あらすじ
第1巻
佐藤小春と黒澤麻由美は、毎週金曜日になると二人だけの「お泊り映画鑑賞会」を開催している。場所は一人暮らしの麻由美の家。レンタルショップで毎週の映画を選ぶのは、映画に詳しい小春の役目だ。この習慣は、二人が高校生の時から始まったが、互いに違う大学に進学した今も同じように続けられていた。この日、小春が選んだ映画は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。熱い映画が大好きな麻由美の好みを重視して選んだアクション映画だった。(第1話「マッドマックス 怒りのデス・ロード」)
長編アニメーション映画『インサイド・ヘッド』を鑑賞した小春と麻由美。もともとこの映画が大のお気に入りだった小春は、鑑賞後号泣。普段はあまりアニメに興味を示さない麻由美も、思いがけず感動に浸っていた。二人は共に親元を離れて暮らしていたため、家族愛が描かれた映画を鑑賞した余韻から、家族について話が及ぶ。しばらく実家に戻っていなかった麻由美は、特に家族に対して恋しさを募らせる事になる。(第2話「インサイド・ヘッド」)
どんな映画を見せても無難な反応しか見せない麻由美の表情を、なんとか変えさせてやろうと小春が選んだのは、ジャパニーズホラーの金字塔として知られる『呪怨・劇場版』。しかし、そんな小春の想いを知ってか知らずか、やはり麻由美の表情はそう変わらない。そして夜にホラー映画を見てしまった事により、怖がりの小春がより面倒くさい事態に陥ってしまう。(第3話「呪怨・劇場版」)
今回二人が見た映画は、ラブストーリーの王道として知られる『プリティ・ウーマン』。小春はありがちなシンデレラストーリーに反発し、悪態をつきつつも、心の底から湧き上がるあこがれを隠しきれない。その後小春と麻由美は、映画の感想を話しながら晩ご飯を買いにコンビニエンスストアに足を運ぶ。(第4話「プリティ・ウーマン」)
この日、麻由美は珍しく自分の見たい映画を借りてきた。最近頭を使って会話していないからという理由で、選んだ映画は『グランド・イリュージョン』。「この罠(トリック)に騙されるな」がキャッチコピーのクライムサスペンスを鑑賞した小春は、自分が映画で騙された事がないと豪語し、噓をついて私を騙してみてほしいと麻由美に願い出る。(第5話「グランド・イリュージョン」)
小春と麻由美は、晩ご飯の食材を買い出しにスーパーへ行く事になった。ついさっきまで観ていたインド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』の影響を直で受けた小春は、その時の気分や思いを「小春ダンス」を踊って表現し始める。(第6話「ムトゥ 踊るマハラジャ」)
今週二人が鑑賞した映画『トレマーズ』は、巨大生物との戦いを描くパニック映画だ。これを彷彿とさせる出来事が今、まさに小春と麻由美の身に起こっていた。二人の戦いの相手は突如出現したゴキブリ。ゴキブリを大の苦手としている麻由美は、すべてを小春に委ねた。そして小春は殺虫剤を片手に単独でゴキブリに戦いを挑む。(第7話「トレマーズ」)
父と子の絆を描いたヒューマンドラマ『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を鑑賞した小春と麻由美は、映画に関する感想を互いに口にし始める。そこで、お互いの見解が違っている事が発端となり、二人は珍しくケンカを始める。(第8話「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」)
今週末に用事ができてしまい、いつもの映画鑑賞会ができなくなってしまった事を気にした麻由美は、埋め合わせにと、小春を誘ってショッピングモールにやって来た。そこで買い物を楽しむうち、二人の脳裏によぎったのは先週見たばかりの映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』の事だった。この映画は、巨大なショッピングモールを舞台にしたゾンビ映画。小春と麻由美は、ゾンビ相手に戦うか、感染して仲間になるかという話題で盛り上がる。(第9話「ドーン・オブ・ザ・デッド」)
2週間ぶりに麻由美の家を訪れた小春は、部屋の中の様子や麻由美自身の小さな変化に気づく。この日、二人が鑑賞した『幸せのレシピ』は、頑なな心を持ったシェフが、人との出会いを経て新たな幸せに気づく王道のラブストーリー。麻由美の変化に対して複雑な心境を抱えた小春は、映画の話になぞらえて、自分の今の心境を吐露する。(第10話「幸せのレシピ」)
