タコピーの原罪

タコピーの原罪

他者を幸せにすることを生きがいとする異星人のタコピーが、劣悪な家庭環境に翻弄され続けたことで精神を病んだ三人の子供たちを救おうと奔走する。無知ながらも善意で行動するタコピーが、地球とハッピー星の認識の齟齬に苦しみつつも、子供たちのエゴと暴走に巻き込まれ続けるにつれて地球人への理解を深めていく姿を描いたサスペンス。集英社「少年ジャンプ+」で2022年1号(2021年12月10日)から2022年16号(2022年3月25日)にかけて配信された作品。第51回「日本漫画家協会賞」でまんが王国とっとり賞を受賞。「このマンガがすごい!2023」オトコ編で第3位に選出。

正式名称
タコピーの原罪
ふりがな
たこぴーのげんざい
作者
ジャンル
サスペンス
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊2巻
関連商品
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あらすじ

2016年のきみへ

ハッピー星から2016年の地球に渡ってきたタコピーは、おなかをすかせて途方に暮れていたところを久世しずかに助けられる。好奇の目に触れてばかりいたタコピーは、しずかが優しくしてくれたと考えて恩返しを決意するが、しずかはその数日後に自ら命を絶ってしまう。タコピーは、しずかが自殺した理由を探るべく、ハッピーカメラを使って彼女が死ぬ前の時間へとさかのぼる。その先でタコピーは、しずかが学校で酷いいじめに遭っていたことを知る。いじめの首謀者が、しずかのクラスメートである雲母坂まりなだと知ったタコピーは、しずかの幸せのために彼女と仲直りしてもらおうと奔走する。だが、自らの家庭崩壊の元凶がしずかだと考えるまりなのいじめはエスカレートするばかりで、何度時をさかのぼっても望む結果を得られなかった。さらにまりなは、しずかと仲のいい野良犬であるチャッピーを、わざと自分を嚙ませて保健所に送らせるという悪辣な手段に出る。タコピーは、追い詰められるしずかを救うために自ら姿を現し、まりなを止めようとする。しかし加減をしないまま、ハッピーカメラでまりなの後頭部を叩き、即死させてしまう。さらに、この衝撃で思い出カメラが破損し、二度と過去に戻れなくなってしまう。まりなの度重なる暴挙に辟易していたしずかは、彼女が死んだことを喜ぶが、そこに東直樹が現れ、このままではしずかが殺人犯にされる可能性が高いことを示唆する。その結果、思い出ボックスの中にまりなの遺体を入れ、タコピーがへんしんパレットでまりなの姿に変身し、家族に紛れ込んで彼女の死を隠そうとする。しかし、姿かたちをまねるだけでは家族を欺くことはできず、まりなの母親にはすぐに見破られる。彼女の反応に罪悪感を覚えたタコピーは、しずかとあらためて話し合おうとする。そんな中、地質調査に訪れていた集団の手によって、まりなの遺体が発見されてしまう。

2022年のきみへ

雲母坂まりなの遺体が発見されたことは、久世しずか東直樹の耳にも届く。直樹は、思い出ボックスに入れていたことから死亡推定時刻をごまかせたものの、いずれしずかにたどり着くのではないかと苦悩する。一方しずかは、まりなのたくらみによって保健所に送られたチャッピーしずかの父親のことしか頭になく、直樹にまりなの問題を頼り、ついには自分に代わって自首してほしいとまで言い出す。しずかに思いを寄せていた直樹の精神はますます不安定になるが、コンプレックスを抱いていた相手・東潤也から本気で心配されていることを知り、正気を取り戻す。タコピーもまた、しずかとまりなの「死」や、それを取り巻く地球人たちの反応から、彼らの関係や事情について思いを馳せる。そんな中、怪しまれることなく夏休みを迎えたしずかは、タコピーを伴ってしずかの父親のところに顔を出す。だが、しずかの父親にはすでに新しい家族ができており、自分の居場所がどこにもないのだと絶望する。さらにこの影響から、しずかの父親にできた新しい家族がチャッピーを食べたと思い込み、殺害してチャッピーを取り戻すことを望むなど、支離滅裂な発言を繰り返す。ますます不安定になる彼女を前に、タコピーはしずかに会う前の時間軸となる2022年に、高校生になっていたまりなと出会っていたことを思い出す。

