作品の概要
基本情報
吉村旋の代表作。
要旨と舞台設定
本作の舞台は、12歳頃から自分の意思で男女いずれかの性別に分化する世界。周囲の誰もが男性か女性のいずれかに変化している中、18歳になっても性別が決まらない「無性別」の状態が続いていた有馬ひなせは、幼なじみの男性、高山しおりと女性、加賀りつのあいだで揺れ動く青春を送っていた。
ストーリー展開
物語は、高校3年生のひなせが、同じ日に男性のしおりと女性のりつから告白されるところから始まる。性的欲求や恋愛感情を持たないひなせは、告白に戸惑いながらも二人との関係性を模索する。無性別者は20歳を超えて生存した例はなく、それがひなせと周囲の人間関係にも影響を及ぼしていく。医学的に「準モナリザ症候群」という仮の病名が付けられたひなせの状態が、物語の進行と共に変化していく様子が描かれる。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、SF的要素を含みながら青春物語としての側面を持つ恋愛漫画。性別選択という設定を通して、アイデンティティの形成や人間関係の複雑さが描かれている。性別によって変化する登場人物の身体や心情が細かく描写され、それぞれの立場から生じる葛藤や戸惑いが物語の核となっている。
作品固有の表現技法と特徴
作品の特徴として、性別が分化していく過程での微妙な心理変化や身体的特徴の変化が繊細に描写され、性別と自己認識の関係性が多角的に表現されている。絵柄は基本的に白黒だが、印象的な場面では鮮やかな青色も用いられる。また、登場人物の名字がすべて温泉地の名前に由来している点も特徴の一つ。
世界観の構築と設定
この世界の人間は誕生時に性別を持たず、12歳から14歳頃に性分化が起こり、自分の意思で男性か女性に変化するという特徴的な世界設定が構築されている。学校では、体育の授業が学期ごとに男女別のクラスを交互に受講するなど、性別分化を前提とした社会制度が構築されている。無性別者は20歳までに死亡するとされているが、その原因は医学的に解明されておらず、この謎が主人公、ひなせの存在の特殊性を強調している。
連載状況
スクウェア・エニックス「ガンガンONLINE」2018年5月14日から2021年12月13日まで連載。
受賞歴
2020年「次にくるマンガ大賞2020」Webマンガ部門第20位。
性別を選べる特殊な世界
性別と恋愛をテーマにしたヒューマンドラマ。一見ふつうの現代日本に見えるが、人間が性別のない状態で生まれ、12歳から14歳にかけて本人の意思で性別を選べる世界を舞台にしている。この特殊な世界観をさまざまな人物の視点から描いており、性別のないまま18歳を迎えた有馬ひなせの成長とともに、幼なじみの高山しおりと加賀りつの恋愛模様が、コメディを交えながら展開される。連載版・コミックスともに、ひなせの瞳の色をはじめ、青色のみがカラー印刷で表現されているのも大きな特徴となっている。
準モナリザ症候群で性別がないままの主人公
性的欲求に乏しく恋愛に対する関心も薄い有馬ひなせは、幼少期から誰に対しても友人以上の感情を持てない、中性的な見た目の高校生。そんなひなせは18歳の春を迎えても無性別のままで、医者から「準モナリザ症候群」と診断される。準モナリザ症候群は仮の病名で、医学的な解明はいまだにされておらず、無性別のまま20歳を迎えた前例がないとされている。そんな中、性分化して男性になった幼なじみの高山しおり、女性になった加賀りつの二人に告白されたのをきっかけに、ひなせの心は大きく揺れ動く。
二人の幼なじみに告白されたことで始まる三角関係
高山しおりと加賀りつに告白されたあとも、三人で過ごすことが多い有馬ひなせは、二人の気持ちにどう応えるかとともに、自らも男女どちらの性別を選ぶのかで思い悩む。そんな中、ひなせ自身の心境や体にもいくつかの変化が起こりつつも、ひなせは物語終盤まで性別を決めることができず、卒業の日は近づいていた。さまざまな出会いや出来事を経て、三人の関係性や無性別者だからこそ生まれる複雑で繊細な人間描写が、本作の見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
有馬 ひなせ (ありま ひなせ)
性別がないまま18歳を迎えた高校3年生。現在も性分化が現れず、性別を持たないままで過ごしている。幼なじみの高山しおりと加賀りつとはクラスメイトでもあり、仲がいい。男子と同じ制服を着用しており、中性的な容姿をしている。一人称は「自分」。クラスで唯一性別のない独特な事情から、体育は男子と女子の授業を交互に受けているが、周囲の男子と比べると小柄なため男子の授業はあまり好きではない。恋愛感情には乏しく、仲のいいしおりとりつにも友達以上の感情は持たず、基本的におとなしい性格をしている。性別がないことにひそかに悩んでいる中、りつに告白され、その直後にしおりからも告白されたのをきっかけに心身共にいくつもの変化が現れ、さまざまな表情を周囲に見せるようになる。性分化に関する診察を受けるため、しおりの兄のあずざのもとへ定期的に通っている。ある日の検診で「準モナリザ症候群」という仮の病名が付けられた。勉強が苦手で、りつと共にテスト勉強は成績のいいしおりに頼り切っている。
加賀 りつ (かが りつ)
高校3年生の女子。テニス部に所属している。有馬ひなせの幼なじみ。灰色のセミロングヘアを編み込み、一つにまとめてシュシュを付けている。愛称は「りっちゃん」。ひなせからは幼なじみの高山しおりに思いを寄せているとカンちがいされていたが、実は以前からひなせに思いを寄せている。ひなせに告白した際に、ひなせを男にしてみせると宣言しているが、そのあとに告白したことを心底後悔していた。幼少期は活発で男勝りな性格だったため、両親をはじめ周囲から男っぽい服や靴などを勧められていた。しかし幼稚園の卒園式の日に、ひなせからはかわいいものが似合うと言われ、ひなせの言葉をきっかけに初めて女性になることを望んだ過去を持つ。ひなせの体にわずかな変化が現れた頃、しおりもひなせに告白していたことを知り、彼とは恋のライバル関係となる。勉強は苦手で、ひなせよりも成績が悪い。
書誌情報
性別「モナリザ」の君へ。 10巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスONLINE〉
第1巻
(2018-09-21発行、978-4757558489)
第2巻
(2019-02-01発行、978-4757560130)
第3巻
(2019-08-01発行、978-4757562387)
第4巻
(2020-02-01発行、978-4757565043)
第5巻
(2020-08-01発行、978-4757567825)
第5巻
(2020-08-01発行、978-4757567832)
第6巻
(2021-03-01発行、978-4757571563)
第7巻
(2021-10-01発行、978-4757575295)
第8巻
(2022-04-01発行、978-4757578821)
第9巻
(2022-12-12発行、978-4757583085)
第10巻
(2022-12-12発行、978-4757583092)







