概要・あらすじ
4歳から後深草院の御所で育てられた二条は、かねてからの想い人である西園寺実兼がいながらも、自らの育ての親である後深草院の妃となる。二条は後深草院と実兼や、他の数々の男性との間で複雑な想いを持ちながら日々を送っていた。後宮での人間関係にも翻弄され、いつも愛されたいと願う二条の激動の人生が始まる。
登場人物・キャラクター
二条 (にじょう)
久我雅忠の娘で、後深草院の妃。2歳にして母親の大納言典侍を亡くし、4歳から後深草院の御所にて育てられ、14歳の時に上臈女房として院御所で仕えることとなる。その前年に西園寺実兼と将来の約束を交わすも、後深草院と強引に契りを結ばされ、妃として入内。そして後深草院との間に御子を設ける。しかし、実兼との関係を断ち切ることができず、出産後に実兼とも契ってしまう。 後深草院との間に生まれた皇子は夭逝し、実兼との間にできた娘とも引き離され、複雑な想いを抱えて苦悩する。その後、性助法親王に好意を寄せられ、亀山院にも興味を持たれてそれぞれ関係を持つなど、さまざまな男性の間で翻弄されていくことになる。実在の人物である後深草院二条がモデル。
後深草院 (ごふかくさいん)
先の帝。大宮院の皇子で、亀山院の兄。19歳の頃に4歳の二条を引き取り、時には父、時には兄のように接して育ててきた。その理由は、かつての想い人であり自分の閨の手ほどきをした乳母の大納言典侍が忘れられず、大納言典侍の忘れ形見である二条を手元に置きたいという思いからであった。そして、二条が14歳の頃に契りを結び、二条を妃として迎え入れる。 多くの女性と関係を持つものの、二条をひときわ特別に扱うため、正室である東二条院が二条につらく当たる原因を作ることにもなっている。昔から弟の亀山院が優遇されていることに心を痛め、愛されたいという欲求を強く持つ。実在の人物である後深草院がモデル。
西園寺 実兼 (さいおんじ さねかね)
名家である西園寺家の若き当主の男性。裳着(もぎ)を迎える前の二条と将来の約束を交わすが、その頃には正室がおり、御子も設けていた。二条が後深草院の妃となった後に再会し、お互いに想いを募らせ、二条が後深草院との間の皇子を産んだ後に二条と契りを交わす。この時に授かった娘は、自らが引き取り正室との子として育てている。 その後も二条との関係を続け、足しげく通い続けるなど大胆な面を見せる。実在の人物である西園寺実兼がモデル。
性助法親王 (しょうじょほつしんのう)
最高格式である仁和寺の高僧で、後深草院の腹違いの弟。後深草院の御所にて、まだ幼い頃の二条を何度か見かけており、数年後に後深草院の妃となった二条と再会して恋心を燃やす。二条だけを一途に愛して契りを結ぶも、その後距離を置かれることとなる。その際には自己の行いを神仏に誓う起請文を二条に送るなど、情念深い面を持っている。 実在の人物である性助法親王がモデル。
亀山院 (かめやまいん)
後深草院の弟で、大宮院の皇子。後深草院が帝に在位している時は東宮であったが、後深草院が17歳の時に彼に代わって帝となった。後深草院と比べて両親に優遇されており、それが後深草院の心の傷ともなっている。後に後深草院との対立をどんどん深めていくことになるが、表向きにはつつがなく振る舞う。後深草院の御所に訪れた際に二条に興味を持ち、大宮院を見舞う際に後深草院のお付きとして同行した二条と関係を持とうとする。 実在の人物である亀山院がモデル。
久我 雅忠 (こが まさただ)
二条の父親。大納言でありながら将来的に大臣の座を約束されていた人物。娘の二条を可愛がっていたが、後深草院の命により二条を妃とするお膳立てを行う。二条が後深草院の子を授かっている折に黄疸にかかり病に伏すが、亡くなる最後まで二条の行く末を思いやっていた。
大納言典侍 (だいなごんのすけ)
二条の母親で、久我雅忠の妻。雅忠の妻になる前は後深草院の乳母であり、閨の教育係でもあった。孤独を感じていた後深草院を優しく包み込んだ女性で、後深草院の初恋の人。のちに後深草院は大納言典侍の面影を追い、彼女の忘れ形見である二条を手元に置くこととなる。
四条 隆顕 (しじょう たかあき)
二条の叔父で、大納言典侍の弟。二条が懐妊した際には見舞いに訪れたりなど、二条の後見として何かと気に掛けている。情が深く二条が窮地に立たされた際には支えになるが、二条が性助法親王と距離を置いている時に2人を引き合わせてしまうなど、その行動が裏目に出てしまうこともある。
四条 隆親 (しじょう たかちか)
二条の祖父で、大納言典侍と四条隆顕の父親。隆顕と同じく二条の後見を任されるが、自らの後妻に産ませた娘が入内した際には、彼女の姪にあたる二条が格上に扱われるのを咎め、二条を責め立てる。これがきっかけとなり、のちに後宮内で二条がとある事件を起こすこととなる。
鷹司 兼平 (たかつかさ かねひら)
後深草院の後見役の男性。後見を失った二条と西園寺実兼との関係を疑っており、自ら二条の後見になることを申し出る。その時、二条は後深草院との子を身ごもっていたが、実兼との子である可能性を示唆したうえで自らも二条と契りを交わし、お腹の子を流産させる。
東二条院 (ひがしにじょうのいん)
後深草院の正室で、叔母。二条が子供の頃は優しく接していたが、二条が後深草院の妃となって何かと優遇を受けるのが癇に障り、つらく当たるようになる。二条も東二条院に疎まれているのを感じ、息苦しさを感じながら暮らしていくこととなる。実在の人物である東二条院がモデル。
大宮院 (おおみやいん)
後深草院と亀山院の母親。後深草院が幼少の頃より、彼よりも兄宮や弟の亀山院を可愛がっていたため、後深草院の孤独を深める一因を作った。一方で、後宮内で肩身の狭い思いをしている二条に対して優しい言葉をかけ、支えた存在でもある。実在の人物である大宮院がモデル。
愷子内親王 (がいしないしんのう)
後深草院の腹違いの妹で、伊勢神宮に使える斎宮。彼女の祖母が二条の祖父の妻であった縁から二条とも面識がある。上京した際に後深草院に見初められ、二条が手引きをして引き合わせることとなった。だが、それ以来後深草院の訪れがないことを嘆いている。
桂 (かつら)
二条に使える女房。二条が後深草院に輿入れする際に二条の実家からお付きとして同行し、それ以来生涯にわたり二条を支えることとなる。二条がさまざまな困難に直面した時も傍で一緒に涙し、二条を優しく見守り続ける。
さくや
二条に仕える女房。もともと後深草院の御所で仕える女の童で、二条が入内した後は桂とともに二条を支えていく。後宮のことから政治のことまでさまざまな事象に詳しい耳年増であり、時に二条に世の中の情勢を伝えたり状況を鋭く分析したりする。
小栗丸 (こぐりまる)
仁和寺で奉仕する稚児。性助法親王に仕え、二条と引き合わせるために使いとして足しげく二条のもとを訪れたり、慰みに自らの体を差し出したりなど、性助法親王に忠誠を誓う。性助法親王の役に立ちたいという一心で、長らく出家せずに仕えることとなる。
クレジット
- 原作
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後深草院二条