帰ッテキタせぇるすまん

帰ッテキタせぇるすまん

「笑ゥせぇるすまん」の通称で知られる喪黒福造が、国内だけには留まらず、世界各国にまで赴いて、人々の心の奥に秘めた欲望を叶えるために暗躍するブラックコメディ。「週刊漫画サンデー」1996年10月29日号から2000年3月7日号にかけて連載された作品。

正式名称
帰ッテキタせぇるすまん
ふりがな
かえってきたせぇるすまん
作者
ジャンル
ブラックコメディ
関連商品
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あらすじ

第1巻

セールスマンの上江昇は、会社では出世街道まっしぐらで、郊外の一軒家には、よくできた妻と共に何の不満もなく平穏な日々を過ごしていた。だが彼には、自分の母校でもある頭教大学附属高校に通う女子にあこがれを抱き、毎朝のように盗撮をし続けているという秘密があった。ある日の朝、いつものように登校途中の女子高校生を撮影したあと、現像屋に撮影したネガフィルムを預けて出社すると、喪黒福造という名の男から電話があり、女子高校生を撮影している事を追求されてしまう。慌てふためく上江に対して喪黒は、この件について話をしたければ、「BAR魔の巣」に来るようにと告げて電話を切る。こうして上江は仕事を終えたあと、喪黒の言葉に従って「BAR魔の巣」へと向かう。(エピソード「欲望の行方」)

気が弱く、いつも面倒事を押しつけられているサラリーマンの伏目柔志は、今日も仕事帰りに入った雀荘で大負けし、沈鬱な面持ちで帰宅ラッシュの電車に乗り込む。すると、電車が揺れる度に伏目はとなりに立っていた喪黒に足を何度も踏まれてしまうが、自宅から最寄りの駅まで我慢して電車に揺られ続ける。最寄りの駅に到着し、満員電車から解放されて一息ついた伏目だが、自宅への帰路へ向かう中、喪黒があとをつけている事に気づく。喪黒は伏目に対して、気が優しいというより気が弱すぎて、そんな事では負け犬の人生を一生送る事になると忠告をする。こうして伏し目は喪黒に名刺を手渡され、もしも生き方を変えたいと決心した時には、アドバイスをするから電話してくれと告げられるのだった。(エピソード「負け犬」)

マンガ家の才賀礼は、ひと仕事を終えて、担当編集者と共に居酒屋「ふきや」に一杯やるために向かっていた。担当編集者と焼き鳥を肴にビールを飲み、すっかり気分がよくなった二人は、自分が住んでいるアパートを取り囲むようにして建っている超高層ビルについての話題で盛り上がる。すると、となりに座っていた喪黒が、突然話に加わり、超高層ビルに夢を持っているようだから、その夢を叶えてあげようかと話し掛ける。二人は名刺をもらって喪黒と別れ、2軒目の居酒屋「酒場呑樹」に入り、お店のママと楽しくお酒を飲み直すのだった。店を出て編集者と別れた才賀は、ちどり足で一人帰路につくが、その道中で喪黒と再会。そして才賀は、喪黒に手を引かれて超高層ビルへと向かう事になる。(エピソード「上の部屋 下の部屋」)

サラリーマンの三葉元雄は、女優「可愛すみれ」の熱狂的なファン。彼女が出演しているドラマは必ずチェックしているほどの熱の入れように、妻は呆れていた。ある日の昼休み、三葉は会社の屋上で「可愛すみれ」の写真集を読んでいたところを、会社の同僚にからかわれてしまう。楽しみにしていた写真集をゆっくりと読む事ができず、昼休みを台無しにされてしまった三葉は、自分のデスクに座って仕事をしていても、頭の中は「可愛すみれ」の事で頭がいっぱいだった。そんな時、部長から呼び出され、屋上でタレントの写真集を見ながら、あやしげな行為をしているのではないかと疑いをかけられる。気落ちし、粛々と自分のデスクに戻って再び仕事をしていると、以前に自宅に訪問して来た喪黒からの電話があり、名刺の裏に書かれているバーに今夜来てほしいと告げられる。こうして三葉は仕事が終わったあと、喪黒の待つ「BAR魔の巣」へと向かう。(エピソード「美女豹変(ひょうへん)す!!」)