第2巻
この日、黒澤麻由美がレンタルショップで借りてきたのは「ハリー・ポッター」シリーズの第4作目にあたる『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』。佐藤小春は、まだ原作の3作目までしか読んでいなかったため、これに憤慨。読んでから観ると決めていたのにと麻由美にあたり始める。しかし麻由美は、小春が原作を読むと言い始めてから1年が経過し、もう読む気にはならないと判断して映画鑑賞に踏み切った。文句を言いながらしぶしぶ映画鑑賞を始めた小春だったが、鑑賞後には態度を180度変化させる。(第11話「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」)
小春が借りてきた映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の内容を知って、麻由美は困惑の表情を見せた。その様子に気づいた小春は、その理由を追及する。麻由美から帰ってきた答えは意外にも「画面酔い」。この作品は、登場人物が撮ったという形で撮影された映像が多用されており、手ブレがひどい。もともと酔いやすい体質の麻由美は、これに酔ってしまうのではないかと懸念を抱き、家の中にあるものを総動員して、ありとあらゆる画面酔い対策を施していく。(第12話「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」)
年末年始を迎え、小春と麻由美は実家への帰省を理由にしばらく会えない事になった。小春が実家で退屈な時間を過ごしていた時、麻由美からの電話を受けて、テレビで放映している映画『THE 有頂天ホテル』を観始める。電話は切らず、互いに通話状態のままで観る映画、それはまさしく「遠距離映画鑑賞会」だった。(第13話「THE 有頂天ホテル」)
ある日、小春は大学で、合コンに参加しないかと友人から声をかけられる。合コンとはいえ、小春を目当てにしている男性がいるからという事で、相手の男性の情報を聞くが、今一つ反応薄の小春。友人達が小春の好みの男性について聞くと、小春は先週麻由美と観た映画『キングスマン』を思い起こし、俳優のコリン・ファースの名前を挙げる。しかし友人達には映画の話がなかなか通じず、小春の心の中は麻由美の事でいっぱいになっていく。(第14話「キングスマン」)
バレンタインデーを間近に控え、麻由美にプレゼントする友チョコを物色していた小春は、今週の映画に『チャーリーとチョコレート工場』を選んだ。そして映画鑑賞のあと、作中に出てきた「ウォンカチョコレート」を模して作った「コハルチョコレート」を麻由美にプレゼントする。(第15話「チャーリーとチョコレート工場」)
ちょっとした事がきっかけで、小春は姉ちゃんとケンカになりかけた。毎週金曜日になると、麻由美の家に押しかけて行く小春に、姉が放った「麻由美ちゃん、ホントは迷惑してんじゃないの?」という言葉がその原因だった。麻由美の家に向かう道中、小春はその言葉を否定しながらも、麻由美が好きそうな映画を選ぼうと、悩みに悩んだあと、『SAW』を借りる事を決める。しかし、麻由美の家でいざ開封してみると、そこには『SAW』とは無関係の映画『SAW.ZERO』が入っていた。(第16話「SAW」)
この日、小春と麻由美が観たのは『ブリジット・ジョーンズの日記』。等身大の30代の独身女性を描いたこの作品に、共感するかどうかで意見がぶつかる。30歳を過ぎた時に一人だったら寂しいと思う気持ちがわかると言う小春に対して、30歳を過ぎて一人でいるつもりがないと言う麻由美。その言葉に、麻由美が彼氏を作るために前に進もうと頑張っていると判断した小春は、自分も合コンに参加して彼氏を作る事を宣言する。(第17話「ブリジット・ジョーンズの日記」)
さっそく合コンに参加した小春は、友人が紹介してくれた男性と映画の話で盛り上がっていた。しかし、話を進めていくうちに、すこしずつ意見に食い違いを見せ始める。小春が麻由美と見た邦画『世界の中心で、愛をさけぶ』に話が及んだ事がきっかけで、男性は邦画への嫌悪感をあらわにする。それ以降、徹底的に邦画たたきを始めた男性に、我慢の限界を迎えた小春は「あなたが好きなのは映画じゃなくて、映画が好きな自分」という言葉を投げつける。(第18話「世界の中心で、愛をさけぶ」)
