寄生獣リバーシ

寄生獣リバーシ

岩明均の『寄生獣』のスピンオフ作品。寄生生物が発生した西暦1990年代の日本を舞台に、友人たちを惨殺された広川樹が、復讐(ふくしゅう)を果たすべく犯人を追跡していく。原作と同じ時代、同じ場所で起こったもう一つの事件を描いたミステリーサスペンス。樹の父親である広川剛志や、深見十三の甥(おい)の深見拓郎、寄生生物である田村玲子や草野、後藤など、原作に登場する人物が本作にも多数登場し、樹や十三たちにかかわっていく。講談社「コミックDAYS」で2018年6月から2021年5月にかけて配信された作品。

正式名称
寄生獣リバーシ
ふりがな
きせいじゅうりばーし
原作者
岩明 均
作者
ジャンル
サスペンス
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

ディアブロ

20世紀末。人類は日本の各地で発生した寄生生物たちの餌食となっていた。しかし、数の少ない寄生生物が表立った動きを見せていないことから、一部を除いた人間はその存在にすら気づいていなかった。東福山市に住む広川樹は、堀田亮平たちから夜遊びの誘いを受けて待ち合わせ場所に向かうが、そこで彼が目撃したのは鋭利な刃物で切り裂かれたような堀田たちの惨殺死体と、現場から何事もなかったかのように立ち去る海老沢晃平の姿だった。樹は、海老沢の底知れぬ悪意を実感しながらも自らの手で仇(あだ)を討つことを志し、友人たちが殺害されたことを警察に通報するも、犯人の存在を伏せた供述を行う。聴取を担当した深見十三増田は樹の様子を怪しみ、彼をひそかにマークする。十三たちは樹を追う中で、彼が独自に、友人たちが殺害された現場へ戻ったことを知り、そのあとを追う。そこでは樹の父親の広川剛志と、彼と協力関係を結んでいた寄生生物である田村玲子草野が正体を隠して邂逅(かいこう)していた。十三は樹と剛志たちのあいだに割って入り、何をやっていたのか追及する。草野は彼らを危険視してひそかに殺害しようと試みるが、田村の静止と樹の機転によってその場は収まる。樹が何かを隠していることを察した十三たちが同行を求めると、樹は素直に応じるが、車で移動している最中に芦田に襲撃され、車から降りた増田を殺害されてしまう。

Happy!

襲ってきた芦田を車で体当たりした深見十三は、広川樹に対して友人たちを殺害した真犯人は芦田なのかと尋ねる。だが樹は、真犯人は本能のままに人を喰(く)らう化け物ではなく、欲望のために殺戮(さつりく)を繰り返す悪であると断じる。翌朝、東福山警察署の捜査会議に戻った十三は、犯人の正体を特定するためには樹の助力が不可欠だと考え、上司の荻野目規夫に対して樹の連行を提言する。荻野目は、樹から自発的に協力してもらうよう信頼関係を結ぶことを言い含めながらも、殺害された増田の代わりとして彼の同僚だった市ノ瀬栄治を十三の部下につけて、引き続き事件を追うように命じる。そんな中、樹に思いを寄せていた南真子が、海老沢晃平の手によって殺害される。南に同行していた朝河から通報を受けた十三と市ノ瀬は現場に急行するが、彼女から海老沢の人相があまりに特徴に欠け、右腕に腕時計を巻いていること以外は思い出せないと聞かされ、やはり寄生生物がなんらかの関与をしているのではないかと疑う。そのうえで、姪(めい)である南を殺されたことに怒りを抱いた市ノ瀬は、独断で樹を連行し、事件との関係を話すよう強要する。樹は寄生生物の存在を改めて認めたうえで、人間と寄生生物を判別できることを告白するが、犯人はやはり人間で、自分もそれを許すつもりはないと激昂する。彼の信念を認めた十三は、警察ではなく自分と市ノ瀬に力を貸して欲しいと、改めて協力を仰ぐ。

接触

海老沢晃平は麻薬の取引相手である能登宏樹を、スレドニ・ヴァシュタールの力を使って証拠が残らないよう殺害する。さらに、脳ではなく腕に寄生されていることを異端視した寄生生物に襲われるが、ヴァシュタールが応戦しているあいだに光と火を使った戦術を駆使して、これを切り抜ける。そこに新たな寄生生物の野田が現れ、海老沢と接触する。野田は、繁殖ができない寄生生物に先がないことを自覚しており、人間と寄生生物が持つ合理性と可能性に興味を持っていた。そして、海老沢の一連の行動から自分の望む可能性を見出し、彼およびヴァシュタールと行動を共にすることを決める。東福山市の警察署では、能登が殺された事件についての捜査会議がなされていたが、気づかれずに身体を突き刺し、なおかつその状態で心臓を切り裂くという芸当を成し遂げた凶器の特定に苦慮していた。そこに居合わせていた平間の同僚は寄生生物の犯行を疑うが、頭部が変形したという情報がなかったことに首をかしげる。

