概要・あらすじ
スズキは回転寿司チェーン「大海原寿司」で働く雇われ店長。日々の激務と個性あふれる同僚たちのせいで、着実にスズキの精神と肉体は蝕まれていた。自由と休みを心の底から切望しつつも、彼は何をするでもなく流されるままに、今日も憂鬱な1日を過ごすのだった。
登場人物・キャラクター
スズキ
回転寿司チェーン「大海原寿司」の雇われ店長。30代の男性。日々の激務と個性的な同僚たちの行動に、いつも心を痛めている苦労人。しかし、意外と本人自身もギャグ要員で、時折混乱しては奇行に走る面がある。激務でほとんど休みがなく、店に寝泊まりすることもしばしば。欲しいものは「休み」と「自由」。花粉症を患っている。
アユカワ
アルバイトの女子大生。スズキの店でフロア担当として働いている。ツインテールの髪型をした、自由奔放で奇想天外、破天荒な行動を繰り返す、生粋のトラブルメーカー。仕事でもミスを連発している。ボケ担当で、自らがツッコミをする必要が生じた際には、普段からは考えられないほどの動揺を見せる。家は店から徒歩2分の距離にあるが、よく遅刻をしている。 性格が正反対の真面目な妹がいる。
エビハラ
丸メガネをかけた青年。スズキの店で見習いとして働いている。スズキを含め、店で働くスタッフのなかでは唯一の常識人で、ツッコミ担当。たまに、自分の地味な見た目や性格を、自虐ネタにしたりする。
鮫島 (さめじま)
壮年の男性。スズキの店で仕込みを担当している。顎が太く、角張った顔立ちに鋭い眉で、スクエア型のメガネをかけた強面の人物。言葉を発することは少なく、見た目と相まって、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。ところが、実は可愛いものに目がなく、アニマルプリントのシャツや、ファンシーグッズをロッカーに置いている。ボケ担当だが、ほとんどの場合ツッコミが不在なため、ボケっぱなし。
海原 (うみはら)
「大海原寿司」の経営者の男性。アユカワと気が合うレベルの性格破綻者。2大厄介者として、スズキの胃に負担をかけている。物語序盤では、スズキが店で何気なく呟いた「起きると(されると)嫌なこと」を、ピンポイントで指示してくる謎の人物だった。のちに盗撮機を仕掛けていたことが判明。中盤以降は、見た目もキャラクターも明らかなチャラ男として登場し、頻繁にスズキらに関わるようになる。
カニ
スズキの働く店の水槽にいるカニ。間違いなく食材として仕入れられたカニなのだが、数年の時を経ても、なぜか調理されないまま生きている。いつか水槽を脱出して海へ帰る、という野望を持っている。しかし、そのチャンスをことごとく逃してしまうなど、ちょっと頭が弱いところがある。のちに同じ水槽に子ガニたちが来たときは、「隊長」と呼ばれるようになる。
さより
年齢不詳の女性。スズキの店の常連客の1人。店に赤ワインを持ち込んでくる、厄介な人物。赤ワインを飲みながら、カウンターで年齢や恋愛関係について愚痴るのが、定番のパターン。節分の際に、約30個入りの豆パックを見て「足りない」と言っているので、年齢が30歳以上であることが判明。またエビハラの母親の過去のエピソードに、共感したりもしている。
タカベ
5歳の男の子。スズキの店の常連客の1人。付近の幼稚園に通っている。家族と来店するのはもちろん、「家が近い」という理由で、1人で訪れることもある。寿司が大好物。特定のネタのみが好きということはなく、意外に渋いチョイスもする。多忙で疲れて見えるスズキを労わる、大人びた一面を持つ。
ヒイラギ
「大海原寿司」の本部に勤める社員。各店舗を見回り、店員の身だしなみや、店の衛生管理などを確認する「店舗検査」が主業務。店が忙しいときは、現場店員としてサポートすることもある。業務に非常に忠実で、融通が利かない性格。しかし、鮫島に対してのみ極端に甘い。髪の短い中性的な容姿で、性別不明なことがネタにもなっていた。 コミックス最終巻のあとがきで、ついにその性別が明らかになる。
アオヤギ はじめ
元ニートでひきこもりの青年。スズキの店に面接に訪れた。人の目を見て話すことができない、正しい言葉遣いができない、人に遠慮した物言いができない、など数々の問題点を抱える。しかし、海原社長の親戚であるため無下にできず、スズキの店で採用された。人が苦手だが、魚はもっと苦手で、触ることも食べることもできない。唯一かっぱ巻きのみ作れる。 のちに魚肉ソーセージだけは、食べられるようになる。海原社長からは「はじめ君」と呼ばれており、作中で唯一フルネームが判明している人物。
アユカワの妹 (あゆかわのいもうと)
アユカワと瓜二つの顔を持つ双子の妹。違うのところは、眉毛と目の間隔が近く、少しだけ凛々しい点と、髪をツインテールではなく、下の方で2つ結びにしている点。名前は不明。姉であるアユカワからも、単に「妹」と呼ばれている。アユカワによれば、「記憶力と真面目さしか取り柄がない」という、アルバイトには最適な人材。姉がアルバイトのし過ぎで大学の単位取得が厳しくなったとき、代わりに働くと言い出した。
