太陽の黙示録

太陽の黙示録

大震災によって日本列島が寸断されてから15年。海外に移住した者、南北に分断されたそれぞれの日本で復興を目指す者の姿が描かれる。連載開始は2002年で、2008年に第1部「群雄編」が終了。2010年に第2部「建国編」が完結した。2005年度の第51回小学館漫画賞一般向け部門、2006年度の第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞をそれぞれ受賞。

正式名称
太陽の黙示録
ふりがな
たいようのもくしろく
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
コミック文庫(青年)(小学館)
巻数
既刊15巻
関連商品
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概要・あらすじ

2002年、日本大震災によって日本は、本州が東西に分断されてしまう。少年柳舷一郎は出会った大人、坂巻五郎と協力して避難の旅に出る。そして15年後、記憶を失い台湾で暮らしていた舷一郎は、現地で日本人と台湾人の摩擦に接する中、和解運動の中心人物となっていく。その一方、南北に分断統治されていた日本は南日本国北日本国に分かれ、両国間の渡航も制限されることになる。

記憶を取り戻していた舷一郎は、台湾で得た仲間張宗元羽田遼太郎と共に、日本へ向かい、そこで様々な勢力へ関わっていく。

登場人物・キャラクター

柳 舷一郎 (りゅう げんいちろう)

『太陽の黙示録』の主人公の一人。箱根の山中にいた時に日本大震災に会う。当時11歳。避難の過程で記憶を失い、台湾人の夫婦に引き取られて15年間を台湾で暮らした。台湾人「舷」として暮らしていたが断片的に記憶が戻っており、台湾における日本人と台湾人の摩擦に関わる中で、日本人としてのアイデンティティを強くしていく。 日本の保守政治家・柳拓磨の孫であり、強いカリスマと誠実な人柄を備える。日本人移民の海外での平穏な暮らしや、分断された日本の再統一を強く求めるが、人々が傷つくことを恐れて強硬な手段を取れない一面もある。日本で夏木恵理と出会い惹かれるが、彼女の存在が宗方操と対立する一因となる。 北日本国、南日本国と移った後、中立地帯であった再生特区日本を拠点とする。

宗方 操 (むなかた みさお)

『太陽の黙示録』の主人公の一人。東京で日本大震災に遭う。当時高校生。父と妹が行方不明となり、恋人の夏木恵理と共に九州へ渡った。恵理の兄・惇史の伝手でエドワード・ロックウェルの計画に参加し、アメリカへ国費留学。その際にM資源の情報を入手し、諸外国への切り札として南日本国独立を進める中心人物となる。 日本大震災の前は父の町工場が倒産して困窮しており、妹を連れての夜逃げも計画していた。日本大震災による社会の崩壊も、古い秩序が破壊され、新たな秩序が生まれる機会と捉えている。柳舷一郎とは日本大震災直後に会っており、そこで占い師から、二人は王となる人物と告げられている。

坂巻 五郎 (さかまき ごろう)

日本大震災の初期、京浜地域の支援として車で神戸から東京へ向かっていたが、箱根で柳舷一郎と、舷一郎が拾った犬と出会う。その後、京阪神も被災した事を知って帰郷しようとするが、舷一郎とはぐれてしまう。神戸に残してきた妻子が亡くなった事を知り絶望するも、舷一郎に会いたいと思い生き延びる。 舷一郎が拾った犬に「ゲンイチロウ」と名づけ、南日本国で一緒に暮らしている。

張 宗元 (ちゃん ぞんゆえん)

台湾マフィアに属していた、巨体の男。台湾で暮らす日本人避難民を嫌っていたが、自分の組織が台湾人と日本人の対立を煽るため日本人母子の殺害事件まで起こした事を知り、反逆する。その過程で知り合った舷(柳舷一郎)に心酔し、以後、行動を共にする。粗暴ではあるが情に厚い。 素手での格闘に長け、相手の首をへし折るほどの怪力を備える。

羽田 遼太郎 (はた りょうたろう)

日本大震災当時は東京の中学生だったが、夏休みを利用して父が支社長として赴任している台湾に来ていた。社員たちを守るため父が自分もろとも勝手に帰化した事で、父との間に溝を生じている。台湾人羽遼明として刑事となり、日本人母子殺人事件に関わるうち、柳舷一郎や張宗元と知り合った。 刑事を辞めて舷一郎、張に同行し、日本へ帰国。冷静な判断力や情報収集力で舷一郎の参謀役となる。

雲井 竜児 (くもい りゅうじ)

