概要・あらすじ
みどりは、ほとんど客が寄ってこない、潰れる寸前の見世物小屋、赤猫座で働いていた。小屋の芸人たちからはいじめられ、嬲られ、日々肩身の狭い思いをしている。ある日、花瓶の中に自由に入れる小人症の手品師ワンダー正光がやってくる。彼の芸で見世物小屋は大繁盛。いじめから救ってくれた彼を、みどりは慕うようになる。
一方、彼女を自分のものにしたいというワンダー正光の思いは次第に強くなり、赤猫座の仲間との関係が次第に狂っていく。客に「小人」と言われたことで激昂したワンダー正光は、めちゃくちゃな幻で客をパニックに貶めた末、みどりと共に東京へ向かう。
登場人物・キャラクター
みどり
おかっぱ頭の12歳の少女で、父は家出をし、母は死んでしまった。見世物小屋の親方、鯉治郎の甘言にだまされて働くようになった。彼女は特に芸事もできないので、基本下働きをしている。他の芸人たちには貧乏神扱いされ、いつもいじめられている。こっそり飼っていた犬は食べられ、鞭棄にはレイプされたこともある。 ある日やってきたワンダー正光に優しくされるようになり、彼を強く慕うようになる。東京浅草の幻を見せられたみどりは、彼と共に赤猫座を出て行くことを決意する。薄幸の少女だが、芸人たちを「ばけもの」と罵ったり、映画デビューを目論んだりと、したたかな一面もある。
ワンダー正光
小人症の中年男性で、いつもタキシードを着ている紳士。花瓶の中に体を入れる技を得意とする。この奇術が人気を呼び、全く客が来なかった見世物小屋の窮地を救う。特にみどりには気をかけており、助手に抜擢。彼の機転で赤猫座の経営はうまくいくようになる。しかしみどりが思うように手に入らないことで焦り、客から「小人」と呼ばれたことで癇癪を起こし、客にめちゃくちゃな幻を見せて大パニックを引き起こす。 その後みどりを連れて東京浅草へと向かう途中、突然刺されて死亡してしまう。
嵐 鯉治郎
ほとんど客が入らない、田舎のエログロ系見世物小屋赤猫座の親方。みなに給金を支払うこともままならないほど困窮していた。ワンダー正光がやってきたことで一気に儲かるようになったものの、お金を持って夜逃げしてしまう。背が低く、ちょびひげで、いつも悩んでばかりいる小心者。仲間からはけつもどき(男色家)だと言われている。
フタナリカナブン
リボンで結ったポニーテールの髪型に、サーカス少女の扮装の若者。男性器はあるが、性別は不詳。見世物小屋の親方の嵐鯉治郎に夜な夜な寵愛されている。明るく活発な性格で、軽業や火吹きなど芸事に長けている。みどりの飼っていた犬を皆殺しにして、肉鍋を作ったことがある。 親方が逃げた後、髪の毛を切って少年の姿になった。
鞭棄
火傷した顔を包帯でぐるぐる巻きにしており、両腕が欠損している。足を使った弓打ちなどの曲芸が得意。みどりをレイプしたことがある彼は、ワンダー正光がやってきたことで、彼女が奪われると思い、慌てて優しくし始める。しかしワンダー正光の幻によって、泥を食って死んでしまう。
赤座
右目に眼帯をしている大男。剣を飲み込む芸が特技。怪力の持ち主で、みどりを掴みあげ、振り回していじめていた。見世物小屋の親方嵐鯉治郎が逃げた後は、別の小屋へ移って行った。
蛇女紅悦
頭巾をかぶった芸人たちのまとめ役の女性。見世物小屋では、全裸になって蛇を体に絡ませる芸を見せている。夜は男たちの性欲処理を行っている。
芳一
腕、足、首、胴体すべてがねじれた奇形児。小屋では飾り物のように置かれている。しゃべることができない。
海鼠
四肢を欠損した男性。芋虫のような姿で、縞模様の布を巻かれている。
場所
赤猫座
鶏首かみきり、蛇女、火吹きのオカマ、奇形の人間など、グロテスクをウリにしている見世物小屋。当初は全く客がこなかった。しかしワンダー正光の瓶に入る奇術で、連日客で溢れかえるようになる。
題材
少女椿