女優

女優

女優を目指す浅倉瞳は、プロデューサーの白石徹に女優としての天賦の才を見出され、業界の荒波に揉まれながらも二人三脚で頂点を目指す。芸能界を舞台に、演じることにすべてを捧げた天才女優の生きざまを描いた作品。「週刊漫画サンデー」平成15年9月23日号から平成18年3月28日号まで連載された。原作は倉科遼。

正式名称
女優
ふりがな
じょゆう
作者
原作
ジャンル
俳優・女優
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概要・あらすじ

浅倉瞳は幼い頃から女優としての天性の才を、無意識に身につけていた。義務教育が終わった16歳の時に、瞳はドラマの主演女優を決めるオーディションに挑む。最終選考に残ったものの、このオーディションは売り出し中の「上原さやか」に主演が決定している出来レースだった。圧巻の演技で会場を驚かせながらも瞳は落選。だがそんな彼女のもとへ、ドラマ制作会社のプロデューサーを務める白石徹が訪ねてくる。

瞳の才能に惚れ込み、大女優の資質を感じとった白石は、勤めていた会社を辞めて瞳のための芸能プロダクションを作るべく行動を開始する。そして白石は、芸能界入りに猛反対する瞳の母親、浅倉恵子を説き伏せ、2年間を瞳のレッスンに費やし、注目ドラマでのデビューを用意する。

そんな白石の期待に応えようと、瞳は演技のみならず、現場を円滑に回す才能をも発揮してドラマは大成功を収める。ドラマで演じた「薫」という役柄は日本人が好む清純で控えめで健気な性格であり、瞳は女優を続ける間は「薫」としての自分を演じていこうと決意する。

登場人物・キャラクター

浅倉 瞳 (あさくら ひとみ)

幼い頃から無意識に演じる術を身につけ、12歳で女優になる決意をした少女。母子家庭で育ち、母親不在の寂しさを埋めるために常に何かを演じていたことで、卓越した想像力と演技力を独学で身につけた。白石徹に見出されたことで、大女優への階段を登り始める。私生活でも自然に演技をしていることが多く、その姿が反感を買うこともあるが、多くの困難を根っからの女優としての資質によって乗り越えていく。 ファンの期待を裏切らないよう、誰もが憧れる「理想の女性像」として自分のイメージを守り続ける強い信念を持っている。

浅倉 恵子 (あさくら けいこ)

浅倉瞳の母親で、スナックを経営している。かつて女優を志していたことがあり、その際に芸能界の汚さを身に沁みて知ったため、瞳が女優になることに猛反対する。自分の借金を肩代わりし、会社を辞めてまで瞳を預からせて欲しいと懇願する白石徹の説得に本気を感じとり、「高校卒業と20歳まで処女を守る」という条件をつけて承諾する。 瞳が何事も計算して動くタイプだと熟知している。表にこそ出さないが瞳の成功を誰よりも嬉しく思っている。

白石 徹 (しらいし とおる)

ドラマ制作会社のプロデューサー。オーディションでの浅倉瞳の演技を見て大女優の素質を感じ、個人的に瞳に会いに行った。孤独を紛らわすのための空想力で身につけたという瞳の演技力にダイヤモンドの原石だと確信。瞳を育てるために会社を辞め、彼女のためのプロダクションを立ち上げようと昼夜建設現場で働く。瞳の活躍と共に事務所で抱えるタレントも増えていくが、瞳のピンチにはマネージャーとして必ず側で支える。

日向 真紀 (ひゅうが まき)

浅倉瞳が受けたオーディションで、主演の座を射止めた女性アイドル。当時の芸名は「上原さやか」。圧倒的な演技を見せた瞳がオーディションに落ちたことに疑問と不安を感じ、ノイローゼ状態になったことで主演のドラマが打ち切られた。オーディションの一件から中身のないアイドルの空しさに気づき、本当の演技力が周囲にどれほどのインパクトを与えるかを知って、本物の女優になるため、熊田の事務所の門を叩く。 以降は瞳のライバルとして、時にぶつかり合いながらも、切磋琢磨し合える関係になる。