2016年のきみたちへ

タコピー久世しずかが遭遇する以前の時間軸となる2022年。ハッピー星から地球に降り立ったタコピーは、雲母坂まりなと出会っていた。まりなの母親から虐待を受けていたまりなは、当初タコピーを邪険に扱っていたが、懲りずに懐こうとする彼に対してやがて親近感を抱く。そんな中、まりなは近所に住む東直樹と交際することになり、母親との関係も好転するかに見えたが、偶然現れた久世しずかに惹かれた直樹から一方的に振られ、それが原因で母親にも罵倒される。そして、勢いあまって母親を死なせてしまった挙句、しずかへの呪詛を吐いて自ら命を絶つ。これを目の当たりにしたタコピーは、しずかを殺害するために大ハッピー時計を使ってタイムスリップするが、ハッピー星の掟を破った罰として、ハッピーママの手で記憶を失う。そして現在、すべてを思い出したタコピーは、かつてのまりなと今のしずかの惨状を目の当たりにしてきたことで、エゴで動いていたのは自分も同じであることを確信し、自己嫌悪に陥る。だが、彼を胡散臭がっていたはずの直樹に、潤也と分かり合えた礼を言われると、自分が行ってきたことが必ずしも悪影響ばかり及ぼしたわけではないことに気づいて立ち直り、あらためてしずか、まりな、直樹が幸せになれる方法を真剣に模索し始める。そして現れたしずかの目の前で、自らの命と引き換えに引き出したハッピー力ハッピーカメラを修復すると、しずかとまりなの両方に、わずかでも懇意にしていた頃の自分の記憶が残るように望みながらタイムスリップの機能を発動させる。過去へ戻ったしずかは、これまでの時間軸と同様にまりなから罵倒されかけるが、そこでまりなは、しずかが無意識のうちに描いていたタコピーの落書きを発見する。それを見た二人は、うっすらと残っていたタコピーの記憶に影響されて泣き崩れ、ついに憎悪の螺旋を断ち切る。それから6年後、家庭に翻弄されながらも交流を続けていたしずかとまりなは、タコピーの記憶のほとんどを失いながらも、彼の望むハッピーに向けて互いに進み続ける。

登場人物・キャラクター

タコピー

タコのような形状をしたオスの異星人。「タコピー」という名前は、それぞれ別の時間軸で久世しずかや雲母坂まりなに付けてもらったあだ名で、正式名称は「んうえいぬkf」。ほかの星の住民たちに幸せを広める目的を果たすために、「ハッピー星」と呼ばれる星から地球にやって来たが、地球に降り立つ以前の記憶があいまいになっており、その理由を思い出すこともできずにいる。他者を幸せにすることに生きがいを感じ、親しい人たちはみんな笑顔であってほしいと本気で願うような、心優しい性格の持ち主。その反面、地球に対する知識がほとんどないことから、地球人にとって突飛だったり空気が読めないと思われるような行動を取ったりすることが多く、出会った人たちからは基本的に見下されている。勢いのままに行動する悪癖もあり、しずかをいじめるまりなを止めるために飛び出したところ、勢いあまって致命傷を与えたこともある。ただし、学習に関する能力や意欲は決して低いわけではなく、地球の言語をおおむね把握し、語尾に「ッピ」と付ける癖を持ちながらも会話自体は不自由なく行える。一方で、悪口やスラングなどはほぼ理解しておらず、まりなから「ごみくそ」と名づけられたそうになった時も、その意味を知らないまま無邪気に喜ぶ。地球に降り立った際、人間とは著しく異なる外見であるために世間から好奇の目を向け続けられ、身を隠しているうちに空腹にさいなまれていたところをしずかに助けられ、彼女を幸せにしようと奮闘する。しずかは家庭に恵まれていなかったことに加えて、学校でもまりなから執拗な嫌がらせを受けて自殺したため、ハッピーカメラを使って記憶を保持したまま時間をさかのぼり、彼女の自殺を防ぐことを当面の目標としている。しかしある日、誤ってハッピーカメラでまりなを殴り殺してしまい、その衝撃でハッピーカメラが破損した結果、過去をさかのぼれなくなる。その後、しずかと出会う前の時間軸で、まりなと共に過ごしていたことや、しずかの存在によって彼女が絶望した記憶を取り戻す。さらに、それを防ぐべく過去に戻ってしずかを殺害しようと思い立ち、大ハッピー時計を使って過去にタイムスリップしようともくろむものの、その矢先にハッピー星の掟を破ったことを咎めたハッピーママに記憶を消されていた事実を思い出す。

久世 しずか (くぜ しずか)

