あらすじ
ボウリングは遊びじゃない
ある日、生活指導を担当する獅童のもとへ、畦道十華と仲栗小弓が夜遅くまで遊技場施設の周辺をうろついていたという情報が届けられる。その知らせを受け、獅童は二人のクラス担任の花又と放課後に遊技場施設の巡回に出向く。十華と小弓を同性カップルだと思っている花又は、人目につかない場所で二人は秘密の関係を育んでいると呑気に考えていたが、獅童は不良のたまり場と見なして施設内に足を踏み入れる。そこでは小弓が十華の羞恥心に慣れさせるため、十華の制服のスカートを折り曲げ、ミニスカ仕様に改造している最中だった。二人を発見した獅童は早速注意を始め、小弓はふつうにボウリングをしているだけだと弁解するが、獅童は制服を改造する意味がわからずに納得がいかない。二人はボウリングの練習のために来ていると説明するものの、獅童からはただの遊びだと切り捨てられる。さらに獅童は、不良の小弓が優等生の十華を連れ回してまでボウリングをする必要がないと説くが、これに対して十華は遊びで投げているわけでも、連れ回されているわけでもないと反論する。頭ごなしにボウリングを否定する獅童に対して小弓は、自分たち二人と教師二人のチームで対戦して、勝てば黙認、負ければ卒業までボウリング場へ立ち入らないことと、髪色と服装を校則どおりにするという条件での勝負を提案。ボウリング場の出入りのみならず、何度注意しても一向に直す様子のない小弓の派手な服装と金髪を直すチャンスだと考えた獅童は、この提案を快諾する。素人二人相手など楽勝だと高をくくっていた小弓だったが、十華が男性の前ではまともにボールを投げられないことを思い出し、実質小弓一人で二人を相手にしなければならないピンチに陥る。一方、ボウリングなど簡単な遊びだと舐めて勝負を受けた獅童にはボウリング経験がまったくなく、今回が人生で初のボウリングだと知った花又も不安を感じていた。両チームとも足手まといのパートナーを抱えた状態で、校則を賭けたチーム戦が開始される。
持て余す小弓
畦道十華と仲栗小弓のコーチとして石動一石が戻ってくることになり、小弓はこれまで二人だけでボウリングをしていた空間に邪魔者が入ることに気分を害していた。しかも男性が苦手な十華から石動への肯定的な言葉を聞き、つい小弓は十華をいやらしい目で見ていると告白する。すぐに冗談としてごまかした小弓だったが、幼い頃からいっしょだった十華はいつもの冗談との違和感をすぐに感じ取る。翌日、小弓は昨日の自分の言葉を思い出し、意識すればするほど十華を性的な目で見てしまっている自分自身に気づく。小弓は、性的に見られることを極端に嫌う十華から嫌われることを恐れ、自分の感情と折り合いをつけようと悶々とした気持ちで一日を過ごす。十華は昨日から様子がおかしい小弓を心配するが、原因が自分自身にあるとは露とも思っていなかった。そして放課後、二人は花又からボウリング同好会を始動させようと提案される。乗り気な十華と対照的に、小弓は浮かない表情で気のない受け答えをする。以前、十華が畦道叶から、ボウリングを続けたいならプロになることを条件に出されていたため、花又は十華が本気でプロを目指すことを考えていると理解して激励する。十華は子供の頃、プロを目指すきっかけを与えてくれたのが石動だったと嬉しそうに語るが、十華の石動への賞賛に耐えられなくなった小弓は、今日のボウリングはパスすると言い残し、教室から出て行ってしまう。訳がわからず困惑する十華を残し、二人のあいだに自分が入るべきではなかったと後悔しながら花又は小弓を追いかける。花又は小弓に追いつき、同好会活動が嫌なら参加しなくてもいいが、十華と小弓で続けてきたボウリングを嫌いになるのはやめてほしいと懇願する。すると小弓は涙を流しながら、花又は関係ないと告げ、自分自身の感情をうまくコントロールできないと打ち明ける。
PINリーグ
