半沢直樹

半沢直樹

池井戸潤の小説「半沢直樹」シリーズの『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』と『半沢直樹2 オレたち花のバブル組』のコミカライズ作品。東京中央銀行の銀行員・半沢直樹が、内外の人間や組織からの圧力・逆境に対し、葛藤と苦悩を繰り返しながら戦っていく姿を描いた企業エンターテインメント。「モーニング」2020年9号から2021年9月号にかけて掲載された作品。2013年7月に原作小説版がテレビドラマ化。

正式名称
半沢直樹
ふりがな
はんざわなおき
原作者
池井戸 潤
漫画
ジャンル
経済・金融
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊5巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

俺たちバブル入行組

大志を抱いてバンカーとなった半沢直樹は、バブル経済末期に銀行に入行したいわゆる「バブル入行組」だった。そんな直樹は東京中央銀行大阪西支店の融資課長となり、行内では業務の中心的役割を担うほどの立場に成長していた。ある日、支店長の浅野匡から強引な指示を受けた直樹は、西大阪スチールという会社から、5億円の融資契約を取り付けることになった。しかし、陰で莫大な負債を抱えて粉飾決算を行っていた西大阪スチールは、融資から数か月後にあえなく倒産。この結果、東京中央銀行は融資した5億円を、すべて騙し取られることになってしまう。出世に執念を燃やす匡は、自らが命じた融資のミスの責任を、部下である直樹一人にすべて押しつけようと画策し、常務の大和田暁にまで根回しを始める。醜い保身に走る匡を横目に、直樹は巨額債権を回収する術を探り続ける。融資失敗の責任を問われて東京本店からの聞き取り調査に出席した直樹は、彼に全責任を負わせようとする上司たちに真っ向から反発し、騙し取られた5億円を取り戻してみせると宣言。こうして、「やられたら倍返し」を信条とする直樹による、痛快リベンジ劇が幕を開けるのだった。さっそく債権回収のために動き出した直樹は、西大阪スチールの倒産に巻き込まれた零細企業の人々と手を組みながら元・社長である東田満を追っていくが、その途中で彼が現金をまだ隠し持っていることが判明する。直樹たちと同様に満の脱税を疑う大阪国税局や匡たちによる妨害工作が続く中で、満を追い続ける直樹のもとには、予告なしの裁量臨店が行われるという報せが入る。

裁量臨店

自分と東京中央銀行の命運を賭けて巨額の債権回収に動いていた半沢直樹は、西大阪スチールの社長だった東田満を追う中で、残された資料から同社の倒産が計画倒産であった可能性に気づく。さらに直樹は、西大阪スチール倒産のせいで連鎖倒産を余儀なくされた竹下金属の社長だった竹下清彦の協力を得て試行錯誤した末に、満が時価5千万円の別荘を海外に所有していることを突き止める。失敗の責任を直樹に押し付けた支店長の浅野匡のもくろみでいきなり始まった裁量臨店で大幅な足止めを食らいながらも、直樹は満の行方を追い続ける。その途中、手を組んで共に満を追っている仲間の一人・板橋が、満から差し向けられたスパイであったことが判明するものの、先に手を打っていた直樹の作戦によって板橋の企みを打ち破ることに成功する。満の隠れ家の持ち主である資産家・小村武彦のもとへ熱心に面会に向かい、信頼できる同僚の渡真利忍の協力も借りながら、わずかな情報をもとに満の資産差し押さえを狙う直樹だったが、満を追っているのは直樹たちだけではなかった。かつて一銀行を破綻にまで追い込んだ国税局査察部の黒崎駿一も満の脱税を疑い、彼が隠し持つ財産を狙って、早くから動き出していたのだ。直樹とほぼ同時に満の別荘の存在に気づいた駿一と直樹のあいだでは、資産差し押さえを巡って激しい攻防が繰り広げられることとなる。駿一に先を越されないように急ぐ直樹は、愛人と共に姿を消したままの満の行方を求めて奔走する。そんな中で直樹の携帯電話には、満がある人物と会っている時の写真が、清彦から送られてくる。

