孔子暗黒伝

孔子暗黒伝

『暗黒神話』に続いて描かれた長編作。当初別の物語として描き始められたが、物語の結末が『暗黒神話』に通じる形になっており、ある意味『暗黒神話』の前日譚的な物語ともいえる作品。古代中国の思想家孔子を物語の鍵となる存在に据え、中国思想と神話、インド神話、日本神話等を複雑に絡み合わせた神話的物語となっている。

正式名称
孔子暗黒伝
ふりがな
こうしあんこくでん
作者
ジャンル
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

紀元前1世紀ごろの、中国春秋戦国時代。孔子が発見したという名の子供と、インドで奴隷階級に生まれたアスラが数奇な運命に導かれて出会い、ハリ・ハラとして一体となりインドから日本まで旅を続け、自分自身の出生とはるかな未来に至る世界の運命にも迫っていくSF的要素を持った伝奇物語。

登場人物・キャラクター

(せき)

孔子が中国古代の周王の墓と思われる遺跡で発見した少年。遺跡の奥の隠し部屋で、視肉と呼ばれるいくら食べてもなくならない肉を食べて生きていた。幼い頃は孔子に育てられ、老たんと旅をした後、自身の影にあたるアスラと出会い、ふたりが合一したハリ・ハラへと変わる。

ハリ・ハラ

赤とアスラが一体となった存在で、身体の右半分がアスラの黒い肌、左半分が赤の白い肌にはっきりと分かれている。インドのヒンズー教の考え方において、創造と維持の神ヴィシュヌ(ハリ)と破壊神シヴァ(ハラ)が融合した状態を指す名前。そこに万物の根源たるブラフマーを加えると三神一体(トリムルティ)となる。 天竺近郊の村人たちからは「精霊」を意味する「ピー」あるいは「祖霊」を意味する「ニア・ター」とも呼ばれる。

アスラ

古代インドの階級制度において最下層とされるシュードラの若者。アスラとは「魔族」を意味する名で、破壊神シヴァに生贄を捧げることで望みを叶える力を持つ。赤を光とするならば影として対になる存在で、天竺で出会った後合一し、ハリ・ハラとなる。

孔子 (こうし)

『孔子暗黒伝』の登場人物で、中国古代、春秋戦国時代に実在した儒家の創始者でもある思想家。周王朝の創始者武王の弟で、王朝の政治の基礎を作ったとされる周公旦を尊敬し、その礼学を発展させ儒教思想を作り上げた。政敵である陽虎に命を狙われ、逃げている最中に赤を発見し、後継者として育てることになる。

顔回 (がんかい)

『孔子暗黒伝』の登場人物で、孔子の高弟のひとりとして実在した人物。この物語では、孔子が赤と出会う場に居合わせ、孔子とともに陽虎と開明獣を追って古代のコンピューターと思われる「知識の台」を目撃し、また孔子の意思を継いで「東夷(日本)」に赴きハリ・ハラと再会する。

老たん (ろうたん)

政敵から逃げている孔子に、常に南を指す方位機能を持つ指南車を与え、赤と出会うよう仕向けた謎の老人。成長した赤を孔子の元から連れ去り、天竺で熱病に倒れるが、結果的に赤とアスラと引き合わせることになる。中国古代の思想家、老子ではないかとされている。

陽虎 (ようこ)

『孔子暗黒伝』の登場人物で、中国の春秋戦国時代に実在した政治家。この物語では孔子の政敵として命を付け狙った後に死んだ易経の術を行う巫師で、孔子が過去の出来事を知ろうとして行った「反剋の術」によって復活し、魔物と化して再び孔子を付け狙う。

ゴータマ・シッダールタ

「お釈迦様」として知られる仏教の開祖。この物語においては、赤とアスラを教え導く存在で、ふたりを開明獣に引きあわせた後、「中道を歩け」と教えてからぶたりをハリ・ハラに変える。

ラウアとヨック

天竺近郊の村に暮らす姉弟。姉のラウアは、客人(まれびと)として村に迎えられたハリ・ハラに「神の嫁」として捧げられた存在で、しばらくの間夫婦として共に暮らす。

オモイカネ

顔回が訪れた古代日本における勢力のひとつカツラギ族の呪師。仮面を被っているが中国から渡ってきた者たちの子孫だった。日本神話に描かれる知恵の神の名と同一である。

その他キーワード

開明獣 (かいめいじゅう)

『孔子暗黒伝』に登場する、人間の顔を持つ獅子の姿をした存在。中国の伝説的な神獣で、崑崙山の門番をしているとされる。この物語上では、インドのヴィシュヌ神の化身のひとつとされる獅子の顔を持つ人ナラシンハや、エジプトのスフィンクスと同一存在としている。

前作

暗黒神話 (あんこくしんわ)

神に選ばれた存在で、自身にも神話の時代に繋がる謎を秘めた少年山門武をめぐって連鎖する、奇妙な事件の数々。怪物や神の声に遭遇しながら日本各地をめぐる山門武と、彼を追う謎の老人竹内や菊池一彦の率いる集団か... 関連ページ:暗黒神話

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