将国のアルタイル

ルメリア大陸はバルトライン帝国とトルキエ将国、港湾都市国家や花の都共和国などが、それぞれ独自の文化文明を築きながら併存する架空の世界。その大陸の覇権を狙って動き出す帝国に対し、主人公が決死の覚悟で立ち向かって行く一大戦記ロマン。

正式名称
将国のアルタイル
ふりがな
しょうこくのあるたいる
作者
ジャンル
その他歴史・時代
レーベル
シリウスKC(講談社)
巻数
既刊19巻
関連商品
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概要・あらすじ

トルキエ歴75年、帝国歴451年、白砂糖月(シエケル)、後にメルリアナ大戦と呼ばれる戦火を引き起こす高度に政治的な事件が起こった。そのとき初めて将軍会議(デイワーン)に参加することになった主人公犬鷲のマフムート将軍が、若き希望の星となって帝国の侵略を阻む活躍を描く、壮大なストーリー。

登場人物・キャラクター

犬鷲のマフムート将軍 (いぬわしのまふむーとしょうぐん)

12年前の戦争で母親を亡くし、5歳でカリル将軍に拾われる。放鷲術(ヨル)を得意とするトゥグリル族出身だが、故郷は12年前の戦争で焼け野原になった。その記憶がマフムートに戦争を忌避させ、戦争を止めるために、若干17歳にしてトルキエ将国の十三将軍(ヴェズイール)にまで登り詰める原動力となった。 軽やかな金髪に碧眼、細身の美少年と言う外見でありながら、軍事訓練を受けて来た腕前は伊達ではなく、騎馬民族であるトルキエ将国の人間らしく馬術に長ける。また飼い馴らしたオスの犬鷲イスカンダルを用いての戦法は、幾度もマフムートを助けて来た。詩作が趣味。色恋沙汰には非常に疎い。理想を高く掲げつつも、現実を見据える眼力も持つ。

毒薬のザガノス将軍 (どくやくのざがのすしょうぐん)

14歳で十人隊長(ユキ・バシュ)を勤め、19歳で十三将軍(ヴェズイール)に昇り詰めた青年。主人公のマフムートが十三将軍に任命されたとき、彼は8年先んじてその任に就いていた。毒薬に限らず物質の調合、錬成、調査に通じており、ウラド王国の鳥肥(ステルコ)の正否を判断したのも彼。 冷徹な慧眼を持ち、策謀を練るのが得意。先を見通す能力から、耳役(クラック)と言う諜報組織を14歳の頃から組織し始め、マフムートが各国を渡り歩いて見聞を広げる際に役立った。黒髪に目元を覆われた陰気な印象の青年。帝国との駆け引きや戦略戦に一歩でもリードしようと知略を練る。

大都市のカリル将軍 (だいとしのかりるしょうぐん)

12年前の戦争を止められなかった当時から十三将軍(ヴェズイール)であった退官間近の人物。優しげな好々爺然とした風貌に、「君」「ボク」といった優しげな口調の穏健派。12年前の戦争で孤児となったマフムートを拾って、将軍(バシャ)になりたがった彼にその教育を受けさせたため慕われている。 とは言え、職務上はマフムートが将軍になってから初めて親身な話をするようになるところを見ると、公私混同はしない立派な人物。

ビルヒリオ・ルイ

バルトライン帝国大臣の1人であり、帝国が大陸の覇権を狙って各国に侵略戦争を仕掛ける裏の立役者でもある。小姓より早く起き、遅く寝ては、アルメリア大陸の地図を空で描き、皇帝に献上する毎日。帝国を「餓えた怪物」に例え、それが周囲の国々を喰らわずにはいられないように、バルトライン帝国はアルメリア大陸を全て平らげるまでは平穏はないものと思っている。 帝国の国庫が貧しているときも私財を投げ打ち、己の謀略を最後まで通そうとする。戦わなければ帝国は滅ぼされる、とまで言い切る。垂れ目の三白眼に鷲鼻、顎髭を生やした貴族然とした風貌。何処か影を持った面差しには病的なまでの信念が窺える。

