概要・あらすじ
再犯専門の少年更生施設に送られた小仲居道男(ミチオ)。ミチオは身体も気も弱く、緊張すると下痢便を漏らす体質だった。新たな施設「希望の家」はレガッタ大会で1位になれば施設を出ることができるという、変わった施設だった。そこで同じ日に施設に送られ、同じ班になった田島岳人、宇佐田正明ら9人と共に、ミチオはレガッタ大会での1位を目指す。
登場人物・キャラクター
小仲居 道男 (こなかい みちお)
万引きと施設脱走を繰り返し、青年更生施設「希望の家」に移送され、13班のメンバーとなった。小柄で気が小さく、緊張すると下痢便を漏らしてしまうため何をしてもうまくいかず、自宅で曾祖母の介護をしていた。ある日、介護用紙オムツを万引きして捕まってしまう。下痢便をするから、万引きもしてしまったと、どこかで自分の罪を正当化している。
田島 岳人 (たじま がくと)
13班のメンバー。18歳で元野球部のエースで四番。甲子園一歩手前までいくが羽目をはずし、飲酒喫煙で出場停止になる。それからは町中で陰口を叩かれ、行き場をなくす。その時に声をかけてくれた中学の先輩に誘われクスリに手を出してしまう。明るくリーダーシップがあり、13班を引っ張っていく。
宇佐田 正明 (うさだ まさあき)
13班のメンバー。19歳で妻帯者。妻はよし子、長男は翔。長めの髪を染め、お調子者で軽い性格。自分の子供に暴力を振い、虐待の罪で服役している。田島岳人がリーダーシップを取ることが気に入らず、脱走を企てるが失敗する。権田原剛に子供を殴ったことを責められ、自分がどれほど罪深いことをしたかに気付く。
権田原 剛 (ごんだわら つよし)
13班のメンバーで19歳。身体が大きく無口で、常に壁を叩いている。コブシを打ちつけているのは、ひたすらコブシを叩くことで、表面をガチガチに鍛えるという鍛え方「コブシ道」のため。己のコブシだけを信じている。最初は小仲居道男の食事を奪ったり練習に参加しなかったり、反抗的な態度だった。母親に捨てられた過去があり、子供を虐待した宇佐田正明を責める。
吉原 順基 (よしはら じゅんき)
13班のメンバーで17歳。出家し頭を丸めている。頭が良く、レガッタの構造やレース展開を分析して皆を勝利に導く役割のコックス席に座る。何かに喜びを見出してはいけないと自制しているが、レガッタ競技や仲間との連帯感に喜びを見出してしまう。進学校に通っていたが、母親に暴力を振るう父親を刺殺してしまった「進学校殺人事件」の当事者。
持田 (もちだ)
13班のメンバーで、髪をトサカのように立てている。傷害で服役していたが、宇佐田正明、角田と一緒に脱走を試みて失敗する。脱走に失敗してからは角田と一緒に皆に詫びを入れ、真面目に練習に参加するようになる。定例レガッタ大会であと少しでゴールの時に後ろを振り向いてしまい、全員がバランスを崩す事態に。実家はサクランボやラ・フランスを作っている持田果樹園。
角田 (かどた)
13班のメンバーで、角刈りで大きな目が特徴。結婚して子供もいる宇佐田正明を尊敬し、持田と一緒に脱走を試みて失敗する。脱走に失敗してからは持田と一緒に皆に詫びを入れ、真面目に練習に参加するようになる。持田には連帯感を覚えているようで、定例レガッタ大会でミスを犯した彼に同情し、かばうこともあった。出所後は、持田の農家で働くことを希望している。
境井、鈴木 (さかい、すずき)
13班のメンバー。鈴木は吉原順基の隣町に住んでいたことで「進学校殺人事件」を知っていた。ビチグソ号の成績が良くて、いよいよ施設を出られる目処が立ってくると、出ても行くあてがないことに気付いて2人共に不安になる。
平沢 (ひらさわ)
13班の担当教務官。眼鏡をかけた無愛想な親父で、口が悪くメンバーに対しても厳しく指導する。権田原剛が練習に参加しないため、小仲居道男(ミチオ)が剛をメンバーから外すように頼んだ際、メンバーは変えないと怒鳴った。だが、後に中心メンバーであった田島岳人が別施設に異動になってしまったことで、「メンバーは変えないはずではなかったのか」とミチオに責められる。
井上 悟史 (いのうえ さとし)
第6班「グリーンエンペラー号」のリーダー。日焼けした肌が精悍で、その筋肉質な身体は小仲居道男(ミチオ)たち新人に羨望の眼差しで見られていた。ミチオに過去の自分を重ね合わせ、練習の仕方を教えたり、自分が出て行ったあとは自分のボートを譲るなど何かと目をかけてくれた存在。
先輩 (せんぱい)
田島岳人(ガクト)の中学の先輩。かつて野球に打ち込みながら挫折してしまい、同じように堕落してゆくガクトを見て自分を安心させるために、彼にクスリを勧める。最後はガイコツの様にやせ細り、鏡に映った自分と会話するようになる。その姿を見たガクトは怖くなり、そのまま交番に自首する。
あきらめた奴ら (あきらめたやつら)
青年更生施設「希望の家」に移送されたが、ボートを漕ぐのがつらくてレガッタを諦めた連中。常に木の下でぼんやりしている。皆太っていて、無気力で施設の事情に詳しく、施設のできた経緯などを教えてくれる。死ぬまでここにいると話し、小仲居道男と田島岳人をぞっとさせる。
八木沢 乙葉 (やぎさわ おとは)
八木沢青果店の娘で高校生。青年更生施設「希望の家」に父親が定期的に野菜を届けているが、父の怪我で代わりに配達をする。その際道に迷い、野グソをしていた小仲居道男(ミチオ)と出会った。明るく元気な八木沢乙葉に気後れしたミチオは、高校のボート部の合宿と嘘をついてしまった。
場所
希望の家 (きぼうのいえ)
再犯専門の青少年更生施設。他の更生施設で成果の見えなかった青少年を更生させるための施設で、9人1組でレガッタ(ボート競争)を行い、1位になった班は刑期に関係なく施設を出ることができる。非行少年の更生にはボートがいいという理由でバブルの頃に作られた。
その他キーワード
ビチグソ号 (びちぐそごう)
13班のボートの名前。小仲居道男が下痢便を漏らしまくるので、田島岳人がこの名前を付けた。ボートのメンバーは13班の9人。他の班はもっとかっこいい名前を付けていたので、勢いでこんな名前にしたことを持田や角田は不満に思っている。
グリーンエンペラー号 (ぐりーんえんぺらーごう)
6班のボートの名前。メンバーは井上悟史 を中心に、今井、田辺、三田、岸など。ボート名を知らなかった田島岳人に服装が緑のシマだったことから「緑シマシマ」と呼ばれていた。「希望の家」からは3年前に1艇出所しただけで、グリーンエンペラーが記念すべき出所2艇目となった。