小学4年生の女子。雲母坂まりなや東直樹と同じクラスに在籍している。しずかの母親がネグレクト気味であることに加えて、まりなからはしずかの母親によって家庭を壊されたと恨みを向けられ、執拗ないじめを受けている。そんな辛い日々を過ごす中、なかよくしてくれる大型犬のチャッピーを心の支えにしている。ある日、おなかをすかせて困っていたタコピーを発見し、給食の残りのパンを与えたことで懐かれる。そのお礼として、幸せになるための手伝いを申し出られて、その一環としてほかの誰かとなかよくするためのハッピー道具である仲直りリボンをプレゼントされる。だが、すでに自らを取り巻く環境に絶望しきっていたため、あろうことかなかよしリボンを使って首吊り自殺をしてしまう。これを目撃したタコピーが、ハッピーカメラを使って自殺する前の状態に巻き戻し、自殺はなかったことにされるが、まりなからのいじめや家庭環境はまったく改善されていないため、これらの問題を解決するのがタコピーの当面の目標となる。本来は動物を愛する心優しい性格で、まりなや直樹から邪険にされていたタコピーに対しても最初から友好的に接する。だが、まりなの凄まじい執念による凄絶ないじめや、家族から理解を得られないといった要因が重なり、次第に精神を病んでいく。タコピーがそばにいてくれても、まりなが死んだことで自身がいじめられなくなっても精神が安定することはなく、やがて直樹にまりなを殺害した犯人であることを名乗り出るようにせまったり、しずかの父親や彼と暮らす家族をチャッピーの仇と思い込んで皆殺しにしようとしたりなど、恐ろしい言動が目立ち始める。

雲母坂 まりな (きらざか まりな)

小学4年生の女子。久世しずかや東直樹と同じクラスに在籍している。かつては家族仲がよく、雲母坂まりな自身も両親が大好きだった。だが、父親がしずかの母親が務めるキャバレーに通うようになったことで、両親の夫婦喧嘩が絶えなくなり、やがてまりなの母親から虐待を受けるようになる。このことからしずかを強く憎み、いじめを繰り返すようになる。家庭の凄惨な環境に身を置いているうちに精神が病んでいき、次第に良心のタガが外れていく。その結果、しずかに対する異常なまでの憎悪に加えて、並外れた執念と行動力を持ち合わせるようになり、タコピーがいくら回避しようとしても、しずかにとって最悪の未来をもたらすように動き続ける。さらに、しずかとなかよくしていたチャッピーを罠にかけて保健所送りにしようとするなど、卑劣な手段も平然と行うようになる。だが、その執念が災いして、しずかとの衝突を止めようとしたタコピーにハッピーカメラで殴られ、致命傷を負ってしまう。このことは、無邪気に他者に幸せを与えることだけを考えていたタコピーが、地球人のことを真剣に考える契機となる。さらに、タコピーがしずかに出会う前の時間軸で、高校時代にタコピーと遭遇して懇意になっていたこと、そして直樹と交際するものの、彼がしずかに気移りして破局を迎え、それをまりなの母親に激しくののしられたために絶望したことがのちに判明する。

東 直樹 (あずま なおき)

小学4年生の男子。久世しずかや雲母坂まりなと同じクラスに在籍している。東の母親から、事あるごとに優秀な東潤也と比べられて育ってきたため、やがて兄に対して強いコンプレックスを抱くようになる。さらに、もともと好意を抱いていたしずかがいじめを受けていることで勉強に身が入らなくなり、成績を落として母親から叱責されると、自分はなんの役にも立たないという思い込みにとらわれるようになる。そんな中、タコピーがまりなを死なせてしまった場面を目撃し、しずかから隠蔽を手伝うように懇願され、彼女への思いから加担することになる。良心の呵責とバレることへの恐怖心に苦しめられ、やがて精神を疲弊させていき、しずかにそそのかされたことで潤也が購入した指輪を盗もうとするほどに悪化する。しかし、窃盗を試みたことに気づかれなかったとはいえ、潤也から優しく接されたことで、まりなの死について告白する。さらに、それにショックを受けた潤也がアルバイトを首になり、母親が寝込んだことから自分のしてきたことの重さを思い知り、しずかから距離を置くことを決める。タコピーのことは、事故とはいえまりなを殺害していたことや、彼がその事実になんの感慨も抱いていなかったことから冷たく当たっていた。だが、しずかの差し金とはいえ、潤也の指輪を盗もうとする際に同行してもらってからは好ましく思うようになる。そして、潤也と母親に問題が起こった際は、タコピーに二度と会えなくなると伝えたうえで、自分たちのために頑張ってくれたことに心から感謝した。このことは、しずかやまりなを理解できていなかったために自責の念に苛まれていたタコピーが立ち直るきっかけとなる。