雑踏

深見十三は、広川樹が本当に寄生生物を見分けられるかどうかの確認をするべく、共にレストランへと赴き、街を歩く人々に寄生生物かどうかのチェックをうながす。樹はたまたま歩いていた島田秀雄を寄生生物であると見抜くと、それに気づいた島田は即座に人相を変えて、それを見た十三は彼が寄生生物であることと、樹の能力が本物であることを確信する。一方、かつて樹に手荒な行動を取ったことで謹慎させられていた市ノ瀬栄治は、雑踏の中で偶然海老沢晃平野田が並んで歩いている姿を発見する。市ノ瀬は、かつて朝河から南真子を殺害した犯人らしき男が腕時計をしていたと言っていたことから同じ特徴の腕時計を持つ海老沢を怪しみ、わざとテレホンカードを拾わせて指紋を採取して、それを荻野目規夫に渡るように手配してから、二人のあとを追う。しかし、それに気づいた海老沢が人気のないところに彼を誘い出し、市ノ瀬自身も応援を待たずに、危険を承知で彼の誘いに乗る。このことが災いし、海老沢を捕えるために殴りかかったことで野田の手により殺害されるが、荻野目のもとに指紋のついたテレホンカードと右耳に傷があるという情報が届き、警察の中で共有される。

約束

海老沢晃平市ノ瀬栄治を殺害し、遺体を野田に食べてもらうことで証拠の隠滅にも成功する。しかし、指紋のついたテレホンカードが警察の手に渡ったことに感づき、捜査の手から逃れるためにいったん野田と別れて別の地域に潜伏することを決める。海老沢は逃亡のために確保しておいた盗難車を走らせるが、その道中で偶然広川樹を発見し、「挨拶」と称して彼に接触する。堀田亮平南真子たちを殺害されたことで海老沢を深く憎んでいた樹は、彼の誘いに応じる形で人気のない駐車場へと同行し、彼が神と崇(あが)めるスレドニ・ヴァシュタールを見せられる。罪の意識の欠片(かけら)も持たず、自らの信仰のために殺戮を繰り返すことを公言してはばからない海老沢に、樹は我慢の限界を迎えると、危険を省みずに殴りかかる。しかし海老沢は、樹にわざと致命傷にならないような傷を負わせ、駆け付けた警察官たちも即座に殺害してしまう。海老沢は宣戦布告とばかりに自らの名前とヴァシュタールの存在を明かし、ヴァシュタールの能力で自らの人相を変えてその場を立ち去る。海老沢が手加減したことで一命を取り留めた樹は、東福山市の市長に当選した広川剛志からねぎらいの言葉をかけられる。だが、その中でも冷静さを崩そうとしない剛志のことを、樹や家政婦の鈴木はどこか信じ切れずにいた。

中て弓

海老沢晃平から負わされた傷も癒えて退院し、学校に復帰した広川樹は、朝河から南真子が樹に思いを寄せていたことを聞かされ、涙する。そして海老沢と戦う力を鍛えるべく、弓道部に入部すると見る見るうちに上達していき、度重なる事態によってささくれていた心も、次第に整いつつあった。そんな中、殺された仲間の墓参りに訪れていた樹は、同じ目的で訪れていた深見十三と再会する。樹は、海老沢が去り際に再会することをほのめかしていたことから、近いうちに東福山市に戻って来ると確信していた。これを利用して自分をオトリにしておびき出すので十三に始末をつけて欲しいと頼み、十三もそれを快諾する。一方海老沢は、樹の読みどおりに麻薬の取引相手の一人から中古車を譲り受け、それを使ってひそかに東福山市に戻って来ていた。海老沢は、野田福田と合流したうえで、朝河に接触することで樹をおびき出し、正式に宣戦布告を行う。樹は海老沢の再来を十三に伝えると、広川剛志に対して詳細を伏せたうえで「やりたいことがある」と告白する。剛志は、物事の善悪を決められるのは自分自身だけだと主張したうえで、樹の意志を尊重する姿勢を見せる。剛志との話を終えた樹は、鈴木にしばらく家に帰らないことを伝えると、十三の家にしばらく滞在することを決める。一方、広川集団を束ねていた剛志自身も、田村玲子の死亡や、それに伴い集団に分裂の兆しが見え始めるなど、徐々に追い詰められていく。

造花が笑う

東福山市を中心に、人類と寄生生物の争いは本格化しつつあった。警察署は山岸が率いる自衛隊を招聘(しょうへい)し、近いうちに広川集団を殲滅(せんめつ)する計画を立てる。これを知る平間深見十三の家に電話をかけ、十三に対しても協力を望んでいることと、広川樹の父親である広川剛志が寄生生物に成り代わられている可能性が極めて高いことを伝える。その会話は、現在十三の家に滞在している樹の耳にも入るが、その矢先に十三の家に死んだはずの南真子の顔を持つ人物が訪問して来る。樹はその人物が、スレドニ・ヴァシュタールの力で顔を変えた海老沢晃平であると即座に見抜き、保管されていた銃で即座に彼を撃つ。だが、肩を負傷させられたものの、ほかの弾丸はすべてヴァシュタールに弾(はじ)かれてしまう。海老沢は最後の挑戦を仕掛けると公言し、野田と共にその場を立ち去る。樹は、南の顔を撃てなかったことを悔やみながらも、信頼とは違う観点から、父親は現在も寄生生物に成り代わられていないと主張する。そして、海老沢が残した計画書から、剛志が勤めている東福山市の市役所を含めた複数の個所に毒ガス発生装置を仕掛けて、人間も寄生生物も皆殺しにしようとしていることを知ると、この計画に乗じて海老沢と決着をつけることを決意し、十三に改めて協力を求める。

