀と咲もうまくいったものの、これによって芽衣はさらにタロウを意識するようになるのだった。こうして林間学校は終わるが、その直後タロウは、最近事故に遭った曾祖父・久留目正太郎が、事故以来初恋の女性の幽霊が、再び見えるようになったらしい事を知る。それは初恋ゾンビであり、正太郎は以前初恋ゾンビが見えていたが、何らかのきっかけで見えなくなり、事故で再び見えるようになったのかもしれないと考えたタロウは、凛々澄を誘って、正太郎に会いに行く事にする。
第8巻
久留目正太郎に会いに行った久留米タロウと指宿凛々澄は、正太郎から衝撃の事実を聞かされる。久留目家の男性は、時おり「初恋ゾンビ」を見る力を持って生まれる事があり、正太郎と久留目タロウは、偶然それに該当したのだという。その力を失う方法を知りたいタロウ達は引き続き滞在するが、そんな折、タロウ達は正太郎の初恋ゾンビであるキョウコから、自分のモデルになった女性を探してほしいと頼まれる。承諾したタロウ達は、情報収集がてら、地元のお祭りである「龍姫祭り」に参加し、その儀式を手伝う事にする。その結果わかった事は、キョウコのモデルである日向神鏡子と正太郎は実は両思いで、70年前の「龍姫祭り」でそれが発覚した。しかし、正太郎が鏡子よりもキョウコを選び、鏡子をふった事で鏡子が激怒し、その時のショックで正太郎は初恋ゾンビを見る力を失ったというものであった。こうして初恋ゾンビを見る能力を失うための具体的な方法はわからないまま、滞在期間は終わってしまう。しかし、この件で凛々澄はタロウへの思いを認め、問題が解決しない事により、まだタロウのそばにいられる事を、密かに喜ぶのだった。
第9巻
秋。生徒会総選挙が始まり、久留目タロウ達は、肆部合みさをの企みを阻止するため、対抗馬の恋ヶ浦波蘭の応援をする事になった。最終的には、みさをでも波蘭でもない男子が当選したが、みさをと犬猿の仲である江火野芽衣は、タロウがみさをから自分を守るために奔走してくれた事を嬉しく思う。その直後、指宿凛々澄の前に、絶縁したはずの父親・指宿誠也が現れる。誠也は10年前、妻である八女菜々乃以外の女性の「初恋ゾンビ」を連れていたために凛々澄に誤解され、これがきっかけで菜々乃と離婚してしまった。しかし、今でも菜々乃と凛々澄の事が忘れられず、どうしても許してほしくて戻って来たのだという。それを知った菜々乃は、怒っているふりをしつつもすでに許している雰囲気で、未来は明るいと察したタロウは安堵するのだった。こうして指宿家の問題は解決し、今度は文化祭の準備が始まった。タロウと組んで劇を演じる事になった芽衣は密かに喜ぶが、人吉伊澄に配慮したタロウは、伊澄と役を交代しようとする。しかし、それが芽衣を傷つけたと知ったタロウは、当日急遽役を戻し、二人はペアで「ロミオとジュリエット」を演じるのだった。
第10巻
文化祭当日。指宿凛々澄は、実は女性である事が江火野芽衣にバレてしまうが、芽衣が秘密にすると約束してくれた事で事なきを得る。一方の芽衣は、凛々澄が男性だと勘違いしているために思いを押し殺している久留目タロウがこれを知ったら、どうするのだろうと悩み始める。そしてこれをきっかけに、とうとう自身のタロウへの思いを自覚するのだった。その直後、凛々澄は肆部合みさをファンの希望で、みさをと「学生生け花パフォーマンス会」に出る事になる。当日、凛々澄は服に花が引っかかり脱げそうになってしまうが、そのピンチを芽衣に助けられる。これによって芽衣の優しさに触れた凛々澄は、芽衣との絆を深め、二月田朱々子も交えて、秘密を共有する者同士親しくなる。だが、朱々子は同時に凛々澄と芽衣がライバル関係にある事を見抜き、危機感を覚えていた。そこで朱々子は、凛々澄とタロウを進展させようと、登山デートを計画する。しかしその途中、朱々子だけがはぐれてしまう。朱々子を案じたイヴは、コミュニケーションが取れない朱々子の下山を見守るため、しばらくタロウ達と別行動する事になる。
第11巻
久留目タロウは、二月田朱々子のサポートをイヴに頼み、指宿凛々澄と二人きりで下山する事になった。その途中でタロウは、凛々澄が実は女性なのではと疑う。しかし、凛々澄がはっきり否定した事により、真相には気づかぬまま帰路につくのだった。これによって、改めて女性である事を悟られぬよう気を付ける凛々澄だったが、観察眼に優れるクラスメイトの席田更に、女性である事をあっさり見抜かれてしまう。さらに更は天草亜美に歪んだ思いを寄せているようだが、亜美には八代龍がいるため、更の恋は成就しない。そんな更を危険視したタロウ達は作戦を練るが、「初恋ゾンビ」とイヴがらみの会話を江火野芽衣に聞かれた事で、不信感を抱かれるようになる。最終的には、更が自身の思いと向き合い、特技である絵画を通じて亜美とコミュニケーションを取った事で、初恋ゾンビは絵に吸い込まれる形で成仏。タロウ達はこのような解決法もあるのだと驚きつつ、安堵する。
第12巻
