あらすじ
第1巻
時は太陽系宇宙歴0119年、ELTによって人類は宇宙へと躍進していた。その時代の中、オペラ・キャット・ルーンは宇宙で運び屋「チームフラジャイル」を営み、太陽系の星々を駆けていた。しかしそんなある日、オペラは宇宙船「フラジャイル号」の操縦を誤り、船を破壊してしまう。オペラは新しい船を買うため、木星人のミラを木星に送り届ける依頼を受け、旧式のオンボロ宇宙船「マントル號」に乗って仲間たちと共に宇宙へ飛び出すが、木星へ向かう途中にオペラたちは水星の犯罪ギルドの頭目、凱聖王の襲撃を受ける。金星の王女の身柄を狙う凱聖王は、オペラを金星の王女とカンちがいして身柄を捕える。だが、仲間たちの奮闘によってオペラは凱聖王から逃げ出し、木星へ向かう。ナノが金星の王女と疑いつつも、ナノは宇宙船に乗ってから寝てばかりいた。真相を確かめることもできず、木星に到着する一行。しかし木星では追ってきた凱聖王に加え、依頼主のコーエン財団までもが襲い掛かってくる。三つ巴の中、敵の攻撃でナノの体は破壊されてしまうが、それによって金星の王女であるサリーノ・フォレストは解放され、真相を語る。そしてサリーノの導きによって敵の攻撃から逃げ切ったオペラは、サリーノからお礼にフラジャイル号を復元してもらい、再び宇宙に旅立つのだった。
登場人物・キャラクター
オペラ・キャット・ルーン
宇宙の運び屋「チームフラジャイル」を率いる黒髪ロングヘアの少女。ふだんは破天荒で明るい性格をしているが、甘やかされて育ったために傷つきやすく、精神的に弱いところがある。些細なことでも感情の浮き沈みが激しいため、「壊れ物」「取り扱い注意」を意味する「フラジャイル」のあだ名で呼ばれており、これはチーム名の由来にもなっている。宇宙船のパイロットとしては未熟で、無理を言ってフラジャイル号の着地を行おうとした際、失敗して爆発四散させてしまう。その後は新しい船を買うため、ナノを木星に送り届ける依頼を受け、マントル號で木星に向かう。着地失敗の件も含めて無鉄砲な行動が多いが、一方で土壇場に強く、鉄火場では驚くほどに早い頭の回転や、臨機応変な対応を見せる。
ミール・サイモン
宇宙の運び屋「チームフラジャイル」の一員。二足歩行で歩く小さな犬のような姿をした火星人で、チームのブレインを務める。冷静沈着で判断力に優れ、無鉄砲な行動が多いオペラ・キャット・ルーンをよくたしなめている。各地にコネを持ち、マントル號を手配したり、イオの闇商人のダロックに渡りをつけたりしている。カモン・ザ・ロボットとはしょっちゅう悪口を言い合う仲。だがカモンの操縦技能は認めており、緊急事態には彼の腕を信頼して命を預けている。
カモン・ザ・ロボット
宇宙の運び屋「チームフラジャイル」の一員。知性を持つロボットの鋼鉄人で、温和で優しい性格をしている。誰にでも丁寧に接するが、ミール・サイモンとは仲が悪く、彼からはでくの坊扱いをされている。宇宙船の操縦に関してはミールも認めるほどで、チームでは宇宙船のパイロットを担当する。またロボットの体であるため、カメラで見たものを記録したり、人間では活動できない場所でも難なく入れたり、多彩な能力を持つ。動力は大型のELTで、これを破壊されるとエネルギーが尽きて活動が停止してしまう。
サリーノ・フォレスト
