あらすじ
異世界に転生
イジメで中学3年の秋から5年間引きこもっていた少年は自室で突然死し、女神から異世界に転生できることを告げられる。転生先は魔力が絶対視される世界で、人類史上最高の魔法レベルが77という中、少年は女神から1002という桁違いの魔法レベルを与えられる。しかし転生先では、魔力レベルの計測器では2桁までしか計測できずに、魔法レベルが2と誤解されてしまう。さらに、転生先が王様の生まれたばかりの息子だったため、王族の汚点として遠方の森に捨てられ、表向きは死産だったとして存在自体を闇に葬られるのだった。森に捨てられた少年は、内面は前世のままなため記憶や周囲の状況は把握しているものの、赤ん坊の状態ではなにもできず森の中で一人困っていると、巨大な狼の魔物に襲われる。唯一使える結界魔法で撃退し、魔物にフレイという名前を付けて配下にすることができた少年は、その後、王族の一員であるゴルド・ゼンフィスに救われ、ハルト・ゼンフィスとして生きていく。
ゼンフィス一家を狙う者
ゴルド・ゼンフィスに救われて9年、ハルト・ゼンフィスは平穏無事に過ごし、フレイもゴルドの側仕えとして雇われてメイドとしてハルトをサポートしていた。ある日、ハルトは領地内にある盗賊の拠点を攻めていたゴルドと配下の騎士団が、壊滅的な被害を出して撤退してきたことを知る。9年間結界魔法の研究を続けつつ、自堕落な生活のために一人立ちする時期をうかがっていたハルトだったが、ゴルドたちの敵を放置しておけないと考え、領土内に配置していた板状結界で情報を集め始める。フレイと共に盗賊を壊滅させたハルトは、盗賊から聞き出した情報を匿名でゴルドに提供し、その情報をもとに盗賊騒ぎは収まるのだった。しかし、今度は領地内のお祭りに出かけたシャルロッテ・ゼンフィスとナタリア・ゼンフィスが何者かに襲われる事態が発生する。
ひさしぶりの母子再会
ゴルド・ゼンフィスの城に王様の実子であるマリアンヌとライアスが訪れる。ハルト・ゼンフィスもゴルドの息子として二人をもてなしていると、シャルロッテ・ゼンフィス(シャル)が翌日の視察にライアスから誘われたことを知る。ハルトはシャルの安全を確保するため、視察ルートを板状結界で調査していると怪しい一団が魔法陣を作っているのを発見する。現地へ向かったハルトは一団から問答無用で襲われ、さらに魔法陣から出現したナイトスケルトンとゴーレムといった召喚獣からも攻撃される。ハルトは結界魔法で召喚獣たちの制御を上書きして自分の指揮下におき、一団を壊滅させて目的を聞き出す。ハルトは一団がシャルの暗殺を目論み、命令を下したのが自分の生みの親で王妃のギーゼロッテだと知ると、ゼンフィス一家を守るためにフレイを連れて王城へ向かうのだった。
従者探し
ハルト・ゼンフィスがギーゼロッテに対して警告を発してから5年、ハルトたちは平穏な日々を送っていた。15歳の誕生日が近づいた冬のある日、ハルトはゴルド・ゼンフィスから呼び出され、春から王都にあるエリート学校である王立グランフェルト特級魔法学院に通うように言われる。前世で学校に通っている時にイジメに遭っていたハルトにとって、学校に通うのは耐え難い苦痛なため強く拒否する。しかし、マリアンヌの願いを受けたジルク国王の推薦状があることと、ゴルドのハルトへの思いを聞いて学校に通うことを決める。しかしハルトは、ずっと学校に通う気はまったくなく、「ハルトはエリート学校に通えるほど魔法の実力はないため退学処分で、ハルトの実力を見誤って推薦を出したジルク国王の責任」という形で穏便に実家に戻ろうと画策する。ただし一度は学校に通わなくてはいけないため、ハルトは学校に同行させる従者を決めようとするが、フレイは従者として不適切なため別の人物を探し始める。そんな中、帝国内で狩りに遭って手負いのドラゴンがゴルド領に接近しているとの一報が入る。
思い通りにいかない学院生活
王立グランフェルト特級魔法学院に到着直後、ハルト・ゼンフィスは山のように積まれた入寮書類すべてにサインさせられ、入学式前には実力審査のための学科試験と魔力測定を受けさせられる。試験でひどい結果を出せば、入学式前に退学にしてもらえる可能性があると考えて適当に答えを書いたところ、テストを作ったティアリエッタ・ルセイヤンネルに興味を持たれ、自らの研究室に所属しないかと誘われてしまう。さらに入学後はイリスフィリアとシュナイダル・ハーフェンの騒動に巻き込まれた際に、シュナイダルを撃退したことで学院内で注目の的になるなど、ハルトは思惑どおりの学園生活を送れずにいた。さらにマリアンヌやライアスと再会したり、境遇が似ているイリスフィリアと友達になったりと、交友関係も広がっていくのだった。