久留目タロウの誕生日がクリスマスイブだと知る江火野芽衣は、12月に入り密かに浮足立っていた。一方タロウは、イヴの存在を芽衣に隠すため、先日の指宿凛々澄との会話で「イヴ」という単語が出てきたのは、クリスマスイブに関する話をしていたからだと苦し紛れの噓をつく。その流れで、今年は久留目家でパーティをするので、芽衣にも来てほしいと言ってしまったタロウは、ほかにも友人を誘おうとするが、カップルばかりで芽衣以外誰も捕まらない。本当は凛々澄を誘いたいところだが、最近いい雰囲気の凛々澄と芽衣が揃うとタロウは内心嫉妬してしまい、それがイヴにも伝播して、暴走しかねないのである。そんな事は露知らぬ凛々澄は、なぜ自分は誘われないのだろうと、腹を立てていた。そして、偶然会った際にその思いをぶちまけたところ、凛々澄は、タロウが自分を嫌っているどころか、男性と誤解したままであるにもかかわらず今も思ってくれている事を知り、嬉しくなるのだった。そしてクリスマスイブ当日。タロウは凛々澄や芽衣の兄弟も交えて楽しい時間を過ごすが、そんな中、ついに久留目成人は芽衣に告白しようと決意する。
登場人物・キャラクター
久留目 タロウ (くるめ たろう)
若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。前髪を上げて額を全開にした、アフロヘアにしている。三白眼で目つきが悪い。何事にも本気にならない、省エネな生き方を愛する合理主義者。子供の頃、母親にあまりにも多くの習い事を同時にさせられた事と、初恋の女性である指宿凛々澄に冷たくふられたと思い込んでいるのが原因で、現在の性格になってしまう。 しかし、同時に多数の習い事をこなした事により、物事の効率化と分析を非常に得意としている。高校1年生のある日、体育の授業で江火野芽衣が打ったボールが頭に直撃した事が原因で、「初恋ゾンビ」が見えるようになってしまう。そこで自身の初恋ゾンビであるイヴと、そのモデルである指宿凛々澄にときめきつつも、元の生活を取り戻すため、一体でも多くの初恋ゾンビの成仏を目指して、周囲の恋愛模様を応援する事になる。 習い事で培った高い分析力から、他者の恋愛を導くのが得意で、また面倒見もいい。そのため、目的を果たす過程で周囲に多くのカップルを誕生させ、慕われるようになっていく。
イヴ
指宿凛々澄をモデルに生まれた、久留目タロウの初恋ゾンビ。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばしたピンク色の髪の毛を、左側の一部だけ青い髪飾りでまとめたロングヘアにしている。凛々澄をモデルにしているが、そこにタロウの理想の女性像が加わっているため、凛々澄とは性格だけでなく、髪型や体型も大きく異なる。明るく素直な性格で、タロウの事が大好き。 タロウが5歳のある日、凛々澄への恋心を自覚した瞬間に生まれるが、その頃のタロウは初恋ゾンビが見えなかったため、ほかの初恋ゾンビと同じように、タロウのそばに漂いながら生活していた。しかし、タロウが高校1年生の春、事故に遭ったのがきっかけで初恋ゾンビが見えるようになり、以来、意思疎通が可能になった。 タロウの喜ぶ事は何でもしたいと考えており、タロウの無意識下の願望をそのまま理解して行動する。そのため、タロウの妄想の産物であると考えられていた。しかし、やがてタロウの希望に反する行動を取ったり、自主的に考えて行動するようになったりと、自我があるようなそぶりを見せるようになる。
指宿 凛々澄 (いぶすき りりす)
久留目タロウの初恋の相手で、若狭ノ宮高校1年2組に転校して来た女子。男装をして、性別を男性と偽っている。そのため、本名の「りりす」ではなく「りりと」と名乗って生活している。両親の離婚により、本当の姓は「八女」だが、素性を偽るために「指宿」姓を使用している。穏やかで心優しく、完璧な王子様を演じているが、実際はクールな性格。 タロウとは5歳の頃に英語教室「あすなろ英語教室」で出会い親しくなったが、ある日海外に引っ越す事になってしまい、タロウと会える最後の日に告白を決意した。しかし、この告白がきっかけでタロウの目に「初恋ゾンビ」が見えるようになり、混乱したタロウに頭突きされる事となった。この頭突きがもとで初恋ゾンビが見える能力をタロウに移されてしまい、以来、苦悩の日々を送るようになった。 そのため、若狭ノ宮高校にやって来た際は、タロウに強い恨みを抱いていた。しかし、心の奥底ではタロウを思い続けており、もう一度タロウとかかわる中で、次第に心を開くようになっていく。だが、タロウには子供の頃は女装させられていたと噓をついているため、男性と誤解されたままになっている。
江火野 芽衣 (えびの めい)
