哀愁荒野

哀愁荒野

銀座の高級クラブを舞台に、赤裸々な人間模様が展開する恋愛ロマン。東京の下町育ちの18歳の娘がホステスとなってのし上がっていく中で、義理の兄を始めとする様々な男たちと恋の遍歴を重ねていく。原作:梶原一騎、作画:松久由宇。

正式名称
哀愁荒野
ふりがな
あいしゅうこうや
作画
原作
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概要・あらすじ

東京の向島で育った花輪京子は、母親と共に小料理屋を営む18歳。二歳年上の義理の兄、花輪竜之介を密かに愛していたが、兄妹関係を盾に拒絶され、銀座の高級クラブのホステスとなって身を立てていこうとする。まもなく美貌と機知によりトップ人気を勝ち取った花輪京子だったが、様々な男性遍歴を重ねながらも兄のことを思い続ける。

一方花輪竜之介も無頼の徒となりながら、影から妹を助けるのだった。

登場人物・キャラクター

花輪 京子 (はなわ きょうこ)

東京向島で育った18歳の鉄火娘。母親が再婚したため、新しい父親の連れ子、花輪竜之介と兄妹となり、彼を密かに愛するようになる。中学卒業後に母親と小料理屋を開いて暮らしていた。6年ぶりに刑務所から戻った花輪竜之介に想いを伝えるも、受け入れてもらえなかったため、浅草のクラブのホステスに転身する。 さらに銀座の高級クラブ「エーゲ海」からのスカウトに応じて移籍すると、美貌と機知を駆使して店のトップにのし上がった。これを堕落と見た花輪竜之介が気持ちを翻したため、彼に抱かれることとなる。思いがけず望みをかなえた花輪京子は、彼女に一目惚れした大越専務を最上客にしたことで花輪竜之介を裏切った元芸者のお千鶴にも意趣返しを果たす。 だが花輪竜之介との関係も長くは続かず、彼は身を引いてしまう。このため、京子は寂しさからプロ野球選手の西崎と関係。これにより大越専務の怒りを買ってしまった結果、彼女はエーゲ海を出て銀座に自分の店クラブ花輪を持つようになった。その後、人気作詞家あずさジョージとの恋を経て、大物俳優丘田公次と添い遂げることを決めるのだった。

花輪 竜之介 (はなわ りゅうのすけ)

父親が再婚したため、新しい母親の連れ子、花輪京子と兄妹となる。血のつながらない妹の花輪京子に秘めた思いを抱く20歳の硬骨漢。ヤクザさえ相手にできるほど喧嘩が強い。6年前に半玉(芸者見習い)のお千鶴に絡んだ町内会長たちと争ったことで網走刑務所に服役。6年後に向島に戻ってきたが義母や町の人々に疎んじられ、隅田川対岸の山谷のドヤ街に住んで日雇い労働者となる。 その後、元町内会長をパトロンにしたお千鶴が、目障りな自分を始末しようとしていると知って落胆。さらに愛を告白して迫ってきた花輪京子を拒絶して札幌などを放浪するが、彼女が銀座のクラブのホステスになったと知り、汚される前に汚してやると抱いてしまう。 つかのまヒモのように暮らした後で身を引き、それ以降は最上客を裏切ったためにヤクザに拉致された花輪京子を助けるなど、独立して自分の店を持った彼女を影から支援し続けた。最後は大物スター丘田公次に対する彼女の一途な気持ちを聞き、一人ヨーロッパに旅立とうとした丘田公次に、京子と共に行くことを決心させている。

花輪 新一 (はなわ しんいち)

花輪京子の実の弟で、小学6年生。姉思いで、義兄、花輪竜之介を疫病神と嫌っている。プロ野球の西崎選手の大ファン。西崎と何度も恋愛スキャンダルを起こしてマスコミに騒がれた姉に怒りをぶつけた。

