概要・あらすじ
全日本柔道選手権大会のとある地区予選に、異色の選手が現れた。とびを職業にする38歳の中年で、名を水澤完という。水澤は、優勝候補の巨漢を電光石火の関節技「速贄」で倒し、大会優勝をかっさらった。水澤は、古流柔術「守天流」の継承者で、今回の大会出場は、「守天流」の強さを世に知らしめるためだという。
その後も水澤は、現代柔道の総本山である興道館や、総合格闘技団体に挑戦していくが、しだいに「守天流」の秘密と、水澤の真の目的が明らかになっていく。
登場人物・キャラクター
水澤 完 (みずさわ かん)
38歳。とび職。伝説の古流柔術である守天流持国楼宗家。秘技を駆使して、柔道の総本山である興道館やグローブ空手の大会で暴れまわる。その目的は「守天流の強さを天下に知らしめるため」というが、真意は不明。
石尾 功 (いしお いさお)
水澤完の友人。伝説の柔術である守天流増長補宗家。「守天流の強さを世に知らしめる」という水澤の真意を掴めずにいるが、水澤を信じて、その手助けをする。
舘沢 顕 (たてざわ あきら)
「月刊柔道時報」の記者。全日本柔道選手権大会の地区予選を取材に訪れ、水澤完に出会う。以来、その不思議な技と守天流柔術の謎に惹かれ、水澤の取材を続ける。
巳堂 (みどう)
興道館の広報責任者。興道館の古い体質を一掃し、近代化を図ろうとする策略家で、ヘビのような狡猾さを持つ。興道館の段位を持たない水澤完に昇段審査を受けさせ、水澤が全日本柔道選手権大会に出場できないよう、潰そうとする。
水澤 映美 (みずさわ えみ)
主人公である水澤完の娘。父と二人で暮らし、身の回りの世話をする。また、守天流柔術についても熟知しており、父の試合には同行してセコンドの役割を果たす。
佐野 真道 (さの まさみち)
現代柔道の総本山である興道館館長。柔道技はもちろん、「形」として残る古流柔術にも精通する達人。「崩し」を不要とする一動作で投げる「無拍子投げ」を使う。興道館の昇段審査に訪れた水澤完と立ち合い、闘気のみによる戦いの結果、引き分ける。
松浦 泉 (まつうら いずみ)
「週刊実話マガジン実話チャンプ」の記者。舘沢顕と同じ大学のマスコミ研究会出身。特ダネやスキャンダル獲得のためには手段を選ばない女性。守天流柔術の秘密を暴くため、執拗に水澤完を探る。
牧場 敬之 (まきば たかゆき)
「トーナメントあらし」の異名を持つ空手家。独学の形稽古だけで、5年間不敗を守る天才。守天流柔術の暗黒面であり、技自体が人格を持った「多聞殺」に憑りつかれる。
集団・組織
興道館 (こうどうかん)
『関節王』に登場する組織。現代柔道の総本山。館長は佐野真道。世界100か国以上に支部を持ち、競技人口は6000万人を数える。現実に存在する「講道館」をモチーフにしていると思われる。
その他キーワード
速贄 (はやにえ)
『関節王』の用語。「守天流柔術持国楼・裏」に属する技。投げをうってきた相手の引き手を、柔道の基本技「手ほどき」の応用で切り、瞬時に脇固めを極める。投げ技の返し技として使用される関節技全般のことを「速贄」というため、様々なバリエーションがある。
招嵐 (しょうらん)
『関節王』の用語。「守天流柔術持国楼・表」に属する技。相手の手をクロスさせ、ひじ関節を極めながら、体落としで頭から落とす必殺技。
斬雪 (ざんせつ)
『関節王』の用語。「守天流柔術持国楼・裏」に属する技。相手の蹴りを両手で防ぎながら掴み、捻りを加えて投げ飛ばす。強力な回転により、相手の内靭帯は断裂してしまう。
九十九固め (つづらがため)
『関節王』の用語。「守天流柔術増長補」に属する技。ジグザグに腕、足を絡めて肘を極める立ち関節技。極められた相手は、ほどくことも倒れることも不可能。
虚月 (こげつ)
『関節王』の用語。「守天流柔術持国楼・裏」に属する技。相手と同体で落ちる際、着地と同時に肘を顔面に打ち込む技。柔道ルールでは認められないため、寸止めとなる。
弥勒鉾 (みろくぼう)
『関節王』の用語。「守天流柔術広目拳・裏」に属する、膝蹴りなどに対する逆当身(あてみ)の技法。弥勒菩薩のようなポーズで、肘を大腿部に打ち込む。
落葉 (らくよう)
『関節王』の用語。「守天流柔術広目拳」の奥伝。「死の舞踏」とも呼ばれ、完全に決まれば相手を死に至らしめる必殺技。守天流柔術広目拳の宗家しか使えない。足払いなどで、逆さに空中に浮かせた相手の急所(鳩尾、金的、脳天)を攻撃する。
守天流柔術 (しゅてんりゅうじゅうじゅつ)
『関節王』に登場する格闘技。1400年前、仏教とともに渡来した武術を元に、聖徳太子が編み出した柔術。関節技を根底とする不敗の格闘技。成立後すぐに三派に分かれ、投げ技中心の「持国楼」、固め技の「増長補」、当身を中心とした「広目拳」の技体系が確立した。また、この三派とは別に、相手を死に至らしめる殺法である「多聞殺」という技術体系がある。 しかし、強大になりすぎた「多聞殺」は、守天流の人間にすら制御不能となり、逆に人を支配しようとし、守天流本体を離れて独自の存在となった。