久留目タロウの友人で、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する女子。食堂「えびの食堂」の娘でもある。前髪を目の上で切り揃え、腰まで伸ばした黒のロングヘアを、頭の高い位置で一つに結んだポニーテールにしている。長身で胸が大きい。まじめな性格で責任感が強く、幼い弟と妹が三人いる事から、非常に面倒見のいい姐御肌。そのため、久留目成人や人吉伊澄など、周囲の男性に密かに人気がある。 タロウとは小学校時代からの付き合いで、タロウの事を憎からず思っていたが、友人以上の関係にはならないまま高校生になる。しかし、高校1年生のある日、自分が打ったボールが原因でタロウが頭にケガをしたのがきっかけで責任を感じ、何かとタロウを気遣うようになる。また同時期に、他人に関心がないと思っていたタロウの前向きな変化に気づき、それを不思議に思いつつも次第にタロウへの思いを自覚するようになっていく。 さらに、その過程で指宿凛々澄が実は女性である事に気づき、凛々澄の正体を知る貴重な同世代の友人として支えていく事になる。若狭第三中学校の出身で、天草亜美、八代龍とはその頃からの付き合い。
八代 龍 (やつしろ りゅう)
久留目タロウの友人で、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。前髪を目の上で切った短髪で、眼鏡をかけている。初恋の相手は天草亜美で、自身の「初恋ゾンビ」も亜美をモデルに作られている。しかし、亜美と些細な誤解から疎遠になってしまい、亜美を思い出すと辛くなってしまう事から初恋ゾンビは繭状になった茨に覆われ、その中で眠っている。 まじめで落ち着いた性格。タロウとは小学校時代、空手教室がいっしょになった事がきっかけで親しくなった。そのため、タロウが省エネルギーな生き方をするようになった要因は、同時にいくつもの習い事をさせられたせいだという事を知っている。小学5年生の頃、本の話題がきっかけで亜美と親しくなる。しかし中学2年生の頃、突然不良になってしまった亜美に拒絶され、理由はわからないが、嫌われてしまったと思っていた。 その後、高校1年生の夏に不登校状態だった亜美が登校して来た事がきっかけで誤解が解け、もう一度友人として関係を修復していく事になる。中学校は若狭第三中学校で、江火野芽衣とはその頃からの付き合い。
人吉 伊澄 (ひとよし いすみ)
久留目タロウの友人で、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。前髪を目の上で切った、ふんわりとしたウルフカットヘアにしている。初恋の相手は江火野芽衣で、自身の「初恋ゾンビ」も芽衣をモデルに作られているが、つねにサイズが小さすぎる。また、露出度が高い服を身につけており、本物の芽衣よりもさらに胸が大きい。一見穏やかでおっとりとした雰囲気だが、実は性的な妄想が大好きだったり、芽衣に対して並々ならぬ思いを抱いていたりと、内面には激しい感情が渦巻いている。 そのため初恋ゾンビも、人吉伊澄の感情に共鳴して、ほかの初恋ゾンビに対して攻撃的に振る舞うなど、やや感情的な性格をしている。しかし、芽衣に思いを打ち明ける気はなく、嫉妬や悲しみにさいなまれる事なしに、平穏に芽衣を見つめる生活を送る事を何よりの望みとしている。
天草 亜美 (あまくさ あみ)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する女子。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、腰まで伸ばした淡い茶色のストレートロングヘアを、二本の三つ編みにしてまとめて、眼鏡をかけている。極度の近眼で、眼鏡がないと人の見分けがつかない。繊細で物静かな性格の持ち主。小学5年生の頃、本の話題がきっかけで八代龍と親しくなり、思いを寄せるようになる。 しかし、中学2年生の頃からほかの男子にもてるようになり、困っていた。そんな折、龍は恋愛に関心がないらしいと知り、であれば龍以外の男性を寄せ付けないようにしようと、わざと不良っぽい服装をし、乱暴な言動をするようになる。さらに同時期、近づいて来た男性が龍だと気づかないまま冷たい態度を取り、龍を深く傷つけてしまう。 その後、疎遠になったまま龍といっしょに若狭ノ宮高校に進学するが、同じクラスになった事が恥ずかしくて耐え切れず、不登校になってしまった。しかし、高校1年生の夏に勇気を出して登校した事がきっかけで誤解が解け、龍ともう一度友人として関係を修復していく事になる。中学校は若狭第三中学校で、江火野芽衣とはその頃から非常に仲がいいが、タロウとは面識がなかった。
黒川 悠斗 (くろかわ ゆうと)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。前髪を眉上で短く切った短髪。三白眼で目つきが悪い。初恋の相手は別府由花で、自身の「初恋ゾンビ」も由花をモデルに作られている。以前から由花に思いを寄せているが告白できず、由花が指宿凛々澄に関心を示している事に苛立っていた。しかし、それを察したタロウと凛々澄の間接的な協力により、由花に告白し、交際を始めた。