矢作 達郎 (やはぎ たつろう)

浅倉瞳が初出演したドラマの主演男優。女好きで瞳の処女を奪おうとしつこく付きまとう。プロデューサーの榎とはゲイの関係で、瞳を自分のモノにするため、瞳の映画出演を榎に依頼した。映画出演時の瞳との密会を黒田春樹にリークされ、バイ疑惑と共にゴシップ誌に書かれてしまう。このゴシップを乗り切るため、瞳から持ちかけられた偽装結婚を承諾する。

山本 宗一 (やまもと そういち)

脚本家の大御所。数年間、作品に恵まれずにいた浅倉瞳が再起を賭けて彼に脚本を依頼したいと考えていた相手。この時、瞳は病床の母親、浅倉恵子から山本宗一が父親である可能性があることを聞き出し愕然とすることとなる。母親の死後、脚本の直訴に来た瞳に「あなたが父親だ」と言われ慟哭、今までの償いとして脚本を書くことを承諾する。

山本 千賀子 (やまもと ちかこ)

山本宗一の娘。浅倉瞳に憧れ、瞳が宗一に脚本を依頼しに来た時に、断る父親に瞳のために脚本を書いて欲しいと頼み込んだ。宗一が瞳のために書いたドラマには、自身も初出演することになる。瞳に演技の秘訣を聞いた際には、演技ではなく役になりきることが大事だと教えられ、「腹違いの姉妹が再会する」という脚本が事実なのではないかと気づく。

秋葉 秀介 (あきば しゅうすけ)

演劇界で天才と言われている30代の演出家。浅倉瞳の演技に注目し、自分の舞台への出演をオファーする。瞳の初出演ドラマを見て、演出家になりいつか瞳を使って芝居をすることを自分に誓っていた。舞台が終了した後、瞳をデートに誘ってお互いの気持ちを確認し、「日本の女の理想の一生を演じる夢」を2人で叶えようと、結婚を申し込む。

若森 照子 (わかもり てるこ)

浅倉瞳が初挑戦した舞台に出演したベテラン女優。演劇界の大御所で舞台一筋40年。若手女優には特に容赦しないと噂されている。瞳が演技を褒められた際、牽制の意味も含めて身体を張った演技を見せつけようとしたところ、転倒しそうになり瞳にかばわれる。足首のケガを押して舞台をやり遂げた瞳の根性と演技を認め称賛する。

秋葉 秀一 (あきば しゅういち)

天才演出家、秋葉秀介と浅倉瞳の息子。40才を迎えた瞳は女優として順風満帆だったが、10歳となった秋葉秀一とは、すれ違いの生活を送っていた。いつしか「理想の母ナンバーワン」と呼ばれる女優の瞳と母親の真の姿とのギャップに耐えきれなくなり、反抗的になっていく。世間に瞳の本当の姿を教えて瞳を困らせようと、コカインに手を染める。

松山 慶子 (まつやま けいこ)

浅倉瞳が初出演したドラマの主演女優。共演の片瀬奈々とは犬猿の仲と噂されている。瞳の演技にクレームをつけ監督の工藤修平を呼び出すが、激論を交わした結果、松山慶子が折れる恰好となった。だがその際、松山の解釈が正しいのでもう一回やらせてくださいと機転を利かせた瞳により、松山のプライドは保たれる。松山は瞳の頭の回転の速さに感心し、以降はいびりをやめるようになる。

片瀬 奈々 (かたせ なな)

浅倉瞳が初出演したドラマで共演した女優。主演の松山慶子とは犬猿の仲。瞳に負けじと演技に気合を入れる。皆が瞳に触発されドラマの仕上がりが良くなっていることは認めているが、瞳にばかりいい役回りをさせるのは面白くないと、瞳とのキスシーンでいたずらを仕掛けるよう、ベッドで矢作達郎に持ちかける。