10倍返し

融資失敗で焦げ付いた5億円の回収に乗り出した半沢直樹だったが、東田満が海外に持つ別荘は差し押さえ寸前で、大阪国税局の黒崎駿一に横取りされる結果となってしまう。直樹は融資失敗情報のリークと引き換えに満の潜伏先をつき止めたが、満が浅野匡といっしょに写真に写っていたことが判明し、直樹を苦しめてきた二人が手を組んでいたという重大な疑惑が浮上する。調べていくと満と匡は学生時代からの友人だったという過去も判明するが、これだけでは現在も手を組んでいる証拠にはつながらない。直樹は仲間たちと協力しながら、匡が満からなんらかの見返りを得ている証拠を探しつつ、偽のメールアドレスからメールを送ることで、匡に揺さぶりをかけていく。すべてが最初から仕組まれたものだったと悟った直樹は、仲間と策を練って金の流れをつかみ、満と匡の金のやり取りに関係している満の愛人・藤沢未樹に会って、満の隠し財産について聞き出そうとする。なかなか口を割らない未樹だったが、彼女がネイルサロンの開店を目指していることを見逃さなかった直樹は、東京中央銀行の創業支援融資を受けることを未樹に提案。未樹は迷いながらも直樹の提案を受け入れ、直樹は満と匡を追い詰めるべく、本格的な反撃の手を打ち始める。そんな中、未樹に接触を図っていた駿一の魔手が、またしても直樹たちの動きを妨害しようとしていた。さらには匡が裏で進めていた直樹の東南アジアへの出向が決定し、彼の部下たちも出席する会議にて内示を言い渡される。たとえ出向が決まっていたとしても直前まであきらめないと言い張る直樹は、最後の抵抗を開始する。

大きな影

5億円の回収を成功させて出向も免れた半沢直樹は、大阪西支店から精鋭ぞろいの営業本部・第二部次長へ栄転していた。順調にキャリアを積み上げていた直樹はある日、株運用失敗で120億円の損失を出した大口融資先「伊勢島ホテル」の再建を命じられていた。伊勢島ホテルに対して連続的な赤字の中で200億円もの融資をしていたが、金融庁検査で伊勢島ホテルが「破綻懸念先」と判断されれば、数千億円もの引当金を準備しなければならなくなり、直樹どころか東京中央銀行全体の業績悪化や株価暴落も免れないという状況だった。大阪で回収不能と思われていた5億円を回収できた直樹にとっても、120億円の回収と経営の建て直しは次元の違う難題であった。そんな重大案件の次の担当に直樹を指名したのは、彼を信頼する頭取の中野渡謙であった。直樹は金融庁に復帰して主任検査官に就任したばかりの黒崎駿一の粗探し同然の検査に備えながら、赤字状態の伊勢島ホテルへ融資を続けた当時の担当者へ疑念を向ける。調査を進める直樹は、伊勢島ホテルのサブバンクである白水銀行が、伊勢島ホテルの運用失敗を見抜いていたという情報を得る。しかし、当時の担当だった京橋支店の古里則夫は、直樹に尋ねられても知らなかったと言い張る。さらに今回の案件は、伊勢島ホテルの羽根夏彦専務をはじめ、それぞれの立場の人間のさまざまな思惑が絡んでおり、スムーズに事態の収拾を図るのは困難であった。欲望うごめくメガバンクでの派閥争いに再び巻き込まれながらも、直樹は新たな戦いに敢然と立ち向かっていく。一方、子会社のタミヤ電機に出向してしばらく経っていた近藤直弼にも思わぬ難題が立ちはだかり、出向先での陰湿ないじめに加え、四面楚歌も同然の状況が彼を悩ませていた。