東 潤也 (あずま じゅんや)

高校3年生の男子で、東直樹の兄。努力せずに結果を出せる天才肌で、直樹のコンプレックスの原因となっているが、東の母親からは自慢の息子として大事にされている。ただし東潤也自身は、自らと比較することで直樹を苦しませる母親を快く思っていない。直樹のことを大切に思っているが、彼の苦しみにどう接すればいいかわからず、やがて勉強を蔑ろにしてアルバイトを始めるなど、不真面目な行動を取るようになる。それでも成績は落ちることなく、ますます直樹のコンプレックスを刺激してしまう。だが、直樹から雲母坂まりなの死にかかわって苦しんでいると告白され、母親が病気で倒れるなど、家庭の事情の悪化も相まってアルバイトにも勉強にも身が入らなくなる。やがて店から解雇を宣告され、大学への進学すらも危うくなるが、それでも直樹を憎むことはなく、解雇される前の最後の給料を使って直樹のための眼鏡を買い与える。直樹とはケンカ一つすることはなかったが、タコピーが消滅したあとの時間軸では、ケンカをする代わりに気兼ねなく付き合える良好な関係を築いている。

ハッピーママ

ハッピー星に住むタコピーの母親。タコのような形状をしているが、タコピーとは比較にならないほどの巨体を誇る。タコピーをはじめとしたハッピー星の住人たちが、ほかの星の住民たちを幸せにする行動をサポートしており、タコピーに対しても地球に向かう手助けを行う。だが掟に関しては厳しく、実の息子であるタコピーに対しても、複数回にかけて掟を破った罰として記憶を奪うことで制裁を加えている。ただし消去は完全というわけではなく、のちにタコピーは自力で失った記憶を取り戻す。

しずかの母親 (しずかのははおや)

久世しずかの母親。家族との関係は冷え切っており、しずかの父親と別居中であるうえ、娘のしずかに対してもほぼ育児を放棄している。キャバレーで働いているが、雲母坂まりなの父親から入れ込まれ、高価なプレゼントをいくつももらっている。このことが、まりなの家庭が崩壊した理由の一つとなり、彼女がしずかを執拗に憎む理由につながる。なお、しずかの父親はほかの家族と共に暮らしているが、このことを知っているかどうかは不明。

しずかの父親 (しずかのちちおや)

久世しずかの父親。しずかの母親とは折り合いが悪く、現在は別居している。しずかに慕われており、夏休みに会いに行くのを楽しみにされていた。しかし、しずかの父親自身は別居先で新しい家庭を築いているため、しずかへの興味をすでに失っており、実際に会いに来たしずかに対して他人のような顔をした。このことが、雲母坂まりなからのいじめやしずかの母親の無関心から精神が疲弊しきっていたしずかを、さらなる絶望に突き落とすきっかけとなる。

まりなの母親 (まりなのははおや)

雲母坂まりなの母親。かつては心優しく、まりなからも慕われていた。しかし夫が、しずかの母親が働くキャバレーに通い始めたことで夫婦仲が悪化する。この影響から、過剰なまでに被害者であることを強調し、まりなを自分の思いどおりにしようとしたり、ヒステリックな言動を向けるようになったりするなど、独善的な面が目立つようになる。一方で、へんしんパレットでまりなに成りすましたタコピーを偽物であると見抜くなど、鋭い感性を持つ。

チャッピー

性別不明の野良犬。久世しずかに懐いており、しずかからも心のよりどころとして大事にされていた。しかし、しずかとなかよくしていたという理由だけで、雲母坂まりなから嫌がらせを受けている。いじめに我慢できなくなり、まりなに嚙みついたことで、これを危険視した大人たちによって保健所に送られる。その後、まりなはしずかにチャッピーは死んだに違いないとうそぶくが、実際に死亡したかは明かされていない。なお、タコピーが消滅したあとの時間軸では、まりながしずかと和解したために嫌がらせをされなくなり、彼女に嚙みつくこともなかった。

東の母親 (あずまのははおや)

