概要・あらすじ
結婚を控えた朝比奈藍とその婚約者、由比燈子は新興住宅地のはずれに新しいマンションを購入した。ある日、ささいなことでケンカした後、藍が行方不明になってしまう。燈子は彼を探す中で、今住んでいるマンションの敷地に鎌倉時代の姫の鏡が祀られた鏡塚がかつてあったこと、そしてそれが彼の失踪に関係していることを知る。燈子の調査の甲斐あって無事に再会した藍と燈子は、藍の妹である朝比奈茜にこのマンションを譲り、別の場所へ引っ越すことに決めるのだった。
新たに一人暮らしを始めた茜は、この部屋が刻溜まりという異世界へ通じる部屋であることを知る。
登場人物・キャラクター
朝比奈 茜 (あさひな あかね)
相模美術大学の工芸科に通う2年生で、染物が得意。朝比奈藍の妹で、祖父江亮に片思いをしている。周りからはさばさばした性格と認識され慕われている。他人を憎む気持ちを認めたくないと思っているが、大姫にその思いにつけこまれ、刻溜まりの世界に干渉するようになっていく。
由比 燈子 (ゆい とうこ)
朝比奈藍の婚約者で会社に勤めている。藍との新居に購入したマンションにはまだ住んではいない。ささいなことでケンカしたのちに藍が消えてしまってからは、彼を心配し、手を尽くして探し始める。怖がりだが、藍のために真相を探ろうと奮闘する。
朝比奈 藍 (あさひな あい)
由比燈子の婚約者で、相模美術大学の講師。同じ大学に通う朝比奈茜の兄。結婚後の新生活のため、マンションを購入し、燈子より一足先に愛犬の「ディーゴ」と暮らし始めたばかりであった。異空間に閉じ込められてからは、なんとか燈子に気づいてもらおうとさまざまな合図を送る。
大姫 (おおひめ)
朝比奈茜の住むマンションに存在する刻溜まりの主。幼い少女の姿をしているが残忍な性格で、気に入った人間を自分の空間に閉じ込めたり、邪悪な道に誘い込む。乃愛に嫉妬しながらもそんな気持ちを持つ自分に苦しんでいた茜を気に入り、そそのかして協力を持ちかける。
祖父江 亮 (そふえ りょう)
相模美術大学の工芸科3年生で、朝比奈茜の先輩。茜の染物の実力を認め、ライバルと公言している。乃愛とは恋人同士。女性関係についてあまり誠実とはいえない男性だが、工芸の技術には教授からも一目置かれている。過去に大きな秘密を持っている。
乃愛 (のあ)
相模美術大学の工芸科1年生で、朝比奈茜の後輩。入学後すぐのコンパで祖父江亮に告白し、恋人になった。外見は可愛いものの、茜へのライバル心をむき出しにしており、茜をおとしめようと企むなど表裏のある性格。茜の秘密にいち早く感づいたが、茜を挑発し大姫にも嫌われたため、刻溜まりに閉じ込められる。
堤 律子 (つつみ りつこ)
相模美術大学の工芸科4年生で朝比奈茜の先輩。面倒見が良くしっかりした性格。茜が祖父江亮に片思いしていることを知っており、茜を心配している。そのため、合コンを設定し従姉弟の大倉久遠を紹介する。
大倉 久遠 (おおくら くおん)
杏命館大学の4年生で堤律子の従姉弟。律子が朝比奈茜のために設定した合コンで出会ったが、実は茜のことは以前から知っており気に入っていた。茜が祖父江亮を好きなことを知っているが、ストレートに茜に好意を示す。
場所
刻溜まり (ときだまり)
時の狭間にある、時間が止まって刻が淀んで溜まった空間。現実(うつつ)とは異なる世界。刻溜まりは複数存在し、1人の主が1つの刻溜まりを支配している。それぞれの主は他の主の空間に干渉しない。刻溜まりを通って現実の世界に出ると、自分以外の時間が止まった状態になる。
その他キーワード
銅鏡 (どうきょう)
大姫が朝比奈茜に渡した古い銅の鏡。本来なら刻溜まりの世界には鏡塚があった場所からしか入ることができないが、この銅鏡を使えば、どこからでも刻溜まりに入れて、好きなところに出てくることができるようになる。1つの刻溜まりに1つの銅鏡が存在し、それぞれ刻溜まりの主が銅鏡を守っている。また、他の者が「姉妹鏡」と呼ばれる別の銅鏡を使って刻溜まりを通る時、それを感知してこの銅鏡が震える。