「ナノ」と名乗る木星人の女性で、ペンギンのような姿をしている。宇宙の運び屋「チームフラジャイル」がナノを木星まで届ける依頼を受け、彼女たちと行動を共にする。マントル號内ではほとんど寝て過ごしている。その正体は金星人の王女「サリーノ・フォレスト」で、本来の姿は地球人の6分の1程度の大きさをした小人。容姿は金色の髪を長く伸ばした美しい女性で、地球人に近しい姿をしている。木星人の姿は精巧にできたロボットで、彼女を逃がさないために内部に格納する拘束具だった。金星開発を行うコーエン財団と交渉を行うために姿を現すが、金星人の持つ技術を欲したコーエン財団に囚われてしまう。ナノの時、よく眠っていたのも彼女を拘束するためのシステムで、システムに障害が出ているときのみ意識が表に出ていた。木星到着後、オペラ・キャット・ルーンを信頼できる人間と認識する。クラーク・コーエンがオペラを攻撃しようとするのを利用し、彼女を攻撃からかばいつつ、攻撃でナノの体を壊して本来の姿を現す。オペラたちに真実を話し、彼女たちと共に木星から脱出。金星到着後は、オペラたちにお礼としてオペラの記憶から読み取ったフラジャイル号を復元して渡した。
凱聖王 (がいせいおう)
水星の犯罪ギルドの頭目を務めている。黒いローブを身にまとい、角の生えたマスクのような物をかぶっている。「凱聖號」と呼ぶ宇宙船を駆り、太陽系各地に出没している。金星の王女の身柄がマントル號にあると知り、金星のオーバーテクノロジーの力を手に入れるため、マントル號に襲い掛かる。金星の王女の詳細を知らず、オペラ・キャット・ルーンを王女だとカンちがいして、彼女を捕える。その後、オペラたちを取り逃がしてしまい、彼女たちを追って木星へと向かう。
場所
エーテル・シティ
煙に包まれた街。コロンブス宇宙港のある街で、多くの宇宙船が行き交う拠点となっている。元は別の名前がある街だったが、ELTを発明したバルブ博士の出身地であるため、それにあやかり「エーテル・シティ」と名を改めた。街を覆っている煙は、もともとこの地で噴き出していた無害性のガスで、止めることもできないため、そのまま放置されている。
その他キーワード
マントル號 (まんとるごう)
ミール・サイモンがレンタルしてきたロケット型の宇宙船。初期型のELTが付いた旧式の宇宙船で、性能も居住性も現行機に比べるとかなり悪い。エンジン部分が船の本体と直結しているため脆く、安全性も低い。だが、凱聖號との戦いではスペックの低さが功を奏し、目的の物まで破壊しかねないために凱聖號の攻撃を封じ、それを利用して逃げ切っている。
金星人 (きんせいじん)
かつて金星にいたとされる種族。太陽系を統一したほどのオーバーテクノロジーを所持していたとされるが、三つの雷によって滅び去り、今は伝説に語られるだけの存在となっている。実は太古の災いの際に、金星の内部に惑星型のシェルターを作って避難。自分たちの体の大きさを本来の6分の1まで小さくし、シェルターの中で今日まで生き延びていた。時間と空間を支配したほどの高い技術力を現在まで保持し、テレパシーなどの不思議な力を持つ。ただし身体能力は見た目相応なため、サリーノ・フォレストは外に出たところをコーエン財団の者たちにあっさり囚われてしまう。
ELT (いーえるてぃー)
星間物質「エーテル」から無尽蔵にエネルギーを抽出するシステム。正式名称は「エーテル・リンクチューブ」で頭文字を取った「ELT」の通称で呼ばれる。エーテルは宇宙に存在するため、ELTが開発されたことで宇宙船の技術は大きく発展し、人類は宇宙に羽ばたいていった。また鋼鉄人などのロボットのエネルギー源としても利用されている。
ビルレスト
金星人の秘宝で、時間と空間を歪めて作り出した出入り口。この場所を通ることで、一瞬で離れた場所を移動することができる。古代の金星人は、ビルレストの技術を用いることで広い太陽系を支配していた。太陽系に現在もいくつか現存しており、その一つは木星の大赤斑に存在する。