身分差を越えたシンデレラストーリー
本作は、女中と本家の後継者という身分差や年齢差のある結婚をテーマにしている。主人公のふきは、尋常小学校を卒業後、士族の名門、橘家に12年間仕えてきた女中。物語は、幼い頃にかわいがっていた6歳年下の橘家の次男、勇吾と、6年ぶりに再会するところから始まるシンデレラストーリー。厳しい身分制度が存在し、自由な結婚が許されなかった大正時代を背景に、二人がどのようにして幸せな未来をつかんでいくのかが丁寧に描かれている。また、服装や街並みなども繊細な筆致で表現されており、当時の美しい文化や風俗も大きな魅力の一つとなっている。
橘家の次男と女中、ふきの新婚生活
大正10年の東京市。士族の名家、橘家に仕える女中のふきは、急逝した父親が残した多額の借金のために縁談が破談となった過去を抱えながらも、日々懸命に奉公に励んでいた。そんな彼女の前に、かつて「坊ちゃん」と呼び慕い世話をした橘家の次男の勇吾が、帝国第一高校への進学のため北海道から帰京し、6年ぶりに再会を果たす。ふきの記憶にある泣き虫の少年ではなく、見違えるほど立派な青年へと成長していた。勇吾は、かつて「ねえや」と慕ったふきがまだ独身で苦労していることを知ると、すぐに結婚を申し込む。突然の求婚に戸惑いながらも、彼の真っ直ぐな思いを受け入れ、身分や年齢の壁を越えた二人の甘く幸せな新婚生活が始まる。
身分と年齢の壁を越えて紡ぐ二人の愛と絆
新婚生活が始まったばかりのふきは、年下ながらも真っすぐに愛情を示す勇吾に戸惑いを感じていた。しかし、身分の違いを気にして遠慮しがちだったふきの心は、勇吾の誠実で深い愛情と、つねに守ろうとする姿勢に少しずつほぐされていく。穏やかな日々の中で、ふきは節約上手だと勇吾に褒められる一方で、欲しい本があることをなかなか言い出せずにいた。そんな彼女が本屋の前で物憂げに佇(たたず)む姿を見かけた勇吾は、そのささやかな願いに気づき、ある行動に出る。身分や年齢の差という壁を感じながらも、お互いを大切に思い合う二人。日々の小さな出来事を通じて支え合い、その壁を乗り越え、幸せをつかんでいく二人の姿が見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
ふき
士族の名門、橘家に仕える女中。年齢は24歳。尋常小学校を卒業後、12年間ひたむきに奉公してきた。かつては当家の次男、勇吾の世話係として「ねえや」呼ばれ、彼の身の回りの世話をしていた。実は19歳の時に縁談がまとまり、結婚の予定だったが、実父の急死と高額な借金が判明したため、婚約は破棄されてしまう。稼ぎのほとんどが借金返済に消えるという過酷な状況にもかかわらず、決して明るさを失わない健気な女性。そんな中、帝国第一高校への進学のために帰京した勇吾と6年ぶりに再会。突然の結婚の申し込みに戸惑いながらも、彼女は勇吾の新妻として新たな人生を歩み始める。趣味は読書。
橘 勇吾 (たちなば ゆうご)
ふきが仕える橘家の次男。帝国第一高等学校に通っている。年齢は18歳。12歳の時、伯父の養子として北海道へ渡ったが、高校進学のため6年ぶりに東京へ戻ってきた。かつての甘えん坊で泣き虫だった面影はなく、がっしりとした体格と整った容姿の青年へと成長していた。幼い頃に世話をされていたふきと再会し、彼女がすでに結婚していると思い込んでいたが、実はまだ独身であることを知る。叔父から嫁探しを命じられていたこともあり、その場でふきに結婚を申し込んだ。ふきより6歳年下ながら、責任感が強くしっかり者で、ふきのつらい過去をすべて受け止め、彼女の心を優しく癒していく。
書誌情報
大正學生愛妻家 3巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2024-11-21発行、978-4065374580)
第2巻
(2025-04-23発行、978-4065390344)
第3巻
(2025-09-22発行、978-4065407011)
大正學生愛妻家 小冊子付き特装版 3巻 講談社〈プレミアムKC〉
第3巻
(2025-09-22発行、978-4065412756)