運命の二択

巨額損失を出した一族経営の老舗ホテル「伊勢島ホテル」の再建を命じられた半沢直樹は、東京中央銀行内部の敵の暗躍や金融庁の検査など、問題・課題が山積みな状況で、絶対に負けられない戦いの中で奮闘を続けていた。今回の金融庁検査を率いるのは、かつて西大阪スチールの事件で直樹と凌ぎを削った黒崎駿一であった。伊勢島ホテルの救済を進めながら、東京中央銀行が金融庁検査で巨額の引当金を積む事態を避けるためには、伊勢島ホテルの聖域ともいわれてきた資産に踏み込む必要があった。そのことを湯浅威に進言する直樹だったが、実現のためには威と対立する羽根夏彦の圧力や、夏彦を新社長にしようともくろむ人物にも対抗する必要があった。威を説得して彼の父親であり先代社長でもある会長の更迭、そして会長の抱える資産の売却を果たした直樹は、これで120億円の穴埋めができ、検査も乗り越えられると考えていた。しかし直樹は、再建の支柱ともなる提携先のナルセンが破綻するという予想外の情報を、駿一から聞かされる。ナルセンの破綻は110億円以上もの投資が泡と消え、伊勢島ホテルが再度ピンチになることを意味していた。この状況を重く見た常務の大和田暁は、次の金融庁検査で失敗すれば出向させると、直樹にさらなる追い打ちをかけてくる。検査が近づく中で追い詰められた直樹は、ある秘策を用意しながら威を説得し、銀行員の誇りと東京中央銀行の命運を左右する最後の戦いに備える。一方、出向先であるタミヤ電機の不正の疑いを調査し続ける近藤直弼は、タミヤ電機が別の会社に無断で貸し付けていた転貸資金である3千万円の行方を追っていた。タミヤ電機を隠れ蓑にして転貸融資を受けていたアパレル会社は、暁の妻が経営する会社だった。直弼からそれらの情報を聞いた直樹は、暁を追い込むための証拠を求め、社長の田宮基紀を問い詰めるように依頼する。

関連作品

小説

本作『半沢直樹』は、池井戸潤の小説「半沢直樹」シリーズの『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』と『半沢直樹2 オレたち花のバブル組』を原作としている。原作小説版は講談社「講談社文庫」から刊行されている。

メディア化

テレビドラマ

2013年7月から9月にかけて、本作『半沢直樹』の原作小説版「半沢直樹」シリーズの『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』と『半沢直樹2 オレたち花のバブル組』を基にしたテレビドラマ『半沢直樹』が、TBS系列で放送された。脚本は八津弘幸が務めている。キャストは、半沢直樹を堺雅人、渡真利忍を及川光博、半沢花を上戸彩が演じている。2020年7月からは続編も放送された。

登場人物・キャラクター

半沢 直樹 (はんざわ なおき)

東京中央銀行大阪西支店の融資課長を務める男性。のちに営業本部・第二部次長となる。旧産業中央銀行出身。慶應義塾大学卒業後、バブル末期に入行したいわゆる「バブル入行組」の一人ながら、優秀な銀行員。融資先とは真正面から向き合い、それがどんな小さな会社でも社長や社員が信頼できる相手と見れば、再建のために全力でサポートする。実直な性格から一部の上司から快く思われないことも多く、特に旧東京第一銀行出身者からは目の敵にされることが多い。基本は性善説を信じながらも、やられたらやり返すこと、やり返す時は「倍返し」にすることを流儀としている。無責任な人物のせいで被害を被った際は、責任の所在を明らかにすることを重視し、責任逃れをしようとする相手には上司であろうと厳しく追及・糾弾し、時には冷徹な手段で追い込む。一方で自らに直接の非がなくても、銀行側に責任があると認識した際はすぐに相手先に謝罪する。部下や同僚、同期の仲間には優しく寛大に接し、自分がピンチのときでも仲間への気遣いを忘れず、部下をむやみに責めたり咎めたりすることもしない。これらの誠実さや勇猛さから、周囲からの信頼は非常に厚い。観察眼や洞察力に優れ、わずかな一言や見た光景を忘れず、それらから重大な情報を導き出しており、上司はもちろん国税局すらも出し抜くこともある。また、かつてネジ工場を営んでいた父親のもとで育ったことから、他人の技術力を正確に見抜くことができる。大阪西支店で融資課長をしていた頃、浅野匡から融資失敗の責任を押し付けられて5億円の債権回収のために奔走。その中で匡の不正をつき止め、みごと5億円を回収して精鋭ぞろいで知られる営業本部・第二部次長へと栄転を果たす。しかし、栄転の1年後には巨額損失を出した伊勢島ホテルの再建を命じられ、120億円の穴埋めと再建を目指しつつ、厳しい金融庁検査を乗り切るという難題に挑むことになる。

