山風短

山風短

山田風太郎の短編小説である『くの一紅騎兵』『剣鬼喇嘛仏』『青春探偵団 砂の城』『忍者枯葉塔九郎』をコミカライズした、オムニバス時代劇作品集。物語のジャンルは、主に忍法ものとなっている。

正式名称
山風短
ふりがな
やまふうたん
原作者
山田 風太郎
作者
ジャンル
侍・忍者
関連商品
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あらすじ

くの一紅騎兵

戦国時代の「関ヶ原の戦い」前後が舞台。大島山十郎と名乗る忍びが、衆道の法しか用いていないはずなのに上杉景勝の子を妊娠する、というプロットに基づく、史実をベースにした忍術奇譚。

剣鬼喇嘛仏

戦国時代最後の大合戦「大阪の陣」前後が舞台。交わったままの姿で離れることができなくなった男女2人の剣客が、無双の強さを発揮して自分たちの命を狙う忍者を次々に返り討ちにしていく。

青春探偵団 砂の城

昭和30年代が舞台。霧ガ城高校殺人クラブのメンバーが、海に遊びに来て奇妙なチンピラたちに遭遇し、ある事件に巻き込まれていくことになるライトミステリー。

忍者枯葉塔九郎

江戸期が舞台。旅の剣客である筧隼人は、妻のお圭を疎んじ、女郎屋に売り飛ばして逐電するつもりでいた。その事情を知った忍者の枯葉塔九郎は、隼人にある取引を持ちかけ、お圭を自らのものとする。斬られてももとの姿に戻ることができる、特殊な能力を持った忍者を主人公とした忍術奇譚。

登場人物・キャラクター

大島 山十郎 (おおしま さんじゅうろう)

エピソード「くの一紅騎兵」に登場する。戦国武将・真田昌幸配下の真田忍軍に所属する若き忍者。正体を隠して上杉家に近づき、美童として上杉景勝の寵愛を得るようになる。儚げな外見ながら、凄まじいまでの武芸の達人。

長岡与五郎興秋 (ながおかよごろうおきあき)

エピソード「剣鬼喇嘛仏」に登場する。戦国武将・細川忠興の息子で、細川家の後継者の立場にありながら重度の剣術狂であり、宮本武蔵を破りたいという願いが昂じて出奔し、廃嫡された。その後、31歳の時に登世と交合した状態のまま登世の忍術によって離れることができなくなり、二身一体の「剣鬼喇嘛仏(けんきらまぶつ)」と化す。 実在の人物である、細川興秋がモデル。

秋山 小太郎 (あきやま こたろう)

エピソード「青春探偵団 砂の城」に登場する。霧ガ城高校3年生男子。「霧ガ城高校殺人クラブ」のメンバーの1人。学校では一番の美少年といわれており、自分たち「霧ガ城高校殺人クラブ」のメンバーにいやにしつこくからんでくる兄貴たちチンピラ一行の真の目的を探るため、知遇を得た高城千鳥の助力のもと女装して接近する。

枯葉 塔九郎 (かれは とうくろう)

エピソード「忍者枯葉塔九郎」に登場する。巡礼姿で旅をしている男性の忍者。がまがえるのような異相で、年齢は不詳。蝋のような肉体と豆腐のような臓腑を持ち、ばらばらに切り離されても、かなりの長時間は生き長らえ、ばらばらになった肉体をくっつければすぐに元通りになるという体質を持つ。ちなみにこれは、自らの忍法によるもの。性格はひょうきんで、お圭の前では愛妻家。

前田穀蔵院咄然斎 (まえだこくぞういんとつねんさい)

エピソード「くの一紅騎兵」に登場する。上杉家に仕える老武将で、天下に名高い豪傑。豪放磊落を絵に描いたような男性であり、大島山十郎が素性の疑わしい人物であることを承知のうえで、面白半分に直江山城守兼続と引き合わせた。実在の人物である、前田慶次がモデル。

直江山城守兼続 (なおえやましろのかみかねつぐ)

エピソード「くの一紅騎兵」に登場する。上杉家に仕える32万石の大家老で、年齢は40歳前後。若い頃、高名な戦国武将である上杉謙信の寵童であった。大島山十郎に乞われて衆道の奥義を伝授した後、主君である上杉景勝のもとに山十郎を送り込む。実在の人物である、直江兼続がモデル。

上杉 景勝 (うえすぎ かげかつ)

エピソード「くの一紅騎兵」に登場する。上杉家当主の大名で年齢は40代。高名な戦国武将である上杉謙信の甥にあたり、生涯不犯であったと伝えられる謙信に倣って女性を傍に置いていない。大島山十郎のような女性的風貌の美童は好みではなかったが、山十郎が武芸の達人であるのを見て気に入り、閨に侍らせるようになる。実在の人物である、上杉景勝がモデル。

登世 (とせ)

