概要・あらすじ
七尾ミサキは世界が狂っていると感じていた。狂った世界を恐れるミサキは、自分の前に現れて自宅に住み着くようになった悪魔べへりんに、いかに世界が狂っているかを説き始める。べへりんが「世界の狂い」を認めるにつれ魔力が溜まることを知ったミサキは、いつかこの世界を正常に戻せるほどの力を得るかも知れないと考え、狂った話を仕入れてはべへりんに語りかける。
登場人物・キャラクター
七尾 ミサキ (ななお みさき)
頭頂部が角のように尖った、ショートカットの女子中学生。小学校1年生の時に両親を亡くしているが、その後どうやって生活していたのかなど、613以前の記憶が抜け落ちている。居住している街が狂っていることに唯一気付いている人間という自覚があり、べへりんに「自分ではなく街中の人間が狂っている」と信じさせ、べへりんの魔力を用いて街を正常に戻そうと考えている。 七尾ミナトという姉がいたが、当初は完全にその存在すら忘れており、べへりんの魔力を使っても断片的にしか思い出していない。なお、かつては頭頂部は尖っていなかった。
べへりん
七尾ミサキの家に住み着くようになった、カバに似た頭部と肥満体型の人の体を持つ生き物。悪魔「ベヘモス」に似ていることから、ミサキに「べへりん」と呼ばれている。額には縦型になった第3の目があり、ミサキが語る「周囲が狂っている」という話を信じるにつれじわじわと開き、魔力が溜まっていく。ただしミサキの危機を救うために魔力を使うことも多く、なかなか全開には至らない。 怪談を愛好している。
ゴトちゃん
七尾ミサキの親友で、同じ中学に通う少女。怪談「ビクの生首」の内容を知っており、校庭の掃除中にミサキに語って聞かせようとしたところで上階から落ちてきた机に直撃され、入院した。転院後ミサキの前から姿を消していたが、ある時ミサキを模した粘土像をミサキの家の前に置くことで、その存在をアピールし始める。
戸田 (とだ)
七尾ミサキが中学2年生に進級してクラスメイトになった少女。柔和な顔立ちをしているが、気にくわない相手には歯に衣着せない言葉ではっきりと拒絶する。またヒトモドキを「家族に引き渡さず匿う」という建前で戸田自身が保護した後、すぐに家族に引き渡す冷酷な面もある。
藪中 かすみ (やぶなか かすみ)
七尾ミサキ以外で、街が狂っていると認識している少女。ミサキとは別の学校に通っていて、校内では非常におとなしく振る舞っており、控えめな生徒として遠巻きにされている。しかし、実際は常に特殊警棒を携帯しており、狂っていると判断した人間には容赦なく暴力を振るう。周囲が自分を監視していると思い込んだことから街が狂っていることに気付いたと語り、その証拠として自分を監視していたネズミの目を抜き取り、持ち歩いている。 未道未先を激しく憎んでいる。
先生 (せんせい)
七尾ミサキが通う中学校で、図書委員の顧問をしている中肉中背の女性教師。ミサキが図書委員だった際に、ミサキが「ビクの生首」と書かれた本のカバーを発見したのを見て激しく動揺した。べへりんに「ビクの生首」の話を語り尽くしたゴトちゃんを、真中サトミ、ばんさちゃんの中の人を利用して殺害しようとする。
真中 サトミ (まなか さとみ)
七尾ミサキの通う中学でかつて数学教諭をしていた女性で、ばんさちゃんの中の人の妹。おとなしい外見のため生徒たちから軽んじられ、たびたび授業を中断させられていた。その理由が「困ってる顔が面白い」からだと知ってからは、ペストマスクを被って授業をしていた。その後教師を辞め、殺しても問題ないような人間を殺害して回っている。
ばんさちゃんの中の人 (ばんさちゃんのなかのひと)
七尾ミサキが暮らしている街のマスコットキャラクター「ばんさちゃん」の着ぐるみの中に入っている女性。真中サトミの姉でもともとは優しい人物だったらしいが、613をきっかけにおかしくなったとされる。髪が抜け落ち目が虚ろになった痩せた女性で、子供の写真の切り抜きを食べては、本物の子供を食べる欲求を我慢している。 未道未先を眼前にすると恭しく拝み、涙ながらに「みみみ」と呟き続ける。
降羽 奈夢 (ふりば なむ)
七尾ミサキの通う中学で「超心理研究同好会」の会長を務めている女子。人間の感情に強い興味を持ち、究極に怖いものを調べるために藤原エイマを拉致し、監禁している。エイマ以外の人間も、折に触れて降羽奈夢に拉致されている。
セブンス
数字の「7」を崇拝している殺人鬼の男性。かつてバス放火事件に居合わせ、1人だけ生還した。その際、前から7番目の席に着席し、使用路線が7号線、犯行時刻が7時7分だったことから「7」に救われたと考えており、名前に「七」や「ナナ」が入った人物を「7」を象ったナタを用いて7つに分断し、生け贄に捧げている。
未道 未先 (みどう みさき)
