性別を選べる特殊な世界
性別と恋愛をテーマにしたヒューマンドラマ。一見ふつうの現代日本に見えるが、人間が性別のない状態で生まれ、12歳から14歳にかけて本人の意思で性別を選べる世界を舞台にしている。この特殊な世界観をさまざまな人物の視点から描いており、性別のないまま18歳を迎えた有馬ひなせの成長とともに、幼なじみの高山しおりと加賀りつの恋愛模様が、コメディを交えながら展開される。連載版・コミックスともに、ひなせの瞳の色をはじめ、青色のみがカラー印刷で表現されているのも大きな特徴となっている。
準モナリザ症候群で性別がないままの主人公
性的欲求に乏しく恋愛に対する関心も薄い有馬ひなせは、幼少期から誰に対しても友人以上の感情を持てない、中性的な見た目の高校生。そんなひなせは18歳の春を迎えても無性別のままで、医者から「準モナリザ症候群」と診断される。準モナリザ症候群は仮の病名で、医学的な解明はいまだにされておらず、無性別のまま20歳を迎えた前例がないとされている。そんな中、性分化して男性になった幼なじみの高山しおり、女性になった加賀りつの二人に告白されたのをきっかけに、ひなせの心は大きく揺れ動く。
二人の幼なじみに告白されたことで始まる三角関係
高山しおりと加賀りつに告白されたあとも、三人で過ごすことが多い有馬ひなせは、二人の気持ちにどう応えるかとともに、自らも男女どちらの性別を選ぶのかで思い悩む。そんな中、ひなせ自身の心境や体にもいくつかの変化が起こりつつも、ひなせは物語終盤まで性別を決めることができず、卒業の日は近づいていた。さまざまな出会いや出来事を経て、三人の関係性や無性別者だからこそ生まれる複雑で繊細な人間描写が、本作の見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
有馬 ひなせ (ありま ひなせ)
性別がないまま18歳を迎えた高校3年生。現在も性分化が現れず、性別を持たないままで過ごしている。幼なじみの高山しおりと加賀りつとはクラスメイトでもあり、仲がいい。男子と同じ制服を着用しており、中性的な容姿をしている。一人称は「自分」。クラスで唯一性別のない独特な事情から、体育は男子と女子の授業を交互に受けているが、周囲の男子と比べると小柄なため男子の授業はあまり好きではない。恋愛感情には乏しく、仲のいいしおりとりつにも友達以上の感情は持たず、基本的におとなしい性格をしている。性別がないことにひそかに悩んでいる中、りつに告白され、その直後にしおりからも告白されたのをきっかけに心身共にいくつもの変化が現れ、さまざまな表情を周囲に見せるようになる。性分化に関する診察を受けるため、しおりの兄のあずざのもとへ定期的に通っている。ある日の検診で「準モナリザ症候群」という仮の病名が付けられた。勉強が苦手で、りつと共にテスト勉強は成績のいいしおりに頼り切っている。
加賀 りつ (かが りつ)
高校3年生の女子。テニス部に所属している。有馬ひなせの幼なじみ。灰色のセミロングヘアを編み込み、一つにまとめてシュシュを付けている。愛称は「りっちゃん」。ひなせからは幼なじみの高山しおりに思いを寄せているとカンちがいされていたが、実は以前からひなせに思いを寄せている。ひなせに告白した際に、ひなせを男にしてみせると宣言しているが、そのあとに告白したことを心底後悔していた。幼少期は活発で男勝りな性格だったため、両親をはじめ周囲から男っぽい服や靴などを勧められていた。しかし幼稚園の卒園式の日に、ひなせからはかわいいものが似合うと言われ、ひなせの言葉をきっかけに初めて女性になることを望んだ過去を持つ。ひなせの体にわずかな変化が現れた頃、しおりもひなせに告白していたことを知り、彼とは恋のライバル関係となる。勉強は苦手で、ひなせよりも成績が悪い。
書誌情報
性別「モナリザ」の君へ。 10巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスONLINE〉
第1巻
(2018-09-21発行、 978-4757558489)
第9巻
(2022-12-12発行、 978-4757583085)
第10巻
(2022-12-12発行、 978-4757583092)