小春と麻由美は『パンズ・ラビリンス』を観たあと、作中に登場するクリーチャー「ペイルマン」に扮して遊んでいた。その後、この映画のラストにさまざまなとらえ方がある事を知り、落ち込む小春とそれを慰める麻由美。二人は、お互いの存在と、このかけがえのない時間の大切さを改めて認識する。(第19話「パンズ・ラビリンス」)
名作『ロッキー』を鑑賞したあと、感化された麻由美は、ロッキーのように生卵を飲もうとキッチンでたたずんでいた。もともと生卵が苦手なため、簡単に飲む事ができない麻由美にとっては、まさに自分との戦いだ。小春につつかれ、呆れられながらもとうとう生卵をコップから飲み干す麻由美だったが、戦いの甲斐なくリバースしてしまう。(第20話「ロッキー」)
登場人物・キャラクター
佐藤 小春 (さとう こはる)
女子大学生。高校生の頃、クラスメイトだった黒澤麻由美の事は、静かで綺麗な子だと気にはしていたが、遠くから見ている顔見知り程度の関係だった。しかし、レンタルショップで偶然同じ映画に手を延ばした事がきっかけでなかよくなり、毎週末の金曜日、一人暮らしの麻由美の家で「お泊り映画鑑賞会」を開くようになった。高校卒業後は互いに違う大学へ進学したが、金曜日のお泊りだけは続いており、現在も習慣化している。 麻由美の事が大好きで、若干ツンデレ的な部分が見られるものの、彼女に対する愛情表現は割とストレート。映画に詳しいため、お泊りで見る映画を自分で選ぶ事が多いが、そのほとんどは麻由美の反応を重視して決めている。映画を見た麻由美が思ったような反応を見せるととても嬉しいが、基本的に麻由美はなかなか感情をあらわにしないため、そのあたりにジレンマを感じる事も少なくない。 表面上、恋人を欲してはいるものの、麻由美と過ごす週末は何にも代えがたい大切な時間のため、当分できそうにない。現在は姉ちゃんと二人で暮らしており、実家からは両親が車で5時間かけて、月に一度のペースで会いに来ている。 怖がりでホラー映画は苦手。
黒澤 麻由美 (くろさわ まゆみ)
女子大学生。高校生の頃、クラスメイトだった佐藤小春と、レンタルショップで偶然同じ映画に手を延ばした事がきっかけでなかよくなり、毎週末の金曜日に「お泊り映画鑑賞会」を開くようになった。高校卒業後は互いに違う大学へ進学したが、金曜日のお泊りだけは続いており、現在も習慣化している。表面上、恋人を欲してはいるものの、小春と過ごす週末は何にも代えがたい大切な習慣となっているため、ほかの用事を入れるにも相当気を遣う状況にあり、当分できそうにない。 巨乳で抜群のスタイルの持ち主。基本的に感情が表情に現れにくいところがあり、一見してクールビューティー。反対に、感情をストレートに出してくる小春の事が大好きで、小春が求めてくるような感情を表現し、理解を得ようと努力はしている。 小春が選んでくれた映画はどれもそれなりに楽しんでいるものの、一番好きなのは派手なアクション映画。大学ではバンドのサークル活動を行っており、ベースを担当している。人で混雑している場所が苦手だが、ライブ会場の混雑は嫌いではない。小春いわく、高校生の頃は「私の領域を侵してくれるな的なオーラ」を放っていたため、周囲からは「孤高の巨乳」とあだ名が付けられていた。 ゴキブリが大の苦手。
姉ちゃん (ねえちゃん)
佐藤小春の姉。親元を離れ、現在は小春と二人暮らしをしている。はっきりした性格で、言葉はキツめだが間違った事は言わない。毎週金曜日になると黒澤麻由美の家へ押しかけていく妹を見て、本当は麻由美の迷惑になっているのではないかと、少し心配している。
友人 (ゆうじん)
佐藤小春と同じ大学に通う女子大生。小春に気があるという男性を紹介したいと、小春を合コンに誘う。その時はいい返事がもらえなかったが、後日実現。小春と男性が映画の話で盛り上がっているのを見て安心するが、調子に乗りすぎた結果、悪い結末を迎えた男性を叱責する。
男性 (だんせい)
佐藤小春に気があり、友人に顔合わせをお願いした映画好きの男性。その結果、複数の男性と女性が介する合コンという形の飲み会になった。その席で、小春に対して自分が映画好きである事をアピールし、映画について熱く語り始めた。だが、洋画を持ち上げて邦画をけなした事が災いし、小春から、好きなのは映画ではなく「映画が好きな自分」ではないか、と厳しい言葉を投げかけられ、撃沈する。