フェイス/オフ

山岸を主軸とした自衛隊特殊部隊は、広川集団を一網打尽にする計画を着々と整えていた。海老沢晃平野田福田をはじめとした協力者たちと共に毒ガスの作戦の準備を進め、海老沢を追う広川樹深見十三もまた、彼らの計画に乗じて動こうとしていた。そして作戦当日、東福山市の市役所では、山岸の率いる自衛隊と警察の合同部隊が、剛志の率いる寄生生物の集団を殲滅するため行動を開始する。彼らの動きを薄々感づいていた広川剛志後藤は、それぞれの目的のためにあえて彼らを迎え入れようとする。一方の海老沢は、樹や十三の待機場所に先回りして、彼らが落ち合うはずだった警察官を皆殺しにする。さらに、野田に自らの身代わりを任せることで警察の捜査網をかく乱し、二人と戦う舞台を整える。海老沢はスレドニ・ヴァシュタールの助けにより圧倒的な力を誇っており、まともに戦えば樹たちに勝ち目はなかったが、ただ彼らを殺す気はなく、お互いをよく知るために話し合うべきだと主張する。樹と十三はすかさず閃光(せんこう)弾を炸裂させ、そのスキを突いて海老沢の四肢を撃って行動不能に陥れようとする。だが、ヴァシュタールの妨害により左足を傷つけるだけに留まる。閃光弾は海老沢のみならずヴァシュタールにも警戒心を植え付けるが、十三はこれを逆手に取り、閃光弾に見せかけた空き缶を投げつけることで油断を誘い、車で体当たりを仕掛ける。

若者のすべて

深見十三の車にはねられた海老沢晃平は、一時的に呼吸が困難になるほどのダメージを負う。だが、彼の左腕に寄生していたスレドニ・ヴァシュタールは、海老沢の窮地を救うべく、落ちていた弾丸を高速で発射し、車の窓ガラスを貫通して十三に重傷を負わせてしまう。それを目の当たりにした広川樹は、海老沢の手でまた大切な人を失う恐怖にかられ、急いで車に駆け付けるが、そこに意識を取り戻した海老沢が現れる。樹は窮地に陥ったかに思われたが、ヴァシュタールが行動不能になっていたことを好機ととらえ、素早く銃を彼の額に突きつける。海老沢はこれにも動じずに、樹の正義を問いただそうとするが、そこで聞こえてきた十三の声にうながされるままに引き金を引く。時を同じくして、東福山市の市役所の攻防戦も決着がつこうとしていた。広川剛志は乗り込んできた自衛隊に動じることなく、これ以上地球の環境を悪化させないためにも、寄生生物は存在するべきであることを主張する。だが、彼が寄生生物に成り代わられていると思い込んでいた隊員たちは、発砲して彼の命を奪う。こうして樹は怨敵と恩人、そして父親を同時に失うこととなる。

そこに還る少年

東福山市の市役所での攻防、そして広川樹深見十三海老沢晃平の戦いからしばらくの時が経つ。それ以来、東福山市のみならず、日本全国では寄生生物の組織立った動きや人的被害はほとんど見られなくなっていた。福田をはじめとした海老沢の協力者たちは逮捕され、ただ一人逃れた野田は、海老沢の死に引きずられる形で死を迎えつつあったスレドニ・ヴァシュタールに対して共に生きていくよう誘い掛け、自分の左腕に移植する。樹は久しぶりに自分の家へと帰還するが、父親の広川剛志の痕跡はほとんど警察に押収されてしまっていた。しかし、鈴木朝河が相変わらず壮健であることに安堵し、父親が寄生生物を率いていた事実を公表せず、市役所に立てこもていた凶悪犯の犯行として処理することを本間に聞かされたりと、非日常が日常に戻っていくことを実感する。さらに、もともとは海老沢に立ち向かうために始めた弓道部もそのまま続けることを決める。それから1年後。ふつうの高校生としての暮らしに戻っていた樹は、奇跡的に一命を取り留めていた十三と再会を果たす。

登場人物・キャラクター

広川 樹 (ひろかわ たつき)

東福山市の高校に通っている男子。寄生生物とふつうの人間を直感的に判別する能力を持つ。母親を早くに亡くし、現在は父親の広川剛志と二人で暮らしている。家では家政婦の鈴木が世話をしている。剛志からは自然を敬い大切にするよう教えられており、「地球を汚す」という理由でタバコを嫌っている。また、剛志ほどではないが、寄生生物の存在を否定的に考えておらず、彼らが生きるために人を殺すことも、自然の摂理であると割り切っている。一方で、欲望や快楽のままに人を殺す存在に対しては怒りをあらわにしたり、広川樹自身を大切に思っている人に危害が加えられることを恐れているなど、独自の正義感を持っている。また、表面上はクールに振る舞うことが多いが、「暗い性格」と揶揄(やゆ)されることで自らの行いを改めようとするなど、実際は人一倍羞恥心が強い。剛志から子供の頃に買ってもらったルービックキューブの腕を褒められたことで、現在も趣味としている。学校では堀田亮平をはじめ素行の悪い生徒たちとつるんでいる。そんなある日、堀田から肝試しと称して、夜中に人気のない場所に誘われるが、その場で海老沢晃平が彼らを殺害したところを目撃し、さらに海老沢から意図的に見逃される。さらに、樹に思いを寄せていた南真子まで殺害され、その友人の朝河にも危険がせまる。そんな中、次々に自分とかかわりのある人物が危害を加えられていることから海老沢に強い憎悪を覚え、彼を追跡することを決意する。追跡する際に協力者となった深見十三とは互いに立場や年齢を超えた絆(きずな)で結ばれ、共に海老沢と戦う。なお、父親が市長になる前から寄生生物となんらかのつながりがあることを薄々感づいていたが、父親が最後まで寄生生物に成り代わられていないことにも気づいていた。