東直樹と東潤也の母親。しずかの母親やまりなの母親と同じく性格に難があり、何かにつけて優秀な潤也と直樹を比較したがることから、直樹が潤也に対して強烈なコンプレックスを抱くきっかけとなる。そのため、直樹からはもちろん、弟との関係がこじれることを嫌う潤也からも煙たがられている。しかし直樹が、潤也に雲母坂まりなの死にかかわっていることを告白すると、東の母親自身ものちにこれを知り、心労のあまり寝込んでしまう。

場所

ハッピー星 (はっぴーせい)

タコピーの故郷にあたる惑星。ファンシーな外見の建物が特徴で、タコのような形状をした住人たちが暮らしている。ハッピーフルーツなど「ハッピー」が冠された特産物が多く存在する。地球からはるか遠い場所に存在するが、「ハッピー船」と呼ばれる宇宙船を用いることで短時間で行き来することが可能。地球より文明が発展しており、地球では実現不可能な現象を起こすハッピー道具がいくつも開発された。住民たちはほかの星で暮らす人々を幸せにするという使命を担っており、定期的にさまざまな星に派遣されている。任務中はハッピー道具を使うことを許されているが、自分の目の届かない場所で、異星人にハッピーアイテムを使わせてはいけないという掟がある。これを複数回破るとハッピーママの手で、その星にいた頃の記憶を消去されてしまう。

その他キーワード

土星ウサギの声が出るボールペン (どせいうさぎのこえがでるぼーるぺん)

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。名前こそ「ボールペン」と付けられているが、その外見は地球で使われているボールペンとは大きく異なる。キャップの部分に小動物の顔が付いており、それを押すと奇妙な声を発する。ハッピー道具の中では唯一特殊な効果を持たないが、久世しずかや雲母坂まりなには強い印象を植え付けており、タコピーが消滅したあとの時間軸でも、高校生となった二人の記憶にうっすらと残っていた。

ハッピーカメラ

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。見た目はインスタントカメラと変わらず、シャッターを切ることで、内蔵されているハッピー紙に撮影された映像が映し出される。それなりに重く、撮影機能がそこまで充実していないため、久世しずかからは「スマートフォンで撮影した方が手軽ではないか?」と疑問を投げかけられる。しかし真の機能は、撮影した写真をハッピーカメラに読み込ませると、使用者の記憶を保持したまま撮影した時刻にタイムスリップできることだと、のちに判明する。ただし、一度に保存できる写真は一枚だけで、タイムスリップの機能を再び使用するには撮り直す必要がある。タコピーは、優しくしてくれたしずかが自殺すると、その運命を回避するためにハッピーカメラを使って幾度もタイムスリップを繰り返す。だが、いくら努力を重ねてもタコピーが望む結果になることはなく、ついには自らの手でまりなを止めようとするタコピーが勢いあまって、この道具を使ってまりなの頭を殴りつけたために死なせてしまう。さらに、その衝撃で破損し、使用不能となる。

パタパタつばさ

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。名前どおり一対の翼のような形状をしており、身につけることで自在に空を飛ぶことができる。ただし、ハッピー星の住人に合わせて作られているため、地球人が身につけるとたちまちバッテリーが切れてしまう。久世しずかにそそのかされた東直樹が、タコピーと共に東潤也の購入した指輪を奪う際に見つかりそうになり、窓の外に逃げ出すために用いられる。そして、潤也に見つからずに窓から抜け出せたものの、バッテリー切れの弊害で直樹が空から落ちかけるが、タコピーが支えたことで事なきを得る。

へんしんパレット

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。星のマークがあしらわれたパレットのような形状の道具で、髪の毛などの体組織を入れたうえでスイッチを押すことで、その体組織の持ち主に変身できる。ただし、姿を変えられるだけで記憶や性格は継承されないため、成り済ましのために用いるには不適切な道具といえる。タコピーが雲母坂まりなを死なせてしまった際に利用され、まりなを装ったタコピーが彼女の家に潜入し、生きているように振る舞う計画が立てられる。だが、しゃべり方や性格の違いから、まりなの母親に偽物であることを見抜かれたうえ、地質調査員たちに本物のまりなの遺体が発見されたことで計画は失敗に終わる。

お花ピン (おはなぴん)

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。「ハッピー花」と呼ばれる花をあしらったヘアピンのような形状をしている。本来はハッピー星でのサプライズパーティに使うためのもので、頭に挿すことでハッピー花に擬態することができる。自らの姿を変化させるという意味ではへんしんパレットに似ているが、周囲から見つかりにくくなることから、姿を隠す目的としてはこちらの方が適している。タコピーが久世しずかの様子や事情を知るために、学校に忍び込むために使用される。ただし、身につけるといっさい動けなくなるので、使用しているあいだはしずかの手でひそかに教室まで運ばれていた。なお、ハッピー花はドクダミに似ているため、これを付けたタコピーを運んでいた久世しずかは、周りからドクダミの花飾りを付けているとカンちがいされる。

