概要・あらすじ
中学生のトオルの曾祖父は、耳かきをしてもらいながら百二歳で大往生した。ある日、クラスメイトのタシロカオリと花火大会へ行くと、そこには曾祖父が耳かきをしてもらった女主人・山本志津枝が屋台を出していた。志津枝の屋台で買った耳かきは素晴らしいものであったため、トオルは耳かきを「鈴之助」と名付ける。しかし、授業中に使用しているところを担任の田中に見つかり、没収されてしまう。
なんとか取り返そうとするが、耳かきは壊れてしまった。耳かきを探すトオル。その後田中が持ってきた新聞記事を頼りに、山本耳かき店まで行くのだった。
登場人物・キャラクター
山本 志津枝 (やまもと しずえ)
中町にある山本耳かき店の女主人。手造りの耳かきと耳そうじで、店を構えている。また、花火大会やお祭りなどで出店をしたりする。その耳そうじは官能的なまでに気持ちよく、客は思わず声が出てしまう。そのため、常連客が多い。
トオル
中学1年生。曾祖父が耳かきをしてもらながら大往生したことをを忘れられずにいた。花火大会の出店でその耳かきを手に入れ、「鈴之助」と名付ける。
タシロ カオリ
トオルのクラスメイト。トオルに好意を寄せている。
田中 (たなか)
トオルの中学校のクラス担任。トオルが授業中に使用していた耳かきを取り上げ、職員室で使っていた。トオルが取り返そうとした時に、耳かきは壊れてしまう。
兼松 青二 (かねまつ せいじ)
中町三奇人のひとり。陶芸家。身長198センチ、髪の長さ186センチ。山本耳かき店の常連。初恋のヒロミを忘れられずにいる。
冬扇堂の男 (とうせんどうのおとこ)
山本耳かき店の裏にある公園で、耳かきをされた人の色っぽい声を聞くのが趣味の男。デパートの試食巡りが好き。
久我 (くが)
デパートの試食売り場で働く女性。山本耳かき店の常連。デパートが休みの水曜に行く。
高橋 恵 (たかはし めぐみ)
デパートの試食売り場に勤める中年女性。公園で倒れていた冬扇堂の男を助ける。
坂井 (さかい)
耳かきが好きで、耳を傷つけてしまい、耳かき禁止に。通っていた幸徳耳鼻咽喉医院の息子に山本耳かき店のことを聞く。
外村 (そとむら)
リストラ、離婚と不幸が続く男。四国八十八か所巡りの最中、強盗に遭う。傷だらけになりながらも、山本耳かき店に行く。
夏美 (なつみ)
息子と二人暮らし。雨女だが、別れた夫は晴れ男。元夫が息子を連れて山本耳かき店へ行っていたことを息子に聞く。
ナオミ
十年ぶりに帰省した妊婦。学生時代に山本志津枝を図書館でよく見ていた。山本耳かき店で耳かきをしている最中に陣痛が始まり、その後出産した。