あらすじ
第1巻
東京、大阪、京都の三都市で、メンバー全員が源義経の家来の名前を使っている特異な盗賊団「源氏蛍」のメンバー五人が殺害されるという連続殺人事件が発生した。週刊誌でそれを知った浪速の高校生探偵こと服部平次は、個人的な動機から、事件の調査を開始。時を同じくして、京都の山能時から8年前に盗まれた薬師如来像の在りかを記した、謎の絵の解読を依頼された探偵の毛利小五郎は、江戸川コナンや毛利蘭と共に現地入りする。頼りにならない小五郎に先んじて絵の謎を解くため、京都の街を散策していたコナンは、そこで友人の平次と再会。山能寺から薬師如来を盗んだのが盗賊団「源氏蛍」と見立てたコナンは、平次に京都案内を依頼し、「源氏蛍」とのかかわりがありそうな、義経や武蔵坊弁慶にまつわる場所をめぐる事になる。調査の過程で鞍馬寺を訪問したコナンと平次は、そこで謎の人物に弓矢を射られ、危うく命を落としかける。平次のバイクで暴漢を追跡するが、巧みに山道をバイクで逃げ続ける暴漢を捕まえる事はできず、取り逃がしてしまうのだった。ひとまず繁華街に引き返したコナンと平次は、そこで蘭達と合流。コナンと平次は、山倉多恵が経営する茶屋「桜屋」で千賀鈴との芸者遊びに興じる小五郎に呆れながら、山能寺の檀家である古美術商の桜正造、能役者の水尾春太郎、古書店店主の西城大河から義経に関する話を聞き出す事になった。しかし、宴もたけなわとなったその夜、桜屋の1階で早めに休んでいた正造が、何者かによって殺害されるという事件が発生。事件を調べていたコナンと平次は、正造の正体が「源氏蛍」の一員、「伊勢三郎」である事、そして彼が薬師如来の在りかを示す、謎の絵のコピーを持っていた事を突き止める。現場からの解散後、彼女の遠山和葉といっしょにバイクで帰宅中だった平次は、鞍馬山で遭遇した暴漢の襲撃を受ける。1対1での勝負を挑むものの、暴漢の巧みな刀さばきの前に追い込まれた平次は肩を負傷。和葉の機転で事なきを得るが、犯人がなぜ危険を冒して二度も平次を襲ったのか、コナンはその理由を突き止めようとする。
第2巻
江戸川コナンは、服部平次を襲った犯人が翁の仮面をつけていた事から、平次と共に能役者の水尾春太郎の屋敷に出向き、アリバイを聞く事になった。同席した僧の竜円、西城大河からも話を聞くが、これといった情報は得られなかった。その後、屋敷に挨拶に来た千賀鈴から、京都の通りの名前を歌詞に乗せた、手まり唄の情報を得たコナン一行は、京都府警の大滝悟郎から、昨日平次を襲った暴漢が桜正造を殺害した犯人である可能性が高い事を知らされる。さらに京都に遊びに来ていた阿笠博士率いる少年探偵団の灰原哀、円谷光彦、吉田歩美と遭遇したコナンは、迷子になった小嶋元太を探し出した際に使用された、発信機付きのバッジから事件解決のヒントを得る。山能寺に戻ったコナンと平次は、毛利小五郎達を交えて情報の整理を開始。目暮十三と白鳥任三郎から新たな情報を得た小五郎は、関係者一同を集め、鈴を一連の事件の犯人と断定するが、全員から根拠の薄弱さを指摘され、あえなく推理を否定されてしまう。その際に行われた小五郎と関係者のやり取りを見て、ついに犯人を特定したコナンと平次は、絵の謎も解き、薬師如のが隠された場所も突き止める。ところが、捜査の過程で遠山和葉が犯人に誘拐されてしまい、平次は玉龍寺へと呼び出される。現場へ赴いた平次はそこで犯人と和葉に遭遇し、犯人の動機と正体を看破。正体を見破られた大河は、薬師如来の在りかの情報と引き換えに一度は和葉を解放するが、次の瞬間に手下と共に平次と和葉を襲撃し、二人を亡き者にしようとする。「白乾児」を飲み、高校生の体となって一時的に平次に成り代わっていたコナンは、そこで正体を明かし、加勢に入った本物の平次と反撃に移るのだった。激闘の末、玉龍寺の一室に逃げ込んだ平次と和葉は、そこで妖刀村正を入手。コナンとの連携攻撃で大河を打ち負かす事に成功する。無事に薬師如来を取り戻したコナンは、山能寺にそれを返納し、平次達に別れを告げ、東京への帰路につくのだった。
登場人物・キャラクター
山倉 多恵 (やまくら たえ)