畦道十華と畦道叶は自宅で、叶が女子プロボウリングトーナメント「PINリーグ」の決勝進出を決めた瞬間の録画映像を見ていた。画面の中の凛とした叶とは人が変わったように、ビール片手に十華に家事すべてを任せっきりの叶はまるで子供のようだった。家ではだらしない生活態度の叶に、日頃から鬱憤が溜まっていた十華は、叶にボウリングしてるだけでお金を稼げて楽だと言ってしまう。その一言が叶の心に火をつけ、決勝戦は仲栗小弓も連れて観戦に来るようにと十華に言いつける。決勝戦当日、叶、十華、小弓の三人は川崎のボウリング場に来ていた。叶から、この施設は十華と小弓が目指す高校の全国大会の場所でもあり、プロを目指すなら通過点でもあり目標点でもあると説明される。レーンに向かうまで十華と小弓は、叶からボウリングはメンタルが特に必要で対戦相手からのプレッシャーもプレーに影響すると心構えを説かれる。そこへアイドルプロボウラーの最上愛己が叶に声をかける。本物の人気有名プロに会えて目を輝かせる十華を一瞥(いちべつ)もせず、最上は叶に化粧の濃さを指摘し、オバさん扱いしながら嫌みを連発する。十華と小弓は突然の愛己の口撃に啞然とするが、叶は不敵な笑みを浮かべながら、最上の嫌みに平然と対応する。雑誌やメディアでの最上のキャラとあまりにもかけ離れたやり取りを目の当たりにした十華は、声に出す勇気はなかったが心の中で叶を応援する。そしてついに選手入場となり、アイドル然とした衣装に身を包んだ最上は、観客に愛想を振り撒きながら笑顔で登場する。続いて叶が入場し、美貌と色気で最前列の男性客の心を奪うが、その光景を無表情で舌打ちしながら最上は見つめていた。続いて三人目の決勝進出者は「音無静」という影の薄い女性だった。それぞれの簡単なインタビューを終え、決勝戦が開始される。叶の第一投は不運にも7−10の「スネークアイ」と呼ばれるスペア率0.7パーセントの超高難易度のスプリットになってしまう。しかし、叶はボールを10ピンに当て、弾き飛ばしたピンを7ピンに当ててスペアを取り、1フレーム目からの神技に会場が沸き立つ。続いて最上は、ボールを取る際にカメラの前でわざとパンチラを披露し、ぶりっ子キャラでカメラマンに編集でカットしてねと、かわいくお願いする。男性観客がパンチラ映像を期待する中、十華と小弓は呆れて何の言葉も出てこない。スカートを押さえながら片手でボールを投げた最上の第一投は、不自然な軌道を描きながら1-2ピン間を直撃してストライクとなる。難易度の高い逆回転の軌道を描く「バックアップ」を目の当たりにした会場はさらに盛り上がる。その後も最上と叶の挑発合戦は試合終了まで続き、日本最強の女子ボウラーを決める戦いは激しさを増していく。
公式戦
畦道十華と仲栗小弓は、ボウリング同好会の活動の一環としてアマチュアの大会に出場することとなり、石動一石に連れられて大会の会場に来ていた。石動は十華が人前で投げる練習に丁度いい程度に考えていたが、この大会で優勝したら、優勝者の願いを一つ聞くという副賞のために十華と小弓は燃えていた。煩悩丸出しの願いを叶えようとしていることが幸いして二人の緊張感は抜け、リラックスしたコンディションを維持していた。特に先日、酔った石動から好きだと言われた十華の顔は緩みっぱなしだった。会場に入るや否や、石動はファンに囲まれてしまい、早々に二人とは別行動となってしまう。そして、受付に向かう十華は闘志をむき出しにした鉢窪乙巴から声をかけられる。しかし十華は鉢窪をまったく覚えておらず、覚えているふりと愛想笑いでその場を乗り切ろうとする。その思惑も虚しく、小弓からのツッコミで鉢窪にも十華が覚えていなかったことを知られてしまい、恥ずかしさと怒りから鉢窪は二人のもとから去っていく。受付の名簿を見て名前を確認した十華は、小学生時代に自らが優勝した大会で準優勝した小弓に次いで3位だった女の子が鉢窪だったと思い出し、鉢窪を捜して謝罪する。十華は顔は覚えていなかったが、鉢窪のスコアは覚えており、それが真剣にボウリングに取り組んでいる鉢窪にとっては何より嬉しいことだった。仲直りした鉢窪と十華が談笑する中、小弓が二人に話しかけようとするものの、小弓の言葉に被せて鉢窪が発言して無視してしまう。無視された小弓は、鉢窪が話す横から奇声を発しながらガンを飛ばして中指を立てる。すると鉢窪が小弓に、偏差値が下がりそうなので話しかけないでほしいと言い放ち、二人は言い争いになる。二人の言動に驚く十華だったが、鉢窪が読んでいたボウリングの本に貼られた付箋の数を見て、鉢窪のボウリングに対する姿勢に感心する。鉢窪が投球練習でレーンに立つが、小弓は過去に自分より成績の悪かった鉢窪に興味を示さない。しかし、鉢窪の投球を目の当たりにした小弓と十華は、洗練されたフォームの美しさに驚愕する。一方の十華は投球練習で、男性の視線を気にしてぶざまな投球を晒してしまう。鉢窪はずっと目標にしてきた十華のその投球に失望し、罵倒する。そして小弓から十華のスランプの原因が胸による羞恥心であると語られるものの、貧乳にコンプレックスを持っている鉢窪は激昂し、小弓に敵意を向ける。言い返そうとする小弓を十華は諫め、自分との再戦を楽しみにしていた鉢窪の思いを受け、集中力を高めていく。