夜のネオン街をあてどもなく歩いていた喪黒は、水商売の呼び込みをするボーイのような姿をした幼い少年を見かける。街の雰囲気に不釣り合いな少年が気になって声を掛けると、少年は喪黒を路地裏にある「KID'S CLUB」という名の美少年クラブに連れていく。喪黒は少年に案内されるがまま席に座ると、正面にユキオという少年が座って、ブランデーを注いでもてなしてくれる。ユキオと楽しく歓談していると、店内に男性客の怒鳴り声が聞こえてくる。怒鳴り声に耳を傾けると、どうやら男性客はユキオが喪黒の接待をしているのが気に食わない様子。喪黒は男性客にユキオを譲り、席を立って店を出ていく。その後、喪黒は男性客が店を出て来るのを待ち伏せて、声をかけて名刺を手渡すが、男性客は喪黒の話をまともに聞こうとせずに立ち去ってしまう。(エピソード「小さな誘惑者」)

第2巻

ハワイのホノルルで妻のショッピングに付き合い、沢山の買い物袋を持たされているMr.コイケシンイチは、ショッピングの途中で喪黒福造にぶつかった際に、買い物袋を持って行かれてしまう。急いで喪黒を追いかけて駐車場で追いついたものの、コイケは喪黒が呼んでいたリムジンカーに乗せられてしまう。リムジンカーの中でコイケは喪黒から名刺を手渡され、せっかくハワイ旅行に来たのにもかかわらず、妻のショッピングにばかり付き合わされていてうんざりしているのではないか、と核心を突かれる。奥さんの事は忘れてハワイの素晴らしさを満喫してみないかという、喪黒の甘い言葉にコイケは流され、喪黒に言われるがままにホテルの一室に連れて行かれる。(エピソード「ホノルルで夢を見た!?」)

豪華客船クイーン・エリザベス2号で横浜から香港へ向かう船の旅を楽しんでいた喪黒は、沈鬱な面持ちの男性を見かけて声を掛ける。男は津木進という名で、先日、会社からリストラ宣告され、自宅待機を命じられたばかりだった。そして、妻の計らいで1週間の船旅の券をプレゼントされたが、船に乗っても妻に申し訳なく、今ひとつ気分が乗らないのだと語る。そんな津木に喪黒は、せっかくの奥さんからの好意を無駄にしてはいけないと熱く語り始める。こうして津木は喪黒に連れられて、船内にあるさまざまな施設を楽しむ事にする。(エピソード「豪華客船“カジノ”の旅」)

観光でオーストラリアのエアーズロックにやって来た喪黒は、世界中を旅して回っているという高奇心也と知り合って親しくなる。高奇は観光ではなく、オーストラリアの先住民族「アボリジニー」に興味があり、「アボリジニー」に会うのを目的にオーストラリアにやって来たという。喪黒は高奇の願いを叶えるために、「アボリジニー」が住んでいる地域まで高奇を連れて行く。こうして高奇は単身、「アボリジニー」が生活している領域に足を踏み入れる事になる。(エピソード「エアーズロックの麓で」)

登場人物・キャラクター

喪黒 福造 (もぐろ ふくぞう)

セールスマンの男性。中肉中背で黒いハットをかぶり、スーツを着用している。タレ目でいつも歯をむき出しにして張り付いたような笑みを浮かべている。人々のココロのスキマにつけ込み、叶わないと思っていた欲望や願望を叶えてあげる事を仕事にしている。しかし、その欲望や願望が叶った人々が、その後どうなるかまでは保証する事はなく、責任を持つ事もない。 気さくでおおらかな性格の持ち主ながら、それが災いし、時には人を傷つける事もある。街の雑踏の中を歩く事が好きで、「BAR魔の巣」が行きつけの店。

上江 昇 (かみえ のぼる)

エピソード「欲望の行方」に登場する。34歳の営業マン。黒い短髪で眼鏡をかけ、スーツを着用している。非常に細身の体型で、頬が痩けている。頭教大学を卒業して現在の会社に就職した。入社当初からバリバリと頭角を現し、先輩達を追い抜いて現在、営業課長にまで昇進している。郊外に一軒家を持ち、妻と共に何不自由のない平穏な生活を送っている。 しかし仕事一筋の堅物で、夜の付き合いはいっさいしないため部下や同僚からの評判は悪く、「仕事の虫」と陰口を言われている。禁煙者で酒もまったく飲まない。実はかつて上江昇自身が通っていた頭教大学附属高校に、現在通っている女子高校生にあこがれを抱き、密かに盗撮を行い続けている。

伏目 柔志 (ふしめ やわし)

エピソード「負け犬」に登場する。31歳のサラリーマン。黒髪を右横に分けて眼鏡をかけ、スーツを着用している。気が弱く、いつも伏し目がちで覇気がない。会社では、その控え目な性格も災いして、面倒事を押し付けられてしまう事が多い。趣味は麻雀だが、緊張しやすいため、勝負どころでつい気負ってしまい、負けてばかりいる。