別府 由花 (べっぷ ゆか)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する女子。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばしたふんわりとしたボブヘアを、右側の一部だけ髪飾りでまとめている。左目の下にほくろが一つある。一見、おっとりとした雰囲気だが、目立つものや新しいものにすぐ関心を示し、簡単に好きになってしまうミーハーな性格。高校1年生のある日、黒川悠斗に思いを寄せられている事を知らぬまま、転校生の指宿凛々澄を気に入る。 そこで、凛々澄の昔からの知り合いであるタロウを利用して、凛々澄と親しくなろうとするが、凛々澄にその思惑を見抜かれ、ふられてしまう。その後、告白して来た悠斗と交際を始めた。
都城 静 (みやこのじょう しずか)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分けた短髪。三白眼で目つきが悪く、体型は太め。初恋の相手は三股希空で、自身の「初恋ゾンビ」も希空をモデルに作られているが、都城静が自身の思いを否定しているため、頭にダンボールをかぶせられ、返品と書かれたシールが全身に貼られた姿をしている。 アニメやゲームを愛するオタク気質で、他人とかかわりを持とうとせず、いつも趣味の世界に没頭している。さらに自分に自信がなく、自分のようなタイプは女性に相手にされないと思うあまり、恋愛に関心がないふりをしていた。ある日、自分に話し掛けて来た三股希空とたった一言会話しただけで恋に落ちるが、その感情を否定していた事と、自分と希空では釣り合わないという思いから、希空から告白されても断ってしまう。 しかしその後、タロウと指宿凛々澄のアドバイスにより自分の非を認め、改めて静から告白した事により、希空と交際を始めた。
三股 希空 (みまた のあ)
久留目タロウの友人で、若狭ノ宮高校1年7組に在籍する女子。前髪を目の上で切り、胸の下まで伸ばした金色のロングウェーブヘアをハーフツインにしている。派手で露出度の高い服装を好むギャルで、少し乱暴な口調で話す。また、棒つきキャンディーが好きで、いつもなめている。容姿は派手だが、素直で純情な性格の持ち主。高校1年生のある日、自分の行く先々でよく見かける都城静の事を次第に気にかけるようになり、ある日一言会話したのをきっかけで恋に落ちる。 しかし、どう近づいたらいいかわからず、静のクラスメイトであるタロウに協力を頼む。そしてすぐにタロウと指宿凛々澄のアドバイスのもと、静好みの清純な雰囲気の容姿に自分を変えて静に告白するが、ふられてしまう。 しかし、その後静が反省し、改めて静から告白しに来た事により、交際を始めた。この事によってタロウに強い恩を感じるようになり、以来友人としてタロウと付き合っていく事になる。タロウの事を、凛々澄に思いを寄せる同性愛者だと誤解している。
肆部合 みさを (しぶあい みさお)
若狭ノ宮高校2年5組に在籍する女子。部活は華道部に所属している。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばした紺色のボブヘアの頭頂部に、カチューシャのような編み込みをしている。若狭ノ宮高校では、穏やかで気品あふれる理想の女性として知られている。そのため、若狭ノ宮高校には肆部合みさををモデルにした「初恋ゾンビ」が大量に存在するほど、男性に人気がある。 しかし実際は男性の心を弄ぶのが好きな身勝手な性格で、自分の本性を知らない純情な男性達の初恋相手になる事を何よりの楽しみとする「初恋キラー」である。高校2年生のある日、指宿凛々澄の母方の実家が、有名な資産家である八女家であると気づき、関心を持つ。そこで凛々澄が女性である事を知らないまま強引なアプローチをするが、現状では凛々澄の関心は得られないと判断し、一度身を引いた。
薬院 姫夏利 (やくいん ひかり)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する女子。部活はバスケットボール部に所属している。前髪を目の上で切って右寄りの位置で分け、顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアにしている。気が強く、素直になれない性格。幼なじみの津奈木透とは家も近所で、物心つく前からいっしょにいた。その後、二人でバスケットボールクラブに入り、透とは家族や兄弟よりも長い時間いっしょに過ごした友人として、高校1年生になる。 その過程で透に密かに思いを寄せるようになるが、幼なじみという関係性を変える機会が持てずにいた。そんなある日、透が海浦綾香と交際を始めてしまう。そのため透への気持ちを引きずったまま、指宿凛々澄の取り巻きとして過ごす事で気を紛らわそうとする。 しかしタロウ達のサポートで、自分の気持ちを認め、透に告白。これによって透もまた薬院姫夏利への思いを自覚し、交際を始めた。