夏合宿
夏休みに入った畦道十華と仲栗小弓は、畦道叶の計らいで最上愛己が主催するプロアマ合同の2泊3日の強化合宿に参加していた。車酔いする小弓は、バスの中でアイドル然としたMCを務めるアラサーの最上を見てさらに気持ちが悪くなる。休憩のために停まったサービスエリアで、十華と小弓が風に当たっていると、そこに最上が現れる。最上の素のキャラを知っている十華は、怯えながらも参加させてくれたお礼を伝える。最上は叶に無理やり二人を参加者としてねじ込まれたことを明かし、娘を前にして叶の文句を言い続ける。しかし今回は叶が強引に決めたことだったため、十華は心の中で謝ることしかできない。合宿場所に到着し、十華と小弓は設備の充実ぶりに驚いていると、不注意で丁嵐陵とぶつかってしまう。背の高い陵に見つめられ、十華は怯えるが、一方の陵は十華の胸の大きさに驚いていた。そんな中、早速レーンに移動してボウリングを練習することになった一行は、最上の仕切りで各々が練習を始める。すると十華と小弓のボックスに最上が現れ、石動一石が十華らのコーチとして復帰したという噂を二人に確認する。そして最上は陵を呼び、自分の教え子だと二人に紹介し、お互いのコーチの名誉を賭けた勝負を提案する。
マキナエボウル
先日、蒔苗真音が叶のボウリング場に遊びに来て以来、大手チェーンであるマキナエボウルがこの街に進出するという噂が広まっていた。仲栗小弓がクラスメートに確認すると、叶のボウリング場は存在すら認知されていなかった。女子プロ王者の畦道叶と人気若手プロの石動一石が所属しているとはいえ、大手チェーンが進出してくれば叶のボウリング場はすぐに潰されるのは目に見えていた。家業の危機を感じた叶は、マキナエボウル本社に出向いて交渉しようと意気込むが、マキナエボウルの社長・蒔苗真司が叶のボウリング場に現れた。応接室で叶と真司の話し合いが始まる中、ドアの隙間から小弓、畦道十華、石動の三人は中の様子をうかがう。叶は嫌がらせのようなことは止めてほしいと真司に食ってかかるものの、真司は実は叶の昔からの大ファンで、ボウリング場の経営をやめて叶にマキナエボウルの専属プロになってほしいと交渉を始める。しかし、その要求を叶はきっぱりと断る。すると、真司は本性をあらわにし、叶のボウリング場を潰して行き場のなくなった叶が自分と結婚するしかなくなるように追い詰め、マキナエボウルの専属プロとして働いてもらうと言い放つ。断固として拒否する叶に対して、真司はお互いの娘が出場する高校の全国大会で勝った方の要求を受け入れるのはどうかと提案する。叶が拒否したとしても、マキナエボウルが進出してくれば叶のボウリング場は潰されてしまうため、結局叶は真司の条件を受け入れることとなる。突然、家業と母親の未来を自分が背負うこととなり、天才ボウラーとして知られる蒔苗姉妹に勝つしかなくなった十華は、優勝するために一層の努力を決意する。また、小弓も大好きな場所である叶のボウリング場と、十華を真音から守るためにかつてないほどの闘志を燃やす。そして、叶が望まない結婚の危機がせまっていることに焦った石動は、長年の想いを叶に伝えてプロポーズする。一方の真司は、叶との結婚後の生活を夢想して上機嫌で日々を過ごしていた。真音の妹・蒔苗真礼は、父親と姉が無茶苦茶な要求を突きつけて試合をすることを知るが、久しぶりの真音とのダブルスを楽しみにしていた。それぞれの思惑が交錯する中、全国大会の日を迎える。
登場人物・キャラクター
畦道 十華 (あぜみち とうか)