北日本国の反政府ゲリラ海峡同盟の青年。柳舷一郎に仲間を救われた事から、彼らを保護する。宗方操の暗殺をめぐって舷一郎と対立するも次第に理解を示し、最終的には海峡同盟を出て舷一郎と同行する。元は北海道の医者の息子であり、日本大震災後は父と共に医療活動をしていたが、七星会による救援物資横流しを知り、告発しようとした父は死亡。 以後、ヤミ物資の運び屋を経て海峡同盟に加わった。

公文 讃 (くもん たすく)

北日本国の反政府ゲリラ海峡同盟のリーダー。日本大震災時は陸上自衛隊員であり、震災後は北日本国に所属。だが七星会の不正を知り、告発しようとするが失敗。逃亡し、孫市権作と結託して海峡同盟を組織した。海峡同盟では規律や命令の遵守を重視し、命令違反や失敗を犯した部下を射殺することもある。 柳舷一郎の才覚や人柄を高く評価し何度も助けているが、海峡同盟としての方針や孫市の意向をより重視する。

葛城 亮 (かつらぎ りょう)

韓国における日本人避難民キャンプを一大生産地帯に発展させた、優れた頭脳を持つ青年技術者。海外に住む500万人の日本人避難者を救いたいと訴える柳舷一郎に会い、グレイ・シティを第3の国にする案を提示する。

夏木 恵理 (なつき えり)

日本大震災時には東京の高校生で、宗方操の恋人だった。宗方と共に福岡へ移住し、ボランティアに従事する。アメリカへ留学する宗方に同行する筈だったが、被災者の救済を諦めきれず単身北海道へ渡る。救済活動中の事故で盲目となり、宗教団体既望の会の教祖「十六夜様」に祭り上げられる。 やがて教団の実態に気づいて脱走し、以後、柳舷一郎らと行動を共にする。一人の女性として宗方を愛し続けているが、舷一郎に惹かれる面もあり、図らずも両者が対立する一因となっている。

エドワード・ロックウェル

日本大震災以後、サウス・エリアの復興に携わり、外国籍初の国務大臣となる。サウス・エリアの人材を育成するプランを打ち出し、夏木惇史の紹介で知り合った宗方操を重用する。宗方と共に南日本国の独立を推進するが、最終的な方針の違いから決別し、宗方に謀殺される。

夏木 惇史 (なつき あつし)

夏木恵理の兄で、日本大震災当時は総理の政務担当秘書官だった。妹が宗方と同行した当初は反対していたが、福岡で会った二人を見て、その成長を認める。特に宗方の才覚を高く評価し、エドワード・ロックウェルに紹介するなど公私にわたる支援者となった。南日本国樹立後も宗方を補佐し、互いに強い信頼を示している。

董藤 卓也 (とうどう たくや)

北日本国を支配する七星会の会長にして、表向きは北日本国衆議院議長。日本大震災前は柳拓磨の派閥で力をつけ金庫番として資金集めに腕を振るったが、金権政治への執着や強引さから拓磨には危険視されていた。自衛隊とも繋がりを持っており、クーデターを起こさせて旧体制の要人を一掃し、同時に自ら調停役となって国民の支持を集めた。 天性の残忍性と、日本に対する憎悪を備えており、南北の日本を独裁する野心を遂行しようとするも、目的半ばにして部下の勝呂奉一により射殺された。

勝呂 奉一 (すぐろ ぶいち)

陸上自衛隊員であり、日本大震災後は北日本国に所属する。自衛隊が南北に分裂したこと、北日本国では事実上、中国の軍となっていることに悩み、現状打破のため董藤卓也に賛同する。だが日本人同士が殺しあう内戦をも画策する董藤を恐れ、射殺する。その後、董藤や自分の部下を死に追いやったトラウマから精神を病み、七星会残党への暗殺テロを決行。 かつて同僚だった公文讃により毒殺された。

孫市 権作 (まごいち けんさく)

北日本国の投資企業「孫市ホールディングス」のCEO(最高経営責任者)を務める、青年実業家。北日本国の財界を牛耳る一方、七星会への対抗組織として海峡同盟を密かに組織した。七星会に対抗するため、一時的に柳舷一郎、宗方操らと手を組む。最終的な目的は北日本国と中国を流通ネットワークで結んだ巨大経済圏を築くことにあるが、性急かつ強引な手法により舷一郎、宗方とも敵対することになる。

周 真瑜 (ぢょう じぇんゆい)

董藤卓也政権の崩壊後、新たに北日本国の復興委員長に就任した青年。七星会残党勢力を一掃し北日本国の民主化を進めるが、最終目的は中国への属国化にある。かつて孫市権作の父と兄に恩を受けており、その遺族である権作に忠誠を示している。

集団・組織

七星会 (しちじょうかい)