仲直りリボン (なかなおりりぼん)

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。ピンク色のリボンのような形状をしており、無限に伸ばすことができる。リボンの端を二人の小指に巻き付けることで仲直りできるという効果を持つ。久世しずかが雲母坂まりなに憎まれていることを知ったタコピーが、二人を仲直りさせるべくしずかに手渡す。だが、本来の役割を果たすことはなく、すべてに絶望しきったしずかによって、首つり自殺をするために用いられてしまう。これを知ったタコピーがハッピーカメラでタイムスリップを行うことで、自殺はなかったことにされるが、「持ち主の目の届かないところで、異星人にハッピー道具を使わせてはならない」という掟が破られた結果自体は覆せなかった。

思い出ボックス (おもいでぼっくす)

ハッピー星で開発されたハッピー道具の一つ。蓋が透けたカプセルのような形状をしており、中に入れたものをそのままの状態で保存できる。ふだんは手のひらに収まる程度のサイズだが、備え付けられているボタンを操作することで地球人を一人収容できるほどまで巨大化する。タコピーが雲母坂まりなを殺してしまったことを隠ぺいするため、彼女の遺体を入れて地面に埋められる。のちに地質の調査をするために訪れた一団に発見されるが、まりなが死亡した直後に入れられたことから、死亡推定時刻をごまかすことに成功する。

大ハッピー時計 (だいはっぴーどけい)

ハッピー星に存在する時計台。大ハッピー時計に入ることで、望む過去にタイムスリップできる。機能自体はハッピーカメラと似ているが、無条件に好きな時間に移動できる一方で、携帯できないため、使用するにはハッピー星に帰る必要があるなどの相違点がある。なお、本来は記憶を保持したままタイムスリップできるが、タコピーが使おうとした時は、掟を幾度か破っていたことを咎めようとするハッピーママに反発しており、入る直前に記憶を奪われる。そのため、しずかの殺害という本来の目的を完全に忘れ、逆に彼女を救うために動く羽目になる。

ハッピーフルーツ

ハッピー星で栽培されている、果物の一つ。地球でいうナスに近い形状をしており、果肉の部分に星のような模様が刻まれている。タコピーが久世しずかにハッピー星の説明をした時に名物として挙げており、しずかは実物を見たことこそないものの、タコピーから解説された時に強く記憶に焼き付いたようで、東直樹にタコピーの説明を行う際、ハッピーフルーツの存在について言及する。

ハッピー紙 (はっぴーし)

ハッピー星で使用されている紙。用途は幅広く、ハッピーカメラの現像用紙などにも利用されている。また、ハッピー星の住人同士がケンカをするときは、相手の持つハッピー紙を隠すという行為が行われるが、これは相手を嫌悪するためではなく、相手の気を引いて仲直りをするきっかけをつくるためである。

ハッピー道具 (はっぴーどうぐ)

ハッピー星の住人たちが広く用いている、不思議な道具の総称。パタパタつばさのような移動を補助するものや、お花ピン、へんしんパレットといった使用者の姿を変えるもの、ハッピーカメラなどのタイムスリップを実現するものなど、多種多様なハッピー道具が開発されている。中には、土星ウサギの声が出るボールペンのように特殊な効果を持たないハッピー道具も存在する。なお、ハッピー星の住人が使用することを前提として開発されているため、地球人が使用した場合、不具合を起こす場合もある。また、ハッピー星の住人の目の届かないところで、異星人にハッピー道具を使わせてはならないという掟があり、これが何度も破られると、持ち主にペナルティが発生する。

ハッピー力 (はっぴーりょく)

ハッピー星の住人がからだの中に秘めている生命力の総称。生きていくために必須となっており、からだの中にあるハッピー力が尽きると、光の粒になって消滅してしまう。ハッピー道具の動力としても用いられており、故障したハッピー道具にハッピー力を注いで無理やり動かすことも可能。ただし、これは本来の使い方ではなく、最悪の場合持ち主が死亡する危険もある。

書誌情報

タコピーの原罪 2巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2022-03-04発行、 978-4088830490)

第2巻

(2022-04-04発行、 978-4088831046)

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