613に何かを語り、世界を狂わせた元凶と考えられている男性。何をしたか、何を話したかは明らかになっていないが、多くの人間から崇拝されている反面、藪中かすみをはじめとする多くの人間から恨みを買っている。現在は見張りをつけられて入院という名目の監禁状態にあるが、時おり脱走して外に出向いている。
咲理 (さくり)
中学生の女子で、七尾ミサキのクラスメイト。優しく温和な性格で周囲から頼りにされていたが、ある日学校に自分のストレスを引き受けるためと称してぬいぐるみを持ち込み、カッターで斬りつけるなどの暴行を行う。
かぶりのおっさん
七尾ミサキの通学路の途中にある家の主人。リストラに遭って以降、常に頭に段ボールや包装紙などを被って玄関先に座り込んでいる男性。機嫌が悪かったミサキが通学鞄を投げつけたこともあり、以降はその通学鞄を被り続けている。
鹿島 ひたち (かしま ひたち)
中学生の女子で、七尾ミサキの隣のクラスに所属している。ツインテールにリボンの付いたキャスケット帽を被り、眼鏡とマフラー、ヘッドフォンを身に着け、関西弁でしゃべる。これらはすべて、二次元キャラクターを愛する幼なじみの男子に好かれるためのもの。誤って幼なじみの男子を殺してしまい、捕まることも勝手な憶測を吹聴されることも嫌い、ミサキに真実を告げて姿をくらました。 以降は都市伝説「モエヅメさん」として語られている。
みの男 (みのおとこ)
七尾ミサキを車で引っ掛け、病院に連れて行くといって山中に拉致したサラリーマン風の青年。ミサキと2人きりになると目の焦点が合わずうつろになり、唇が半開きの状態になった。逃げ出したミサキを探す際には、ブリーフ一丁で肩から下の全身に平仮名の「み」と書き殴った姿となる。
鉄子 (てつこ)
中学生の女子で、七尾ミサキのクラスメイト。以前から「モカ」という少女と仲がいいことで知られている。冗談でモカの耳を噛んだ際、いい味がしたと言って、以降ことあるごとにモカの耳を噛んでいる。また、モカの耳を噛むのをやめると震えが止まらなくなる禁断症状が出る。
カワイイオバサン
七尾ミサキの家の近所にある病院跡に住む肥満体型の女性で、少女趣味な洋服を着ている。「カワイイ」と呟きながら人形のようなものをベビーカーに乗せて近所を散歩しているが、その人形の正体は、義父母や夫の目や肌、髪などを組み合わせて作ったものだった。
安達 いわて (あだち いわて)
藪中かすみのクラスメイトで、ずっと学校を休んでいる小柄な少女。街が狂っていることに気付いている人間を「覚醒している」と称している。現在の狂っている街を吹き飛ばそうと、祖父が30年かけて製作したという爆弾を使用しようと考えている。
雉野 すず (きじの すず)
中学生の女子で、中学1年時は七尾ミサキのクラスメイトだった。髪型はベリーショート。口が悪く、ミサキと口論した結果、3日間の停学処分を受けた。その間に、かねてから口の悪さを注意していた両親によってすべての歯と舌を除去された。
酔仁バーガーの店主 (すいじんばーがーのてんしゅ)
七尾ミサキがアルバイトの面接を受けた「酔仁バーガー」の店主。恰幅が良く愛想のいい男性で、常に大きな声で話す。接客スタッフとしては不採用としたものの、ミサキに「特別なバイト」を任せる。妻帯者らしいが、最近妻がいなくなり、人手不足だと語っている。
三河 ふみえ (みかわ ふみえ)
藪中かすみのクラスメイトで、隣の席に座っている少女。「寝ている時間がもったいない」という理由から、連続不眠を実行していた。7日目を過ぎた頃から赤いアルパカなどの幻覚を見始め、25日目に不注意からシャープペンシルを右目に突き刺してしまい、失明している。
ヒトモドキ
「人間のようなもの」として捜索の張り紙が出されている、目の周りに巨大な隈のある男性。小さな頃から家の風呂場に閉じ込められ家族から虐待されていたところを逃げ出し、七尾ミサキの通う中学校の倉庫に隠れていた。一時は戸田が家に連れ帰ったが、その後家族に引き渡されることとなった。
岡村 まこ (おかむら まこ)
中学生の女子で、七尾ミサキのクラスメイト。肥満体型の少女だったが、動画サイトで「おにくでりしゃす」「ケーキでりしゃす」というグロテスクな動画を見て以降、肉やケーキを食べるのをやめ、非常にスリムな体型になった。肥満体型時は、クラスメイトから「おかあちゃん」と呼ばれていた。
藤原 エイマ (ふじわら えいま)
暴力、権力、刑務所や死など、すべてを恐れないと自負している男性。殺人を犯し、警察に捕まる前に婦女暴行を働こうと降羽奈夢に襲いかかったところ反対に拉致された。その結果、「究極に怖いもの」を探る実験台にされている。
狩尾 (かりお)