ゴルドバルト11世

バルトライン帝国の皇帝。ビルヒリオ・ルイの活躍の前で影の薄い皇帝である。それもその筈、領土を広げるための軍事予算を捻出するので精一杯のバルトライン帝国は、常に貧窮している有様で、それをルイ家の財産が度々救って来たことで皇帝でも頭が上がらないのだ。また、ルイの陰謀が暴かれそうになると、それを庇ってトルキエ将国の言い分を丸呑みすることもあった。 皇帝として見劣りしない美髯の持ち主だが、苦虫を噛み潰したような表情には皇帝として、ルイに対する鬱屈を抱えているように見える。

レレデリク

帝国エルルバルデス領の女公爵であり、皇帝ゴルドバルト11世の姪に当たる。ルイの策略に従い何かとトルキエ将国の障害になっていたのは、自領が北方の厳しい自然環境の為に貧しく、凍死者を出すような有様であったため、帝国から新しい領土を得て、そこから出ようとしていた。 自ら野戦や危険な戦地に赴くお転婆娘。嫁の貰い手がなくなる、と皇帝に皮肉られている。ウェーブした黒髪を見事に伸ばした美女でありながら、かなり好戦的な女性。

グララット・ベルルリック

帝国エルルバルデス領の女公爵レレデリクに使える側近。央海(セントロ)海戦では自ら帝国海軍央海艦隊艦長付副官として指揮を執った。レレデリクと志を同じくする、冷徹な女副官。さりながら、レレデリクと身分を越えた友人であるかのように振る舞うことも。長く明るめの髪を結いもせず、気に入らない協力者を容易く消し去ることもする。

エレノア

バルトライン帝国ではなく、ルイ個人に雇われた赤蛇の剣(ロット・ウルム)の教団の1人。幾度も主人公マフムートを窮地に陥れながら破れているが、マフムートがトドメを刺さないばかりに執念深く付け狙う。ロット・ウルムは「製鉄の教団」とも言われ、鉄製武器の使い手としてこの大陸に比類ないとさえ言われている。 初登場ではおかっぱ頭に右目に眼帯をしていたが、2度目の登場では右半分の顔面を仮面のようなもので覆っている。

黒翼のスレイマン (こくよくのすれいまん)

主人公のマフムートと同じトゥグリル族出身の青年で、ザガノス将軍の作った諜報組織の目と耳の長官(ギヨス・クラック・バシュカン)である。12年前の戦争が起こったとき、彼は花の都(フローレンス)共和国にいて、名門貴族の1つに鷹匠として仕え、大陸各地を回っていた。 故郷が滅びたことに絶望していたところを毒薬のザガノス将軍に目をかけられ、密偵の役を引き受ける。短髪に無精髭が似合う優男。自由と芸術をこよなく愛するフローレンスの風潮に染まって軽佻浮薄な色男に見えるが、密偵の長官を任せられるだけあって危険な仕事にも躊躇しない肝っ玉の持ち主であり、頼りになる兄貴分。彼の相棒はカテリーナと言うメスの犬鷲。

キュロス

ルメリア大陸の南部に広がる央海(セントロ)を、東西に分つ要衝に位置する港湾都市国家燈台の都(ポイニキア)に住む、耳役(クラック)。また、ポイニキアの市長(カエサル)、アポロドロスの息子でもある。その父親を「権力に取り憑かれた豚野郎」とまでコケ下ろす。権力のためなら誰にでも平気で嘘を吐き、上に者にも下の者にも媚び諂い、賄賂は日常茶飯事、そんな父親が厭で、トルキエ将国の密偵となるようスレイマンに持ちかけられたときにも、喜んで引き受けた。 ポイニキアが帝国の手に落ちたことで主人公マフムートの従者として行動を共にするようになる。黒髪をトレッドヘアにして結い上げ、体中に刺青をしている。 町のゴロツキと仲が良く、キュロスが戻ってくる時は帝国からポイニキアを取り戻すときだ、仲間たちと約束する。

アビリガ

央海(セントロ)では軍事・経済第一と言われる海の都(ヴェネディック)共和国、その海の都艦隊船団長(カピタン)を勤めるシルヴェストロ・ブレガの私兵部隊長。両親は10年前、彼が13歳のときにサロス(央海を挟んだ南の中央に位置する国)の港で奴隷商人に売られた。 サロスから1人逃亡したアビリガは、偶然商船で通りがかったブレガにその武術の才を認められ、奴隷商人から買い取られることで助けられた。アビリガはその時の恩を非常に気に掛けている。だが、ブレガとヴェネディック元首の思惑から、主人公マフムートの従者としてヴェネディックを離れ、旅に出る。 目の縁にエジプトの壁画を思わせる独特な化粧を施し、浅黒く焼けた肌に長い手足を持つ。その長い手足を駆使した戦闘は眼にも止まらぬ早業。

