あらすじ
第1巻
子供英会話教室の訪問販売員をしている野口舞子は、現場に出て2か月になるが、いまだ契約を一件も取れていなかった。主任の中野章造からは給料泥棒と罵倒され、訪問した家々では露骨に嫌がられてゴミのような扱いを受けていた。ベンチに座り込み泣き出す野口だったが、先輩である藤本奈々未の励ましを受け、飛びこみ営業を続ける。必死のねばりの甲斐あって、ついに契約を一件取ることに成功し、ふだんは嫌味ばかり言っている中野も涙ぐむ。しかし、結局その契約もキャンセルされてしまい、いまだ野口の契約数は0のまま。それでも野口はあきらめることなく、靴が脱げたことにも気づかずに、裸足のまま契約を求めて必死に走る。(第1話「走る女」。ほか、13エピソード収録)
第2巻
野口舞子が勤務する会社で、社員たちに給料が配られていた。その月に取れた契約数に応じた成功報酬が、社員みんなのいる前でマネージャーの浅野百代から金額を言いながら手渡しされる。アポインター部門で1位の成績だった中野章造、2位の藤本奈々未、クローザー部門で1位の岡崎ちえはそれぞれ200万円近い額を手にしていたが、それぞれの部門で最下位の野口と山根りつこは、参加賞のみだった。この給料の渡し方は、くやしい思いをさせて社員を鼓舞させるという浅野の狙いがあった。クローザー部門で最下位だった山根は、会社に居残って、クローザー部門1位の岡崎から仕事のやり方を教えてもらい練習に励む。この仕事では、アポインターが体験レッスンの予約を取っただけではたいしたお金にならず、後日クローザーがよい体験レッスンを行って英会話教室の入会証に印鑑を押してもらうことで初めて契約が成立するのだ。そのため、アポインターとクローザーはひとつの目標に向かう運命共同体といえる。最下位の山根に自分と似たところを感じた野口は、自分がアポインターとして初めて取った体験レッスンのクローザーを山根に担当して欲しいと考えるのだった。(第15話「最下位の女たち①」。ほか、15エピソード収録)
登場人物・キャラクター
野口 舞子 (のぐち まいこ)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。髪を一つ結びにして、左の口元に大きなほくろが一つある。アポインターとして飛びこみ営業で各家庭を回り、体験レッスンの予約を取ることを仕事としているが、現場に出て2か月経っても契約が一件も取れず、成績は最下位。セールストークが下手で、押しも弱いため、玄関に入れてもらうことすらできない。だが、上司や客から罵倒されながらも、涙ながらの努力を続けている。
藤本 奈々未 (ふじもと ななみ)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。主任を務めており、野口舞子の先輩にあたる。契約を一件も取れない野口を励ましてくれる面倒見のいいところがあり、仕事終わりにいっしょに飲みに行くこともある。セールスが得意なわけではないが、たくさんの家庭を走って回る努力家で、営業成績もいい。
中野 章造 (なかの しょうぞう)
子供英会話教室の訪問販売員をしている男性。主任を務めており、野口舞子や藤本奈々未の上司にあたる。中野章造自身もアポインターとして優秀な営業成績を収めているが、態度と口が悪いため、部下からは嫌われている。それでも野口のことは気にかけており、陰でサポートしている。その強面な見た目に反して、まったく酒が飲めない。
岡崎 ちえ (おかざき ちえ)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。アポインターが予約を取ってきた家庭に出向き、体験レッスンをして英会話教室の入会証に印鑑を押してもらうことを仕事にしているクローザー。クローザーとしては会社でNo.1の実績を誇る、やり手営業ウーマン。
山根 りつこ (やまね りつこ)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。アポインターが予約を取ってきた家庭に出向き、体験レッスンをして英会話教室の入会証に印鑑を押してもらうことを仕事にしているクローザーなのだが、野口舞子と同じくいまだ契約件数が0で、岡崎ちえからは「クローザー界の野口」と言われる。野口が初めて取った体験レッスンのクローザーを、野口たっての希望で担当することになり、これで契約を取れなかったら会社を辞める覚悟で臨む。
コロ
首が異様に長い、禍々しい見た目をした犬。山奥にある家で放し飼いされており、訪ねてきた人に襲い掛かる。2年前に営業にやってきた中野章造も撃退した。ある日家から脱走し、数日間、野口舞子の家で過ごす。前足を使って電線を渡ったり、川で河童を捕まえてきたり、人間のようにトイレを使ったりと、悪魔のような見た目をしているが、意外と器用。寝ている野口を襲おうとしたこともある。野口の家から出ていく際は、一瞬、人間のイケメン男性のような顔を見せた。