広川 剛志 (ひろかわ たけし)

広川樹の父親。東福山市の市議会議員を務めており、のちに市長に就任する。ふだんは冷徹な性格ながら、時おり感情的になることがあり、この特徴は樹にもある程度受け継がれている。樹からは曲がったことが嫌いな正義感と評され、自然愛護に心血を注ぎ、地球環境を保全するための手段を模索し続けている。その一環としてたびたびフィールドワークに出ることもあり、息子に「樹」という名前を付けたのも、植物を愛することに由来する。樹に対しては自分なりに愛情を抱いているが、つねに冷静さを欠かないうえにどこか抽象的な教育を施していたことから、樹からは慕われるも本当に大切にされているのか疑問視されている。議員としても信頼されており、のちに広川剛志自身の父親も名士として注目されていたことが判明する。当初は人類のことを大切に思っていたが、彼らが地球環境を悪化させていることを大きく懸念し、なんらかの手段でそれを改善するべきであると考えてきた。そんな中、人間を捕食している最中の田村玲子と出会い、人間を喰(く)らうという生態を持つ彼らこそ人類の暴挙に歯止めをかける存在に成り得ると考え、期待をかけるようになる。そして、田村を介して彼女の知り合いの寄生生物たちと接触し、人間でありながら人間と敵対する存在となる。それからは、寄生生物が人間を捕食するための場所を提供したり、後藤の誕生に貢献したりと、彼らに便宜を図っている。市長になってからは、コロニー計画と呼ばれる計画の提唱など、寄生生物への援助ががますます大規模なものなり、寄生生物の中で広川集団と呼ばれる一大派閥が誕生するに至る。一方で、寄生生物が万物の霊長となるには欠点を多く抱えていることも見抜いており、コロニー計画もいずれ破綻するだろうと考えている。田村が亡くなってからはほかの寄生生物たちから相次いでコロニー計画の必要性を疑問視する指摘を受け、やがて後藤以外の寄生生物から距離を置かれるようになる。

深見 十三 (ふかみ じゅうぞう)

東福山市の警察署に勤務する男性。かつては妻や子供と共に暮らしていたと語っているが、理由は不明ながら現在は一人暮らしをしている。情に厚い性格で、民間人の安全と犯罪の抑制を志しており、必要とあれば警察の上層部の意向に反する行動を取ることもある。ある日、広川樹からの通報を受けて、海老沢晃平が堀田亮平たちを殺害した現場を訪れ、樹から事情を聞こうとする。その矢先に、寄生生物である芦田に相棒の増田が殺害されたことをきっかけに、寄生生物が起こした数々の事件にかかわっていくことになる。当初は、堀田たちは寄生生物に殺害されたと考えていたが、樹がそれをはっきりと否定したことから、彼が事件になんらかのかかわりがあると睨(にら)み、新たに配属された市ノ瀬栄治と共に樹に協力を仰ぐ。やがて市ノ瀬が死に際に残した情報から、真犯人が海老沢である可能性が高いと思い至り、樹と本格的に協力して海老沢を追い詰めるために動き出す。海老沢との最後の戦いでは、閃光弾を利用した戦術であと一歩まで追い詰めることに成功するが、危機を感じたスレドニ・ヴァシュタールが放った銃弾を受けて瀕死(ひんし)の重傷を負う。だが、かろうじて生き延びており、海老沢が起こした事件から1年後に樹と再会する。

深見 拓郎 (ふかみ たくろう)

深見十三の甥にあたる青年。根暗で自己主張が苦手である一方で、承認欲求が強いという矛盾した特徴を併せ持つ。広川樹と同様に人間と寄生生物を見分ける能力を持っているが、樹ほど鋭敏に見分けられるわけではなく、あくまで「なんとなく」程度の判別しかできない。一時は、この能力を使って深見拓郎自身の存在を世に知らしめようと考えるが、結局のところ失敗に終わる。

増田 (ますだ)

東福山市の警察署に勤務している男性。深見十三とコンビを組んで捜査を行なっている。彼と共に広川樹の通報によって海老沢晃平が引き起こした事件を捜査することになる。十三による樹からの聴取にも居合わせており、彼を殺人事件の当事者になった高校生にしてはあまりにも冷静だと評する。その後、樹が何かを隠しているという十三の意見に賛同し、彼と共にひそかに樹をマークする。

荻野目 規夫 (おぎのめ のりお)

東福山市の警察署で、捜査一課の係長を務めている男性。立場上、警察が民間に与える影響を最優先に考えていることから、表向きは世間の反感を買いそうな捜査は認めない方針を立てている。一方で、内心では真実を追求するためなら時には強引な手段も否定しておらず、海老沢晃平の起こした連続殺人事件では、深見十三の事情を知っているであろう広川樹を重要参考人として挙げるべきだとの意見を却下したうえで、「自発的な協力を仰ぐのなら表沙汰にするつもりはない」と返すなど、ある程度の柔軟性を備えている。

市ノ瀬 栄治 (いちのせ えいじ)

