人類の命運を左右する「テクノロジー再生計画」
桜子が連れているムームーは一見すると三毛猫だが、その正体は宇宙人である。彼らは惑星間航行などの高度な技術を有し、母星に超文明を築いていた。しかし、内戦によって知識階級を失い、文明の維持が困難になってしまった。母星を失い、コロニー暮らしに追い込まれた彼らが起死回生の策として打ち立てたのが、ほどよく低レベルな地球の技術から学び直し、母星の超文明を取り戻す「テクノロジー再生計画」である。技術者を欠いた状態の彼らがコロニーを維持できるのは1年が限度とされており、リミットまでに成果が得られなければ、地球を奪い取る手筈になっている。保守派のエージェントであるムームーは、誰にでも扱える家電の技術に活路を見出し、その構造から文明を取り戻すヒントを得ようとしている。一方で、すぐにでも地球を侵略すべきだと息巻く急進派も存在している。なお、宇宙人の多くは地球の支配者を猫だと誤解しており、猫と暮らしている人間を「ホルダー」と呼んでいる。
キャンパスを騒がす「人類再生研究会」
桜子が通う京急大学には、胡乱(うろん)なサークルが数多く存在しており、天空橋渡が率いる「人類再生研究会(Human Regeneration Study Group)」もその一つである。名称は壮大だが、主な活動内容は廃品の回収や家電の修理・改造などで、周囲からは「家電研究会」と認識されている。修理した家電は文化祭やフリーマーケットで販売して資金を稼いでいるほか、校内でも販売やレンタル、有償での改造を行っている。校内での金銭のやり取りは禁じられているが、天空橋は報酬を食券で受け取ることで、校則違反を回避している。天空橋が改造した家電が停電や小火などのトラブルを引き起こすことは日常茶飯事であり、校内で騒ぎが起こると真っ先に再生研が疑われる。桜子はムームーに家電の構造を学ばせるために再生研の門戸を叩き、グレーな活動に関与するようになった。なお、ムームーは再生研を国家の最高研究機関だと思い込み、家電に詳しい天空橋を「プロフェッサー」と呼んで尊敬している。
家電の構造や成り立ちを面白おかしく解説
宇宙人のムームーが地球の技術を学ぶ教材として注目したのは、家電である。多くのエピソードは、ムームーが興味を持った家電を取り上げ、その構造を人間のキャラクターが解説するという流れで構成されている。序盤では主人公の桜子が解説を担っていたが、ほどなくして「人類再生研究会」の長である天空橋や、桜子を目の敵にしている肉食系女子の鮫洲美輪が解説を担当するようになった。取り上げられている家電は電子レンジ、冷蔵庫、体温計など多岐にわたり、エピソードによっては自動ドアやレントゲン撮影などの家電の枠を超えた装置、さらには電車や下水道などのインフラに焦点が当たる場合もある。また、昭和に勃発したVHSとベータなどの記録メディア戦争や、令和の時代にまで続くUSB規格戦争などの歴史に触れるエピソードも用意されている。
登場人物・キャラクター
梅屋敷 桜子 (うめやしき さくらこ)
京急大学文学部に在籍する1年生の女子。ボリュームのあるロングヘアで、小柄ながらも胸が非常に大きい。石川県出身で、感情が高まると方言が出てしまう。また、引っ込み思案で声が小さく、すぐに赤面してしまう。町田市のアパートに一人で住んでいたが、ある日、ベランダに宇宙船が墜落するという不運に見舞われ、その宇宙船に搭乗していた宇宙人のムームーと同居することになった。ベランダに突き刺さった宇宙船の維持に必要な莫大な消費電力に悩まされており、深夜はコンビニでアルバイトに励んでいる。当初は友人に恵まれず、同級生から授業の代返を強要されるなど、冴えないキャンパスライフを送っていたが、家電の修理を請け負う怪しげなサークル「人類再生研究会」に加入したことをきっかけに、人との交流の機会が少しずつ増えていった。一方で、ムームーと同じ母星の宇宙人たちの抗争に巻き込まれてしまう。
ムームー
桜子のアパートに居着いている宇宙人。語尾に「ムー」を付けて話す。三毛猫のような外見で、胸元には襟とネクタイ、背中にはチャックが付いている。光合成が可能で食事を必要としないが、スティック型の液状キャットフードを好んでいる。その正体は、同胞のコロニー維持に必要な技術を学びに来たエージェントであり、最新技術の結晶である家電を参考にして、内戦で滅びた母星の文明を取り戻そうとしている。上位生命体としての自負から人間を見下しているが、学びすぎると発熱し、情報を毛玉のように吐き出してしまう。「何か」を壊すのが得意で、直せる見込みもないのに家電を分解する悪癖がある。桜子に対しては憎まれ口を叩いてばかりだが、彼女に危機がせまると全力で排除しようとする。その実力は、戦闘用スーツを着た同胞を圧倒するほどで、内戦時には政府の殺し屋として暗躍していた。敵の皮膚を移植して生き延びた伝説があり、「つぎはぎムームー」という二つ名で恐れられている。
書誌情報
宇宙人ムームー 9巻 少年画報社〈YKコミックス〉
第1巻
(2020-04-30発行、978-4785966621)
第2巻
(2021-01-29発行、978-4785968472)
第3巻
(2021-07-29発行、978-4785969677)
第4巻
(2022-05-30発行、978-4785971458)
第5巻
(2023-02-28発行、978-4785973353)
第6巻
(2023-10-30発行、978-4785975234)
第7巻
(2024-05-30発行、978-4785976743)
第8巻
(2025-04-30発行、978-4785979232)
第9巻
(2025-09-30発行、978-4785980382)