渡真利 忍 (とまり しのぶ)

東京中央銀行本部・融資部審査グループ調査役を務める男性。眼鏡をかけている。旧産業中央銀行出身で、慶應義塾大学卒業後、バブル末期に入行したいわゆる「バブル入行組」の一人。半沢直樹とは同じ大学に通っていた学生時代からの友人であるとともに、仲のいい同期でもある。入行時は、プロジェクト・ファイナンスを志望していた。情報と人事こそ銀行員にとって命という信条を持ち、この信条どおり自らの豊富な人脈と情報網を生かして、すばやく的確な情報収集を得意としている。特に大和田暁に従順な「大和田派」と呼ばれている派閥について調べ上げては、直樹や近藤直弼を何度もサポートしている。昔から顔が広く、多くの友人がいる。以前はクールな性格で整然とした言動が多かったが、直樹の栄転後は直接会う機会や彼に協力することも多くなり、かつての情熱が再燃しつつある。直樹の誠実な姿勢を応援しつつも、困難に立たされたり上司と対立したりしがちな彼を心配している。実はかなりの焼肉奉行で、ラーメンにも造詣が深い。

半沢 花 (はんざわ はな)

半沢直樹の妻。夫の直樹と息子の隆博と共に、マンションで三人暮らしをしている。元は広告代理店に勤務していたが、現在はフラワーアレンジメントに転職している。茶髪のセミロングヘアで、明るく聡明で芯の強い性格をしている。夫の直樹に不満をぶつけることもあるが、過酷な状況に立たされがちな彼の仕事にも理解を示し、陰で優しく支えている良妻賢母である。さりげない言動や行動によって直樹をサポートしたり、ヒントを与えたりすることもある。

近藤 直弼 (こんどう なおすけ)

東京中央銀行大阪事務所システム部分室調査役を務める男性。旧産業中央銀行出身で、入行当時は広報部を希望していた。バブル末期に入行したいわゆる「バブル入行組」の一人で、同期の半沢直樹や渡真利忍とは仲がいい。家族は妻と息子がいる。秋葉原東口支店課長代理をしていた頃に、当時の支店長から極度なノルマを強いられるうちに病気になり、1年ほど休職していた。復帰後に大阪事務所システム部分室調査役を務めていたが、辞令で子会社のタミヤ電機に出向させられる。出向先では経理部長を務めるが、銀行員を快く思っていない田宮基紀や経理課長から、陰湿な嫌がらせを受けていた。このため再びやる気をなくしかけていたが、伊勢島ホテル再建に奔走する直樹の勇姿や言葉に励まされ、本来の自分を取り戻していく。しかしタミヤ電機が、粉飾決算や転貸融資などの不正を働いていたことに気づき、基紀たちと対立する羽目になる。渡真利忍と同様に、ラーメンや焼肉などのグルメに造詣が深い。

浅野 匡 (あさの ただす)