東福山市の警察署で、生活安全課に勤務している男性。ふだんはやや皮肉屋ながら冷静な性格で洞察力も優れており、増田を失った深見十三の新たな相棒として頼りにされていた。しかし、十三と共に追っていた事件の犯人である海老沢晃平に姪の南真子を殺害されたことで激昂し、マークしていた広川樹を、有無を言わさず参考人として確保しようと考え、ついには彼に暴力を振るってしまう。このことが問題視されて謹慎処分になり、十三との協力関係も解消させられてしまう。しかし、犯人の追跡をあきらめておらず、偶然遭遇した海老沢が、十三たちが朝河から聞いていた「右腕に腕時計をつけている」という特徴と一致していることを確認すると、テレホンカードを利用して指紋を取ったうえで、あえて彼の誘いに乗る形で追跡を続ける。このことが、連続猟奇殺人事件の犯人が海老沢であることを突き止めるための手がかりとなった。

平間 (ひらま)

東福山市のとなりにある市の警察署に勤務している男性。泉新一とつながりがあることから、早い段階で寄生生物の存在を認知している。海老沢晃平が起こした連続殺人事件にも寄生生物が絡んでいると考えており、自ら東福山市の警察を訪れ、深見十三と情報交換を行う。のちに広川剛志が寄生生物に成り代わられていると疑い、十三の家に電話をかけた際は、そこに広川樹がいることを知らずにそのことを十三に伝えてしまう。海老沢晃平の引き起こした事件の終結後に樹を警察署に呼び出し、剛志が寄生生物とつながっていた事実は明かさず、彼が市役所に立てこもった凶悪犯に殺害されたと公表することを伝える。

山岸 (やまぎし)

陸上自衛隊に所属している男性。階級は二佐。かつてはイスラエル大使館で、在外公館警備対策官として勤務していた。また、アメリカ陸軍と共にレバノン紛争に参加したとの噂(うわさ)もあるが、真相は明らかにされていない。身体能力、指揮能力共に抜きんでており、警察からその能力と実績を買われて東福山市の市役所に潜伏していると思われる広川集団の殲滅を依頼され、部下と共にこれを実行する。寄生生物を始末するためなら犠牲はやむを得ないという考えを持ち、部下はおろか一般人すら容赦なく手に掛けるほどの徹底ぶりを発揮する。結果として市役所に潜入して毒ガスを撒(ま)こうとしていた海老沢晃平の協力者も殺害する。

海老沢 晃平 (えびさわ こうへい)

東福山市の周辺で殺戮を繰り返している快楽殺人鬼の男性。ある時、左腕に同化した寄生生物を「スレドニ・ヴァシュタール」と名づけ、麻薬で言うことを聞かせながらも神のように崇めている。人を殺す際にはヴァシュタールの力を使っているため、当初は寄生生物を知る人からは、これらの殺人も彼の仕業であると思われていた。麻薬の常習犯でもあり、定期的に自らやヴァシュタールに対して注射をしている。人を殺す際も顔色一つ変えないなど、おおよそ一般人には理解しがたい特徴を持つ一方で、性格は温厚で人当りもがよく、福田のような信奉者や能登宏樹のような取引相手が何人もいるほか、寄生生物である野田とも目的が一致したため協力関係を結ぶほどのカリスマを備える。子供の頃は品行方正な少年で、母親からは洗脳に近い教育を施されたことでどこか浮世離れした存在となっていた。その結果、次第に母親を疎ましく思うようになったものの、のちに死別したことでどこか中途半端な思いを抱え続けていた。その後に医者になるが、ある患者の娘にあたる女性から、自分を虐待していた父親が倒れ、回復の見込みがないことから彼の安楽死を望むことを打ち明けられると、他者に影響を受けることが愚かしいと思うようになる。そして、医者を辞めて麻薬をはじめとした違法品の取引を行うようになる。ヴァシュタールと同化してからは暴走に拍車がかかり、ついに殺人に手を染めるようになる。2度目の殺人で堀田亮平や上杉一成たちを殺害し、のちに現れた広川樹に直感でシンパシーを感じる。さらに、樹がかつての自分と同様に親子関係で悩んでいることを知ると強固にこだわるようになり、南真子を殺害することで因縁の敵として相対するように仕向ける。ヴァシュタールや野田たちの協力によって殺人の際に痕跡が残らないようにしていたが、市ノ瀬栄治の策略によってやがて警察に素性が暴かれ、しばらくのあいだ東福山市から離れることを余儀なくされる。だが、東福山市に舞い戻って福田や野田、そしてかつての信奉者を招集して、山岸率いる自衛隊が広川集団の殲滅作戦を決行する日を狙い、毒ガスを仕掛けて東福山市の人間と寄生生物の抹殺を図ろうとする。なお、野田からは海老沢晃平自身と同じく腕に寄生生物を宿している泉新一のことを聞かされていたが、彼のことをよく知らないことから、樹に対するほどの思い入れはない。

スレドニ・ヴァシュタール

海老沢晃平の左腕と同化している寄生生物。海老沢と同化してすぐに麻薬を注射され、中毒症状を起こしたことで現在はほぼ海老沢の言いなりになっている。一方で、海老沢からは神のように崇められており、「スレドニ・ヴァシュタール」という名前も、彼が独自に信仰する神の聖名として設定されたものである。麻薬のことを「Happy」と呼び、注入されることで強い高揚感を覚える。自分で考えることは滅多にないが、宿主である海老沢を守る必要があることは本能的に理解しており、自らを盾にして広川樹の銃撃を防ぐなど、海老沢の命令がない状態でも自分の意志で動くこともある。海老沢が死亡すると、それに引きずられるように身体が崩れかけていったが、野田の左腕に移植されたことで生き延びる。

野田 (のだ)

