国が燃える

国が燃える

満州開拓の指導者の1人である官僚・本多勇介を主人公に、日本の満州統治とその前後の戦乱などを描いた大河歴史漫画。登場人物の多くが実在の人物であり、ストーリーもほとんどは史実をなぞっている。

正式名称
国が燃える
ふりがな
くにがもえる
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

エリート官吏であるが、小作の出である本多勇介は日本に貧しい農民が多いのを憂え、満州開拓事業に新たな時代を夢見て満州へ向かう。一方、松前洋平は財閥の御曹司として生まれた身であったが、大アジアの繁栄という壮大な理想を掲げ、馬賊になると宣言して大陸に渡った。洋平の幼なじみであり、また勇介の見合い相手である川島翔子は、彼ら2人から求愛されるが、自らの意思で勇介を選び、満州へと渡りその妻となる。

しかし大きな歴史のうねりは、そんな彼らを巻き込んで激動の時代へと向かおうとしていた。波乱の第二次世界大戦の始まりである。

登場人物・キャラクター

本多 勇介 (ほんだ ゆうすけ)

日本人の男性で、小作農の子として生まれた。その学力を買われて豪農の養子となり、帝国大学を卒業して、高級官僚となる。自分の出自のこともあり、貧しい農民たちのことを憂える性格と思想の持ち主で、理想の新天地を満州に求め、満州開拓事業を担う指導者の1人として活動。根が理想主義者であるため、アカ(共産主義者)と後ろ指を指されることもあったが、終戦後にソ連の捕虜となった後は、共産主義に反発する言動を取ったためにシベリアに送られた。

松前 洋平 (まつまえ ようへい)

日本人の男性で、財閥の御曹司。川島翔子とは幼なじみであった。馬賊になって領土を切り取り、果ては中華皇帝になってやる、とうそぶいて大陸に渡ったが、本心ではアジア人全体が和して暮らせる世界の到来を夢見ていた。蒋介石の腹心として活躍、日本人と中国人が全面戦争に突入しなくて済む道を模索し続けた。第二次世界大戦の終結後、再び始まった中国の内戦の中で戦死した。 ある時期から、馬頭山という中国風の名を自ら名乗っていた。

川島 翔子 (かわしま しょうこ)

日本人の女性で、華族・川島家の令嬢。見合いで本多勇介と知り合う。その見合いというのは形ばかりのもので、川島家には実際に勇介と翔子を結婚させる意図はなかったのだが、2人は結局恋に落ち、翔子は自らの意思で勇介のいる満州へと渡り、その妻となった。

本多 正太郎 (ほんだ しょうたろう)

本多勇介と川島翔子の間に生まれた長男。育ちは満州であるが、本人自身は自分は日本人であるという意識が強く、満州国軍に入隊させたいという勇介の意向に逆らい、志願して日本海軍のパイロットとなった。米軍との戦いで戦死。

川島 忠俊 (かわしま ただとし)

日本人の男性で、川島翔子の兄。職業は海軍の軍人で、パイロット。気さくで寛容な性格の持ち主で、翔子と本多勇介の結婚を積極的に後押しした。両親が身分違いであると言って翔子を離縁させようとした時も翔子と勇介の側に立った。のちに太平洋戦争が始まると、真珠湾にて戦死を遂げた。

呂 明花 (ろ めいか)

中国人の女性。当初は南満州鉄道の副社長の秘書をしていたが、実は愛新覚羅溥儀の縁戚に連なる身、つまり滅亡した清王朝の皇族の一員で、実態としてはスパイであった。本多勇介に恋したが振られ、のちに松前洋平と恋仲となり、その最期まで運命をともにした。

石原 莞爾 (いしはら かんじ)

日本軍人の男性。関東軍参謀であり、その中枢の権力を掌握している。本多勇介とは同郷のよしみもあって親しい間柄。実質的に、満州を日本の植民地とした張本人であるが、満州国の維持のためには中国との協調が必要不可欠であるとも考えており、日本がその後中国との全面戦争を開始するに至り、その元凶となってしまった己の所業を悔いるようになった。 昭和24年、失意のうちに病没。実在の人物、石原莞爾がモデル。

甘粕 正彦 (あまかす まさひこ)

日本軍人の男性。関東軍に所属し、日本による満州経営の立役者として、さまざまな場所で暗躍する。本多勇介とは親しく、本多家と家族ぐるみの付き合いをしている。第二次世界大戦の終結後まもない昭和20年8月20日、服毒自殺を遂げる。実在の人物、甘粕正彦がモデル。

愛新覚羅 溥儀 (あいしんかくら ふぎ)

中国・清朝の「最後の皇帝」として知られる宣統帝その人であり、のちに満州国の皇帝となる男性。蒋介石の率いる国民党が父祖の墓をないがしろにし、清朝の遺産をほしいままとすることに憤り、日本につく道を選んだが、その身は傀儡に過ぎず、ほぼ何の実権も与えられることはなかった。実在の人物、愛新覚羅溥儀がモデル。

蒋 介石 (しょう かいせき)

中国人の男性で、国民党の指導者。強大な力を持った軍人・政治家ではあるが、欲深い野心家であり、周囲からの評判は芳しくない。松前洋平を重用している。張学良に説得され、毛沢東率いる共産党との対日共闘を決意する。実在の人物、蒋介石がモデル。

張 作霖 (ちょう さくりん)

中国人の男性で、奉天軍閥の首領。満州に強大な軍事的権力を掌握しており、関東軍とは協力関係にあることもあったが、最終的には日本の満州進出の障害であるとされ、暗殺された。子に張学良がいる。実在の人物、張作霖がモデル。

張 学良 (ちょう がくりょう)

中国人の男性で、張作霖の息子。アヘン中毒の凡庸な人物であると侮られていたが、父親の死後に隠されていた才覚を発揮して奉天軍閥の実権を掌握、そして蒋介石率いる国民党に帰順する。蒋介石と毛沢東による対日共同戦線、いわゆる「国共合作」の立役者となった。実在の人物、張学良がモデル。

集団・組織

関東軍 (かんとうぐん)

日本が権利を持っていた満州の鉄道の権益を守るための独立守備隊が統合されて成立した組織。名目上は日本軍に属しているが、独立的な性向が非常に強く、日本本国はその制御に非常に手を焼いた。しかもその傾向は、満州国の建国後にはさらに悪化した。石原莞爾が内部で権力を握っている。

場所

満州 (まんしゅう)

中国の東北部に当たる地域。「満蒙」と呼ぶ場合もあり、この場合は内蒙古地区の一部が加えられる。清朝はそもそも満州のあたりで勃興した国であるが、歴史的には「万里の長城の外側」であり、漢民族の領域ではないと主張された。この地に、愛新覚羅溥儀を傀儡の皇帝とした「満州国」が建てられる。

イベント・出来事

満州事変 (まんしゅうじへん)

「柳条湖事件」、すなわち関東軍による自作自演の鉄道爆破を引き金として起こされた戦乱。関東軍はこれにより満州を事実上の支配下に治めた。石原莞爾が、蒋介石の使者である松前洋平から、国民党軍は満州には関与しないとの密約を取りつけたうえで主導した。

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