怪病医ラムネ

怪病医ラムネ

奇病と怪奇現象の中間にある不思議な病気「怪病」に悩まされる患者を助けるため、怪病を専門に診察する怪病医のラムネが、怪具を用いて患者の心と症状を治療していく姿を描いた医療ファンタジー。「月刊少年シリウス」2017年11月号から2018年9月号にかけて掲載されたのち、「マガジンポケット」で2018年12月21日から配信の作品。

正式名称
怪病医ラムネ
ふりがな
かいびょういらむね
作者
ジャンル
オカルト
 
和風ファンタジー
レーベル
シリウスKC(講談社)
巻数
既刊5巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

一見すると医者とは思えない風体の青年ラムネは、奇病と怪奇現象の中間にある不思議な病気「怪病」を専門に治療する医者だった。そのラムネのもとに、涙の代わりに目からマヨネーズなどの調味料があふれ出す怪病を患った少女のを連れて、弟子のクロが訪れる。人気子役として演技で涙を流すことの多い琴は、いつの間にか本当の涙を出す方法を忘れてしまったという。その話を聞いたラムネは、ある二つの怪具を処方する。(エピソード「カルテ1:調味料の涙」)

ラムネクロのもとに、総合病院から紹介されたという女子大学生の由美が訪れる。足裏から二枚の板状のものが隆起して、下駄のようになる怪病を患っている由美は、その理由を「付き合っている彼氏が女性にモテることがストレスになっている」とラムネに話す。しかし原因がそこにないことを見抜いたラムネは、あえて治療に効果のない怪具秋扇」を処方する。(エピソード「カルテ5:下駄の足裏・前編」)

理央と優の母親の耳が餃子になる怪病の治療をするため、ラムネ理央怪具夜声真珠」を渡す。理央の兄である優は、誘拐殺人事件で故人となっていたが、理央と優の母親はその事実を受け止めようとせず、現実を知らせる言葉すべてを耳に付いた餃子の中に閉じ込めてしまっていたのだ。理央はその治療に協力すべく決意を固めるが、優の死の原因が自分にあると考え、強い責任を感じていた。(エピソード「カルテ11:餃子の耳・2」)

ある日、怪具店「あかつき」を紅葉が訪ねてきた。怪具の鬼才作家と知られるレネットの遺作である「怪廻迷宮」への招待状を携えていた紅葉は、彩芽丹己を連れてレネットの自宅へと向かう。紅葉はそこで弟子のラムネと再会するが、ラムネが患者に肩入れするあまりケガをして入院していたという話を聞き、怒りをあらわにする。(エピソード「カルテ19:怪廻迷宮・1」)

メディアミックス

TVアニメ

2021年1月から、本作『怪病医ラムネ』のTVアニメ版『怪病医ラムネ』が、TOKYO MX、AT-Xほかで放送された。オリジナル要素は少なく、原作に忠実な内容となっている。キャストは、ラムネを内田雄馬、クロを永塚拓馬が演じている。

登場人物・キャラクター

ラムネ

怪病を専門に診る医者の青年。神社の一角にある蔵を診療所として使用している。金髪で金色の瞳を持ち、つねに浴衣を身につけている。一目惚れ癖があり、許容範囲である年齢の女性にはすぐに好意を抱く。しかし、恋人の存在の有無を聞き出す勇気がないため、クロに偵察させることが多い。患者に対しては親身に話を聞き、非常に心の距離が近い状態で治療を行っている。しかし患者を思う気持ちが強いことから、一刻も早く完治させるために荒療治を施すケースが多く、クロからは手段が乱暴すぎる点を心配されている。クロからは「先生」、丹己からは「ラムちゃん」と呼ばれている。

クロ

ラムネの弟子で、助手も務めている男子中学生。黒髪で黒の学ランを身につけ、無愛想で感情の起伏がほとんどない。実家が武術道場のために武術の心得があり、運動神経抜群でバック転も難なくこなす。声変わりはしているものの、身長が低いために小学生にまちがわれることが多く、指摘されると不機嫌になる。つねに冷静沈着で、動揺することはほとんどなく、とっさの場面でも的確な判断を下すことができる。ただしラムネに危機が及んだ場合や、ラムネが自らの命よりも患者を優先した場合には激怒することもある。本名は「黒森悠流」で、青菜春からは「黒ピー」と呼ばれている。

彩芽 (あやめ)

怪具店「あかつき」の店主を務める小学生の少女。紫髪のショートカットで、右側頭部に大きな鈴をつけている。103歳まで店主をしていたが、記憶を持ったまま転生し、小学生になった現在も店主を務めている。怪具を制作することができ、怪具の恐ろしさも熟知している。ラムネからは「ばあちゃん」と呼ばれている。

丹己 (にこ)