東京中央銀行の大阪西支店の支店長を務める中年男性。旧東京第一銀行出身。家族は妻のほか、娘と息子がいる。元は本部の人事部部長代理を長く務めていたベテラン。しかし現在の支店長という地位に不満を抱いており、不機嫌になりがち。自分のミスは部下のミス、部下の手柄は自分の手柄というのを信条に、自分にとことん甘く他人には厳しいタイプ。すべて責任を取ると言いながら、部下の半沢直樹に西大阪スチールの無理な融資を命じたが、いざ西大阪スチールが倒産すると融資ミスの責任をすべて直樹に押し付けるなど保身に走る。5億円回収に乗り出した直樹に対して、何かと妨害を仕掛けて邪魔をするようになり、予告なしの裁量臨店を開始するなど執拗な足止めまでしていた。さらに、直樹が5億円回収に失敗した暁には、責任を負わせて彼が出向させられるように仕向けていた。実は東田満の中学時代の友人であり、株で失敗したことから小遣い稼ぎのつもりで、5億円融資のあとに自己破産した満を助ける代わりに、見返りを約束されていた。しかし、宣言どおり5億円回収を果たした直樹に、裏で満と手を組んで不正を働いていたことがバレてしまい、ついには刑事告発されそうになる。だが、直樹と彼の部下を栄転させることを条件に告発は免れ、当初の約束どおり、彼に土下座しながら謝罪した。その後は、本来は直樹の出向先となる予定だった東南アジアに、彼の代わりに出向させられることになった。直樹をはじめとする部下に対しては冷徹で自分勝手だが、家族のことは大切にしている。

東田 満 (ひがしだ みつる)

西大阪スチールの社長を務める中年男性。大柄な体型で、粗暴でガラの悪い態度が目立つ。浅野匡の指示を受けた半沢直樹により、東京中央銀行大阪西支店の新規取引先として5億円の融資を受けたが、裏では莫大な赤字を粉飾決算で隠し続けており、数か月後に西大阪スチールはあっさり倒産した。その後は返済もしないまま愛人である藤沢未樹と行方をくらまし、逃亡先で毎日豪遊しながらのん気に暮らしているが、5億円回収に乗り出した直樹と脱税を疑った大阪国税局から追われることになる。表向きは自己破産したことにしているが、脱税分も含めれば総額12億円もの財産を隠し持っている。実は匡とは学生時代からの旧友であり、株で失敗した彼と久しぶりに会い、あることを提案した。豪快で男気があることから周囲に頼りにされることも多く、学生時代は「満タン」のあだ名で呼ばれていた。

竹下 清彦 (たけした きよひこ)

西大阪スチールの仕入れ先である竹下金属の元社長を務めていた中年男性。顎ヒゲを生やしている。ツナギを着用しており、ニット帽をかぶっている。西大阪スチール倒産によって連鎖倒産してしまい、逃亡した東田満を恨んでいる。当初は気力をなくし、銀行員も信用していなかったが半沢直樹に勇気づけられ、彼や同じく連鎖倒産を強いられた仲間と共に満の行方を追い、債権回収に奮闘する。満の潜伏先が判明したあとは、直接その場所に張り込んで満の動きを調査していた。昔から刑事ドラマにあこがれており、張り込みの際はパンを大量に買い込んでいた。

波野 吉弘 (なみの よしひろ)

西大阪スチールの経理課長を務める男性。気の小さい性格から東田満には逆らえず、彼の言いなりになって粉飾決算を行い、西大阪スチールの赤字をごまかしていた。当初は在庫調整による利益捻出だったが、のちに架空売上計上や固定費ごまかしなど、粉飾の規模はエスカレートしていった。西大阪スチールの倒産後は実家に戻り、家業を手伝っている。

黒崎 駿一 (くろさき しゅんいち)