津奈木 透 (つなぎ とおる)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。部活はバスケットボール部に所属している。前髪を眉上で短く切った刈り上げヘアにしている。あだ名は「ツナ」。初恋の相手は幼なじみの薬院姫夏利で、自身の「初恋ゾンビ」も姫夏利をモデルに作られている。しかし、津奈木透が自身の思いに無自覚なため、はっきりと姫夏利の姿を保てず、正体不明のゼリー状になってしまっている。 姫夏利とは家も近所で、物心つく前からいっしょにいた。その後、二人でバスケットボールクラブに入り、姫夏利とは家族や兄弟よりも長い時間、友人としていっしょに過ごして来た。しかし高校2年生の夏、海浦綾香に告白された事で、姫夏利への思いを自覚できないまま、綾香と交際を始めてしまう。 だが、タロウと指宿凛々澄のサポートにより姫夏利が自分の気持ちを認め、告白した事で、とうとう姫夏利への思いを自覚。すぐさま綾香に謝罪して別れ、姫夏利と交際を始めた。また、これと同時に自身の初恋ゾンビもはっきりと姫夏利の姿となり、恋の成就と共に成仏した。
海浦 綾香 (うみうら あやか)
津奈木透の恋人で、若狭ノ宮高校に通う2年生の女子。部活はバスケットボール部に所属しており、マネージャーを務めている。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばした内巻きセミロングヘアにしている。容姿端麗で恋愛経験豊富。透と交際を始める前は、大学生と付き合っていた。高校2年生の夏、自分から告白して透と交際を始める。 しかしその後もいっしょに食事をしたり、下校する程度でなかなか進展せず、じれていた。さらに、透が幼なじみの薬院姫夏利への思いを自覚した事により、突然別れてほしいと頼まれ、激怒。しかし平手打ち一発で別れを承諾し、次の恋愛に向けて行動するため、透のもとを去った。
二月田 朱々子 (にがつでん すずこ)
指宿凛々澄の友人で、潔白女学園中等部に通う3年生の女子。部活はテニス部に所属している。前髪を目の上で切り揃え、腰まで伸ばした赤紫色のストレートロングヘアを、頭の高い位置でツインテールにしている。名前の「朱々子」が「しゅしゅこ」とも読める事から、あだ名は「シュシュ子」。明るく素直な性格だが、やや暴走しやすい一面がある。 凛々澄とは4歳の頃に英語教室で出会い、久留目タロウも交えて三人で親しくなる。しかし、凛々澄が海外に引っ越してからは、疎遠になってしまっていた。そして中学3年生のある日、若狭ノ宮高校に素敵な男性がいると聞いて友人と共に見に行った際、それが、なぜか男装している凛々澄であると知り、二月田朱々子から声を掛けた事で再会。 以来、凛々澄が実は女性であるという事を秘密にしながら、再び親しく付き合うようになった。英語教室に通っていた頃、とても仲がよかったはずのタロウと凛々澄が、タロウの記憶喪失が原因で交際に至っていない事と、それが凛々澄の男装の要因にもなっている事を不満に思っている。そのため、事あるごとにタロウの記憶を取り戻させようと画策する。
田良 めぐむ (たら めぐむ)
二月田朱々子の友人で、潔白女学園中等部に通う3年生の女子。部活はバレー部に所属している。前髪を目の上で切り、肩より少し上の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。中学3年生の夏、朱々子がストーカー被害に遭っている事を知り、朱々子の友人である久留目タロウと指宿凛々澄に助けを求める。そこでタロウ達は、ストーカーの「初恋ゾンビ」の髪型がツインテールである事から、やはり朱々子のストーカーであると思い込んだまま捕らえる。 しかし、ストーカーが追いかけていたのは朱々子ではなく田良めぐむであり、彼は髪を切る前の、ツインテールヘアだっためぐむに恋をしたため、初恋ゾンビも髪を切る前の姿だった事が発覚。これによって誤解が解け、ストーカーから交際を申し込まれた事と、彼が非常に美形であった事から、交際を始めた。
三股 真里南 (みまた まりな)
三股希空のいとこで、民宿「満海」の娘。スキューバダイビングのインストラクターとして働いており、年齢は26歳。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、胸の下まで伸ばした外はねロングヘアにしている。色黒で胸が大きく、露出度の高いギャル系ファッションを好む。気さくで明るい性格。男性から非常に人気があり、現在も二人の男性に言い寄られているが、実は今でも、中学時代からの先輩である青井岳に片思いしている。 高校時代のある日、岳に思いを伝えようと岳の靴箱にラブレターを投函する。しかし差出人として自分の名前を書き忘れた事で、その手紙を利用され、同じく岳に思いを寄せる水泳部のマネージャーから、三股真里南ではなく、自分が書いた事にしてくれと頼まれ、承諾してしまう。 結果、告白に失敗したまま岳への思いを引きずり続け、それを断ち切るために、後ろ向きな婚活をしていた。しかし、希空の紹介で久留目タロウ達に出会った事により真意を見抜かれ、タロウ達のサポートのもと、岳に告白。10年越しの思いを実らせた。指宿凛々澄が女性である事を見抜いており、次は凛々澄に恋を実らせ、不本意な男装を終了させてほしいと願っている。