コロの飼い主 (ころのかいぬし)
山奥の家に住む女性。犬のコロを飼っている。ふだんはパイプを吸っているおとなしい老婆ながら、凶悪なコロでさえ逆らえない凄みがある。野口舞子が初めて契約を成立させた家のおばあさんでもある。
篠原 めぐ (しのはら めぐ)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。体調を崩して休んでいる斉藤の代わりに、中野章造の班に所属した。野口舞子と同期入社なのだが、成績最下位の野口とは対照的に多数の契約を取っている優秀な社員。しかし、中野から野口の面倒を見るように頼まれていっしょに行動しているうちに調子を崩し、まったく契約が取れなくなって退社した。退社後は、コンビニエンスストアで働いている。
五味 (ごみ)
山の麓の家に住む老齢の男性。禿げ頭で仙人のように髭を伸ばし、ムキムキのマッチョで上半身にびっしりと入れ墨を入れている。家はゴミ袋だらけで、大量のゴキブリやハエが棲み着いている。営業にやってきた女性販売員に、契約する代わりに体を要求するセクハラジジイ。過去には裏DVDを販売したり、振り込め詐欺の出し子をやっており、逮捕されたこともあるらしい。野口舞子にも手を出そうとしたが、藤本奈々未に撃退された。かつては藤本にも手を出そうとして殺されかけており、藤本に弱みを握られている。
浅野 百代 (あさの ももよ)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。マネージャーを務めている。毎月、野口舞子や中野章造、藤本奈々未、岡崎ちえなどのアポインターや、クローザーに給料を手渡して激励している。ヤンキー体質で暴力的だが、野口が初めて契約を取れた時には共に喜び合い、みんなで飲みに行くなど面倒見はいい。
斉藤 (さいとう)
子供英会話教室の訪問販売員をしている女性。野口舞子や藤本奈々未と同じく、中野章造の班に所属するアポインター。野口が初めて契約を取った祝勝会で飲みすぎて胃腸炎になり、しばらく会社を休んでしまう。退院後は再び中野班に復帰するが、すっかり太って関取のような見た目となる。シングルマザーで、リョウタという男の子を育てている。
リョウタ
斉藤の息子。年齢は6歳。母親を守るという思いが強く、ユーチューブで護身術の動画を見て学び、少年兵のような動きをすることができる。6歳の誕生日には、母親の同僚である野口舞子、藤本奈々未、浅野百代たちといっしょに動物園へ出かけた。母親をいじめる中野章造を敵対視している。
木田 春奈 (きだ はるな)
野口舞子の中学生の頃の同級生で、主婦。当時は野口に嫌がらせをしていじめていた。野口がたまたま営業した家に住んでおり、数年ぶりに再会した。木田春奈自身は野口をいじめていたことをすっかり忘れており、娘のためにと子供英会話教室の契約を交してくれた。
ドン・オニール
子供英会話教室の英語の先生としてカナダから来日した男性。坊主頭でクマのような逞しい体の青年。日本語はペラペラで、野口舞子や藤本奈々未が契約を取ってきた英会話教室で小さな子供たちに英語を教えている。その見た目から最初は子供たちから恐れられていたが、上着を脱いでマッチョな筋肉を見せたことで子供に大人気となる。
後藤田 (ごとうだ)
野口舞子が勤める会社で、エリアマネージャーを務めている男性。中野章造や浅野百代が新人の時の主任で、いつも笑顔ながらも非常に厳しい毒舌家で、ひどいパワハラを繰り返している。上層部に対して反抗的な浅野を降格させ、中野を新しいマネージャーにしようと考えている。
石原 ゆうたろう (いしはら ゆうたろう)
丸々と太った小学生の男の子。野口舞子が飛び込み営業をした家で、一人で留守番をしていた。塾のテストでは必ず全国トップ3に入るほど優秀な成績を収めている。向かいに住んでいる幼なじみの女の子に思いを寄せており、7年間、告白するタイミングを見計らっていた。しかし先日、その女の子に彼氏ができたことを知ってふてくされている。
田中 (たなか)
コンビニエンスストアでアルバイトをしている男性。大学を卒業したものの、特にやりたいこともないからと、アルバイトをしている。子供英会話教室の会社を退社した篠原めぐがアルバイトをしている店でいっしょに働いている。非常に不器用で、ケースにからあげを並べるだけの作業もやたらと慎重で時間がかかる。
ブタ
段ボールに入れられて道端に捨てられていた子豚。中野章造に拾われて、ペットとして飼われているが、名前はまだ付けられていない。おっぱいを吸う癖があり、中野だけでなく、コロのおっぱいにも吸い付く。その吸う力はあまりにも強く、吸われたおっぱいはしばらく数十センチも垂れ下がってしまう。