あらすじ
清澄は、神戸・舞子のマンションで管理人として働く青年だった。朝6時半に起床し、管理室に出勤する。住み込みで働いているため、通勤時間はたったの10秒。毎朝のゴミ出しをし、清掃・点検や雑務をこなした後は、管理室に座っているだけ。住人との会話もほとんどない。イヤフォンをつけているロングボブの女性だけが、清澄に声をかけてくる。
彼女だけが、唯一挨拶を交わす相手だった。定時になると、清澄は自分の部屋に戻り、PCで音楽を奏でる。清澄は、好きなもの一つあればそれでいいと考えていた。音楽以外は、仕事や部屋など、必要最低限のものだけでよかった。清澄はシンプルなルーティンの中で幸せを感じていた。そんなある日、例のロングボブの女性が管理室を尋ねてきた。
部屋の前の電球が切れているという。尋ねてみると、彼女の部屋は204号室で、自分の真上だった。電球を変えながら、清澄は彼女と、初めて挨拶以外の会話をする。翌日、管理会社の専務からの電話で、清澄の部屋104号室の音楽がうるさいとの苦情を受ける。実は何度めかの苦情であった。「次にまた同じ事があるとクビだ」という専務の言葉に、清澄は頭を抱える。
その後、植木に水をやっていると、204号室の女性が話しかけてきた。104号室に住んでいるのはどんな人かという質問だった。さっきの苦情の事が清澄の頭をよぎる。しかし彼女は、いつも下から聴こえてくる音楽がおしゃれで好きだと言った。「それは自分だ」と名乗りかけた清澄の声は、彼女の「バンドマンと付き合っている」という言葉に遮られた。
一瞬彼女に心を許しかけた清澄だったが、またいつもの無表情に戻った。その夜、清澄はPCで音を出す事も出来ず、死んだようにベッドに横になっていた。部屋のチャイムが鳴ったかと思うと、外から204号室の女性が「今日は音楽をやらないのか」と尋ねてきた。それに反応した清澄の声に、彼女は下の部屋、104号室の住人が、管理人である事に気づく。
彼女は、自分が辛い時に、知らぬ間に清澄の音楽を心の支えにしていたのだ。ドアスコープ越しに見る彼女は泣いていた。付き合っていたバンドマンに遊ばれていたのだという。中に入れて欲しいと彼女が口に出す前に、「帰れよメンヘラ」と、清澄は冷たく言い放つ。「自分は一人でいいのだ」と言い聞かせ、決してドアを開けようとしなかった。
しかし、彼女が204号室に帰った頃合いを見計らって、清澄はPCにキーボードをつなぎ、音楽を演奏する。その直後、ベランダで何か物音がしたと思ったら、窓ガラスが何者かに叩き割られた。そこには両手でフライパンを握りしめた彼女がいた。そして、清澄に向かって微笑みながら「海へ行こう」と誘う。その後、二人は浜辺で自己紹介し合う。
204号室の女性は潮という名前だった。潮は、付き合っていたバンドマンのメールをブロックし、SNSのトーク履歴を削除した。また、二人が写った写真をすべて消去するなど、彼との決別の儀式を行った。清澄は、また音楽を鳴らしてしまったし、ベランダの窓まで割ったので、クビになるに違いなかった。
海に向かって大声で元彼氏を罵る潮を見ながら、これからどうしようかと清澄は悩んだ。後日、案の定仕事をクビになった清澄は、部屋も追い出される事になる。部屋の片付けや業者との交渉を手伝った潮は、清澄と一緒に昼ごはんを買いに出かける。ストリートミュージシャンの姿を見て、潮は清澄に、音楽で飯を食っていきたいのかと尋ねるが、清澄はただ普通に暮らして、音楽を鳴らしたいだけだと答える。
潮は、3日も音を鳴らしていなくて辛いという清澄を、人気のない橋の下に案内した。そこでPCとサンプラーを取り出した清澄は、気持ちよさそうに音を奏でる。潮は、その姿をスマホで動画撮影した。潮は、今まで音楽を聴かせてくれていた事に礼を言い、清澄と別れた。その夜、潮はSNSに清澄の動画をアップした。
翌日、勤め先の古着屋で同僚や先輩達に、昨日の動画の事を尋ねられた。潮がSNSを確認してみると、昨日の動画に1000以上の「いいね」と100以上のリツィート、たくさんのコメントが寄せられていた。驚いた潮は、清澄を探し回る。そして昨日と同じ、橋の下で清澄を見つけた。潮は、清澄にSNSの動画の反応を伝えた。
あっけに取られる清澄を尻目に、潮はオリジナル曲もアップして、もっとバズらせようと顔を輝かせながら言う。そして、自分が清澄の音楽を広めるのだと宣言した。
実写映画
登場人物・キャラクター
清澄 (きよすみ)
21歳の青年。人との関わりを嫌い、音楽だけがあればいいと考え、日々PCで音楽を奏でる。元マンション管理人だが、自分の部屋で奏でていた音楽への苦情と、上の階に住む少女、潮のせいでクビになる。潮に撮影された音楽動画が、SNSで反響を呼び、徐々に生活に変化をきたす。
潮 (うしお)
24歳の女性。古着屋に勤める。ボブカットが特徴。清澄が管理人を務めていたマンションの住人。清澄の部屋の真上に住み、下から聴こえてくる音楽に知らぬ間に癒やされていた。諸事情あり、清澄の部屋のベランダの窓を叩き割り、清澄の管理人解雇の直接のきっかけとなる。清澄の音楽を撮影した動画が、SNSで大反響を呼んだ事で、自分が彼の音楽を世間に広めると意気込む。
書誌情報
バジーノイズ 5巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2018-09-12発行、 978-4098600595)
第2巻
(2019-01-11発行、 978-4098601622)
第3巻
(2019-05-30発行、 978-4098602827)
第4巻
(2019-09-30発行、 978-4098604067)
第5巻
(2020-01-30発行、 978-4098605262)