関連作品
小説
本作『実は俺、最強でした?』は、澄守彩の小説『実は俺、最強でした?』を原作としている。原作小説版は、澄守彩が「小説家になろう」に投稿していた作品で、Kラノベブックスから刊行された。イラストは本作の作者である高橋愛が担当している。
登場人物・キャラクター
ハルト・ゼンフィス
ゴルド・ゼンフィスの長男。もともとは現代の日本に住む少年だったが、中学3年の時に受けたイジメが原因で5年間引きこもっていた。引きこもりの生活の中で突然死して、女神の力によって魔力が絶対視される異世界に転生する。異世界にある国の一つで、ジルク国王とギーゼロッテの子供「ラインハルト」として生まれるが、魔力レベルが極端に低いため、王族の汚点になると考えられ表向きは死産ということになり、秘密裏に遠い森に捨てられる。捨てられた際に事情を知るゴルドによって助けられ、ハルト・ゼンフィスとして生きていく。魔力レベルが低いとされているが、異世界での計測器が2桁までしか表示されなかっただけで、実際の魔力レベルは1002。人類史上最高の魔法レベルが77とされているため、規格外の魔力を有している。基本的に面倒くさがり屋だが、目標達成のためには努力は惜しまない生真面目な性格で、異世界でも引きこもり生活を送るためにさまざまな手を尽くしている。ゼンフィス一家のことは実の家族と思って大切にしており、ゴルドやナタリア・ゼンフィス、シャルロッテ・ゼンフィスが危機に陥ると、従者のフレイを連れて秘密裏に敵を排除している。
フレイ
ハルト・ゼンフィスに従うフレイム・フェンリル。捨てられた赤子のハルトを食べようとして返り討ちに遭い、その実力からギーゼロッテに討伐された魔王、イリスフィリアの生まれ変わりと勘違いする。さらにハルトから「フレイ」という名前を付けられたため、ハルトに忠誠を誓って従者となる。フレイム・フェンリルの時は大型の狼の姿をしているが、ハルトの世話をするため人型の女性となり、ハルトがゴルド・ゼンフィスに引き取られると、ゴルドの側仕えとなってメイドとして働き始める。面倒見がよくて竹を割ったような性格なため、相談を持ちかけられることが多い。戦闘能力は非常に高く、ゴルド領にいる魔物が人間を襲わないように話をつけたり、魔物同士の騒動の仲裁役も担っている。
シャルロッテ・ゼンフィス
ゴルド・ゼンフィスとナタリア・ゼンフィスの娘で、ハルト・ゼンフィスの義妹。周囲からは「シャル」と呼ばれている。天真爛漫な人懐っこい性格をしている。異質な魔力を感じ取ることができ、最初はハルトから感じる魔力を恐れて距離を置いていた。しかし、盗賊から襲われているのをハルトに助けられた際、ハルトが正義の味方であることがわかるとハルトを兄として慕うようになり、つねに行動を共にするようになる。魔法レベルの最大値はギーゼロッテを上回っており、潜在能力は非常に高い。5歳の時にハルトが語るアニメに興味を示し、ハルトが結界魔法を駆使して日本のインターネットサーバーに接続できる装置を作ると、アニメにのめり込むようになる。アニメの日本語を理解するためハルトから日本語を教わると、わずか2時間で平仮名とカタカナ、小学校低学年レベルの漢字をマスターした。日本語を理解したあとはより一層アニメが好きになり、ハルトが心配になるほどのアニメオタクとなる。
ゴルド・ゼンフィス
ハルト・ゼンフィスの義父。ナタリア・ゼンフィスの夫で、シャルロッテ・ゼンフィスの実父でもある。ジルク国王の弟で、辺境伯として王国の北側の領地を治めている。「地鳴りの戦鎚」という異名を持つ豪傑で、人当たりもよく他人を思いやれる器の大きさを持つため、領民からの信頼も厚い。王族の一人でもあるためハルトが森に捨てられた経緯を知っており、ハルトと死産となった自分の子供を重ねて見たため、孤児院から養子を迎えたことにしてハルトを息子として引き取る。ハルトには常識では計り知れない力をあると確信しており、ハルトに大きな期待を寄せている。
ナタリア・ゼンフィス
ハルト・ゼンフィスの義母。ゴルド・ゼンフィスの妻で、シャルロッテ・ゼンフィス(シャル)の実母でもある。ハルトを実の子供と思って育てており、ハルトの親離れが早いことを寂しく思っている。少々天然気味な性格で、シャルがハルトを避けていることに気づくと、二人がなかよくなれるように色々と画策する。