工藤 修平 (くどう しゅうへい)

白石徹の親友で、浅倉瞳の初出演したドラマでは監督を務めた。その際、瞳が演技力はもちろん、頭の良さ、洞察力、周囲の人間を引きつける才能など、役者として必要な資質のほとんどを持っていることに感心する。役を演じ終えた瞳に対し、次からはオファーが殺到することを断言した。

阿久津 浩 (あくつ ひろし)

東洋テレビのプロデューサー。自分のドラマに浅倉瞳を出演させる前に映画出演をさせたいという白石徹の希望に対し、瞳の処女と引き換えになら承諾すると応えた典型的な悪徳プロデューサー。自分に逆らえば、瞳を潰すと脅しをかけた。瞳のドラマにより成功を収めた後年は、瞳のピンチを救うために奔走する。

(えのき)

日本映画界で5本の指に入ると言われるプロデューサー。彼の目にとまった者はいずれも大役者になっている。ほぼ日向真紀に決まっていた映画の役を、真紀と浅倉瞳にオーディションで競わせた。これは、2年前にオーディションで明暗を分けた瞳と真紀の因縁のドラマとして、映画の宣伝材料にする計算だった。

熊田 (くまだ)

小さい芸能プロダクションの女社長だが、役者を見抜く目と的確な指導力から実力派の役者を多く輩出している。「上原さやか」というアイドルとして挫折した日向真紀の、再起に賭ける熱意と根性にほだされて真紀を育てることを決意する。清純派を売りにしている浅倉瞳に対し、生涯演じ続け騙し続けて欲しいとエールを送る。

黒田 春樹 (くろだ はるき)

浅倉瞳が初出演した映画の主演若手俳優。撮影中、もう一人の主演俳優の矢作達郎と犬猿の仲になる。瞳を意識していたが、ホテルで目撃した瞳が矢作の部屋から出てきたのではないかと疑い、以降は態度がよそよそしくなる。日向真紀の誘いに乗って、ベッドで瞳と矢作が怪しいことをペラペラしゃべる軽率な男で、のちに真紀が矢作に乗り換えた腹立たしさなどから、ゴシップ誌に情報を流す。

仙石 (せんごく)

芸能界のトップ屋。黒田春樹から呼び出され、話題の映画の男女関係のおもしろいネタを提供すると、浅倉瞳と矢作達郎のスキャンダルに食いつく。日向真紀に内定していた役柄に瞳が収まったのも、矢作の後押しがあったからだという黒田の話に、プロデューサーの榎と矢作が特別な関係にあるという噂を知っていた仙石は信ぴょう性を感じ取り、ゴシップ記事を大々的に発表する。

神林 秀樹 (かんばやし ひでき)

浅倉瞳の女優人生を変えた天才監督。ポルノ映画を撮り続けていたが、ポルノ映画から脱却するために瞳を想定して脚本を書いた。独立プロ系の低予算映画だが、一人の女の情念を描いた作品で「一途な女」を演じて欲しいと、白石徹の事務所に日参して頭を下げ続けた。瞳を自分の手で後世に名を残す大女優にしたいとの熱意がある。

沢村 拓二 (さわむら たくじ)

飄々とした演技をする個性派俳優。がんに侵された浅倉恵子が、病床で浅倉瞳の父親の可能性があると話した男性。瞳に呼び出され、恵子と付き合っていたが芸能界で生き残るために有名脚本家に恵子を差し出した事実を認める。自分の非情さを認めて謝罪するが、瞳は自分の子供ではない、と言い切れる証拠があると断言する。

松本 (まつもと)

浅倉瞳の高校の同級生。映画を観ようと瞳を誘うが、勉強のために一人で観る主義だと断られた。瞳にキスを許された際には「演技の勉強のためにやっただけ」と言われ、気持ちがないことに落ち込むが、彼女の勉強熱心さに感心する気持ちもある。早稲田大学に進学後、瞳のドラマ出演が決定したことを知りキャンパスで飛び上がって喜んだ。

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