七縞高校に通う1年生の女子。プロボウラーの畦道叶を母親に持つ。口元にホクロがあり、黒髪に眼鏡をかけた地味な印象ながら、とんでもない爆乳の持ち主で、男性から性的な目で見られることにコンプレックスを抱いている。父親を亡くしており、叶が家業のボウリング場を経営しているため、放課後や休日は受付などを手伝っているが、お客があまり来ないためにやることはほとんどない。田舎であるため、叶のボウリング場が市内唯一のボウリング場となっている。家業の存続にかかわるため、ボウリング業界の衰退を憂いている。幼少期から天才と評され、7歳から石動一石にコーチを受け、現在まで続けているボウリングの腕前はプロ顔負けのスコアを叩き出す。しかし、男性から自身の巨乳を性的な目で見られると、生来のあがり症から思うように体が動かなくなり、ガターを連発する。そのため、小学生時代はさまざまな大会を総なめにしていたが、小学6年生ですでに胸がEカップまで育ち、中学に上がってからは男性の目を気にして予選通過すらままならなくなった。現在は親友の仲栗小弓とお客のいない時間にひっそりと投げている。もともと内向的な性格で友達がおらず、石動が初めていっしょにボウリングをした友達となった。コーチの石動に対して、最初は年上の男性へのあこがれだったが、畦道十華が成長するにつれ、恋愛感情に変わっていく。自室に貼ってある石動のポスターに毎日キスをするのが日課で、小弓からは気持ち悪がられている。目立つことを嫌って自己主張が得意ではないが、小弓と叶にだけは強い物言いをする。まじめそうな見た目どおりの秀才で、家ではダラダラしている叶に代わって家事をこなすしっかり者である。体育は苦手で、走ると胸が揺れることで注目を浴びるうえに、長時間走ると乳の揺れによって胸部を痛めてしまう。しかし、十華の思いとは裏腹に、学校の男子からは十華と同じ時代に存在させてくれたことを神に感謝されるほどの人気を誇っている。小弓からは友達以上の感情を持たれており、はじめは同性愛に否定的だったが、小弓の真摯なアプローチによって同性愛に肯定的になっていく。実は6歳まで叶の乳を吸って自身のメンタルを落ち着かせていた過去があり、その経験に倣い、発情した小弓にも十華自身の乳を吸わせて落ち着かせている。
仲栗 小弓 (なかぐり こゆみ)
七縞高校に通う1年生の女子で、畦道十華の親友。胸のサイズはCカップで、スレンダーなスタイルを持つ。八重歯が特徴で、ボブカットの髪を金髪に染めて制服を着崩し、超ミニスカートでつねにセクシーな下着を身につ... 関連ページ:仲栗 小弓
畦道 叶 (あぜみち かなえ)
畦道十華の母親で、女子プロボウラーの頂点に君臨する女性。年齢は39歳。16歳の時に全国大会で優勝してプロデビューを果たし、数々のタイトルを獲得して「巨星」の二つ名で呼ばれている。茶髪のロングヘアで、年齢を感じさせない美貌と圧倒的なプレイスキルで人気を博している。十華と同じく爆乳だが、細身の体型で、ウエストも引き締まっている。スタイルを維持するため、定期的にヨガ教室に通っている。数々の経験からメディア慣れしており、大勢の観客の前でも堂々とした立ち居振る舞いをする。しかし羞恥心に欠け、性格は子供っぽく、家ではお酒を飲みながらダラダラと過ごし、家事は十華に任せっきりにしている。両親の経営していたボウリング場を引き継いでいるが、ボウリング業界の衰退の影響を受け、近年ではボウリング場を維持することも難しくなってきている。ボウリング場以外の収入として、畦道叶が出演するイベントのギャラのほか、インストラクターとしての報酬や大会の賞金などがある。プロデビューしたばかりの10代の頃に写真集を出した過去があり、蒔苗真司をはじめとする根強いファンのあいだでは垂涎の一冊という扱いだが、叶本人は自らのポージングや目線など被写体としてのクオリティを気にしており、黒歴史として認識している。そのため、古本屋やインターネットでつねに目を光らせており、写真集が出品されるとすぐに購入し、これ以上人目につかないように回収している。現在活躍している若手のプロボウラーも、アマチュア時代は叶の教え子だったという者も多く、石動一石や最上愛己もその中に含まれる。ボウリングに携わる人たちから尊敬される一方で、ライバル視されることもあるが、絶対的な存在と認識されているほど、ボウリング業界に多大な貢献を果たしている。善くも悪くも人を惹きつける魅力にあふれ、昔から石動から好意を寄せられている。夫と死別したのちに、一度だけ石動と肉体関係を持ったことがある。石動を好きな十華からは恋敵として見られているが、十華に気持ちをぶつけられてもひょうひょうとした態度で気にするそぶりを見せない。仲栗小弓から、十華への男の視線をそらしたいと相談を受けた際には、頭髪や服装のみならず下着までプロデュースした。