シルヴェストロ・ブレガ

海の都(ヴェネディック)共和国艦隊の船団長(カピタン)であり、ブレガ商会の長官でもある。央海(セントロ)だけでなく大陸各地と通商国交する央海12都市国家にあっては、商品を運ぶ商人たち自らが自衛のために戦艦を操り戦うのが通例。ヴェネディックがバルトライン帝国かトルキエ将国につくか、それを見定めるためにブレガの懐刀とも言うべきアビリガを、主人公マフムートに付けるようにヴェネディック元首と共に図った。 髭面に蓬髪、海賊ルック、その上顔に大きな傷跡をもつ強面の男だが、理性的に国の未来を考える合理的な人物である。

アントニオ・ルチオ

海の都(ヴェネディック)共和国の元首(ドージェ)。帝国によって陥落したポイニキアとは友邦であり、二国間同盟を締結していた。しかし、例え相手が帝国であっても今後も通商公約を交わさねば、貿易国家であるヴェネディックの存続は危ぶまれる。戦わずして利益と安全が得られるのであれば、バルトライン帝国と手を結ぶことも厭わない、と言う考えの持ち主。 旧ポイニキアの副市長(マギストロス)とは往時からの友人であったが、理想で現実が見えなくなっていたために切り捨てざるを得なかった。後に、トルキエ将国・ウラド王国と、バルトライン帝国を取り囲む三国同盟を結ぶことになる。 金髪の巻き髪にアンニュイな瞳をした年若い青年。その外見の割に老長けた思考の持ち主。

水門のサルジャ将軍 (すいもんのさるじゃしょうぐん)

トルキエ将国十三将軍(ヴェズイール)の1人。毒薬のザガノス将軍を「成り上がり者」と称し、自らが名門の出であることに誇りを持っている青年。トルキエ将国と、四将国の両方を信じ愛した結果が、主人公マフムートたちに課せられた四将国の将王(スルタン)を内乱によって退位させる策に、更なる戦乱を巻き起こした。 最期は、ムズラク将国将王(スルタン)バラバンによって非業の死を遂げる。トルキエ将国の中でも名門と歌われる水門家や四将国の部族が過去の栄華に縋る様は、未来を見据えていたザガノス将軍には愚昧なものに見えた。明るい栗毛の髪の持ち主で、上品な物腰に自信を漲らせている。

ニキ

商業都市国家銀色の都(アルギュロス)の商人、バフラーム商隊(キャラバン)の娘。唯一の肉親である父親を亡くしたため、アルギュロスでの商業許可証である手形(ズアーツク)を有した手形商(ゴースチ)であるにも関わらず、商売ができなくなったところで、主人公マフムートと知り合う。 今まで見た事のない世界を見せてやる、そういうマフムートの言葉に、父が亡くなった途端手の平を返したように自分から離れて行ったアルギュロスの商人たちを見返してやる、という決意を胸に、ニキは新たな商売に乗り出して行く。明るく長い髪をいくつもの三つ編みにして束ね、帽子の中にまとめている。細身の少女の割りに体術や武術に優れ、並み居る商人たちを叩きのめしてみせるほどの跳ねっ返り。

ワン・イーシン老師

20年前、東の大国大秦から商業都市国家銀色の都(アルギュロス)へやって来た老齢の大秦人。大秦と通商する商隊(キャラバン)を招待しては故郷の話を聞くのが趣味。ニキの父親とは特に親しくしていて、ニキに請われるままに大秦の武器の扱いを教えてやった当人でもある。 昔は、侍衛親軍都指揮使、つまり皇帝陛下の親衛隊長を勤めていた武人だが、戦で右足をなくしたため現役を退いて久しい。マフムートが持ちかけた大秦とニキ商隊との通商に一役買って出た。すでにたるんでしまった老体には、無数の傷跡がある。髭を生やし髷を結った白髪に優しく細めた目の持ち主で、一見害のないただの老人に見えるが、マフムートの真意を汲み取って、それに答えてみせた肝の据わった人物である。