ハルトC (はるとこぴー)
ハルト・ゼンフィスが作ったコピーロボット。ハルトが引きこもり生活を邪魔されないためや、面倒ごとを押し付けるために作り、性格や考え方など内面はハルトとそっくりな出来となっている。そのため、ハルトから何か頼まれても部屋から出たくないことを理由に拒否することが多い。見た目はそっくりだが、ハルトは頭頂部から毛が1房、ハルトCは二房立っているという微妙な違いがある。またハルトとは記憶を共有しているが、魔力を持っていないため魔法が使えない。ハルトの代わりをする時は、ハルトからさまざまな魔法をかけてもらっている。
マリアンヌ
ジルク国王と前王妃の娘。ライアスは母親違いの弟。ハルト・ゼンフィスの出生や捨てられた赤子がハルトとして生きていることはゴルド・ゼンフィスとナタリア・ゼンフィス以外は秘密にされているため、ハルトが母親違いの弟であることには気づいていない。王女殿下として相応しい立ち振る舞いと常識を身につけており、横暴なライアスに注意することも多い。ライアスとの模擬戦で圧勝したハルトに興味を示す。
ライアス
ジルク国王とギーゼロッテの息子。マリアンヌは母親違いの姉。ハルト・ゼンフィスの出生や捨てられた赤子がハルトとして生きていることはゴルド・ゼンフィスとナタリア・ゼンフィス以外は秘密にされているため、ハルトが実の兄であることには気づいていない。次期国王としての立場を利用して他者には傲慢な態度を取っていたが、ハルトとの模擬戦で惨敗してからは人当たりがよくなった。さらに努力を惜しまなくなり、エリート学校の王立グランフェルト特級魔法学院に飛び級で入学できるほどの実力をつける。
ギーゼロッテ
ジルク国王の妻で、ハルト・ゼンフィスとライアスの実母。魔王、イリスフィリアの討伐隊に参加し、単独でイリスフィリアを倒したことで英雄となり、「閃光姫」とも呼ばれるようになった。その後、ジルク国王と結婚して王妃となり、今では王国の実権を握る存在にまで上り詰める。自分の地位を脅かす相手には容赦がなく、将来的に敵となりそうな存在も秘密裏に暗殺を命じるなど、性格も残虐で失敗した部下もすぐに切り捨てる。自分以上の資質を持ち、後ろ盾もあるシャルロッテ・ゼンフィスを始末しようとさまざまな手を講じるが失敗している。事情を知ったハルトによって耐え難い屈辱を受けてしまう。
ジョニー
逢魔の庭園で暮らすスケルトンナイト。もともとはギーゼロッテ直属の召喚部隊が召喚した召喚獣だったが、ハルト・ゼンフィスが制御術式を上書きしたことでハルトの指揮下に入った。その後、ゴルド・ゼンフィスの領地にある山奥の土地を与えられ、そこを開拓して住み着く。逢魔の庭園で暮らす魔物たちをまとめるリーダーでもあり、物腰が柔らかく生真面目な性格で、紳士的な立ち居振る舞いをする。ハルトへの忠誠心が高く、魔物たちからも慕われている。説明は丁寧でわかりやすいが、一度しゃべりだすと止まらない欠点がある。
ギガン
逢魔の庭園で暮らすギガントゴーレム。もともとはギーゼロッテ直属の召喚部隊が召喚した召喚獣だったが、ハルト・ゼンフィスが制御術式を上書きしたことでハルトの指揮下に入った。その後、ゴルド・ゼンフィスの領地にある山奥の土地を与えられ、そこを開拓して住み着く。巨大な体軀からは想像できないほど物静かな優しい性格で、花を愛(め)でる乙女心がある。
リザ
ハルト・ゼンフィスに従うブリザード・ドラゴン。もともとは帝国内の山奥で300年くらい人間の本を読みながら暮らしていたが、冒険者に見つかって住処(すみか)を追われる。争いを好まない穏やかな性格なため逃げ続けていたが、執拗(しつよう)に追われて衰弱していた際にハルトとフレイに助けられる。それぞれ事情を説明したあと、ハルトのことを主と認めて従者となることを決める。ドラゴンの時は50メートル近い巨体だが、人型の時は10歳くらいの少女の大きさになる。ハルトから「リザ」という名前を付けられた。従者になったあとは、メイドとしてゴルド・ゼンフィスの城で働き始める。物覚えが早くて知識も豊富なため、シャルロッテ・ゼンフィス(シャル)の専属メイドとなり、見た目が同年代ということもあってシャルとすぐになかよくなる。
シヴァ