花又 (はなまた)
七縞高校の女性教師。年齢は20代。担当科目は体育で、畦道十華のクラスの担任も務めている。色黒の肌にショートヘアで、ジャージ姿でいることが多い。健康的な女性らしい体つきで高齢の男性にモテる。公にしていないが、実はネットに架空のレズカップルの妄想を垂れ流すほどの百合好きで、「沖瀧未子」というGL作家の大ファン。「金髪ギャル×地味っ子メガネ」というカップリングが大好きで、教え子の仲栗小弓と畦道十華のやり取りを目撃して以来、二次元の創作が現実に飛び出した感覚になり、二人の関係の進展を応援している。最終的に二人がボウリングの試合に臨む際には、アイドルのコンサートのようなグッズを自作して全力で応援するほどのファンとなる。小弓から十華への思いを相談された際には、花又自身のGL本の知識を総動員させたアドバイスを送って信頼を勝ち取り、小弓のレズ化を促進させた。長期間小弓の相談に乗っていたことで、物語の途中からは、短い内容であれば小弓とテレパシーで会話することができるほど、息が合うようになる。小弓と十華を間近で見るためにボウリング同好会の顧問となり、二人がじゃれ合う姿を見ると、肩を震わせながら笑顔で鼻血を垂らしてしまう。ボウリング歴は学生時代に友達とやったことがある程度だが、持ち前の運動神経を生かして素人としてはうまいレベル。百合カップルに男性が割り込むことを極端に嫌い、十華と小弓に変化が起こるとSNSで同好の士からアドバイスを受けるが、自らにとって都合のいい意見しか受け入れず、石動一石を殺そうと企むなど、常識外れな行動を取る。実家住まいで、自室でGLに盛り上がったときには大声で独り言を叫ぶが、家族は慣れているためにスルーされている。
獅童 (しどう)
七縞高校で生活指導を務めている男性教師。一九分けの髪型で、いかにも神経質そうな外見をしている。学生時代に好きだったまじめな女子が、軽薄な同級生たちに誘われてボウリングに行ってから成績が落ち続けた姿を見て、遊技場施設には素行の悪い者が集まるという偏見を持っている。生活指導担当として生徒だけでなく、教師にも服装の乱れなどを口うるさく注意している。30歳前後の見た目ながら、これまで女子と遊びに行った経験が一度もなく、仲栗小弓からは童貞だと目されている。不良の小弓がまじめな畦道十華を連れ回しているとカンちがいしているため、花又と共に叶が経営するボウリング場に巡回にやって来た。十華たちと対戦するまでボウリングをやったことがなく、ルールもなんとなくしか知らなかった。初ゲームの1フレーム目でスペアを偶然取ったことでボウリングの楽しさに目覚め、初ゲームながら95点というなかなかのスコアを出している。
石動 一石 (いするぎ いっこく)
プロボウラーの男性。年齢は29歳。12歳から畦道叶にコーチを受け、当時から「いっくん」と呼ばれている。もともと叶のファンで、あこがれが恋愛感情に変わっていき、その気持ちは時間が経った今でも変わっていない。最上愛己と同い年で、アマチュア時代からの同期でもある。黒髪短髪で眼鏡をかけた誠実そうな外見をしているが、優柔不断な性格で物事に対して基本的に受け身。しかし叶の夫が亡くなり、変な男が叶に近づいてきた時には追い払うなど、男らしい一面を見せる。21歳の時に叶からの依頼を受け、畦道十華のコーチとなる。3年前から業界期待の若きプロボウラーとして忙しく活動していたが、十華がプロを目指すにあたり、叶から呼び戻されて彼女が経営するボウリング場の所属プロとなり、十華と仲栗小弓のコーチに復帰した。また、3年前に叶と一度だけ肉体関係を持ったことがあり、その記憶に縛られ、未だに叶への未練が断ち切れないでいる。昔から十華に思いを寄せられているが、彼女の気持ちに気づいていないふりをして子供扱いしている。