「怪獣」と呼ばれる、意志を持つ災害
令和X年、日本最南端の沖ノ鳥島に突然現れた巨大生物「怪獣」は、その目的こそ不明ながら、人間を襲って捕食する習性を持っていた。さらに、その巨体にたがわぬ移動スピードと知性を持ち、自衛隊の武力を行使しても対策が困難なことから、現代社会では意志を持つ災害と認識されている。日本政府は、2年前に巨大怪獣「オロチ」の存在を確認して以降、怪獣の対策を最優先事項と考えており、対怪獣用の重火器やドローン、特殊パワードスーツなどの開発を進めている。さらに「怪獣自衛隊」の通称を持つ「特殊災害対策室」(TaPs)を結成し、本格的な怪獣討伐に乗り出す。なお、日本で発見された怪獣には「オロチ」「ヒルコ」など、日本神話の登場人物の名前が付けられている。
強大な怪獣に立ち向かう、二人の主人公
主人公の大和令和と防人このえは、いずれも怪獣発生の原因になったとされる地震および津波の被害に遭い、その経験から自衛隊への入隊を志した。大和は、搭乗していた海上自衛隊の護衛艦「くれづき」がオロチの襲撃を受け、その際に怪獣の声を探知する能力を身につける。だが、この戦いで戦友の小池を失い、怪獣に対する敵意を深めていく。「くれづき」の事件から2年後、防衛大学校を卒業したこのえは祖母と共にクルージングツアーに参加していた。しかし、乗船した客船「富岳」がオロチに攻撃されてしまう。このえは乗客を守りつつ自衛隊の上層部と連絡を取り合いながら、大和の所属する部隊がオロチを倒すきっかけをつくる。のちに二人はTaPs所属となり、大和は作戦参謀として、このえは実働部隊として、お互い苦労を重ねながらも目覚ましい戦果を挙げている。
怪獣を巡る、国同士の政治的駆け引き
怪獣がもたらす災害は、日本のみならず、中国やアメリカなどの大国にも被害を及ぼしている。一方、この新たな脅威の存在をきっかけとして、周辺国との協調や牽制(けんせい)をもくろむ政治家もおり、日本もその陰謀に巻き込まれていく。日本政府は、当初さまざまな国と協調して怪獣に対抗しようと考えていたが、政府の対応の遅さと外交圧力によって怪獣の対処を急ぐ事態となる。また、日本国内でもTaPsの重用に反対する勢力が現れるなど、さまざまな問題が発生し、独自の行動を取らざるを得なくなる。
登場人物・キャラクター
大和 令和 (やまと よしかず)
海上自衛隊に所属している青年。階級は二等海佐。名前の読みが平成の次の年号である「令和」と同じことから「れいわ」のあだ名で呼ばれることもある。かつて発生した津波で父親と弟を失っており、令和自身はその時に謎の声らしき音を聞いたことから、当時から津波は何者かに引き起こされたものではないかと疑っていた。海上自衛隊に所属してからは、ろくに休みも取らずに訓練と津波の調査などに明け暮れており、上官の八雲一からはそのことを危険視されている。やがてあさひ型護衛艦「くれづき」の砲雷長に就任するが、沖ノ鳥島の近海で怪獣と遭遇。そして、反撃すらままならないまま退艦を余儀なくされたうえ、そこで戦友であった小池を失い、自らの無力さを嘆く。その4年後、くれづきの姉妹艦である「あけづき」に引き続き砲雷長として乗り込み、怪獣の攻撃により危機にさらされた防人このえたちが乗っている客船「富岳」の危機を救うために駆け付ける。
防人 このえ (さきもり このえ)
海上自衛隊に配属が決まった女性。年齢は22歳。以前は祖父、祖母と暮らしており、すでに他界した祖父からはかつて軍に所属していたことを誇らしげに聞かされており、このことから軍という存在に強い興味を抱いていた。一方で、祖母からは危険な仕事である自衛官に従事することを反対されている。怪獣が引き起こしたとされる津波の被害に遭い、家の中に閉じ込められた際に自衛官に助けられ、これをきっかけに本格的に自衛隊への道を志すようになる。そして、士官学校を優秀な成績で卒業し、それを祝うために祖母が企画した海上ツアーに出かける。しかし、その際に乗り込んだ客船「富岳」が、かつてあさひ型護衛艦「くれづき」を撃沈させた怪獣に襲われる。乗客が次々と殺害されていく惨事を目の当たりにして心が折れそうになるが、津波から助けられたことを思い出し、今度は自分が助ける番だと奮起する。そんな中、海上幕僚幹部である弘原海に指示され、自衛隊の応援部隊が到着するまでの時間稼ぎを引き受け、「マスターキー」と呼ばれる武器を手に怪獣への反撃を試みる。
クレジット
- 企画協力
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白土 晴一
書誌情報
怪獣自衛隊 16巻 新潮社〈バンチコミックス〉
第1巻
(2020-11-09発行、 978-4107723314)
第2巻
(2020-12-09発行、 978-4107723444)
第3巻
(2021-03-09発行、 978-4107723673)
第8巻
(2022-06-09発行、 978-4107725073)
第9巻
(2022-09-08発行、 978-4107725325)
第10巻
(2022-12-08発行、 978-4107725509)
第11巻
(2023-03-09発行、 978-4107725837)
第12巻
(2023-06-08発行、 978-4107726117)
第13巻
(2023-10-06発行、 978-4107726575)
第14巻
(2024-02-08発行、 978-4107726834)
第15巻
(2024-06-07発行、 978-4107727237)
第16巻
(2024-09-09発行、 978-4107727503)