ゴルド・ゼンフィスの領地内で活動している人物。全身を覆う黒いマントを着て、頭部すべてを覆うヘルメットをかぶっている。領地内で悪事を働く集団を退治しているうちに、いつの間にか「黒い戦士」と呼ばれるようになる。その正体はハルト・ゼンフィスで、最初は近未来SFバトルアニメを見ていたシャルロッテ・ゼンフィス(シャル)を喜ばすために変身ヒーローを演じつつ悪党を退治していた。それを繰り返して行なううちに巷(ちまた)で噂になり、目立ちたくないハルトにとって好都合なため、秘密裏に行動する時に利用している。「シヴァ」という名前は、破壊と創造を司る最高神である「シュヴァルツァ・クリーガー」を略して付けられたもので、シャルがインターネットで調べて命名した。
ティアリエッタ・ルセイヤンネル
王立グランフェルト特級魔法学院で、古代魔法を研究している教授の女性。周囲からは「ティア」と呼ばれている。子供と見間違えるほど身長が低い。入学式前に行われた学科試験と魔力測定でハルト・ゼンフィスに興味を示し、自分の研究室に所属しないかと執拗に誘い続ける。ティアリエッタ・ルセイヤンネル自身の研究には絶対の自信を持っており、王族から口を挟まれても一歩も引かずに対抗する。
シュナイダル・ハーフェン
王立グランフェルト特級魔法学院に通う男性。ハーフェン侯爵の次期当主で、学院では副会長を務めている。実家を後ろ盾にしてつねに多くの取り巻きを引き連れ、周囲には尊大な態度で接している。自分勝手な性格なため、周囲からの評判は非常に悪い。イリスフィリアに対する横暴な態度をシヴァに咎(とが)められ、さらにお仕置きを受けて醜態を晒したことでシヴァに対して強い憎しみを抱くようになる。
イリスフィリア
王立グランフェルト特級魔法学院に通う女性。ハルト・ゼンフィスのクラスメート。王都を散策している時に出会ったり、シュナイダル・ハーフェンとの騒動に巻き込んでしまったりと、ハルトと接することが多い。生まれた時から言葉をしゃべれたために捨てられ、捨てられた先でも捨てられることを4度繰り返し、最後は修道院に引き取られた。周囲との交流がない閉鎖的な場所で育ったために世間知らずな一面がある。ハルトの話を聞いて親近感を覚えて友達となり、ハルトから「イリス」と呼ばれるようになる。なお、ギーゼロッテに倒された魔王の名前も「イリスフィリア」だが関連性は不明。
場所
逢魔の庭園 (ぱんでもにうむ)
ゴルド・ゼンフィスの領地内の山奥にある集落。ギーゼロッテ直属の召喚部隊が召喚した召喚獣をハルト・ゼンフィスが術式を上書きして支配下に置いたため、召喚獣を匿(かくま)う土地を提供した際に召喚獣たちが開拓して一つの集落を作り上げた。最初はジョニーたちスケルトンナイトとギガンだけだったが、フレイが集めた行き場のない野良魔物も引き取っている。ジョニーの指示のもと、家畜を飼ったり、作物を育てたりと自給自足の生活をしつつ、全員が穏やかに暮らしている。近くにはハルトが引きこもるために立てたログハウスもあり、ハルトやフレイ、シャルロッテ・ゼンフィス(シャル)などは定期的に訪れている。「逢魔の庭園」という名前は、アニメの影響を受けたシャルが付けた。
クレジット
- 原作
-
澄守 彩
書誌情報
実は俺、最強でした? 14巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2019-10-09発行、 978-4065172599)
第2巻
(2020-03-09発行、 978-4065187623)
第3巻
(2020-08-06発行、 978-4065206119)
第4巻
(2020-12-09発行、 978-4065215753)
第5巻
(2021-05-07発行、 978-4065230848)
第6巻
(2021-11-09発行、 978-4065257395)
第7巻
(2022-09-08発行、 978-4065288825)
第8巻
(2023-02-09発行、 978-4065307625)
第9巻
(2023-06-08発行、 978-4065319703)
第10巻
(2023-08-08発行、 978-4065324691)
第11巻
(2023-12-07発行、 978-4065338711)
第12巻
(2024-04-09発行、 978-4065350973)
第13巻
(2024-07-09発行、 978-4065359969)
第14巻
(2024-11-08発行、 978-4065374054)