大阪国税局査察部の統括官を務める男性。西大阪スチールの脱税を疑い、調査を担当する。オネエ口調で話し、ヒマがあれば爪の手入れをしている。軟弱に見えるが金融庁にいた元エリートで、過去に苛烈な検査でとある銀行を破綻に追い込んだことがある。これらの過去から銀行業界においては嫌われ者として知られると同時に、目的のためなら手段を選ばず時には卑劣な手段で人を追い詰める冷徹さを恐れられている。東田満の脱税を疑う中で、債権回収に乗り出した半沢直樹たちとぶつかることになる。直樹に先回りして満が海外に所有する別荘を差し押さえるものの、裏で藤沢未樹と交渉していた直樹の策略により、満の隠し持っていた財産の全回収は叶わなかった。のちに金融庁検査局に戻り、主任検査官を務めるようになった。西大阪スチールの脱税調査で先を越されたことを根に持ってリベンジの機会をうかがっており、東京中央銀行を対象とした金融庁検査で、再び直樹とぶつかることになる。余裕な態度や笑顔の裏では、直樹に猛烈な対抗心を抱いている。実は東京中央銀行のある人物の娘と婚約関係にあり、その人物から裏で情報を得ている。

小村 武彦 (こむら たけひこ)

大阪に住む資産家で、老齢の男性。東田満の妻である東田達子の叔父。かつては貿易会社の社長を務めていたが、体調悪化によって会社を畳み、現在は入院している。満が隠れ家に使っていたマンションの所有者であり、彼を追う半沢直樹たちにとっては重要な情報源となっていた。当初は面会を拒否していたが、直樹たちの熱意を受けて面会を許可した。しかし、過去の経験から銀行を信用しておらず、なかなか満について口を割らなかった。身内は長らく見舞いに来ていなかったが、容態が悪化した際に直樹の計らいで、娘や孫と久しぶりに再会を果たした。これ以降は直樹のことを気に入り、5億円回収を成功して栄転を果たした彼とその同僚たちに焼肉をおごっていた。

藤沢 未樹 (ふじさわ みき)

東田満の愛人で、大阪のクラブ「アルテミス」に勤めるホステスの女性。ロングヘアで気の強い性格の美女。西大阪スチールの倒産後、満と共に行方をくらまして彼と豪遊していた。実はネイルサロンの開業を目指しており、満に取り入っている理由にも関係している。満の隠し財産にも絡んでいるが、財産や満の行方について半沢直樹には口を割らなかった。しかし、ネイルサロン開業のために必要な資金の融資を東京中央銀行で受けるように直樹に提案され、証拠となる通帳を提供し、さらに国税局を出し抜くための彼の秘策にも協力する。

大和田 暁 (おおわだ あきら)

東京中央銀行の常務取締役を務める中年男性。旧産業中央銀行出身。史上最年少で常務に着任したエリート銀行員だが派閥意識が強く、大和田暁の派閥に属する者は「大和田派」と呼ばれ、ほかの派閥と対立することがある。現在の頭取である中野渡謙が原因で旧産業中央銀行出身者が出世できないと思い込み、彼を心底邪魔に思っている。西大阪スチールの件では5億円の回収に乗り出した半沢直樹に興味を持ち、その優れた手腕を見込んでかばうような動きや、自らの派閥に引き込もうとする言動を見せる。直樹が5億円回収を果たしたあとは、浅野匡の依頼で直樹とその部下たちを、東京本部へ栄転させる。しかし、伊勢島ホテル再建の件では、謙を失脚させて自らが頭取となる野望のために裏で羽根夏彦と手を組んでいたため、湯浅威と協力する直樹とはのちに敵対することになる。自らの息のかかった部下を使って伊勢島ホテルに不正融資を実行させ、東京中央銀行に巨額な損失を出すことで謙に重大な責任を負わせるように仕組んでいた。これらの不正を疑い始めた直樹の真っすぐな姿勢を見下すような態度を取ったため、彼と完全に敵対して全面対決が始まる。

小木曾 忠生 (おぎそ ただお)

東京中央銀行人事部次長を務める中年男性。旧東京第一銀行出身。浅野匡が人事部長だった頃の部下で、今でも彼の腰巾着である。陰湿で粘着質な性格で、眼鏡をかけている。手で机を叩きながら、相手をネチネチと叱りつける癖がある。匡の命令で、彼に反抗的な態度を取る半沢直樹に何かと嫌がらせをする。特に聞き取り調査や大阪西支店への裁量臨店では裏工作をしたうえで直樹を追い詰めようともくろむが、裁量臨店の途中で彼のカバンから書類を抜き取っていたことが知られてしまい、失敗に終わる。