花輪京子の母 (はなわきょうこのはは)

幼い花輪京子と花輪新一を連れ子に、先妻を亡くした花輪竜之介の父親の後妻となった不細工な女。だが夫は病気で長く寝たきりとなった後亡くなり、傷害事件を起こして服役した花輪竜之介がいては経営する小料理屋「お京」に客が来ないと、竜之介を疫病神扱いして嫌っていた。娘と息子を大事にしているが、世間体を気にして立ちまわる下世話な性格で、花輪竜之介を愛する京子と対立することもしばしばだった。 最後は花輪新一共々、花輪竜之介の世話になって暮らす形で和解している。

お千鶴 (おちず)

元町内会長をパトロンに持ち、置屋の「千鶴」を営む向島の売れっ子芸者。置屋「秀月」の半玉(芸者見習い)だった6年前、17歳の春に夜桜見物の席で町内会長たちに辱められ、駆けつけた初恋相手の花輪竜之介に助けられた。その後、心変わりして元町内会長の女となり、刑務所から戻った花輪竜之介とその義理の妹、花輪京子が邪魔になって、消してしまおうとパトロンと共に画策する。 だが反対に置屋に乗り込んできた花輪竜之介を前にして、パトロン共々震え上がり、お互いに罪を着せ合う醜態を晒した。その後、パトロンからの手切れ金で銀座に高級クラブ千鶴を開店するが、最上客の大越専務を高級クラブ「エーゲ海」に取られてしまう。 これに怒って乗り込んだエーゲ海で、ここのホステスになっていた京子と再会。張り合って過去を暴きあったものの大越専務まで敵に回してしまい、許しを乞う羽目になる。

東家 与太八 (ひがしや よたはち)

元町内会長と彼が囲う芸者のお千鶴に贔屓にされている向島の太鼓持ち。生まれ落ちての色街育ちで、40歳を過ぎて料亭の中居と結婚したが、4年前に先立たれている。ヤクザに捨てられて姿を消した娘から押し付けられた、孫の小学生辰との二人暮らし。刑務所から戻った花輪竜之介と関わりたくないお千鶴から頼まれて、竜之介に手切れ金を渡しにいくが、拒まれてその男気に惚れてしまう。 以後、竜之介の味方となり、義理の妹の花輪京子が青年社長の宝田麿継にモーテルに連れ込まれた際も、機転を利かせて救出している。その後も京子を心配していろいろと世話を焼き、銀座の高級クラブのホステスとなった後も、馴染みの旦那衆を誘って応援し続けた。

宝田 麿継 (たからだ まろつぐ)

小料理屋「お京」で花輪京子に一目惚れした、宝田興産株式会社の青年社長。キザな成金で、当て馬にされているとは知らずに京子をドライブに誘うが、モーテルに連れ込んだところ太鼓持ちの東家与太八に横槍を入れられてしまう。そのことを逆恨みしてヤクザたちを雇い、与太八と京子を襲わせるが、お礼参りを察していた花輪竜之介にヤクザたちを倒され、自分も隅田川に叩きこまれてしまった。

大越 (おおごし)

銀座での夜遊びを十数年続ける大会社の専務。高級クラブ千鶴の前に和服姿で佇む花輪京子に一目惚れし、彼女がホステスとして務める「エーゲ海」の常連客となった。通いつめた末に京子を抱く寸前までいったものの、ホテルに花輪竜之介が現れたため退散。だが竜之介を自分の兄と話す京子を信じて再び「エーゲ海」の客となり、彼女と深い因縁を持つクラブのママ、お千鶴が「エーゲ海」に乗り込んできた際には、花輪京子に味方して一喝した。 ところが花輪京子が自分の会社のテレビコマーシャルに起用したプロ野球選手の西崎と関係したことを知って激怒し、「エーゲ海」にいられぬよう圧力をかけただけでなく、世話をしている組のヤクザたちにさらわせた。 しかし現れた竜之介によって花輪京子を救い出され、自分も人質にされて、二度と手を出さないと誓わされた。

