年上召使いと年下王子の主従ファンタジー
17歳の少女・レネは、第一王子でありながら自らが呪い子であることを悲観し、引きこもり状態のアルベール・アンリ・グロワールの召使いに任命される。当初はレネを拒否し、遠ざけようとしていたアルベールだったが、底抜けに明るく前向きなレネの気迫に押され、次第に心を開いていく。
「呪い子」である二人が寄り添い合いながら愛情を育む
第一王子のアルベール・アンリ・グロワールは、周囲に毒をまき散らす「毒の呪い」を持つ呪い子として幽閉されて暮らしていた。そんなアルベールの召使いに選ばれたのが、両親が盗賊に殺された際、父親からの「何があっても死なないでほしい」との願いが「不死の呪い」となり、周囲から気味悪がられている少女・レネだった。自らの呪いのせいで誰かを不幸にさせてしまうことに苦悩するアルベールは、笑顔で不死の人生をたくましく生きるレネに心癒され、生きる希望を見いだしていく。
ダンと名乗る謎の男がレネを狙う
互いに支え合ってさまざまな出来事に立ち向かい、乗り越えていく二人の障害となるのが、ダンと名乗る謎の男。レネの不死を願って死んだレネの父親と同じ名前を名乗るこの男は、他者に呪いを分け与え、そして他者から呪いを奪う性質を持っていた。得体の知れないこの男に、アルベール・アンリ・グロワールとレネは翻弄され、やがて国中を巻き込んだ騒動に身を投じることとなる。
登場人物・キャラクター
レネ
不死の呪いを持つ「呪い子」の少女。年齢は17歳。何をされても死なない並外れた生命力を気味悪がられ、どんな職業に就いても長続きせず、すぐにクビになってしまう。そんな中、塔の番人であるギヨーム・カルムにその能力を見初められ、グロワール王国の第一王子であるアルベール・アンリ・グロワールの召使いとして雇われることとなる。底抜けに明るい性格で、少々強引なところはあるが、ポジティブ思考の持ち主で多少のことではへこたれないタフさを持っている。呪いのせいで決して死ぬことはないが、体を傷つけられれば痛みを感じる。自らの呪いで他者を傷つけることに苦悩するアルベールに明るく接し、彼が呪いの力にとらわれ過ぎないように導いている。アルベールの日常の世話を担いながら、時にはレネ自身がアルベールの盾となり、自分が絶対に死なないことでアルベールを安心させようとしている。実は自分が生まれた時に、両親が盗賊に襲われて他界しており、その際に、父親の何があっても死なないでほしいとの強い願いと悲しみによって、「不死の呪い」を授かった。その後、そこに居合わせた先生に引き取られ、たくさんの愛をもらって大切に育てられたが、先生に迷惑をかけたくないと家出をした過去がある。
アルベール・アンリ・グロワール
グロワール王国の第一王子。触れたものすべてを死に至らしめる毒の呪いを持つ「呪い子」。公には病気療養中と発表されているが、実は塔に幽閉されている。5年前、兄が毒物を口にして帰らぬ人となるが、その死を受け入れられなかった母親は、何者かの陰謀であると訴え続けていた。その後も母親は毒を憎み、ついにはこの世のすべてを憎んで衰弱して亡くなり、その思いが呪いとなってアルベールが毒の呪いを持つようになった。以後、アルベールは王宮で暮らしていたが、2年前に三人目の召使いが死んだことをきっかけに、尊敬する父親・国王からの命で王宮の離れにある塔に幽閉される。それからは塔の番人であり、アルベールの見守り役を務めるギヨーム・カルムだけと接して生活を送っていたが、ある日新たに自分の召使いとしてやって来たレネと生活を共にするようになる。当初は彼女を死なせてしまうことを恐れ、レネに冷たく当たって距離を取ろうとしていたが、彼女の明るくまっすぐな思いに距離を縮めていく。さらに彼女も自分と同様に呪い子で、死なない体質であることを知り、次第にレネに信頼を寄せるようになる。なお、呪いの力は基本的に相手の素肌に触れなければ発動しない。感情の昂りによって力が暴走すると近くにいるだけで悪影響を受けることがあるが、レネとの生活を始めてからは少しずつ力を制御できるようになる。また、呪いの力の強弱によって顔や体に出現する痣の濃さが変化する。呪いの影響で、何を食べてもおいしく感じないが、唯一母親から食べさせてもらったソルベの味だけは心に残っている。
書誌情報
呪い子の召使い 9巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉
第1巻
(2020-08-20発行、 978-4592213260)
第7巻
(2022-09-20発行、 978-4592214793)
第8巻
(2023-02-20発行、 978-4592224334)
第9巻
(2023-02-20発行、 978-4592224341)