青井 岳 (あおい たける)
三股真里南の思い人で「青井酒店」で働く27歳の男性。刈り上げの短髪にバンダナを巻いている。初恋の相手は真里南で、自身の「初恋ゾンビ」も真里南をモデルに作られている。しかし、高校時代に起きたすれ違いから、真里南は自分に好意を持っていないと思い込んでおり、真里南への思いを殺すために初恋ゾンビは氷漬けにされてしまっている。 また人間ではなく、人魚の姿をしている。真里南とは中学時代に出会い、非常に親しかった。しかしある日、靴箱に届けられた差出人不明のラブレターがきっかけで、差出人を名乗る当時の水泳部のマネージャーと交際を始める。それから4年後、マネージャーと別れ話になった際、実はあの手紙は自分ではなく、真里南が書いたものであると打ち明けられる。 しかし、今更真里南に連絡する事もできず、東京の大学を卒業し、そのまま東京で就職した。だが、27歳の夏に父親が身体を壊した事で休職し、地元に戻って実家を手伝う事になる。この時、偶然アルバイトに来ていた久留目タロウ達のサポートにより真里南が勇気を出し、告白した事で10年越しの思いを実らせ、退職して正式に地元に戻り、真里南と結婚する意志を固めた。
門司 琥珀 (もじ こはく)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。部活は映画研究部に所属している。前髪を目の上で切って右寄りの位置で斜めに分けた短髪。想像力豊かな芸術家気質で、グロテスクな怪物が登場する映画が大好き。初恋の相手は千綿咲で、自身の「初恋ゾンビ」も咲をモデルに作られている。しかし、告白してふられてしまったせいで「失恋ゾンビ」化し、自身の趣味も相まって、咲が原型とは思えない非常にグロテスクな姿に変貌してしまっている。 高校1年生の夏休み、映画館で偶然会った咲といっしょに映画を見た事がきっかけで、咲に思いを寄せるようになる。そこで、夏休みが終わってすぐの林間学校で咲に告白するが、呼び出した場所がトイレの前であったため、こんな場所ではあんまりだと言われ、ふられてしまう。 しかし、事態を察したタロウのサポートにより、林間学校中、今度はロマンチックなシチュエーションのもと再告白。今度はOKをもらい、交際を始めた。
千綿 咲 (ちわた さき)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する女子。部活は映画研究部に所属している。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。高校1年生の夏休みのある日、映画館で偶然門司琥珀と会い、いっしょに映画を見る。これがきっかけで琥珀に好意を抱き、夏休みが終わってすぐの林間学校で琥珀に告白される。 しかし、その場所がトイレの前であったために、こんな場所ではあんまりだと感じ、つい怒って琥珀をふってしまう。しかし、事態を察したタロウのサポートにより、反省した琥珀が今度はロマンチックなシチュエーションのもとで再告白して来た事で機嫌を直し、交際を始めた。
久留目 正太郎 (くるめ しょうたろう)
久留目タロウの曾祖父で、年齢は94歳。スキンヘッドで、両サイドにだけ少し髪の毛が残っている。初恋の相手は日向神鏡子で、自身の「初恋ゾンビ」も鏡子をモデルに作られ「キョウコ」と呼んでいる。しかし、鏡子とはほとんど接点がないまま会えなくなってしまったため、容姿以外は久留目正太郎のオリジナルといえる存在である。 キョウコからは「正さん」と呼ばれている。明るく気さくな性格で、94歳とは思えないほど元気だが、かなり忘れっぽくなってしまっている。久留目家の男性に時々誕生する初恋ゾンビが見える体質で、そのため幼い頃から自身の初恋ゾンビ誕生を恐れ、絶対に恋愛はしないと誓って生きてきた。しかし15歳のある日、偶然すれ違った鏡子に一目惚れ。 その瞬間誕生したキョウコに最初は冷たく接していたが、やがて心を開き、恋人同然の関係となる。そのため、現実の女性と交際する気はなかったが、やがて仕方なく結婚し、同時期にキョウコを眠らせた。しかし94歳の夏、事故で頭を打った事によりキョウコと再会。その噂がタロウの耳に入った事で、自身の過去や久留目家の体質についてタロウ達に話す事になる。
キョウコ