マルギット

ムズラク将国(四将国の1つ)の北、国境を接するウラド王国の大臣(ヴォイヴォード)であり、国王の第4王女でもあり、また耳役(クラック)でもある少女。厳格な鎖国体制のウラド王国にあって、対トルキエ将国交渉大臣(コンヴォルビーレ・ヴォイヴォード・ク・トルキーア)と言う名の役職を務め、外国人を極端に警戒する国風の中でも、主人公マフムートらに友好的な態度を取る。 厳冬と急峻な山々に囲まれ、産業や資源に乏しいウラドの地にあって、いつか年老いたら雪原に独り赴いて命を絶つ、と言う末期を憂えていた。金髪に、全身重厚な宝飾品で身を飾った王女として相応しい気品を持つが、明朗快活な性格は元来のものであり、役職上、北の大地に籠りきりではなかったお陰。 東方世界はウラド王国の生命線、と言って主人公マフムートの旅に同行することに。

ジグモンド3世

古代ポイニキア帝国の末裔であるウラド王国の国王。同盟と交易を重視したため古代ポイニキア帝国は衰退した、と持論を唱えるが、央海(セントロ)では、その同盟重視の政策は賞賛の的だ。400年前、バルトライン帝国の台頭に対抗してウラドが国となって以来、北方の土地の森林は減り土地は瘦せ、ウラド王国は貧困を極めていた。 ジグモンド3世の父、祖父、曾祖父も、自ら雪原に行って命を終わらせた。自分もそうするつもりだった。だが、主人公マフムートたちが見つけた長大な鳥追海岸に堆積する鳥肥(ステルコ)によって、国力を回復させる見通しが得られると、バルトライン帝国に与することをやめ、トルキエ将国と手を組むことに決めた。 黒い長髪に美髯を蓄えた美丈夫。鷹狩りを嗜み、オオタカのエリジェベートを愛鳥としている。

エイゼンシュテイン公爵

バルトライン帝国元老。真っ白な蓬髪、小柄な体躯、そして車椅子に頼らざるを得ないご老体。戦争推進派筆頭であるルイに最後まで反対し続けた穏健派である。常備軍を削減し内政の充実に向けることを皇帝に進言するも、ルイによる帝国の有り様に関する自説に説き伏せられてしまう。 帝国とは、果てることなき軍の拡大と侵略を宿命とし、それなくしては国としての体制を維持できない、「飽くことのない怪物」である、と。それを覆す言葉をエイゼンシュテイン公爵は持たなかった。

ピノー陸軍大将

バルトライン帝国の軍の最高責任者。「帝国の歴史は侵略の歴史、侵略によって貧困を清算して来た」と言うルイの持論を、自分も若い頃はその栄光を信じて疑いもしなかった、今はそんな時代ではない、と言う。だが、エイゼンシュテイン公爵が折れ、皇帝が頷けば、彼は軍人として戦場に出ることになる。 やがて、バルトライン帝国南端、スコグリオ公国国境にピノー陸軍大将が率いる帝国軍が侵攻したことによって、「メルリアナ大戦」の幕が切って落とされる。生粋の軍人として筋骨隆々の体躯に着飾らない軍服、そして禿頭にまでたくさんの傷を蓄えた強面の男。つねに揺るがず騒がず、泰然自若としている。過去にトルキエ将国に味わわされた辛酸から学び、またルイ大臣が考案した工作兵を運用して、主人公マフムートら同盟国を追い詰めた。

アマデオ・ゴッカネクラ

央海(セントロ)の西、島の都(リゾラーニ)共和国の人間で黄金号(オーロ)の船長。央海では、第一の商業都市である海の都(ヴェネディック)共和国の主導の元「私掠船による帝国艦船への海賊行為を黙認する」との密約が央海11都市国家間で結ばれていた。だが、その11都市のうちの1つであるリゾラーニは、アマデオを筆頭に帝国の船の援護に回った。 更に、東西央海を分断して海峡を封鎖。西の央海に存在する主要都市国家を抱き込もうとする。「海神の子」とあだ名されるほど天才的な航海技術を持ち、風や海流が神々の姿に見える生粋の船乗り。また、その才能のゆえに傲岸にして不遜。 短髪に眼光鋭く、ギザ歯を覗かせ不適な笑みを浮かべる。