しかし、十華から全国大会で優勝したら付き合ってほしいとストレートに告白された際には、動揺しすぎて目が泳ぎ、二重に保険をかけた曖昧な返事をし、花又からは保守的な回答と態度に幻滅されている。また、小弓から恋敵として一方的に敵視されているうえに、小弓と十華の関係を応援している花又からは邪魔者扱いされ、殺害を企てられることもある。酒に弱く、ビールを一口飲んだだけで前後不覚となり、質問されたことに対して答えるだけの状態になる。プロボウラーとして優秀な成績を残しているため、一般的にも知名度があり、叶のボウリング場に所属してから石動一石に会いに来るファンが増えた。コーチとしても指導法も優れており、小弓のフォームや投げ方を改善した。
漣 (れん)
中学3年生の男子。小学生の頃に石動一石からコーチを受けた経験がある。現在はボウリングから離れているが、ボウリング関連の雑誌やニュースは欠かさずチェックしている。小学4年生の時に大会で優勝したことがあり、同じく石動の教え子だった畦道十華に淡い恋心を抱いていた。友達の兄がボウリング場で巨乳の女子高生を見たという話を聞き、思春期ならではのエロい好奇心で叶のボウリング場に久しぶりに足を運ぶ。頭の中ではエロいことを考えても、表情にはいっさい出すことなく紳士的に振る舞っている。一方、つるんでいるクラスの男友達たちはスケベ心に正直で、女の子目当てに漣を連れ立ってボウリング場に通っている。友達ともども、女の子に興味津々で、よく仲栗小弓にからかわれている。友達からは十華、小弓、畦道叶をはじめとする年上の美女たちと仲がいいことを嫉妬されるが、漣がいないと女性と話せない友達のために付き合ってあげるなど、友達思いな一面がある。
最上 愛己 (もがみ あみ)
プロボウラーの女性。年齢は29歳。畦道叶の元教え子で、大学時代にプロデビューした。非常にかわいらしい顔立ちで、メディアやファンの前では、ぶりっ子なアイドルキャラを演じている。しかし実際の性格は腹黒く、自分が一番という意識が強く、自分より評価されている人間を認めない。トップに君臨する女子プロボウラーの叶をライバル視しており、ことあるごとに突っかかっている。叶の娘・畦道十華とその友人・仲栗小弓に対しても態度が悪く、ふだんのアイドルキャラとのギャップが激しい。また、男性の観客の目を引くために、わざとパンチラしたりと人気取りの小細工に余念がない。その努力のかいあってボウリング業界では人気があり、「ナチュラル・エンジェル」という二つ名が付けられているが、アラサーのぶりっ子を小弓からは「痛い大人」と評されている。しかし、単独で宿泊イベントを打てるほど人気があり、参加者のほとんどは男性ファンである。バストサイズは公称ではGカップだが、実際はDカップ。かわいい衣装や容姿だけでなく、ボウリングの腕もかなりのもので、目立つためにバックアップやローダウンなどの多彩な投法を駆使し、どんな不利なスプリットでもストライクを狙えるほどの高いテクニックを誇る。石動一石とは叶の教え子時代から同期で同い年だが、男子リーグと女子リーグで住み分けができているため、石動にはあまり関心を持っていない。丁嵐陵を指導してプロデビューさせた実績があり、陵から現在も師匠として慕われている。Sっ気が強く態度も口も悪いが、人一倍強い自己顕示欲をくすぐられるとすぐに態度を軟化させ、小弓に乗せられて彼女にローダウンを教えた。その際にもコーチとしての手腕を発揮し、小弓の弱点と改善点を的確に指導した。
鉢窪 乙巴 (はちくぼ おとは)
高校1年生の女子ボウラー。右目の下にホクロがあり、眼鏡をかけたまじめそうな外見をしている。小学生の頃に畦道十華が優勝した全国大会で仲栗小弓に次いで3位になり、それ以来十華をライバル視している。ボウリングに対して真剣に取り組み、十華を倒すために、中学時代にも再戦を見据えて努力を続けていた。しかし、アマチュア大会で十華と再戦の機会を得た際に、十華たちに話しかけるものの彼女たちからはまったく覚えられていなかった。誰よりも真剣にボウリングを学び、所持しているボウリング関連の本すべてに付箋をびっしり貼って読み込んでいる。小弓のギャル然とした外見を見て、バカがうつると無視を決め込むなど、偏屈な一面がある。爆乳にコンプレックスを抱き、人前で投げられなくなった十華を励ましてメンタルを立ち直らせたが、鉢窪乙巴も自分自身の貧乳を気にしており、十華とは違う意味でのコンプレックスを抱いている。胸のカップ数を質問された際には「ヴェーカップ」と答えを濁しているが、Aカップであることは周知の事実である。小学生の頃からボウリングに真剣に向き合うあまり、表彰台に上がっても負けた悔しさから号泣する癖がある。通っている高校ではペアが見つからず、全国大会には不参加となった。