エピソード「剣鬼喇嘛仏」に登場する。忍者集団「青龍寺組」の頭目の孫娘で、細川家に仕える若き女忍者。「青龍寺組」では一番の剣の使い手だが、長岡与五郎興秋との立ち合いには敗北する。その後与五郎の子をなす任務を与えられ、忍術を用いて、妊娠し子が産まれるまで互いに離れられない「剣鬼喇嘛仏(けんきらまぶつ)」の身体となる。

宮本 武蔵 (みやもと むさし)

エピソード「剣鬼喇嘛仏」に登場する。二天一流の開祖として知られる剣豪の中年男性。巌流島の決闘の直後に長岡与五郎興秋の挑戦を受け、その剣を叩き斬って撃退する。その後、宮本武蔵を追い続けていた与五郎と大阪城で再会するが、与五郎が登世と交わって「剣鬼喇嘛仏(けんきらまぶつ)」の身となっていたため激しく困惑。 結局、剣での立ち合いは拒否し、その代わり与五郎と登世に人倫の道を説いて聞かせ、登世に深い感銘を与えた。実在の人物である、宮本武蔵がモデル。

細川 忠興 (ほそかわ ただおき)

エピソード「剣鬼喇嘛仏」に登場する。長岡与五郎興秋の父親で、壮年の大名。配下に忍者集団「青龍寺組」がいる。政治的事情により与五郎を廃嫡したものの、その後も父親としてその身を案じ、せめて妻でも持たせれば落ち着くのではないかと考え、登世とめあわせた。与五郎と登世が手を取り合って敵対している豊臣方の大阪城に向かった時はこれを立場上見過ごすことができず、やむなく「青龍寺組」を追っ手として放ち、2人を討たせようとする。 実在の人物である、細川忠興がモデル。

兄貴 (あにき)

エピソード「青春探偵団 砂の城」に登場する。数人の子分を率いている若いチンピラ風の男性。砂浜で砂の城を作って遊んでいた秋山小太郎ら霧ガ城高校殺人クラブのメンバーにおかしな因縁をつけ、子分ともども追い払われるが、その後もしつこく絡み続ける。

高城 千鳥 (たかしろ ちどり)

エピソード「青春探偵団 砂の城」に登場する。若き映画女優で、時価50万円(現在の価格にして500万円ほど)の値打ちのダイヤモンドのイヤリングをしている。バカンスで海にいたとき、秋山小太郎ら霧ガ城高校殺人クラブのメンバーと出会う。

筧 隼人 (かけい はやと)

エピソード「忍者枯葉塔九郎」に登場する。若い男性の剣客で、剣術の腕は確かなのだが、仕官の口を得られていない。駆け落ちした妻のお圭とともに旅をしていた途中で、枯葉塔九郎と出会う。お圭を塔九郎に売る代わりに御前試合で八百長をして塔九郎に勝ちを譲られ、仕官の口を得る。だがその後、約束を違えて塔九郎を殺そうとした。

お圭 (おけい)

エピソード「忍者枯葉塔九郎」に登場する。上流武士の家柄出身の若い女性。筧隼人の妻であったが、のちに隼人を見限り、殺されかけていた枯葉塔九郎の命を救い、自らの意思で塔九郎の妻となる。隼人とはうまくいっていなかったが、塔九郎とは仲睦まじく、相愛の仲。

集団・組織

青龍寺組 (せいりゅうじぐみ)

エピソード「剣鬼喇嘛仏」に登場する。細川忠興に仕える忍者集団。登世はこの「青龍寺組」に所属するくの一で、頭目の孫娘である。長岡与五郎興秋と登世が大阪城に向かった時、2人を討つための刺客として放たれるが、「剣鬼喇嘛仏(けんきらまぶつ)」と化した2人を前に手も足も出ず、ことごとく返り討ちにされる。

霧ガ城高校殺人クラブ (きりがじょうこうこうさつじんくらぶ)

エピソード「青春探偵団 砂の城」に登場する。探偵小説愛好会であり、男子メンバーの秋山小太郎、穴沢早助、大久保大八、女子メンバーの織部京子、竹ノ内半子、伊賀小笹の合計6人からなる。映画スターの高城千鳥に一目会えないかと海に遊びに行き、そこで兄貴と呼ばれる男を筆頭とするチンピラの一団と遭遇する。

その他キーワード

背孕みの秘法 (せばらみのひほう)

エピソード「くの一紅騎兵」に登場する。直江山城守兼続の語るところによれば、「衆道の世界の秘奥」であり、「涅槃恍惚の極みにおいて男子が孕む」という秘術。上杉景勝は、この背孕みの秘法によって大島山十郎と己の間に生まれたとされる我が子と引き会わされ、山十郎が結局のところ男性であったのか女性であったのか、大いに悩むことになる。

喇嘛仏 (らまぶつ)

エピソード「剣鬼喇嘛仏」に登場する。忍者集団「青龍寺組」に代々伝わる秘宝。登世が長岡与五郎興秋の子をなすために寝所をともにした時、お守りのような形で脇に置いていた、男女和合を司る仏神を模した小さな仏像。ただし、登世が用いた、交合した男女を物理的に離れられなくする忍術に必要な秘具なのか、それとも登世が個人的な意思で持ち込んだただのお守りであったのかは不明。

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