垣内 努 (かきうち つとむ)

東京中央銀行大阪西支店の融資課課長代理を務める男性で、半沢直樹の部下の一人。以前は財務内容がしっかりした大会社を担当していたため、少々数字にうるさく中小企業相手でもやや厳しすぎるところがある。しかし財務を読む能力に優れ、実務面で抜群の腕を誇っている。西大阪スチールの件では、5億円回収に奮闘する直樹のことを徹底的にサポートする。

中野渡 謙 (なかのわたり けん)

東京中央銀行の頭取を務める中年男性。旧東京第一銀行出身。温厚な性格で、合併後も何かと対立しがちな東京中央銀行の派閥意識をなんとかまとめ上げようと努力している。半沢直樹の人柄や仕事ぶりに注目し、伊勢島ホテル再建の際には、湯浅威からの要望もあって新担当に直樹を指名した。

内藤 寛 (ないとう ひろし)

東京中央銀行本店第2営業部の部長を務める中年男性。旧産業中央銀行出身。人情があり、正義感にあふれる有能な人物。半沢直樹の人柄や性格を理解しているよき上司で、彼に信頼と期待を寄せている。上司に反発したり敵を作ったりしがちな直樹をなだめつつも、いつも彼の味方につき、守ろうとする。

時枝 孝弘 (ときえだ たかひろ)

東京中央銀行本部法人部企業金融グループの調査役を務める男性。旧東京第一銀行出身だが、半沢直樹たちとは同期に当たる。法人部の期待のエースとして活躍していたが、伊勢島ホテルの担当となる際に前任の古里則夫にはめられ、引き継ぎから3か月後に伊勢島ホテルの120億円の損失が明らかになる。その責任を擦り付けられる形で、名古屋の子会社へ出向させられる。後任となった直樹に、則夫にはめられた悔しさを吐露しながら、伊勢島ホテルの情報を教えた。

古里 則夫 (こざと のりお)

東京中央銀行京橋支店の課長代理を務める中年男性。旧東京第一銀行出身。小太りな体型でいつも笑みを浮かべて能天気そうに見えるが、笑顔の裏には腹黒い一面を抱えている。上司の顔色をうかがい、上から目線で話すことが多い。伊勢島ホテルの担当をしていたが、時枝孝弘へはすべての情報を教えず、派閥意識からまともな引き継ぎをしていなかった。また、タミヤ電機に出向した近藤直弼のことも見下し、難癖をつけて融資依頼を通さないなど嫌がらせをしていた。

羽根 夏彦 (はね なつひこ)

伊勢島ホテルの専務取締役を務める男性。株の運用失敗で120億円もの巨額損失を出した張本人だが、それを東京中央銀行に告発した戸越茂則を無理やり解雇した。伊勢島ホテルの古くからの一族経営やワンマン体質を快く思っておらず、同様の不満を抱える者たちに便乗するように湯浅威の失脚を狙い、自らが社長になろうともくろんでいる。このため、新たな担当となった半沢直樹には非協力的な態度を取る。

湯浅 威 (ゆあさ たけし)

伊勢島ホテルの社長を務める男性。経営不振に陥っているホテルを建て直そうと奮闘している。過去に別のホテルで修業していた際に、半沢直樹と出会っていた。この時から注目していた直樹のことを、中野渡謙を通して新担当に指名し、自らも再建計画を練りながら直樹に協力する。その中で大和田暁と羽根夏彦に苦しめられるが、直樹の提案で父親でもある会長の更迭、伊勢島ホテルの聖域と呼ばれてきた会長の資産の売却といった、大胆な手段で損失の穴埋めを進める。しかし、提携先であるナルセンの破綻を知って再び窮地に追い込まれ、直樹に提案された最終手段として、アメリカの大企業「フォスター」との業務提携を承諾し、フォスター資本の傘下に入ることや夏彦の更迭を決断した。