丁嵐 陵 (あたらし りょう)
現役大学生ながら、プロボウラーとしても活躍している女性。年齢は20歳。ロングヘアで、耳に多くのピアスをつけている。かなりの高身長で手足だけでなく、体のパーツ一つ一つが細くて長い。貧乳ながら、くびれがはっきりしていて女性から見ても均整のとれたスタイルを持つ。最上愛己に中学3年の頃からコーチングを受け、プロデビューした現在も師弟関係は健在である。長身を生かした両手投げを得意とし、本来なら回転に特化した投法ながら驚異的な球速を出す。高校時代に全国大会で優勝した経験がある。腹黒い性格の最上とは対照的に、他人のすべてを肯定する前向きで素直な性格のため、イベントに参加している客のみならず、畦道十華や仲栗小弓ともすぐに仲よくなった。最上からは畦道叶を超える女子プロボウラーになってほしいと嘱望されている。最上を心から尊敬し、ゲーム後に施すマッサージの時間を大切にしている。
八代 (やしろ)
ボウリング関連書籍の編集者の男性。プロテストの面接官も務めており、畦道叶が受けたプロテストでも面接官を務め、その時の叶の強い意志を間近で感じてファン第一号となった。ボウリング業界を盛り上げることを第一に考え、過去に叶の写真集を出版したのも八代の企画だった。「ボウリング業界のことで知らないことはない」と自負するほど、プロアマ問わず情報をチェックしている。3年間の沈黙を破って公式戦に参戦した畦道十華と、仲栗小弓に注目して取材することとなる。しかしいい加減な性格で、全国大会で優勝して知名度が上がったら記事にすると二人を取材したが、大会前にもかかわらず、雑誌に記事が掲載された。また、数時間かけたインタビューをボツにしたりと、適当な仕事のエピソードには事欠かない。
蒔苗 真音 (まきなえ しおん)
東京の桃源高校2年生の女子ボウラー。蒔苗真司の娘で、蒔苗真礼の姉。真礼と同じ左利きで、「左投げの蒔苗姉妹」と呼ばれている。中学の全国大会ソロ戦で3年連続優勝し、高校進学後も多くの大会で好成績を挙げており、ボウリング雑誌で特集を組まれたこともある。高校1年時にはペアに恵まれずに全国大会では結果を出せなかったが、今年は妹の真礼が同じ高校に進学したためにペアを組み、畦道十華と仲栗小弓のペアと決勝戦で対戦することとなる。真礼とのダブルスでは先に投げてレーンのオイル状態を探る役目を担う。内向的な真礼と対照的に社交的で友達も多い。ファザコンの気があり、真司に気に入られようと、家業のマキナエボウルを盛り上げるためにクラスの友達を呼ぶなどして売り上げに貢献している。また、真司に夕食や朝食をよく作っているが、料理は下手で見栄えもよくない。友達との遊びのプレイでスコア300のパーフェクトゲームを達成したり、ハウスボールを使ったゲームでもマイボールを使った十華や小弓を圧倒したりするほどの実力を誇る。ただし、メンタルに問題があり、真司の期待を一身に受けたプロテストの実技ではプレッシャーに負け、散々な結果に終わっている。真司の期待を裏切ったことで信頼を失ってしまい、真司の期待が妹に変わったことで真礼に嫉妬し、必要以上に冷たく当たっている。真司の影響で畦道叶のファンとなり、親からの愛情不足によって性格と性癖が歪み、叶の写真集をオカズに自慰行為をしている。のちに、叶の娘ということで興味を持った十華の貞操を狙うようになり、真司と叶を結婚させて畦道母娘を手に入れる野望を燃やすようになる。畦道母娘丼のエロ妄想を膨らませて臨んだ全国大会当日に、初めて会った叶に顎を触られて名前を呼ばれただけでオーガズムを感じるほど性癖が歪んでいた。絶頂に達した直後に、蒔苗真音自身の妄想する幸せな家庭を語り、叶を「ママ」と呼んだことで、畦道陣営から最大級の嫌悪感を抱かれることとなった。中学までは真礼と同じサイドテールの髪型だったが、真礼に嫉妬するようになってからはツインテールの髪型に変えている。