『太陽の黙示録』に登場する組織。会長の董藤卓也以下、北日本国の政治家、官僚、財界人、自衛隊幹部で構成され、中国共産党、中国軍幹部の後ろ盾を持つ。日本大震災後の北日本を実質的に統治するグループだったが、支援物資の横流しなど数々の不正で利益を得ていた。董藤の死とともに弱体化する。

海峡同盟 (かいきょうどうめい)

『太陽の黙示録』に登場する組織。北日本国でゲリラ的に活動する武装組織。かつて紀伊半島だった島々を拠点としていた。表向きは元自衛官の公文讃がリーダーだが、実は孫市権作が黒幕であり、「孫市ホールディングス」の各企業を隠れ蓑にしている。北日本国を牛耳る七星会との対立から柳舷一郎らに協力するが、七星会弱体化の後は孫市権作の私兵という性質を強めていく。

イベント・出来事

日本大震災 (にほんだいしんさい)

『太陽の黙示録』で起きた出来事。2002年8月10日に京浜地域と東海地方で大地震が起こり、連動して富士山から伊豆諸島にかけての火山が噴火。さらに5日後、東南海地震・南海大地震が同時発生し、富山湾から大阪湾にかけての地割れにより、「日本海峡」と呼ばれる海で本州が2つに分断された。これらの地震と津波により、東京と京阪神の主要都市は水没。 東海、紀伊半島、四国、九州南部も大部分が水没している。被害者は死亡者2000万人、行方不明者4000万人に及んだ。

場所

南日本国 (みなみにほんこく)

日本大震災によって分断された、本州西部と九州北部、四国を含む土地。「サウスエリア」と呼ばれる。震災後はアメリカによる復興保護下にあったが、日米のどちらでもない新しい国家が目標とされ、さらに宗方操を中心として他民族国家としての独立が打ち出された。首都は福岡市から、かつての神戸市だった「海峡区」に遷都している。 経済は発達しているが貧富の差は激しい。

北日本国 (きたにほんこく)

日本大震災によって分断された北海道、東北、北関東、中部地方を含む土地。「ノースエリア」と呼ばれる。震災時に政府が避難した札幌が首都となる。柳拓磨の要請で中国がいち早く援助に入るも、そのため事実上中国による復興委員会の管理下に置かれることになった。国民一人一人にICチップが埋め込まれ、政府により管理されている。 董藤卓也と七星会のクーデターによって中国の影響は弱まるも、軍事独裁化が進んだ。董藤の死後は再び親中路線に戻り、軍事的には中国軍、経済的には孫市権作に掌握される。

再生特区日本 (さいせいとっくにほん)

日本大震災によって壊滅した、東京都などの首都圏跡地。富士山噴火の降灰被害でライフラインが崩壊し、作物が育たず、南日本国、北日本国の協議で不可蝕領域とされている。柳舷一郎が葛城亮の案を受け、ここを海外の日本人避難民の受け入れ先となるよう入植を開始した。バイオ技術による、新種の稲作と水質浄化を復興の軸としている。

その他キーワード

M資源 (えむしげん)

『太陽の黙示録』に登場する、地下資源。かつての琵琶湖西岸周辺の地下に埋没していた膨大なメタンハイドレードであり、次世代エネルギー資源としてアメリカがその存在を秘匿していた。しかし宗方操が留学中にその存在を知り、南日本国独立への担保として諸外国への交渉に利用された。メタンハイドレードの実用化はまだ困難とされているが、その開発をめぐり宗方と孫市権作が協力体制をとっている。

アニメ

太陽の黙示録

日本大震災により主人公柳舷一郎が逃れた台湾では、祖国に帰れない日本人と、それに対する台湾人との摩擦が頂点に達しようとしていた。主人公の柳舷一郎は持ち前の正義感により、日本人難民と台湾人との間に飛び込ん... 関連ページ:太陽の黙示録

書誌情報

太陽の黙示録 15巻 小学館〈コミック文庫(青年)〉

第1巻

(2019-05-15発行、 978-4091962379)

第2巻

(2019-05-15発行、 978-4091962386)

第3巻

(2019-06-14発行、 978-4091962393)

第4巻

(2019-07-12発行、 978-4091962409)

第5巻

(2019-08-09発行、 978-4091962447)

第6巻

(2019-09-13発行、 978-4091962454)

第7巻

(2019-10-15発行、 978-4091962485)

第8巻

(2019-11-15発行、 978-4091962492)

第9巻

(2019-12-13発行、 978-4091962508)

第10巻

(2020-01-15発行、 978-4091962546)

第11巻

(2020-02-14発行、 978-4091962553)

第12巻

(2020-03-13発行、 978-4091962560)

第13巻

(2020-04-15発行、 978-4091962577)

第14巻

(2020-05-15発行、 978-4091962584)

第15巻

(2020-06-15発行、 978-4091962591)

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