京都で茶屋「桜屋」を営んでいる女将。年齢は52歳。いつも和装をしている美女。ひったくりから財布を取り戻してもらった事がきっかけとなり、服部平次の顔見知りとなる。幼少の頃に母親が病死した千賀鈴を引き取り、立派に育て上げた。
千賀 鈴 (ちか すず)
京都の茶屋「桜屋」で舞妓をしている女性。年齢は19歳。5歳の頃に母親が病死。父親も所在不明だったため、山倉多恵に引き取られて育てられた。毎月送金してくる匿名の人物が、父親である事を察しており、その正体にも気づいている。最近弓矢を始めたが、腕前はまだまだ初心者。
西城 大河 (さいじょう たいが)
京都で古書店を開いている、眼鏡をかけた男性。年齢は35歳。山能寺の檀家の一人で、桜正造や水尾春太郎の剣道仲間。人畜無害な風貌と雰囲気をしているが、実は盗賊団「源氏蛍」の一員で、組織内での通り名は「弁慶」。首領の死後、ほかのメンバーを殺害して薬師如来を含む、すべての宝を手中に収めようと画策していた。 剣と弓の達人で、剣に関しては義経流という古い流派を独学で会得している。
水尾 春太郎 (みずお しゅんたろう)
京都で能役者をしている、涼やかな風貌をした男性。年齢は33歳。山能寺の檀家の一人で、桜井正造や西城大河の剣道仲間。服部平次を襲った暴漢が能面で素顔を隠していたため、容疑者として疑われた。自宅には数多くの能面が飾ってある。
桜 正造 (さくら しょうぞう)
京都で古美術商をしている、恰幅のいい男性。年齢は51歳。山能寺の檀家の一人で、桜正造や水尾春太郎の剣道仲間。実は盗賊団「源氏蛍」の一員で、組織内での通り名は「伊勢三郎」。盗品の売却ルートを抑えており、首領亡きあと、腕の立つ西城大河を使い、残るメンバーを殺害したうえで、薬師如来を含む宝を大河と山分けしようと企んでいた。 しかし、大河に裏切られて殺害されてしまう。
竜円 (りゅうえん)
京都にある山能寺の僧を務めている男性。年齢は34歳。8年前に盗まれたご本尊の薬師如来の在りかを示す謎の絵が、寺に送られてきた事から、敏腕探偵として全国的に高名な毛利小五郎に暗号解読を依頼した。檀家である西城大河と桜正造の正体が盗賊団「源氏蛍」の一員であるとは露知らず、利用されていた。
円海 (えんかい)
京都にある山能寺の住職を務めている男性。年齢は65歳。非常に穏やかな人物で、薬師如来の盗難など、実務的な処理のほとんどを竜円に任せている。実は千賀鈴の父親で、毎月彼女に送金をしていた。
綾小路 文麿 (あやのこうじ ふみまろ)
京都府府警の男性刑事。階級は警部。公家出身で、短い眉と端正な顔立ちが特徴。その風貌と雰囲気から、密かに「おじゃる丸」というあだ名で呼ばれている。ペットのシマリスをつねに連れ歩いているという変人だが、捜査能力は非常に高い。当初は探偵の服部平次を信用していなかったが、事件を通じて徐々に平次の能力を信頼しはじめる。
源 義経 (みなもとの よしつね)
平安時代の武将の男性。幼名は「牛若丸」。軍事的才覚に恵まれた天才肌の武将で、源氏と対立していた武家である平家を滅ぼす大きな功績をあげたが、のちに兄の「源頼朝」によって攻められ、自害に追い込まれた。実在の人物、源義経がモデル。
武蔵坊 弁慶 (むさしぼう べんけい)
平安時代の僧兵の男性。京都の五条橋で「牛若丸」だった頃の源義経に敗れて以来、義経の忠実な家来として付き従い、平家の打倒に貢献した。「弁慶の泣き所」などの諺のもとになった人物。実在した人物、武蔵坊弁慶がモデル。
集団・組織
源氏蛍 (げんじぼたる)
東京、大阪、京都を中心に仏像や美術品の窃盗を繰り返している神出鬼没な盗賊団。メンバー全員が源義経と家来の名前で呼ばれており、さらに全員が「義経記」という書物を所持しているのが特徴。メンバーは首領の「義経」を筆頭に、「弁慶」「駿河次郎」「伊勢三郎」「備前平四郎」「亀井六郎」「鷲野七郎」「片岡八郎」の八人。 首領は3か月前に亡くなっているが、残るメンバーに対し、薬師如来の在りかを示す謎の絵を解読した者を、組織の後継者にする事を遺言として残した。