概要・あらすじ
卓越した剣術の腕を持ち、「血笑鴉」のあだ名で呼ばれる浪人が、高額報酬で暗殺を請け負う殺し屋稼業を続けながら、旅から旅へと流浪していた。ある宿場でやくざの親分を暗殺した鴉は、依頼人の弱みにつけこんで金をせびり、その金で宿場の女郎屋に居座る。そして鴉は、彼の命を狙って雇われた用心棒の浪人と対峙するが、その浪人は鴉に意外な言葉を投げかけるのだった。
登場人物・キャラクター
鴉 (からす)
別名「血笑鴉」とも呼ばれる稀代の剣鬼。過去の記憶を喪失している出自不明の浪人。チビで小太りな体型のブ男だが、大の女好きでニヒルな性格。剣の腕を生かした殺し屋稼業を続けながら各地を流れ歩いている。
用心棒 (ようじんぼう)
鴉の殺害を依頼された浪人。跡目を継いだやくざの親分から頼まれたが、鴉の剣法が「霞の木立」であることを見抜き、危険を感じて暗殺を思い止まった。ニヒルな鴉の生き方に興味を持ち、半ば強引に鴉の道連れとなり、しばらくの間ともに旅をする。
茨木 鉄心 (いばらき てっしん)
ある町の道場の道場主で一刀流の達人。冷酷な性格の剣豪。以前に暗殺した武士の妻から夫の仇として付け狙われており、仇討ちの助太刀を引き受けた鴉と、町外れの草原で対決する。
本間 正四郎 (ほんま しょうしろう)
ある藩の勘定方を務めている武士。妹との二人暮しで、真面目で正義感の強い性格。藩では会計の仕事をこなしていた。ある日、藩の帳簿に不正があるのを発見し、それをきっかけに命の危険に晒されることとなる。
岩見 (いわみ)
ある藩で二番家老を務めている武士。大勢の手下を従えて広大な屋敷に居住している。刀の鍔に梅の花の彫り物が加工された長刀を携えている。正体を隠し、鴉に、ある人物の暗殺を二十両の報酬で依頼する。
山崎 (やまざき)
やくざ組織「飯田組」の用心棒を務める浪人。「飯田組」と対立する「輪島組」から命を狙われているが、大勢の暗殺者をまとめて返り討ちにするほどの凄腕の剣豪。酒が切れると身体が震えだすほどの酒好き。それが原因で、士官の道を閉ざされている。のちに「輪島組」に雇われた鴉と対決する。
佐吉 (さきち)
剣の腕が立つやくざ者の男。やくざから足を洗い、堅気になって、色街に身を堕した妻を身受けする決心をし、その資金稼ぎのため危ない橋を渡っている。旅の途中、腹痛に苦しむ鴉と知り合い、彼の看病をするほどに優しい青年。
しの
鴉が賭場で知り合った武家の未亡人。美しい容姿ながら気丈な性格で、新婚わずか1か月で死別した夫の仇を探して旅をしている。ある浪人の殺害を鴉に依頼するものの、最後まで本心を明かさない謎めいた美女。
源八 (げんぱち)
チンピラやくざの男。ある男の依頼で目明かしを殺して大金を得た。さらに、それをネタにゆすりをして酒と女に溺れている。旅の途中の鴉と知り合いになり、自分の境遇を得意げに話して別れるが、のちに鴉と意外な形で再会する。
新吾 (しんご)
物静かで真面目な性格の武士。明神山の山小屋で妻と二人暮らしをしている。師匠から受け継いだ霞流小太刀の使い手。鴉とは浅からぬ因縁があり、のちに劇的な再会を果たすこととなる。
鬼熊 (おにぐま)
やくざの親分。目的のためには手段を選ばない、という極悪非道な性格の男。右目にある刀傷が特徴。剣の腕が立つ用心棒を3人雇い、宿場町を取り仕切る一派を皆殺しにして、町の乗っ取りを謀る。
五百木 (いおぎ)
一刀流の免許皆伝という剣豪。仕官の道は閉ざされている貧乏浪人で、長屋でカサ張りの内職をしながら、息子と二人暮らしをしている。悪徳商人をゆすって大金をせしめ、息子の将来のために貯金をしている、という子煩悩な父親でもある。
山勝屋 晋助 (やまかつや しんすけ)
紀伊半島の熊野にある大規模な庄屋の若親分。気風が良く面倒見のいい人格者で、500人以上が働く林業と漁業の現場を取り仕切っている。老いた父親とその後妻である義母のために懸命に働く正直者。
熊代組の親分 (くましろぐみのおやぶん)
やくざ組織「熊代組」の二代目親分。初代親分の時代には100人以上もの子分を擁していた。現在は「藤巻組」の勢いに押され、子分もたった5人となり、さびれてしまっている。穏やかで小心者なところがあり、やくざ稼業をやめて商人になりたいと考えている。
風間 一刀斎 (かざま いっとうさい)
風間一刀流の剣法道場で弟子たちを育成する白髪の老人。留守中に凄腕の武芸者が他流試合で弟子たちを打ち破ったため、道場の名誉と名声をかけて武芸者との決闘に挑む。決闘の前に鴉の剣法を参考にする。
嵐山 (あらしやま)
町外れの粗末な小屋に妻と2人で暮らす浪人。剣の腕前は一流。しかし、鎧兜一式が唯一の財産という貧困生活のため、賭け試合や道場破りをして生計を立てている。友人に仕官の口利きを依頼しており、藩の剣術師範として召し抱えられることを、夫婦で待ち望んでいる。
山形 主水 (やまがた もんど)
ある藩の家老を務めている老武士。目的達成のためには手段を選ばず、強引に物事を推し進めるやり手。一生を独身で通している仕事人間でもある。自分を諫めた藩の武士とその妻に対して、いわく因縁がある人物。
隼の左吉 (はやぶさのさきち)
強欲なやくざの親分。別のやくざの組が縄張りとする石見宿場を乗っ取るために、剣の達人である浪人を雇い、平和だった宿場町に血の雨を降らせる。
鏡 助三郎 (かがみ すけさぶろう)
名門の剣道場「大場一刀流道場」の師範代。門弟は300人に達する。剣の腕前は一流だが、普段の生活は乱れており、酒と夜遊びが大好きな自堕落な性格の持ち主。同僚の師範代で、自分とは正反対の真面目な性格の青年武士と、道場主の座をめぐって対立している。
その他キーワード
霞の木立 (きりのこだち)
鴉が用いる剣法。武芸者たちからは必殺の剣として恐れられている。一瞬のもとに相手を斬殺する目にも止まらぬ早業の秘剣。前かがみになって、下から上に一気に刀を振り上げる抜打ち剣法で、一振りしたとしか見えないが二振りしており、二振りしたとしか見えないが三振りしているという。
書誌情報
血笑鴉 3巻 小学館クリエイティブ
第1巻
(2011-09-20発行、 978-4778031961)
第2巻
(2011-10-17発行、 978-4778031978)
第3巻
(2011-10-31発行、 978-4778031985)