蒔苗 真礼 (まきなえ まあや)
東京の桃源高校1年生の女子ボウラー。蒔苗真司の娘で、蒔苗真音の妹。社交的な真音とは対照的に内気で暗い性格をしている。クラスにもなじめずに、友達もほとんどいない。真音が卒業するまで中学の全国大会ソロ戦では2年連続で準優勝し、中学3年時には優勝している。さらに中学生の時に出場したほかの大会では、すべて優勝を飾っている。アベレージは200を超え、真音と共に「左投げの蒔苗姉妹」と呼ばれ、ボウリング業界で最も注目されている高校生の一人である。真音とのダブルスでは、真音のボールの軌道を見てレーンのオイル状態を見極め、確実にスコアを取りにいく。去年、姉の真音がプロテストに落ちたため、真司の期待が蒔苗真礼に変わり、真音から嫉妬されて冷たく当たられている。真司からは友達付き合いや家業のマキナエボウルの経営状態を心配するよりも、ボウリングの練習を第一にやらされ、叶と同じく16歳でのプロデビューを強要されている。自分の意見をはっきり言えないため、渋々真司の指示に従っているが、本心では真音と楽しくボウリングがしたいという思いが強い。日に日に性格が歪んでいく真音を心配しており、自分にばかり構う真司が原因であると理解しているため、真司を疎ましく思っている。去年まで真音とおそろいだったサイドテールの髪型を未だに続けており、またおそろいの髪型で姉とボウリングをすることを願っている。
蒔苗 真司 (まきなえ しんじ)
東京に本社を置く大手ボウリング場「マキナエボウル」の社長を務める男性。蒔苗真音と蒔苗真礼の父親で、シングルファーザー。細身の体型で仕立てのいいスーツを着ている。欲しいものは手に入れないと気が済まない性格で、昔から大ファンだった畦道叶をマキナエボウルの専属ボウラー兼妻にしたいと考えている。真音を静岡に送り込み、叶のボウリング場と街の現地調査をさせ、マキナエボウルの進出計画を立てる。斜陽産業であるボウリング業界で生き残っている経営手腕は伊達でなく、ボウリングに疎い一般人にもマキナエボウルの名前は知られている。マキナエボウルに所属するプロたちに娘二人を鍛えさせ、叶と同じく16歳でプロデビューさせたいと考えていた。なお、姉の真音が16歳の時に受けたプロテストに落ちたため、現在では妹の真礼に期待を寄せている。しかし、真音がプロテストに不合格になった原因が蒔苗真司自身からのプレッシャーによるものだとは気づいていない。真礼にボウリングの練習を何よりも優先させているが、姉と楽しくボウリングをしたいだけの真礼からは疎まれている。一方、真音からは執着にも似た愛情を送られているが、自分の期待を裏切った真音に対する態度は非常に冷たい。ボウリングがメンタルスポーツであることを理解しているにもかかわらず、蒔苗姉妹が出場する全国大会の決勝戦ですら応援に来ないどころか、試合中だと知りながら真音を電話で追い込むなど、人の気持ちをまったく理解しようとしない。
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両手投げ (りょうてなげ)
丁嵐陵が得意とするボウリングの投法。左端から投げてストライクのスポットに当てるほど回転数が多い。中指と薬指のみをボールの穴に入れ、親指を抜くタイミングを気にせずに両手の力を存分に使えることから、その回転数が生み出される。また体をスイングさせることで、ボールの軌道を変化させられるという利点もある。ただし、回転に力を取られるため、球速が落ちるというデメリットもある。
ローダウン
最上愛己が仲栗小弓に伝授したボウリングの投法。ボールをリリースする前まで肘や手首を内側に曲げて投げるのが特徴。手首の動きはフリスビーを投げるような感覚でボールの表面を長く撫でるように意識し、体全体を使って手首のしなりを利用することで高速かつ高回転なボールとなる。もともとは片手投げでも両手投げの高回転に対抗できるように編み出された投法で、習得するためにはかなりの練習とセンスが必要となる。