概要・あらすじ
工業都市・川崎の八州製鉄に勤務する大樹(坂本大樹)は、前年の学生柔道選手権で優勝した逸材。実直な大樹は待てと言われれば何時間でも待ち、会社でも上司の言うことには素直に従う。一本背負いに磨きをかけようと先輩の神奈川県警警察官・高木(高木誠次)にコーチを依頼するが、高木は柔道と縁を切ったという。
社同僚で柔道部の先輩・沢島一彦が引退し、講道館杯への出場を辞退。坂本大樹は、その枠に推薦され、講道館杯に出場することになった。柔道界の頂点・西条大学教員・周防又三郎に練習を申し込むが、彼から一本背負いに拘るなと冷たく言い放たれる。しかし大樹は一本背負いで世界を目指すことを宣言する。
登場人物・キャラクター
坂本 大樹 (さかもと たいき)
初登場時23歳。身長183㎝、体重100kg余りの体躯に、澄んだ瞳の男性。95kg超級の柔道選手。川崎の八州製鉄に勤務し、同社柔道部に所属する。金沢市出身で、祖父・坂本平八郎が営む坂本道場で柔道を学んだ。道場の先輩でもある高木誠次の一本背負いに憧れ、彼が学んだ金沢大学に進んだ。 高校時代は目立つ存在ではなかったが、祖父の死をきっかけに真剣に柔道に打ち込み、学生柔道選手権で優勝した。周囲の反対を押し切って一本背負いで世界の頂点を目指す。会社の柔道部の先輩・沢島一彦が講道館杯出場を辞退したため代わりに出場することになり、これをきっかけにして世界に向けての第一歩を歩み始める。 周囲が呆れる程素直な性格で、一度決めたことは守り通す。
高木 誠次 (たかぎ せいじ)
逞しい身体で口の周りに髭を生やした男性。厳しい表情でいることが多い。柔道四段。大樹(坂本大樹)の祖父・坂本平八郎から柔道を学んだ。金沢大学に進み、神奈川県警の警察官となった。 背負い投げの名手で、日本柔道界の頂点にたつ周防又三郎の宿命のライバル。しかし、婚約していた薗田夕紀との間に起きた出来事をきっかけに柔道から身を引いた。 大樹からコーチを依頼されても頑なに断り続けていたが、その後一転現役に復帰し、講道館杯に出場する。
周防 又三郎 (すおう またさぶろう)
現在の柔道界の頂点に立つ強豪。柔道四段。西条大学教員。二回連続でオリンピック代表となったが、いずれも銀メダルに終わり、アトランタオリンピックに執念を燃やしている。大樹(坂本大樹)の先輩・高木誠次とは宿敵同士。一本背負いにこだわる大樹に、そのままでは世界に通用しないと言い放つ。 怪我を抱えていたこともあり講道館杯の出場権は高木誠次に譲った。
朝岡 瑠璃 (あさおか るり)
ロングヘアにカチューシャをつけた女性。大学生で喫茶店コアでアルバイトをしている。店で先輩の高木(高木誠次)を待ち続ける大樹(坂本大樹)を見かけ、気にかけるようになる。大学では写真部に所属しており、最初は被写体として大樹を追うが、次第に恋に替わっていく。
八木 (やぎ)
川崎の八州製鉄に勤務する。営業一課の係長で大樹(坂本大樹)の上司。大樹が柔道を続けていることを快く思わず、何かと仕事をいいつけては練習時間を削ろうとする。会社を訪ねて来た瑠璃を気に入り、大樹の元を訪れる彼女を見つけては付きまとっている。
沢島 一彦 (さわしま かずひこ)
川崎の八州製鉄に勤務し、柔道で世界を目指していたが、腰の持病のために引退。同時に八州製鉄も退社する。大樹(坂本大樹)に底知れない素質を感じ、現役としての引導を渡されたと考えている。引退決意後の壮行会で、涙ながらに大樹にその想いをぶつけたが、その後自らの講道館杯出場権を大樹に譲った。
阪東 巌 (ばんどう いわお)
高木誠次と同じ神奈川県警の警察官。柔道四段。汚い手を平気で使い、除名一歩手前といわれる札付きだった。講道館杯の出場権を大樹(坂本大樹)に奪われたと思い込み、八州製鉄柔道部を訪れ大樹に試合を申し込む。しかし大樹の力に恐れをなし、その後一時は大樹を「坂本先生」と呼び、八州製鉄の柔道部に出入りする。
大山 一雄 (おおやま かずお)
初登場時26歳。八州製鉄柔道部員。大樹の3年先輩にあたる。通称「八州の小天狗」。60kg級でバルセロナオリンピックの代表となった実力者だったが、オリンピックを境に魂の抜けたような柔道になってしまった。先輩として大樹と共に行動し、助言を惜しまないが、一方で柔道を捨てきれない自分に悩んでいる。 その後、大樹の成長と共に柔道への情熱を取り戻していく。
薗田 夕紀 (そのだ ゆき)
かつて高木誠次の婚約者だったが、彼の前から姿を消した。八州製鉄の柔道場に阪東巌を訪ねてくるが、ゴタゴタの末大樹(坂本大樹)が高木に引き合わせる事になった。
内藤 一起 (ないとう かずき)
「薩摩の怪童」と呼ばれる日本柔道界期待の選手。大樹(坂本大樹)とは同期生。大松建設勤務。実力者だが、大樹とは対照的に遊び好きで酒癖も悪い。当初大樹を歯牙にもかけないほど舐めていたが、講道館杯で急成長した姿を見て警戒するようになる。
坂本 平八郎 (さかもと へいはちろう)
大樹(坂本大樹)の祖父。隻腕の柔道家として名を馳せ、金沢市で坂本道場を開いていた。大樹が高校2年生の時に81歳で他界する。