3つの「難事件」を解決するために奔走する
時は昭和中期。世は空前のミステリーブームとなり、そのせいで難事件を求めて探偵を自称する有象無象が日本国中に出没し、世相は乱れていた。そのため政府は探偵を資格化し、3つの「難事件」を解決した者のみを正式な「探偵」とする法を新たに定める。本作は探偵見習の少女・金田耕子が3つの難事件を解決し、名探偵を目指す物語となっている。
婚約者とバディを組んで難事件に挑む
名探偵を目指す耕子の初の難事件は、名家と知られる犬上家の長男・犬上佑清に殺人を予告する脅迫状が届いたことから始まる。しかし、それは佑清と母親の確執から始まった彼女の狂言で、耕子を佑清の婚約者にするのが真の目的だった。母親のもくろみはみごとに成功し、佑清は耕子に一目惚れする。こうして耕子は一つ目の難事件を解決し、佑清は婚約者兼探偵助手として彼女と行動を共にすることになる。
金田耕子の茨の道は続く
本作は耕子がさまざまな謎を解決していく痛快推理ミステリーで、難解な事件だけではなく、日常のちょっとした謎も面白おかしく解決していく。耕子は名探偵になるべく3つの難事件を解決するのを目的としているが、難事件には明確な審査基準が存在し、彼女が日常的に遭遇する事件は難事件と判断されず、耕子は悶々とした日々を送っている。しかし耕子はあきらめることなく、今日も難事件を求めて依頼人を募集するのだった。
登場人物・キャラクター
金田 耕子 (かねだ こうこ)
探偵見習の少女。ゆるふわの金髪ロングヘアで、小柄な体型をしている。そのため子供に間違われることが多いが、実年齢は18歳。犬上家の依頼で殺害予告を受けた犬上佑清を救うべく、下宿「春秋館」に賄い人として潜入し、調査を始める。事件解決後も佑清の母親の計らいで春秋館にとどまり、佑清を助手にして探偵を目指している。ふだんは賄い人として働いているが、頭を使う作業は苦手で、料理も簡単なものしか作れない。しかし、料理を覚えるべく努力はしており、誰かに料理がおいしいと褒められるとその料理ばっかり作るため、学生たちからは不満を抱かれている。また、可憐な容姿に反して大の男を一撃で打ちのめすほど腕っぷしが強い。ふだんは天然気味ながら、高い観察力と洞察力で事件を解決に導いていく。
犬上 佑清 (いぬがみ すけきよ)
名家と知られる「犬上家」の長男。下宿「春秋館」で暮らしている。実家から十分な仕送りを受けているが、それに頼らずにアルバイトをしながら学業を両立させている苦学生。生真面目で誠実な人柄ながら、母親が勝手に婚約者を決めたことに憤りを感じている。そのため婚約者を怖がらせようと、顔に大ケガを負ったとウソをつき、金田耕子が出会った当初は不気味なマスクを被っていた。しかし耕子に一目惚れし、彼女のことを母親が決めた婚約者と知ってからは、耕子を陰ながらサポートしていた。そんな中、耕子がその事実を知ってからは彼女に真意を告げ、耕子の探偵助手となる。犬上佑清の母親が、息子の命を狙った脅迫状が届いたことについての調査を耕子に依頼したのも、探偵に向いておらず、かつ佑清の好みの耕子を、佑清と引き合わせるための狂言だった。耕子に対して優しく接しているが、彼女の身に危険がせまると冷静さを欠いて感情的になってしまう。だが、そのことは春秋館の学生たちには周知の事実で、耕子の危機によって佑清が暴走しかかった際には、耕子よりも佑清の方が危険と判断して保護に向かうほど。