カテリーナ・デ・ロッシ

花の都(フローレンス)共和国は美の都。国民は自らが文化・芸術・流行の中心であると言う自負があり、美意識が異常に高い。カテリーナはそのフローレンスで3年続けて選出された女大統領である。大陸各地から集う芸術家は引きも切らさないが、フローレンスは彼らから情報を吸い上げ、大陸の情勢を掌握する。 カテリーナはその情報から、トルキエ将国と海の都共和国やウラド王国との三国同盟を知るが、トルキエ将国の野蛮な有様に憎悪を抱くフローレンス他、周辺のルメリアの心臓地方(クォーレ・ディ・ルメニアナ)の民衆を敵に回してまでトルキエ将国に与することを避け、トルキエ軍の領内通過を拒否しようとした。 黒髪を豪奢に結い上げ、華やかなドレスに身を包んだ淑女だが、その政治手腕は他の追随を許さない。かつて、この地にいた黒翼のスレイマンとは旧知の仲で、恋人でもあったが、そうした情に流される女性ではない。

カルバハル院長

城塞都市天上の都(チェロ)共和国の国家元首。1200年前、ポイニキア帝国末期に建てられた救貧院だったころの名残りで、ここの国家元首は院長(ディレクトル)と呼ばれる。その伝統は今も生き、助けを求めて訪れる病人、貧民には無償で福祉を施している。難民を全て受け入れるカルバハルに対してマフムートは無謀を説くが、彼らの死が逃れられないものならば、その最後の瞬間を幸福にすることがこの天上の都の役割だ、と言い返す。 それを邪魔する者がいるならば天上の都は戦う、と言って、マフムートの提案に従いトルキエ将国と同盟を結ぶことを了承した。普段は町の演劇に飛び入り参加して勝手に脚本を変えてしまうような、天衣無縫の青年。 長い金髪を自由に遊ばせ、身のこなしも軽い。だが、籠城し続け疲弊し切った反同盟の町の者の手によって、非業の最後を迎える。天上の都とその周辺地域は、帝国側ピノー陸軍大将とマフムートらトルキエ将国とが正面衝突した主戦場でもあった。

場所

トルキエ将国

国土の殆どを砂漠と草原に覆われた遊牧民の土地であり、世界の富の9割がそこを通ると言われる商隊の街道(キャラバン・カラヨル)と海の街道(デニズ・カラヨル)とが交差した、交通の要衝が位置する商業国家でもある。トルキエ将国の軍事・行政を司るのは、十三人の将軍(ヴェズイール)と呼ばれる者たち。 その上席に大将軍(ビュラクバシャ)がいる。徹底した能力主義社会であり、上位に立つ者は常に功績才能に豊かで、人格の高潔なることを求められる。国内13の州は、それぞれを十三人の将軍(ヴェズイール)が統治。国政の全ては週3日開かれる将軍会議(デイワーン)にて決議される。また、トルキエ将国及び、その祖を同一とする四将国のムズラク将国・クルチェ将国・ブチャク将国・バルタ将国、計5つの将国を総称して大トルキエと言う。 この代表らが集う唯一の会議であり、大トルキエにおける最高決定機関である大トルキエ将軍会議(ビルリキ・トルキエ・デイワーン)と言うものがある。この四将国がバルトライン帝国の勢力拡大に伴って、宗主トルキエ将国に叛旗を翻したことで内乱を引き起こしたが、四将国の将王(スルタン)の総入れ替えをマフムートが成し遂げたことによって大事にならずに済んだ。

バルトライン帝国

75年前、バルト地方、ライン地方の全てを征服し尽くして拡大はいったん終息を迎えた。そのとき、ゴルドバルト11世の父王エルドライン1世は、歴代皇帝が受け継いで来た、征服者であるバルト地方ゴル王家出身の皇帝であることを表す名前「ゴル・ド・バルド」を使わず、「エル・ド・ライン」、非支配圏のライン地方エル王国の母から生まれた皇帝であると表明した。 それは、反帝国感情の根強かったその時代に自らを統合の象徴にしようとしていた、と言うエイゼンシュテイン公爵の解釈故ではなく、ルイ大臣の言う、ライン地方からの搾取を強化し、更なる軍備強化の道を選んだエルドライン1世の思惑故だった。 幼少期を母方の故郷ライン地方で過ごしたエルドライン1世は、征服されたラインの民が如何に支配者を憎んでいるか、それを骨身に沁みて理解していた。故に、エルドラインを名乗ったこと自体が、彼らを恐れ、懐柔しようとした結果であった。現在も続く、搾取による力の削減と常備軍による監視での非征服者の抑え込み、帝国とはそのようにしてしか存続し得ない存在だ。

