彼女、人見知ります

冴（さ）えない男子大学生とレンタル彼女の恋愛を描き、テレビアニメや実写ドラマになった人気作『彼女、お借りします』の公式スピンオフ。作者は本編と同じ宮島礼吏。単行本第1巻巻末の「制作秘話的おまけ」によると、「描けるならスピンオフも描いてみたいなー」という、宮島の軽い気持ちから始まったようだ。担当編集者を含めた三人の制作陣との打ち合わせで「本編のヒロインである千鶴以外のキャラの日常系がいい」という方向で全員一致。あとは、主人公を誰にするかという選択となり、独立して味わい深いキャラとして、七海麻美と桜沢墨が候補にあがった。その後、結論が出るまで長時間の話し合いが行われたという。

本編の主要キャラである木ノ下和也、水原千鶴、更科瑠夏、七海麻美などがしばしば登場し、墨との知られざるエピソードが描かれる。例えば、ゲームセンターでの瑠夏との出会いは、瑠夏が落としたポシェットを拾うが声をかけられずに困るエピソード。ファミレスにいた麻美とは、声をかけてきた男性たちを手玉に取る様子に墨が感心するといった内容である。また、本編での人気エピソードである「和也との練習デート」では、千鶴が「練習台」として和也を紹介する電話や、デートの様子が墨の視点で描かれている。

父の名義で墨をレンタルする小学生が登場。フミキという名義で活動しているYouTuberで、非常に礼儀正しくクールな少年だった。お客さんがカメラを持つ少年というシチュエーションに戸惑う墨だったが「顔を映さない」「いつも通りのデートでよい」ということでフミキくんとのデートを了承。カメラを向けられているときは、緊張ぎみの墨だったが、デートの最後に「手を繋（つな）いでほしい」とお願いされた際は、小学生が相手なのでさすがに緊張はなかった。にっこり笑って手を繋いであげる、素敵なお姉さんぶりを発揮。逆にフミキくんが照れまくるという、本作では珍しいシーンを見ることができる。ちなみにこのときの動画はバズり、後日フミキくんから2回目のデートの申し込みを受ける。