没落名家の御曹司と破天荒な家庭教師
暦家の第15代当主である壬戍は、卓越した情報収集能力と冷酷さを活かして、軍閥組織を基盤とした民間機関を大きく成長させ、政界や財界にも強い影響力を持つようになった。しかし壬戍が亡くなると、その影響力は瞬く間に消え去り、暦家も衰退の道を辿ってしまう。壬戍の孫である甲子太郎は16代目の当主に就任するが、家の再建に取り組むこともなく、広い屋敷の中で孤独に暮らしていた。そんな中、甲子太郎のもとになずなが訪れ、壬戍から甲子太郎のことを託されたと語る。しかし、なずな自身は甲子太郎を守るつもりはまったくなく、彼に暦家への復讐や財産の奪取を企む者たちを懲らしめる力を与えるため、修行に近い教育を施すと宣言する。こうして、甲子太郎はなずなの前代未聞の育成術を受けながら、次第に暦家の復興に向けて動き出すことになる。
甲子太郎の成長を導く、なずなのスパルタ教育
壬戍から甲子太郎の育成を任されたなずなは、実際に出会った甲子太郎の詐術や度胸、さらには危機に直面しても動じずに、交渉や暴力で問題を解決しようとする姿勢に強い好奇心を抱き、彼が一流の支配者になれる可能性を感じ取る。そして、なずなは暦家の屋敷に住み込み、屋敷中に罠を仕掛けたり、料理がうまくできた際には手製のスタンプを押して褒めるなど、マイペースで愛情に満ちたスパルタ教育を行う。甲子太郎のもとには、暦家を敵視する裏社会の人間たちが襲いかかることもあるが、彼が自力で解決できると判断すれば、あえて手を出さずに任せることもある。しかし、甲子太郎を大切に思うあまり、つい彼を助けてしまうことが多い。なずなのこのような教育方針は、周囲に壁を作っていた甲子太郎をよい方向に導くだけでなく、そんな甲子太郎を見習うことで、なずな自身が成長するきっかけにもなっている。
壬戍に仕える精鋭部隊「暦ナンバーズ」
壬戍が現役であった時代、彼に直接仕える12人の精鋭が存在していた。彼らは壬戍から「暦ナンバーズ」と呼ばれ、卓越した諜報技術や身体能力、そして壬戍への高い忠誠心が評価され、時には誘拐や脅迫、窃盗といった犯罪行為を行い、壬戍や暦家を裏から支えてきた。彼らの忠誠心は壬戍だけでなく、甲子太郎にも向けられており、特に兎宮はその忠義を強く抱き続けている。一方でなずなは、彼らが甲子太郎にも忠誠を誓っていたにもかかわらず、壬戍の死後に甲子太郎を置いて暦家を去ったことに疑問を抱いていた。甲子太郎は「自分が無能だから愛想を尽かされ出て行ったのだろう」と推測するが、実際には別の理由があった。その後、兎宮や犬塚、猿飛平助が暦家に戻ってきて、甲子太郎を支える。なお、「暦ナンバーズ」という名称は壬戍が名付けた通称だが、構成員たちはそのことを知らない。
登場人物・キャラクター
暦 甲子太郎 (こよみ かしたろう)
暦家の第16代当主である少年。既に両親は亡くなり、唯一の肉親であった壬戍が亡くなって以来、一人で暦家に住んでいる。のちに壬戍の依頼で暦家を訪れたなずなや、暦ナンバーズのメンバーと共に生活を始める。長いあいだ一人で生活していたため、家事を一通りこなすことができ、子供ながらも度胸や交渉能力に優れている。また、なずなには及ばないものの、自分の倍以上の背丈の大人を一撃で倒すほど、身体能力が高い。壬戍から大切にされていないと思い込んでいた甲子太郎は、壬戍が暦家を栄えさせるために悪辣な手段を用いていたため、周囲から恨まれることが多く、暦家や壬戍に対してあまりよい感情を抱いていない。そのため、「ろくでもない祖父のろくでもない遺産を継いでしまった」と毒づいていたが、なずなの育成の影響を受けて、暦家を守ることに前向きになり、壬戍の本心を知ることで彼に対する信頼を取り戻す。
蠅声 なずな (さばえ なずな)
甲子太郎と共に暦家の屋敷で暮らす大柄な女性。生前の壬戍から甲子太郎の育成を依頼されており、「乳母兼家庭教師」を自称している。「蠅声なずな」という名前は偽名で、彼女の本名や経歴に関する情報はすべて壬戍によって抹消されており、甲子太郎や「暦ナンバーズ」もそのことを知らない。素手で鉄格子を曲げたり、コンクリートを破壊したりと驚異的な腕力を誇る。また、多数のヤクザやエージェントを一掃する格闘能力にも優れており、敵対する勢力から恐れられている。明るく自由奔放な性格で、誰に対しても自然体で接するが、気に入らない相手には辛辣な態度を見せることもある。しかし一度気に入ると、たとえ暦家やなずな自身と敵対する相手であっても、助けようとする優しさを持っている。