磯山 (いそやま)
「大海原寿司」の本部で事務長を務める女性。海原社長の秘書のような職務もこなす。前髪をぴっちりと分け、お団子ヘアにメガネをかけている、外見から性格を推察しやすい人物。社内で、海原社長に対してビシッと言いたいことを言えるのは、ヒイラギと磯山だけ。たまに言わなくてもいいことまで、言ってしまう。
子ガニ (こがに)
3匹の子ガニ。エビハラが川へ釣りに行った際に、魚が釣れなかったため代わりに捕まえた。「大海原寿司」で長らく放置されたままのカニと同じ水槽に入れられた。先にいたカニを「隊長」と呼び、その後をついて回っている。なお、隊長のカニは海水生、川で捕まえたカニは淡水生だと思われる。
スギ
パートのおばちゃん。昔、スズキと共に「大海原寿司」で働いていた。ホームセンターでクリスマスの飾りつけを選んでいるスズキを見て、店の備品の買い出しであることを知っていながら、「結婚して子供でもできたのか」と声をかける。
ヤマベ
アルバイトの女性。昔、「大海原寿司」で働いていた。ヤマベが辞めることになり、新しいバイトを募集したところ、面接にきたのがアユカワだった。最近になって、新たにライバル店舗の回転寿司屋「すしだらけ」で働いているところを、スズキに目撃された。そこで、事情を知らない人からすれば、痴話喧嘩にしか見えない騒ぎを起こす。
場所
大海原寿司 (おおうなばらずし)
回転寿司チェーンを展開している会社。正式名称は「株式会社大海原寿司」。スズキが働く店のほかにも店舗があるが、作中での「大海原寿司」は、基本的にスズキが店長を務める店を指す。チェーン展開しているものの、社員・パートすべて合わせて40名程度。現在は先代から会社を受け継いだ海原が、社長を務めている。かなりのワンマン企業で、社長の言うことは絶対。 社長の気まぐれで、さまざまなイベントを催すよう命令されるため、スズキとは別の店舗の店長も苦労している様子。
海の家 (うみのいえ)
海原社長の友人が経営している海の家。真っ黒な肌にサングラスをかけ、アロハシャツを着用した、ドレッドヘアに太いヘアバンドを付けた人物が、店長を務めている。海原社長から、お盆後の店休日に「少し遅い夏休みを満喫するように」と、スズキら従業員一同が海水浴に招待されて訪れた。
ウキウキ水族館 (うきうきすいぞくかん)
海原社長の友人が経営している水族館。海の家の近くにある。海水浴に来たはいいが、あいにくの豪雨だったため、しょうがなくスズキら従業員一同が訪れた。スズキは魚を見て仕事を思い出し、憂鬱になっていた。鮫島やアユカワは、存分に満喫した様子。館内レストランのオススメメニューはお寿司。
ミルフィー湯 (みるふぃーゆ)
スズキの店の近くにあるスパ施設。深夜まで営業しており、スズキが店に泊まり込む際によく利用している。利用頻度が高すぎてメンバーズカードのランクが上がり、現在スズキはプラチナ会員となっている。風呂上りにはマッサージ機を利用したまま寝てしまい、閉店時間まで居座ることがほとんど。スズキにとっての天国だったが、のちにアユカワらも訪れるようになる。
すしだらけ
スズキの自宅の近くに新装開店した回転寿司屋。スズキが休みの日に、偵察がてら昼間からビールを飲みに向かったところ、海原社長と遭遇してしまう。また、アユカワを雇わざるを得なくなったきっかけでもある、元同僚のヤマベが働いているのを目撃するなど、スズキはこの場所に来ると散々な目に遭う。
イベント・出来事
クリスマスコスプレ
スズキの店でクリスマスに行われるイベント。アユカワの奇抜な提案と海原社長のノリによって、クリスマスにコスプレをして接客するのが定番化した。フロアの接客担当はもちろん、厨房内の職人も例外ではない。また「サンタだけしかいないのはおかしい」という理由で、店員のうち1人が天使のコスプレを、もう1人がトナカイのコスプレをすることが、義務付けられた。 トナカイ役は、なぜかスズキと決まっている。
スズキのサプライズパーティー
スズキの誕生日を装ったパーティー。海原社長が、「ライバル店への偵察」という名目で、数少ない休日にスズキを呼び出し、その誕生日を祝ったサプライズイベント。強引に連れ出されたうえ、意味不明な変装までさせられるスズキにとっては散々なもの。しかし、巨大なケーキが振る舞われ、社長から電話で直々に労いの言葉をもらうなど、結果的にまんざらでもないイベントとなった。 なお、当日は別にスズキの誕生日ではなかった。
その他キーワード
おぼろ
太巻きなどに入っているピンク色の甘い食材。アオヤギはじめが、子供の頃から大好き。大人になったらおぼろのみをぎっしり詰めた太巻きを、食べるのが夢だった。太巻き作りの練習をする際にそれを思い出し、いまだかつてない、やる気に満ちた大きな声で、「すべて買い取って食べるから作らせてくれ」と主張。なお、材料が魚のほぐし身であることを知ると、ショックで寝込んだ。