戸越 茂則 (とごし しげのり)

伊勢島ホテルの経理担当を務めていた中年男性。非常にまじめな性格で、心からホテルのことを思いながら働いている。しかし、120億円損失の件を内部告発したために、羽根夏彦によって解雇されてしまう。サブバンクである白水銀行とは異なり、大和田暁の指示を受けた古里則夫たちからは、告発の内容をもみ消されていた。このため東京中央銀行を恨んでおり、当初は半沢直樹のことも信用していなかったが、自分のことのように誠実に謝罪する直樹の姿勢や熱意に動かされて、彼に協力するようになる。直樹と共に則夫たちを追い込むことに成功し、最終的には湯浅威に要請した直樹のおかげで復職することができた。

田宮 基紀 (たみや もとき)

近藤直弼の出向先であるタミヤ電機の2代目代表取締役社長を務める男性。社長になる前は大手電機メーカーに勤めていた。無責任でいいかげんな性格で、直弼を元銀行員呼ばわりして小馬鹿にし、彼のことは銀行から融資を受けるためだけの存在としか思っていない。秘密主義の裏ではある人物と結託して不正を働いており、それらを察知した直弼によって裏帳簿の存在や粉飾決算の事実を知られてしまい、彼と敵対することになる。

場所

東京中央銀行 (とうきょうちゅうおうぎんこう)

半沢直樹たちが勤務する、日本三大メガバンクの一つ。日本全国だけでなく海外にもいくつもの支店を展開している。直樹たちが入行した「産業中央銀行」と、不良債権を抱えていた「東京第一銀行」が合併する形で生まれた。合併から何年も経った現在でも、旧産業中央銀行出身者と旧東京第一銀行出身者の二つに大きく分かれた派閥のあいだで、出世や保身を巡って醜い派閥争いが起こっている。

西大阪スチール (にしおおさかすちーる)

東京中央銀行大阪西支店の新規取引先となった大阪の中堅企業。東田満が社長を務めており、これまでは関西シティ銀行以外とは取り引きしてこなかった。オフィスでの喫煙や雑談、電話を誰も取らない、社員の態度が悪いといった粗が目立ち、浅野匡の命令を受けて訪問した半沢直樹からも、優良企業という印象は持たれていなかった。のちに直樹を通して5億円の融資を東京中央銀行から受けていたが、裏では莫大な赤字を抱えており、粉飾決算にも手を出していた。融資を受けた数か月後には倒産し、満は返済もしないまま姿をくらました。

伊勢島ホテル (いせしまほてる)

東京中央銀行東京本部の大口融資先であるホテル。創業100年を超えている一族経営のワンマン大企業であり、現在は湯浅威が社長を務めている。しかし、ここ何年かは業績が低迷しており、さらには東京中央銀行から200億円の融資を受けたあとに、株の運用失敗による120億円もの損失を出している。新しい担当を半沢直樹が務めることになるが、損失を出した張本人でもある専務取締役の羽根夏彦は、直樹に対して非協力的な態度で接している。

その他キーワード

裁量臨店 (さいりょうりんてん)

銀行の銀行内部監査の一種。本部融資部から審査セクションが直接赴き、支店による融資の与信判断が正しく行われているかをチェックする。検査終了後には講評によって現場との検討会なども行う。期間は3日間で、通常は開始前に2週間ほどの準備期間が設けられ、検査対象の企業はランダムで選ばれる。

クレジット

原作

池井戸 潤

構成

書誌情報

半沢直樹 5巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2020-04-09発行、 978-4065190784)

第2巻

(2020-06-23発行、 978-4065196199)

第3巻

(2020-08-20発行、 978-4065200490)

第4巻

(2020-11-20発行、 978-4065212929)

第5巻

(2021-03-23発行、 978-4065221143)

SHARE
EC
Amazon
logo