花の都共和国

国民投票で選出される1年任期の大統領(ゴンファロニエレ)が統治する都市国家で、まわりを肥沃な平野と丘陵地に囲まれた農業国。自由と芸術を愛するフローレンスの有力者たちは世界各国から集めた様々な分野の匠を率いて、親善外交に勤しむ。過去、北方から侵略して来た野蛮な騎馬民族(トルキエ将国)よりも、自分たちと同じルメリアナの文化を共有するバルトライン帝国と手を組むことを望む、感情的な国民性。 それは、大統領とトルキエの使節が面会しただけで、トルキエ将国軍の領内通過に対する反対意見をまとめた署名がフローレンス市民3分の1から届けられる程。しかし、フローレンスと同じルメニアナの心臓地方(クォーレ・ディ・ルメニアナ)の国家の1つであるスコグリオ公国が、バルトライン帝国によって陥落させられたと知って、大統領は翻意することになる。

燈台の都共和国

ルメニアナ大陸の南に広がる央海(セントロ)。この央海を東西に二分する要衝に位置するポイニキアは、太古の昔より央海航路の中心であり、かつて央海全域を1800年に渡って支配し、大陸においてもその文化の影響を受けなかった国はないと言われる大海洋帝国ポイニキアの首都でもあった。 港の南端に聳え立つ古代の大燈台に往時の面影を残している。都を囲う崖からは、水塔石と言われる水の社殿で祈りを捧げるときに使う石の原石が採掘される。都は市長(カエサル)と副市長(マギストロス)の二頭政治が、元老院の議員(パトリキオス)との協議で運営される。古代ポイニキア帝国の首都であったと言う誇りが、現実を見据えられない理想論に成り下がった結果、バルトライン帝国の手中に落ちる結果になった。 ここと、ルメニアナの心臓地方(クォーレ・ディ・ルメニアナ)の南端に位置するスコグリオ公国を手中に納めたことによって、バルトライン帝国は古代ポイニキア帝国の版図を継承する権利を有する、と主張した。

海の都共和国

軍事・経済共に央海(セントロ)随一と言われる、干潟の上に作られた人工島の都市国家。この都を運営するのは共和国会(コンシーリオ)への参加資格を有する共和貴族(ノービレ)であり、この共和貴族による投票で選出されるのが元首(ドージェ)と呼ばれる最高執政官である。500年前、北方から侵入した騎馬民族に大陸を逐われたヴェネテ人が最初に築いたのは「水の社殿」。 それを中心に市街は築かれて行った。最初のヴェネテ人を皮切りに、この干潟には続々と内乱や迫害で故郷を逐われた多種多様な人々が生活の場を求めて集まって来た。祖国や土地をなくした人々にとっては、人種や民族で区別するのではなく、五首信仰(エルミズム)で住み分ける方が都合が良かった。 そのため、海の都共和国は、水・火・金・木・土、それぞれの社殿を中心とした5つの街区から成っている。

央海12都市国家

央海(セントロ)に面した12の有力な都市国家の総称。このうちの1つ、燈台の都(ポイニキア)がバルトライン帝国の手により陥落。更に帝国艦隊と海の都(ヴェネディック)商船団によるポイニキア沖海戦が勃発し、残された11の都市国家は帝国への危機感を募らせていた。 そして、帝国と島の都(リゾラーニ)の大艦隊がポイニキア・サロス間を封鎖したことによって、西央海はほどなくバルトライン帝国の手に落ちるだろうと目された。これを打破するために、トルキエ将国は、建国以来初めて陸軍を国外に派遣することになる。これがルメリアナ大戦の端緒となった。

金色の都共和国

大ポイニキア運河のほぼ北端に位置する商業都市国家。東西ルメリアナの接点に位置する、大陸における東方交易の一大拠点であり、3人の大商人による合議制で運営される「商人のための国家」である。この国で商売をするにはその3人のいずれかの大商人から手形(ズアーツク)を与えられた手形商(ゴースチ)であることが絶対条件。 だが、帝国に対して経済的先手を打つために手形を求めてやって来たマフムートには、それを与えなかった。トルキエ将国に肩入れしたと知られたら、この地での自由通商がままならなくなるからだ。その代わり、マフムートと手を組んでトルキエ宝飾(トルキエリ)を商った、この国出身のニキに対しては罪状を問わずにいてくれた。 それはひいてはバルトライン帝国の敵意からアルギュロスを守る為でもあった。