広川集団に属さずに単独行動している寄生生物の男性。海老沢晃平とは対称的に、生真面目で冷静な性格の持ち主。人間を襲うことには最初から乗り気ではなかったが、脳内に下される命令には逆らいきれず、何人もの人間を殺害している。だが、命令が弱まるにつれて人間を食べることはほぼなくなり、ゆで卵を好むようになる。田村玲子と同様に、寄生生物の存在する意味を考えることが多く、ほかの寄生生物と徒党を組むこともあまりない。繁殖が不可能であると知ってからはその特徴が顕著となり、結果的に人間と寄生生物双方の可能性と合理性を模索するようになる。その矢先に、人間と寄生生物が共存している海老沢を発見し、彼の誘いを受けて仲間になる。それからは、海老沢とスレドニ・ヴァシュタールの可能性を見極めるために行動を共にして、市ノ瀬栄治が追ってきた時は彼の殺害と死体の始末を引き受ける。市ノ瀬の策謀から海老沢が東福山市から出た時は同行せず、空いた時間を活かして広川剛志のもとを訪れる。だが、彼や広川集団は自分とは異なる思想を持っていると判断すると彼らからも離れて、帰還した海老沢や彼を慕う福田と合流する。海老沢の毒ガスを用いた作戦にも協力し、海老沢と広川樹や深見十三が遭遇する舞台を作り上げる。しかし、海老沢が樹に殺害されたことで作戦の失敗を確信し、死にかけていたヴァシュタールを野田自身の左腕に移植する。その後も人間を喰らうことなく、人間社会に紛れ込んで生活を続けている。

福田 (ふくだ)

かつて医者であった海老沢晃平に世話になっていた青年。かつて疎まれていた父親が死を迎えた時に、その心境を察してくれた海老沢から、彼自身も母親にいい思い出がないことを告げられ、強く慕うようになる。海老沢が医者を辞めて裏社会に潜った時も、その気持ちは変わらずに現在も狂的な信仰心を向けている。海老沢が殺人に手を染め始めてからは、互いに接触を控えていた。だが、海老沢が広川樹と対決するために東福山市に戻って来ると、彼の計画をサポートするために行動を共にするようになる。その際に寄生生物であるスレドニ・ヴァシュタールや野田を紹介されるが、特に不信感を抱くことなく打ち解ける。海老沢が樹にこだわっていることを知ると、嫉妬に加えて父親とまともに向き合おうとしない彼に不快感を持ち、「じめじめして気持ち悪い」と手厳しい評価を下す。海老沢が企てた、毒ガスを使って人間や寄生生物を殲滅する作戦にも嬉々として協力するが、彼が樹や深見十三に敗れて死亡し、その悪行が明るみに出たことで、海老沢の協力者として警察に逮捕される。

能登 宏樹 (のと ひろき)

かつて「講談組」と呼ばれる暴力団に所属していた男性。年齢は36歳。ゴシップや女遊びが大好きで、典型的なチンピラと呼べるような浮ついた人物で、暴行や恐喝による逮捕歴がある。薬物中毒者で、海老沢晃平から横流しされた麻薬を主に利用している。海老沢の左腕にスレドニ・ヴァシュタールが寄生していることを知らないまま、さらなる麻薬の取引を持ち掛ける。海老沢からヴァシュタールの存在を理由に断られるが、それに対して薬物を乱用した副作用ではないかと推測し、海老沢に不快感を与える。

鈴木 (すずき)

広川樹の家政婦を務める中年の女性。樹からは母親のように慕われている。鈴木自身も樹のことを大切に思っている。一方、樹と広川剛志の関係が微妙なことに気づいており、剛志に対してきちんと樹と向き合って欲しいと何度か提言している。樹が家出同然の状態になったことから、剛志に反発する形で一時的に休みをもらうが、海老沢晃平が引き起こした事件が終結して樹が家に帰って来ると、彼を暖かく出迎える。

朝河 (あさかわ)

広川樹と同じ高校に通う女子。樹のクラスメイトで、友達思いながら非常に気が強く、思ったことははっきりと口に出すことが多い。南真子と仲がよく、行動を共にしている。のちに、南から樹に思いを寄せていることを打ち明けられるが、朝河自身は樹のよさがまったく理解できずにいる。南の思いを成就させるべく、彼女と共に樹のもとを訪れたことがあるが、南が樹から顔すら覚えられていなかったことを知り、南の気持ちを伝えなかった。しかし、樹とかかわりを持ったことで海老沢晃平に襲われ、南を目の前で殺害されたうえに朝河自身は見逃される。南が樹に告白もできないまま殺されたことにやり切れない思いを抱え、樹と再会した際にその事実を伝える。それからは、樹と海老沢の戦いにかかわることができないまま日々を過ごすが、のちに彼の様子が変わったことを察すると、すべてに決着がついたことを納得する。

南 真子 (みなみ まこ)

広川樹と同じ高校に通う女子。樹のクラスメイトで、市ノ瀬栄治の姪に当たる。おっとりとした優しい性格で、対称的な性格の朝河と仲がいい。学校の休み時間中、樹がルービックキューブを解いていた時に偶然目が合い、彼の恥ずかしそうな様子に一目ぼれをしてしまう。このことは朝河以外には告げずにいたが、ある時朝河に誘われて樹のもとを訪れた。しかし、樹からは名前すら覚えられていなかったが、それでも彼に悪感情を抱くことはなく、健気(けなげ)に思い続けている。

堀田 亮平 (ほった りょうへい)