久留目正太郎が生み出した「初恋ゾンビ」。モデルの女性は日向神鏡子だが、正太郎は鏡子の事をほとんど知らないため、自身の人格はオリジナルキャラクターに等しいのではと考えている。自身のモデルである鏡子に強い関心を抱いており、正太郎が94歳の夏、再び自分が見えるようになり、同時に久留目タロウ達がやって来たのをきっかけに、どうにかして鏡子に会えないかと考えるようになる。 そこでタロウ達に鏡子の捜索を依頼し、正太郎と鏡子が結ばれる事で成仏したいと考えていた。しかし、調査の結果鏡子は4年前に亡くなっていると知り、成仏をあきらめて最後まで正太郎と過ごす決意をした。
日向神 鏡子 (ひゅうがみ きょうこ)
久留目正太郎の初恋の女性で、故人。キョウコのモデルになった人物でもある。前髪を真ん中で分けて額を見せ、胸まで伸ばしたストレートロングヘアをハーフアップにしてまとめている。10代のある日、正太郎に一方的に思いを寄せられるようになるが、特に接点はなく、そのまま正太郎は出兵して会えなくなってしまった。しかし終戦後、正太郎が地元に戻ったらしいと聞き、龍姫祭りで再会する。 その時にはもう別の男性と婚約していたが、もし正太郎が今でも自分を思っているのなら、すべてを捨てていっしょに逃げてもいいと考え、告白する。しかしふられてしまい、思わず正太郎を殴って、そのまま去って行った。だが、時が経ってもこの件を申し訳なかったと思っており、孫にいつか正太郎に会えたら代わりに謝罪してほしいと頼んで亡くなった。
恋ヶ浦 波蘭 (こいがうら はらん)
若狭ノ宮高校2年2組に在籍する男子。前髪を左寄りの位置で分けて額を見せ、ふんわりとした内巻きボブヘアにしている。非常にイケメンで女性の扱いに長ける事から、若狭ノ宮高校で一番人気のある男子として知られている。そのため高校2年生の秋、久留目タロウ達から、肆部合みさをに対抗できそうな数少ない存在として、生徒会総選挙に出馬する事を頼まれる。 当初はまったく出馬の意思はなかったが、みさをとは性格が似ている事から強い同族嫌悪を示し、みさをには負けられないという理由で出馬を承諾した。しかし、最終的には、恋ヶ浦波蘭でもみさをでもない男子が当選したため、生徒会長にはならなかった。選挙活動中、指宿凛々澄が女性なのではと疑うが、証拠は摑めずに終わった。
席田 更 (むしろだ こう)
久留目タロウのクラスメイトで、若狭ノ宮高校1年2組に在籍する男子。部活は美術部に所属している。前髪を目が隠れるほど伸ばしてぐちゃぐちゃな高さに切り、首の付け根の高さで無造作に結んでいる。高い絵画の才能と観察眼を持つが、コミュニケーション能力に乏しく、クラスでは目立たない存在。高校1年生の冬、恋人がいると知りながら天草亜美に思いを寄せるようになり、亜美の姿をした「初恋ゾンビ」を誕生させた事で、タロウ達にその思いを知られる。 しかし亜美と恋人になりたいのではなく、八代龍と交際する前の、片思いに苦しむ亜美を見ていたいので、龍との関係を崩壊させたいと願うという、歪んだ愛情を抱いている。そのためタロウ達に危険視されるが、亜美をモデルにした絵を一枚描かせてくれればあきらめると言い、それを亜美と龍が渋々承諾した事により、満足して思いを昇華させた。 結果、席田更の初恋ゾンビは、モデルの女性と両思いになるのではなく、モデルの女性を描いた絵に吸い込まれるという形で消滅した。その観察眼から、指宿凛々澄が女性である事を、早い段階で見抜いていた。
久留目 那津子 (くるめ なつこ)
久留目一姫、久留目タロウ、久留目成人の母親で主婦。年齢は45歳。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、耳の下まで伸ばした癖のあるショートヘアにしている。非常に教育熱心で、三人の子供達全員に数々の習い事をさせ、人格形成に大きな影響を与えた張本人。
久留目 一姫 (くるめ かずき)
久留目タロウと久留目成人の姉で女子大学生。年齢は20歳。前髪を目の上で切った、非常に癖の強いショートトヘアにしている。また、この髪質にコンプレックスを抱いており、ストレートヘアのかつらを数種類所持し、その時々で好きなものを選んでかぶっている。明るく気が強く、少しおせっかいな性格。タロウ、成人と同様に幼い頃から母親の久留目那津子に数々の習い事をさせられて育つ。 そのすべてで素晴らしい成績を残すほど優秀だったが、そんな自分を取り合う習い事の先生達を見て気持ちが冷めてしまい、どの習い事も選ばず、極める事をあきらめて現在に至る。しかし、当時習得した技術は今も健在で、いざとなればすばらしい技能を発揮する。20歳のある日恋人ができるが、その人はストレートヘアの女性が好みだと知り、かつらをかぶって自分の髪質を隠していた。 しかし、結局バレてしまい、別れた。その際タロウが家に連れて来ていた指宿凛々澄を見て、即座に男性の「りりと」ではなく、以前タロウと親しくしており、自分とも顔見知りであった「りりす」であると見抜く。そこで、正体に気づいている事を凛々澄に打ち明けたうえで、タロウ達の恋愛に首を突っ込むようになる。
久留目 成人 (くるめ なすと)