七尾ミサキの通う中学校で理科を教えている男性教諭。2年に進級したミサキのクラス担任を務める。甘いマスクに加え、授業をきりのいいところで切り上げ、余り時間に狩尾の友人に起こった話という体で怪談を披露することなどから人気がある。しかし、実はその怪談の一部は狩尾本人の体験談であることが示唆されている。
二本松 (にほんまつ)
藪中かすみのクラスメイトの少女。非常に明るい性格だが自殺を計画しており、校内の至る所に、自殺にふさわしいと思われる場所を示すマークを書き込んでいた。かすみが自殺を思いとどまるよう適当に慰めたところ、それにかこつけて、かすみの机の上で首を吊り割腹して自殺した。
ボストンじじい
公園に現れる、ボストンバッグを持った老人。無邪気な子供が好きで、子供に会うと無条件で金銭を配っている。しかし手渡される金額が少ないと文句を言うなど、「もらえることが当たり前」と考えるようになった子供は無邪気ではないとして、ボストンバッグに入れて拉致している。
モシゲ
七尾ミサキがコインランドリーで出会った男性。「ミツグサ」という恋愛小説と愛し合っていると考えている。ミサキの記憶の空白期間を知っている人物で、かつて七尾ミナトに恋していたと語ることで、ミサキに姉が存在していたことを教えた。
小久保店長
小久保店長の本屋で店長を務めている、口ひげを生やした男性。レジの上に人の腕が吊されており、「悪質な万引きを行った人物の腕を切断したもの」と書いて万引き犯に対する牽制をしていた。腕が本物と発覚してから店は閉店したが、のちに全国の商店で小久保店長のやり方を支持する表示がされるようになった。
七尾 ミナト (ななお みなと)
七尾ミサキの姉とされる人物。両親が死亡した当時ミサキは小学1年生だったが、七尾ミナトは葬儀時に喪服を着用していることから、年の差はかなり開いているものと推測される。当初ミサキからその存在を忘れ去られていたが、べへりんの魔力により、その記憶を断片的に思い出すようになった。613に関連して、首を吊って死亡したことが判明している。
場所
酔仁バーガー (すいじんばーがー)
手作りハンバーガーの店で、七尾ミサキがアルバイトの面接に行った。ミサキは接客スタッフとしては不採用となったものの、「特別なバイト」として雇われ、毎日小さな箱を受け取り、できるだけ遠く、毎回違うゴミ箱に捨ててくるという仕事を任されることとなった。
町外れの廃ホテル (まちはずれのはいほてる)
ガラス戸や窓がすべて割れている廃ホテル。エントランスの脇に「女神おります」と書かれており、ホテルの中にいる女神の後ろ髪を触ると、好きな相手と即日両想いになれるという噂がある。しかしその噂には続きがあり、女神の後ろ髪を触ろうと追いかけた者は、罠にかけられて殺されるという怪談にもなっている。
小久保店長の本屋 (こくぼてんちょうのほんや)
七尾ミサキがたまに立ち寄る書店。小久保店長が店長を務めている。レジの上に人の腕が吊されており、「悪質な万引きを行った人物の腕を切断したもの」と書かれている。当初は万引きを牽制する偽物とされていたが防腐処理がうまくされておらず、腐臭が漂い始めたことから本物と発覚。これが原因で店は閉店することとなった。
イベント・出来事
613
前年の6月13日を指す。未道未先が何かを語り、それによって世界に異変が生じたきっかけの日とされている。七尾ミサキがこのことを誰に聞いても、無言で口を開閉するだけである。ビクの生首と密接な関係があるらしいことが繰り返し示唆されている。
その他キーワード
ダイヤル式金庫 (だいやるしききんこ)
漫画を探していた倉庫の中で、七尾ミサキが発見したダイヤル式の金庫。ミサキは姉である七尾ミナトのものと考え、ミナトの死の真相を知るために開こうとしたが失敗に終わる。ミサキがその場から去った後にべへりんが開けると、中には「神様、どうすればみさきを殺せますか?」と書かれたメモが納められていた。
ビクの生首 (びくのなまくび)
七尾ミサキが図書委員だった際に見つけた、怪談の本。だが、カバーのみで、本の中身はない。先生は、タイトルについてすら考えてはいけないし、人に話してもいけないとミサキに厳しく言い含める。内容を知るゴトちゃんが「関西の田舎に嫁いできた新妻が村の会合に呼ばれた」というところまでミサキに語って聞かせたが、その直後に頭上から降ってきた机がゴトちゃんを直撃し、入院を強いられることとなった。
窮食ゲーム (きゅうしょくげーむ)
中学2年生になった七尾ミサキのクラスで流行した心理ゲーム。クラスメイトの名簿を用意し、「クラス全員で無人島に漂着した」という前提で、誰から食料にしていくか順位をつけていく。のちにルールが付け足され、対戦もできるようになった。早く殺して食べる順をつけるということでミサキは「嫌いな人間の順序を決める」と解釈していたが、「殺してでも食べたい好きな人間の順序」が正解だった。 2か月間流行した後、校則により禁止される。