広川樹と同じ高校に通っている男子。樹より一つ年上で、彼のことを弟のようにかわいがっている。ただし、知性は樹より圧倒的に劣っており、ミシェル・アントニオ猪木の物まねをしようとして顎がもとに戻らなくなったり、ノストラダムスの大予言を本気で信じていたりするなど、よくも悪くも物事を深く考えることはない。

田村 玲子 (たむら れいこ)

広川集団の中核を担っている寄生生物の女性。かつては「田宮良子」と名乗っていたが、ある事情によって「田村玲子」に改名した。また、広川剛志と行動を共にする時は、「田中」という偽名を使っている。当初はほかの寄生生物と同様に、「人間を食い殺せ」という指令に応じて行動していた。ある山道で人間を捕食していたところを剛志に見られてしまうが、その様子を見てもまったく動じないどころか、今の地球に必要な存在が現れたと語る彼に興味を抱く。そして、連絡を取り合っていた草野たちを集めて、広川集団を立ち上げる。寄生生物の中では飛び抜けて頭脳明晰(めいせき)で、一時的とはいえ高校の教師を担当したほど。知識欲が旺盛で、つねに新しいことに挑戦することを好む。後藤を作り上げたのも実験の一環だったが、彼が軍すらも相手にならないほどの強さを身につけたことは予想外だった。一方で無意味に人を害することには興味がなく、やがて寄生生物の脳内に送られる「人を食い殺せ」という指令にも動じなくなる。ただし、人間を肯定も否定もしていないため、剛志や泉新一など、興味を持った人間には協力も辞さない一方で、必要とあらば人間や寄生生物を殺害することに躊躇(ちゅうちょ)せず、仲間たちが人間を捕食する行いについても、騒ぎを大きくする事態にならなければ基本的に咎(とが)めることはない。

草野 (くさの)

広川集団に所属している寄生生物の青年。広川剛志の秘書のような立場で、田村玲子とよく行動を共にする。剛志が選挙演説をしている時も後藤と共に彼のアシストをしており、人前に出る時は「柴田」と名乗っている。ほかの寄生生物に比べると物を考える力に長(た)けているが、自分たちの力を過信している節があり、身の回りの人間は面倒なことが起きる前に排除するべきと認識している。当初は剛志を仲間に引き入れることに反対する立場を取っていたほか、草野自身より頭がよく理知的に物事を進めようとする田村に対しても、慎重なのではなくただの臆病者なのではないかと疑念を抱いている。そして、広川集団に指令を下していく彼女に徐々に危機感を募らせるようになり、やがて仲間と共に彼女を暗殺しようと動き出す。

後藤 (ごとう)

広川集団に所属している寄生生物の男性。もともとはほかの寄生生物と同じ特徴しか持っていなかったが、田村玲子の実験によって芦田や佐々木昇、三木と四肢を融合した結果、軍隊すら制圧できるほどの圧倒的な戦闘能力を持つに至る。よくも悪くもこだわりのない性格で、広川剛志のことも、よくわからないと評しながらも彼が死を迎えるまで共に居続けた。しかし、大挙して攻め込んできた自衛隊と激しい争いを繰り広げた結果、自分は戦うために生まれてきたと考えるようになる。

島田 秀雄 (しまだ ひでお)

田村玲子と親交のある寄生生物の少年。野田と同じくやみくもに人類と敵対することを愚かなことだと考えているが、殺して捕食すること自体にはなんの抵抗も持っていない。広川樹の能力で寄生生物であることを知った深見十三の視線を感じるや否や、顔を変えて逃れようとするなど、注意力に優れている。のちに警察の発表から、胸に大きな銃弾らしきもので貫かれた結果、心臓を失って死亡したことが語られる。だが、付近に大口径の弾が落ちていたという報告はなく、遺体を目の当たりにした山岸に不信感を抱かれる。

芦田 (あしだ)

広川集団に所属している寄生生物の男性。広川剛志や田村玲子らと接触した深見十三を危険視し、彼らを襲撃する。その結果、増田を倒すことに成功するが、敵討ちのために十三が運転した車にはね飛ばされ、大ケガを負う。のちに田村に保護され、彼女の実験の一環で、後藤の左脚として利用される。

三木 (みき)

広川集団に所属している寄生生物の男性。明るく陽気な性格で、人間を油断させるには愛嬌が何より大事だと主張している。ふだんは後藤の右腕を構成するパーツとして利用されているが、自己主張が極めて強く、後藤本人とは別の観点で動くこともできるため、時おり寄生場所を頭部に変化させて逆に後藤を使役することもある。

佐々木 昇 (ささき のぼる)

広川集団に属しておらず、独自行動している寄生生物の男性。芦原正志の友人の佐々木昇の身体を乗っ取ったものの、彼の情報をまったく知らなかった。偶然に芦原と10年ぶりに再会し、記憶喪失を装って乗っ取った人物の情報を聞き出そうとするが、かつて芦原に借金の連帯保証人になるよう仕向けたことが判明し、人生を狂わせた張本人として殺害されかけ、逆に殺してしまう。このことから、本来の佐々木昇はトラブルを起こしがちな人物であることから成り代わるには不適当と判断し、自らの顔を芦原のものに変化させる。だが、結局芦原に成り代わってもトラブルを起こし、最終的には田村玲子の手によって後藤の右脚として利用される。

芦原 正志 (あしはら まさし)