ウラド王国

ムズラク将国の北に国境を接する北限の王国。400年前の建国以来、鎖国制度を貫いており、出入国の厳しさと不法侵入者への苛烈な処置では大陸随一と言われる。国民皆兵制度を取り、農閑期に訓練を積んで有事に備えている。東方の騎馬民族の侵入に追われてこの地に逃れたポイニキア人の末裔であるウラド王国では、ポイニキアの伝統の槍術とトルキエの騎兵とが組み合わされて生まれた槍騎兵が有用な兵力である。 小規模ながら鉱脈が存在し、馬を育てる広大な土地はある。だが、産業を生み出す資源は乏しい。若い者に食い扶持を残すため、老人が独り雪原に消えて行くことを、人々は、国王も例外なく、黙認しているような状態。 しかし、帝国国境まで続く鳥追海岸に眠る鳥肥(ステルコ)が主人公マフムートに発見されたことで、国の寿命は尽きていないことが証された。

ルメニアナの心臓地方

3000年前、世界の半分を支配した古代ポイニキア帝国が発生した場所であり、その誇りから、帝国解体後も地域住民たちは永くルメニアナ大陸全土の心臓(クォーレ)を自称して来た。物語の現時点では、独立不覊の小国家群が群居する一地方であり、トルキエ将国らが結成した同盟に与することなく、独自に心臓地方(クォーレ)同盟を立ち上げようとした。 この中でも、スコグリオ公国は、1200年前にポイニキア皇帝から下賜された領地として特別な意味を持っていた。バルトライン帝国はここと、港湾都市国家燈台の都(ポイニキア)をその支配下に置いたことで、古代ポイニキア帝国の覇権を継承する権利を有すると主張した。

天上の都共和国

1200年前、この地に建てられた救貧院が前身の、福祉制度が整った共和国。その財源として、南ルメリアナ南部には喜捨(カリダッド)という習慣が生きていて、裕福な者が貧しい者や公共施設に寄付することが奨励されている。そのカリダッドの成果が金持ちの間で格付けの基準とされるからだ。その上、天上の都は温暖な気候に恵まれているので潤沢な農作物を得られ、良質な港も持つ。 院長(ディレクトル)と呼ばれる元首が治め、地上に突き立った急峻な岩場に貼り付くように町が広がっている。その建物はこの場にそぐわない木造建築で、そこに攻め入った敵もろとも燃やし尽くしてしまう仕組みを持って難攻不落と歌われていた。 またここは、主人公マフムートや他トルキエ将国軍らと、ピノー陸軍大将率いるバルトライン帝国軍とが衝突した激戦地でもあった。帝国に与した島の都(リゾラーニ)の海軍が封鎖してしまった、西の央海(セントロ)に軍を派遣するための要衝地。

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将国のアルタイル嵬伝/嶌国のスバル (しょうこくのあるたいるがいでん とうこくのすばる)

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書誌情報

将国のアルタイル 既刊19巻 講談社〈シリウスKC〉 連載中

第1巻

(2008年4月発行、 978-4063731125)

第2巻

(2008年8月発行、 978-4063731309)

第3巻

(2008年12月発行、 978-4063731484)

第4巻

(2009年3月発行、 978-4063731675)

第5巻

(2009年8月発行、 978-4063731859)

第6巻

(2010年2月発行、 978-4063762105)

第7巻

(2010年9月発行、 978-4063762341)

第8巻

(2011年1月発行、 978-4063762488)

第9巻

(2011年8月発行、 978-4063762723)

第10巻

(2012年4月発行、 978-4063763263)

第11巻

(2012年9月発行、 978-4063763584)

第12巻

(2013年3月発行、 978-4063763843)

第13巻

(2013年10月発行、 978-4063764246)

第14巻

(2014年4月発行、 978-4063764550)

第15巻

(2014年12月発行、 978-4063765120)

第16巻

(2015年7月発行、 978-4063765533)

第17巻

(2016年3月9日発行、 978-4063765991)

第18巻

(2017年1月17日発行、 978-4063906738)

第19巻

(2017年6月23日発行、 978-4063907155)

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