久留目一姫と久留目タロウの弟で、小学5年生の男子。前髪を右寄りの位置で分けて目が隠れそうなほど伸ばした短髪。初恋の相手は江火野芽衣で、自身の「初恋ゾンビ」も芽衣をモデルに作られている。しかし、芽衣と接した事がほとんどないため、初めて出会った際に交わした言葉を延々繰り返す事しかできない。母親の久留目那津子に勧められるまま、日夜習い事に励んでいるまじめな性格。 そのため、恋愛に関心を持つ余裕もなかったが、小学5年生のある日、数年ぶりに久留目家に遊びに来た芽衣に一目惚れする。そして、クリスマスイブについに告白をした。
指宿 誠也 (いぶすき せいや)
指宿凛々澄の父親で、八女菜々乃の元夫。前髪を目が隠れるほど伸ばして、肩につくほどまで伸ばしたぼさぼさのボブヘアにしている。10年ほど定職に就いておらず、非常にみすぼらしい姿をしている。情熱的だが精神的に弱く、思い込みの激しい性格。10年前、八女勝馬からの資金をもとに、海外で和雑貨店を起業する事になる。 しかし、本当は自分がきちんとやっていけるか自信が持てず、悩んでいた。さらに起業後も、妻の菜々乃は幼い凛々澄にかかりきりになっていた事で、菜々乃と距離ができてしまった事に落ち込んでしまう。そこで、初恋の女性との思い出に浸るようになっていたところ「初恋ゾンビ」が見えるようになった凛々澄に、ほかの女性の初恋ゾンビを連れている、つまり、菜々乃を裏切っていると誤解されてしまう。 そしてこれがきっかけで夫婦の仲に亀裂が入り、別れてしまった。その後、凛々澄の指摘を受け、初恋の女性が、生霊を飛ばすほど自分を思ってくれているのではと勘違いし、会いに行くがふられてしまう。以来10年間定職に就かず放浪していたが、久留目タロウ達が高校1年生の夏、凛々澄が「龍姫祭り」に参加した時の写真を見て、八女家に戻って来る。
八女 菜々乃 (やめ ななの)
指宿凛々澄の母親で、指宿誠也の元妻。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばしたロングヘアにしている。喪服のような服装を身につけている。一見厳しくクールに見えるが、甘い言葉に弱い感激屋。10年前、家族で日本を離れ、海外で和雑貨の店を起業する。しかしある日、凛々澄の発言がきっかけで誠也に裏切られたと思い込み、離婚して八女家に戻った。 その後は逃げ出した誠也の代わりにこの事業の社長となり、意外な商才を発揮。会社をヨーロッパで数十店舗を展開する、年商数十億の企業になるまでに成長させた。そのため海外を飛び回る生活を送っているが、久留目タロウ達が高校1年生の夏、偶然帰国していた際に誠也と再会。数々の誤解が解けた事により、完全に許したわけではないと言いつつも、態度がすっかり軟化した。
八女 桃代 (やめ ももよ)
指宿凛々澄の母方の祖母で、八女勝馬の妻。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、ロングヘアを首の付け根の高さで二つのお団子にしてまとめている。チェーン付き眼鏡をかけ、非常に小柄。女性である凛々澄が、久しぶりに戻って来たかと思ったら、なぜか男装するようになった事に驚いている。そのため、凛々澄の意向に沿って本当の性別を秘密にしながらも、女性の服装に戻ってくれないかと思っている。
八女 勝馬 (やめ かつま)
指宿凛々澄の母方の祖父で、八女桃代の夫。前髪を上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばした外はねセミロングヘアにしている。ちょび髭を生やし、キャスケット帽をかぶっている事が多い。桃代とは対照的に、女性である凛々澄が男装するようになっても受け入れている。そのため、凛々澄の意向に従って本当の性別を秘密にしつつ、今後は男性として育て、ゆくゆくは自分の跡取りにしたいと考えている。
その他キーワード
初恋ゾンビ (はつこいぞんび)
すべての男性が心に秘める、初恋の女性をモデルに作られた思念体。しかし、創造者自身はその存在を認識できず、なぜか久留目タロウをはじめとする久留目家の一部の男性と、タロウによって認識能力を感染させられた指宿凛々澄にだけ見える。しかし、初恋ゾンビ同士はお互いを認識でき、影響し合う。初恋ゾンビは各自の初恋の女性をモデルに作られているが、創造者の妄想や願望が、多分に盛り込まれている。 そのため、モデルの女性よりも創造者に好意的である、スタイルがいい、露出度の高い服装を好むといった傾向があり、モデルとなった女性とは、もはや別人である事がほとんどである。また、創造者が現在進行形でモデルの女性に思いを寄せている場合は、初恋ゾンビも創造者と親しげにしているが、創造者がモデルの女性に関心を失っている、あるいは忘れてしまっている場合は、初恋ゾンビは創造者と距離を置いた場所に漂っている。 創造者がモデルとなった女性との恋を成就させると、初恋ゾンビは消滅し、その後失恋しても再生はしない。逆に、恋が成就しないまま失恋すると、その初恋ゾンビは、狂暴で攻撃的な「失恋ゾンビ」に変化してしまう。 久留目正太郎は「憑き女」と呼んでいる。