かつて人間だった頃の佐々木昇と友人だった男性。10年前に佐々木の借金の連帯保証人になったうえで逃げられてしまい、妻子に逃げられたうえに父親の葬儀もまともに行うことができなかった。10年かけて借金を返したものの、現在も安アパートで孤独に暮らすことを余儀なくされており、佐々木を強く恨んでいる。偶然に佐々木と再会するものの、以前の彼とは明らかに雰囲気が違うことに戸惑う。

泉 新一 (いずみ しんいち)

広川樹と別の高校に通っている男子。右腕と同化している「ミギー」と呼ばれる寄生生物と協力関係を結んでいる。平間とは時おり情報共有を行っており、彼が一介の警部補でありながら寄生生物について詳細な情報を知り得たのは、ミギーから知識を得た泉新一自身の協力によるものである。広川集団に属する寄生生物たちからは基本的に敵視されているが、田村玲子とは一定の信用を抱き合っている。樹とは別の形で寄生生物と戦っており、寄生生物や海老沢晃平が起こした事態が鎮静化してから1年後に、東福山市の駅前ですれ違う。

集団・組織

広川集団 (ひろかわしゅうだん)

広川剛志と田村玲子を中心にした寄生生物の集団。剛志の計画で動いていることから、「広川集団」と呼ばれるようになる。田村以外のメンバーは剛志のことをあまり信用していないが、彼の行いが自分たちの利益になることを理解していることから、やがて剛志が市長になるためのサポートを行うようになる。剛志が市長に就任してからは、東福山市の市役所を実質的なアジトとして利用し、コロニー計画を遂行するために会議を開いていた。だが、田村が死亡すると所属している寄生生物たちが勝手な行動を取り始め、やがて瓦解してしまう。

場所

東福山市 (ひがしふくやまし)

広川樹が住んでいる都市。寄生生物の協力者である広川剛志が市長に就任すると、彼と田村玲子の提唱したコロニー計画を実行するために寄生生物たちが集結し、東福山市の各所に人間を捕食するための食事場が作られる。さらに、樹の心をもてあそぶことを目論む海老沢晃平が、自らの関係者や樹と親しい人間を何人も殺害しているなど、寄生生物やその関係者による被害がひときわ大きい。警察や自衛隊が寄生生物の本格的な駆逐に乗り出した際、剛志らが拠点とする市役所がその標的として選ばれる。時を同じくして、海老沢の企てた毒ガステロ計画も動き出すが、樹や深見十三をはじめとした警察官たちの尽力によって阻止される。

その他キーワード

寄生生物 (きせいせいぶつ)

20世紀末に地球上に飛来した新種の生命体。最初は正体不明の存在とされていたが、その存在が発覚すると世間からは「寄生生物」あるいは「パラサイト」と呼称されるようになる。ほかの生物の体内へと侵入し、頭部と同化することでその生物の身体を支配できる。支配された生物はその時点で脳を奪われて死亡するが、なんらかのイレギュラーが発生して脳以外の場所に寄生した場合、宿主と共生することを余儀なくされる。また、生命活動は寄生した人間の臓器に依存しているため、心臓をはじめとした、その人間が生存するために必要な器官を失った場合、寄生生物自体も死を免れない。人間の脳を乗っ取った寄生生物には、例外なく「人間を食い殺せ」という指令が脳内に響き渡る。この命令に抗(あらが)うことは難しく、ほとんどの寄生生物は人間を殺害し、その死肉を主食とする。だが、田村玲子や野田のように人間以外の食料を糧にすることを好む個体も存在し、やがて人間を殺害する指令が弱まると、その食性を変化させる寄生生物が増えるようになる。また、スレドニ・ヴァシュタールのように、頭部以外と同化した寄生生物に対しては、人間殺害の指令は発信されない。当初はほぼバラバラに行動していたが、田村と広川剛志が結託したことで広川集団が誕生し、組織的に行動する寄生生物が増えていく。しかし田村が行った実験から、寄生された人間同士が子供を作っても生まれてくるのはふつうの人間であることが明らかになり、繁殖能力も皆無であることが判明する。このことから、個としての能力は人間をはるかに上回るが、種としてはあまりにも脆弱(ぜいじゃく)であるといえる。

コロニー計画 (ころにーけいかく)

広川剛志と田村玲子によって企てられ実行された計画。第1段階は東福山市の各地に、誘い込んだ人間を安定して殺害、捕食するための区域を設けることで、ゆくゆくは東福山市自体を寄生生物が運営することを最終目的としている。だが、剛志自身や野田など、寄生生物が生物として致命的な欠陥を抱えていることを知る者たちからは、いずれコロニー計画自体が破綻するだろうと考えられている。

クレジット

原作

ベース

寄生獣 (きせいじゅう)

人間を捕食する本能を持つ寄生生物が飛来した現代の日本を舞台に、ごくふつうの高校生・泉新一と、彼の右手に寄生した未知の生物ミギーの奇妙な共生関係と、彼らが繰り広げる寄生生物たちとの戦いを描いたSF作品。... 関連ページ:寄生獣

書誌情報

寄生獣リバーシ 8巻 講談社〈アフタヌーンKC〉

第1巻

(2018-08-08発行、 978-4065124284)

第2巻

(2019-02-13発行、 978-4065145418)

第3巻

(2019-09-11発行、 978-4065169735)

第4巻

(2020-02-12発行、 978-4065185414)

第5巻

(2020-07-08発行、 978-4065201213)

第6巻

(2020-12-09発行、 978-4065217290)

第7巻

(2021-05-12発行、 978-4065232231)

第8巻

(2021-07-14発行、 978-4065240519)

SHARE
EC
Amazon
logo