仲本 (なかもと)

銀座の高級クラブ「エーゲ海」のマネージャー。花輪京子が店のホステスとなった時からサポートすると共に、密かに愛し、女として開花していく様を見つめていた。彼女が自分の店、クラブ花輪を持って独立すると、頼み込んでその店のマネージャーとなり、経営を助け、何度も店の危機を救っている。 しかし京子が店を閉めて丘田公次と添い遂げようとしたため刃物をかざし、愛していたことを打ち明けて共に死ぬことを迫るが、彼の京子への気持ちを嗅ぎつけていた花輪竜之介に止められてしまった。

西崎 (にしざき)

人気プロ野球チーム、「パイレーツ」の一塁手にしてホームラン王、最高殊勲選手。妻とは別居している。大越専務の会社のテレビコマーシャルに出演することになり、接待されて高級クラブ「エーゲ海」を訪れた際に花輪京子と出会い、男臭さに魅せられた彼女と関係を持ってしまう。 そのことを週刊誌にすっぱ抜かれた後、花輪京子にプロポーズするが、彼女を寝取られたことを知った大越専務がヤクザを差し向け、拉致される羽目に。小指を詰めるか、同じく拉致された京子を助けるかの選択を迫られた際に自分の身の安全を選んだため、助かった後に京子から見捨てられた。

極東商事社長 (きょくとうしょうじしゃちょう)

大会社極東商事の社長。悪徳業界誌『財界X』主幹の恐喝屋、後藤浩平に会社の弱みを握られ、その代理人として現れた刑務所仲間の花輪竜之介と交渉する中で、花輪京子が立ち上げたクラブ花輪の客となることを約束する。そのため大物社長が、初めて銀座のクラブの客になったと話題になった。 以後もクラブ花輪の常連となって京子とも肌を触れ合わせるが、結局花輪竜之介に弱みを握られていることを知った京子からただの金づるにされてしまう。

あずさジョージ

クラブ花輪の常連客となったキザな人気作詞家。愛車はポルシェ・ターボ。花輪竜之介から婚約を伝えられて動揺する花輪京子を、そうとは知らずに誘って恋仲となった。だが京子が映画の大物スター丘田公次に誘い出されたため、心変わりを恐れて逆上。丘田に喧嘩を仕掛けて殴り倒され、警察沙汰になったうえに新聞報道されてしまうが、面子を立ててくれた丘田の手の内に落ちて示談に応じている。 以後花輪京子から身を引いた。

秋吉 陽子 (あきよし ようこ)

花輪竜之介に連れられてクラブ花輪に現れ、婚約者として花輪京子に紹介された室内インテリアデザイナー。だが後に竜之介に頼まれて婚約者を演じたと京子に打ち明け、本当に竜之介を好きだったこと、それなのに竜之介が去ってしまったことを伝えている。

丘田 公次 (おかだ こうじ)

女優の6割はものにしたと噂される、ニヒルでクールな大物映画スター。クラブ花輪で一目惚れした花輪京子を誘い出し、その時、彼女の恋人だった人気作詞家のあずさジョージから喧嘩を仕掛けられるも、巧みに示談に持ち込んで京子を感心させた。多くの女性と関係したが、全員に心底惚れこんでいると聞かされた京子は丘田が単なるプレイボーイでないと知り、関係しただけでなく添い遂げることを自分に誓った。 母とその妹が日本人とフランス人のハーフで、自分が幼い時に憧れていたその美しい叔母が下劣な男と駆け落ちし、命を落としたことから、美しいものを庇うことを信念としている。京子と愛しあうようになった後、仕事を次々にキャンセル。 さらにヨーロッパに旅立とうとしたが、花輪竜之介からとりなされ、京子と二人でヨーロッパに旅立っていった。

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