あらすじ
テストが行われる当日。登校中にクラスメイトの大森と出会った澤井は、テスト勉強をまったくしていないヤバい状態だと、互いの苦境をネタにした会話で大いに盛り上がる。しかし大森は唐突に、本当はヤバい状態でも余裕ある状態でもない、いわばプラマイゼロの状態であり、一度「テストヤバいトーク」で盛り上がってみただけだったと澤井に語る。その上で、ヤバいと言いつつテストで75点を取ってしまうお決まりパターンはもう飽きたと宣言。大森はふつうだと言いつつ本当に平均点の62点を取る、プラマイゼロからプラマイゼロのパターンが見たいと澤井に力説する。そして大森は澤井に対し、「ヤバイって言ってるけど本当のところお前もそんなにヤバくないでしょ?」としつこく問い詰め、望みどおり「話を盛ってる」という言質を取るのだった。(エピソード1「テスト当日の朝」)
下校していた大森は、クラスメイトの女子二人が連れ立って前を歩いているのを目撃する。比較的狭い道幅の道路で、二人の女子をどんな態度と顔で追い抜けばいいかわからなかった大森は、彼女たちとつかず離れずの位置を、スマホの音楽に夢中になっているフリをしながら淡々と歩き続ける。時おり後ろを振り向く女子たちのプレッシャーを受けながらも、何食わぬ顔をしてやり過ごしていた大森の前に、同じく下校中だったクラスメイトの男子が話しかけてくる。彼の登場で勇気百倍となった大森は、そのクラスメイトの男子と大声で数学の話をして、ドヤ顔を決めながら女子二人を追い抜くのだった。(エピソード38「下校の追い抜き」)
登場人物・キャラクター
大森 (おおもり)
とある高校に通う男子。白い体に黒色の手足、さらに頭部に烏帽子(えぼし)のような突起物が付いている謎の人物。一見するとマスコット人形のような姿をしているため人間とは思えないが、周囲からはごくふつうの男子高校生として扱われている。明るく社交的な性格ながら、繊細な一面もあり、物事を深刻に受け止めすぎるきらいがある。学校ではクラスメイトで友人の澤井と行動を共にすることが多い。日常生活の中で抱いたちょっとしたあるあるネタをもとに、大きく話を展開させることのできる想像力の持ち主。想像力を膨らませた話をぶつける相手はもっぱら澤井で、我を忘れて持論を熱弁することが多い。「日本人の8割は一人でいる時に落ちたものをふつうに食ってる」と根拠ゼロで断言するなど、思い込みも激しい。音楽が大好きで、一人でいる時はスマホで音楽を聴き、自分の世界に籠っていることが多い。マイナー歌手の「吉野円」の大ファン。
澤井 (さわい)
大森と同じ高校に通う男子。大森のクラスメイト。茶髪でお洒落(しゃれ)な雰囲気を漂わせている。大らかな優しい性格で、さらに気が利くが、やや人に流されやすいところがある。大森とは仲がよく、いつもとりとめのない会話をしている。基本的に聞き上手で、日常のあるあるネタを持ち前の想像力を膨らませて、よくわからない持論をぶつけてくる大森に対しては聞き役兼ツッコミ役を担っている。特技は口笛ながら微妙なうまさのため、大森からはもどかしい褒め方をされている。
山本 美晴 (やまもと みはる)
大森と同じ高校に通う女子。大森のあこがれの存在。かわいらしい顔立ちで清楚(せいそ)な雰囲気を漂わせているが、そのルックスとは裏腹に、内心ではいつも奇妙なことばかりを考えている変人。人生を退屈にしないためという理由で登下校中に5秒間目を閉じて歩き、何事もなかった場合には無事生還を喜ぶなど、不可解な行動を繰り返している。目を閉じて壁に突っ込む瞬間を大森に目撃され、表面上は取り繕ったものの、心の中で奇行を見られたことに対して羞恥心に苛(さいな)まれていた。
村木 (むらき)
大森と同じ高校に通う男子。大森のクラスメイト。サッカー部に所属している。スタイルのいい長身のイケメンで、口数が少なくあまり感情を表に出さないクールな性格をしている。クラスではいつも同じサッカー部の部員としゃべっている。マイナー歌手の「吉野円」を聴いていたことが縁となり、接点のほとんどなかった大森と少しだけなかよくなった。