概要・あらすじ
2年前、知人を刺傷した罪で少年刑務所に服役していた日向修が出所。かつての恋人の麻生光との再会は果たせず、保護司で小説家の森佳孝宅で暮らし始める。だが、暴力団・日向組の跡取り息子であった修を二代目として担ぎ上げようとする、かつての組員達につきまとわれるようになる。一方、光は家を出て地方都市の喫茶店で働いていた。
修の小説が雑誌に載ったことを機に再会した光と修だが、光は、2年前、駆け落ちの待ち合わせ場所に現れなかった修を憎んでいた。光は、駆け落ちのために修が刺傷事件を起こしたことを知らなかったのだった。その日は別れるつもりだった光だが、喫茶店のステージに立つ中里俊美から恋の告白を受けたことで修への気持ちが再燃。
悩んだ末に自宅に戻り、2年前の事件を知る。その後、修は岩瀬組のチンピラに襲われて失明。光を失った修の隣には光の姿があった。
登場人物・キャラクター
麻生 光 (あそう めぐみ)
腰まで届く長い髪の少女。2年前から郊外の喫茶店メイトで働いている。男嫌いで通してきたが、中里俊美とは少し打ち解けている。2年前、駆け落ちをするはずだった日向修が待ち合わせ場所に現れず、裏切られたと思い、ひとりで家出生活を続けていた。ふと目に留めた雑誌に掲載された小説の作者が日向修だったため、住所を訪ねて再会を果たす。 懐かしさと、もうあの頃に戻れない思いから別れを決意。だが中里から恋の告白を受けて困惑し、気持ちを整理するために実家に戻ることに。母から修が駆け落ちを邪魔しようとした男を刺したことを知り、修への気持ちを再確認し、修のもとへ戻る。
日向 修 (ひゅうが おさむ)
精悍な顔つきをした無口な青年。父は日向組の組長であった。普段は穏やかだが、怒ると目付きが鋭くなる。2年前、麻生光との駆け落ちを邪魔しようとした男を刺傷し、少年刑務所に2年間服役していた。出所後、光に再会しようと町へ戻ったが、光はそ駆け落ちの約束をした日以来帰っておらず、行方不明だった。 服役中に書いた小説を評価してくれた保護司で小説家の森佳孝宅に住み込むようになる。森の紹介で近くの書店に就職。小説が雑誌に載ったことで光と再会したが、彼女が2年前の事件のことを知らなかったため謝罪できないまま別れた。森を尊敬していて、自分のことはともかく森に対する誹謗中傷は決して許さない。 元日向組で現在は岩瀬組の組員に襲われ失明する。
中里 俊美 (なかざと としみ)
長髪の若者。3人組のフォークバンド・さんらいずのリーダーでヴォーカル。声量があり、しゃべりも好評。喫茶店メイトのステージを根城に、多くのオーディションに挑戦しているが、なかなか合格できないでいる。先が見えないことで2人から脱退の申し入れがあったが、1人でも続けると決意。麻生光のことが好きで、気持ちを告白したが答えをもらえなかった。 光が雑誌に挟んだページの作者名日向修に興味を持って探しに行き、修が岩瀬組のチンピラに襲われるところを目撃。相手を取り押さえた。
森 佳孝 (もり よしたか)
白髪で頬のこけた、眼鏡をかけた初老の男性。小説家で保護司。未婚で自宅にはお手伝いの正代を置いている。日向修が獄中で書いた小説を高く評価し、自宅に置いた。その後、修が書いた短編を編集者に託し、雑誌掲載まで運んだ。岩瀬組のチンピラが修に会わせろとやってきたが追い帰し、さらに修にもこの家に留まるように諭す。 若いころに実らずに終わった恋の経験があり、ヒロインのモデルになっているらしい。
正代 (まさよ)
額を出したショートボブの女性。森佳孝宅の住み込みのお手伝い。当初、日向修を恐れた。一月ほど生活ぶりを見て評価を変え、夜に部屋を訪れて言い寄るが拒絶される。それを恨んで修の過去を勤め先の書店員に吹聴。
おかあさん
疲れが顔に出ている中年女性。スナック・サンを経営している麻生光の母。2年前、千葉の叔父の家に向かったはずの光が音信不通となって心配している。光を訪ねてきた日向修を罵倒して追い返す。2ヶ月後、帰宅した光に2年前の事件のことを教える。
チンピラ
鼻が大きくそばかすのある長髪の男。暴力団岩瀬組の組員。居岩瀬組が日向組という名前であったころからの組員で、現在の組長とは折り合いが悪いらしい。日向修に、彼と仲のよかった次郎の事故死を伝える。また、修に岩瀬と張り合うなら仲間を集めると持ちかけ、修につきまとうようになる。 2ヶ月ほどして、岩瀬組から幹部にする代わりに修を殺すように指示され、修を襲撃。彼の目を切り裂いた。警察では断れば自分が危なかったと弁明する。姓名不詳。
場所
メイト
地方都市の喫茶店でステージもある。口髭のあるダンディなマスターは歌手を志したこともある。