才賀 礼 (さいが れい)

エピソード「上の部屋 下の部屋」に登場する。29歳の男性漫画家。黒髪で眼鏡をかけており、襟付きの半袖シャツを着用している。高層ビルに囲まれた2階建ての古いアパートで一人暮らしをしている。いつも窓の外から見える超高層ビルを見上げながらマンガを描いているので、超高層ビルに住んでいる人達を密かに妬ましく思っている。担当の編集者と共に行きつけの居酒屋でお酒を飲むのが好きだが、お酒は弱い。

三葉 元雄 (みつば もとお)

エピソード「美女豹変(ひょうへん)す!!」に登場する。31歳のサラリーマン。黒髪で眼鏡をかけており、スーツを着用している。女優の「可愛すみれ」が大好きで、出演しているドラマは必ずチェックしている。写真集をすべて購入するほどの熱狂ぶりで、妻には呆れられ、会社の同僚には馬鹿にされている。しかし、気が弱い性格なため、妻や同僚に言い返す事ができず、そのストレスを腹の底に溜め込み続けている。

ユキオ

エピソード「小さな誘惑者」に登場する。美少年クラブ「KID'S CLUB」で働いている少年。年齢は11歳。黒いロングヘアで蝶ネクタイを締め、ダブルのスーツを着用している。生い立ちや家族構成、クラブで働くようになった経緯等のすべてが謎に包まれている。しかし、大人と対等な関係で付き合う事ができるこの仕事が大好きで、いい人生勉強をさせてもらっていると考えている。 まじめで勉強熱心な性格の持ち主。容姿端麗で、その品行方正な振る舞いと中性的でミステリアスな風貌から、先生をはじめとする常連客に人気がある。

先生

エピソード「小さな誘惑者」に登場する。画家の男性。癖のある長い髪にベレー帽をかぶり、鼻の下に髭を蓄えていて、大きな一軒家で絵を描きながら一人で暮らしている。ひと月前にとある飲み会のあと、酔っ払ってふらふらとネオン街を歩いていた際に、水商売の呼び込みのような格好をしているボーイに連れられて、美少年クラブ「KID'S CLUB」を知る。 その時に店で働いていたユキオに一目惚れをし、以来、寝ても覚めてもユキオの事ばかり考えるようになった。毎晩のように「KID'S BLUE」に通っている。

Mr.コイケ シンイチ (みすたーこいけ しんいち)

エピソード「ホノルルで夢を見た!?」に登場する。妻と共にハワイ旅行に来ている観光客の男性。年齢は33歳。眼鏡をかけており、茶髪にパンチパーマをあてていて、アロハシャツを着用している。気が弱く、普段から妻には頭が上がらず、ハワイでも妻のショッピングの付き合いばかりさせられている。また誘惑にも弱く、ハワイで知り合った喪黒福造にリムジンカーに乗せられて、甘い言葉に誘われるがままホテルについて行ってしまう。

津木 進 (つき すすむ)

エピソード「豪華客船“カジノ”の旅」に登場する。43歳のサラリーマン。黒髪で眼鏡をかけていて、スーツを着用している。先日、会社からリストラ宣告されて、自宅待機を命じられて途方にくれている。夫思いの妻から、家でくよくよ悩んでも仕方がないと言われ、1週間の豪華客船での船旅の券をプレゼントされる。しかし、まじめで律儀な性格から、妻に罪悪感を感じてしまい、気乗りしないままに横浜から香港へと向かう船に乗ってしまう。

高奇 心也 (たかき しんや)

エピソード「エアーズロックの麓で」に登場する。世界中を旅して回っている男性。黒髪で麦わら帽子をかぶっており、襟付きの半袖シャツに、サスペンダーの付いたチェック柄のパンツを着用している。好奇心が旺盛で、そのバイタリティーは底を尽きる事がない。コミュニケーション能力が高く、気さくで誰とでも気軽に話ができる性格。旅先で知り合った喪黒福造と初対面ながらすぐに打ち解けて親しくなる。 オーストラリアの先住民族「アボリジニー」に興味を抱いており、「アボリジニー」に会うためにオーストラリアにやって来た。

場所

KID'S CLUB (きっずくらぶ)

エピソード「小さな誘惑者」に登場する。ネオン街の奥にある、ユキオが働いている美少年クラブ。小学校高学年から中学生位の少年が、お酒を注いでくれたり、会話を楽しませてくれたりと、さまざまなもてなしで接客してくれる。呼び込みのボーイがいるが、店にふさわしいと思える特定の選ばれた人しか声を掛ける事はない。特別なクラブとして知られている。

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