怪具店「あかつき」で店員として働く青年。金髪をショートカットにしている。「2525MAN」と書かれたエプロンを身につけ、つねに笑顔を浮かべている。全盲だが視覚以外のすべての感覚がずば抜けており、常人では見ることができない存在をも知覚することができる。しかし、怪具の扱いにまだ慣れておらず、半人前であることを自覚しているため、怪具の売り買いは彩芽に任せている。転生前の彩芽の曾孫でもある。ラムネとは旧知の仲で、「ニコ兄」と呼ばれている。

紅葉 (もみじ)

ラムネの師匠である男性。ウエーブがかった黒髪をセンター分けにし、紅葉柄の羽織を着た袴姿をしている。すれ違った通行人が男女問わずに振り返るほどの美形だが、重度の方向音痴。ラムネが患者に親身になりすぎるあまり負傷することを快く思っておらず、患者とは適切な距離感を保つことが大切だと諭している。つねに尊大な態度を見せており、気に入らない人間には羽織に仕込んだSM道具を使用してサディスティックな行為も行うが、ラムネからは絶大の信頼を得ている。ラムネからは「師匠」と呼ばれている。

(こと)

人気子役の少女。長い茶髪をツインテールにしている。目から涙の代わりに各種調味料があふれ出す怪病を患い、ラムネの診療所を受診した。所見で琴の母親から演技以外の感情を抑制されたと診断され、「本当のことしか話せなくなる急須」と「つけたときだけ調味料を止めてくれるコンタクトレンズ」の二つの怪具を処方された。

琴の母親 (ことのははおや)

琴の母親。ウエーブがかった茶髪のミディアムヘアで、たくさんの服飾品を身につけている。最初は琴のオーディションの合格を手料理で祝うなど、優しい母親だった。しかし、琴が人気者になるにつれて浪費が多くなり、琴にはコンビニ弁当ばかりを食べさせてネグレクト気味になっている。

健吾 (けんご)

筋肉質で体格のいい青年。茶髪の前髪をカチューシャでオールバックにしている。陰茎が竹輪になってしまう怪病を患い、ラムネの診療所を受診した。七人の女性と肉体関係にあるため、一時的にでも症状を隠すことを願い、陰茎を通常のものに見せる怪具「嘘で隠せる風呂敷」を処方された。しかし乱用した結果、竹輪が腐って痛みを発し始めたため、再診を受けに診療所を訪れる。

隆晴 (たかはる)

ぶ厚いレンズの入った黒ぶち眼鏡を掛けた男子高校生。黒髪の前髪を長く伸ばしている。爪が唐辛子になる怪病を患い、ラムネの診療所を受診した。所見で自分でその原因に気づいていると診断され、非常に扱いが難しいといわれる怪具「嚢中の爪錐」を処方された。素顔は見た女子が群がるほどの美形で、非常に頭もよく、陸上競技会で優勝するほどに足も速い。しかし幼なじみの豊後を立てるため、自ら地味で暗いキャラを装い、部活動にも参加しない日陰者に徹しようとしている。

豊後 (ぶんご)

黒髪で爽やかな雰囲気を漂わせた男子高校生で、隆晴の幼なじみ。陸上部で期待されるスプリンターで成績もよく、美形であることから男女問わずに人気がある。しかし、中学校までは隆晴に勝てるものは何一つなく、隆晴をライバルとして意識していた。現在は隆晴がわざと手を抜いていることに気づいており、歯がゆい思いをしている。

由美 (ゆみ)

金髪をショートボブにした女子大学生。足裏から二本の板のようなものが隆起して下駄のようになる怪病を患い、ラムネの診療所を受診した。健吾が肉体関係を持っていた女性の一人であり、健吾が自分以外の女性とも関係していると気づき、健吾とほかの女性の縁を切ることを願って怪具「秋扇」を処方してもらった。女性にしては高身長で、ヒールのある靴をはくと健吾を見下ろすことになり、健吾を不機嫌にさせてしまうので控えている。

りん

黒髪のロングヘアをワンレンにした女子大学生で、由美の親友。由美に感情移入して涙したり、由美にひどい仕打ちをする相手に面と向かって怒ったりするなど、友達思いの人物。由美が健吾との恋愛に悩んでいることに気づいており、なんとか由美を支えたいと考えている。

空き巣の男 (あきすのおとこ)

空き巣を繰り返している男性。筋肉質な体型で、ベリーショートの髪を金と黒に染め分けている。空き巣をする中で怪具「猫蒲の穂」を入手し、猫蒲の穂にあやつられていた。しかしわずかに自我が残っており、ラムネに助けてほしいと願っている。

理央 (りお)

優の弟で、茶髪を横分けにした幼稚園児くらいの男児。いつも優と肉まんを分けて食べることを嫌い、優さえいなければすべて自分のものになるのにと不満を抱いていた。そのことが優を誘拐殺人に巻き込んだ発端だと思い込み、自責の念にとらわれている。理央と優の母親の耳に付いた餃子を取るため、怪具「夜声真珠」を渡された。

(ゆう)

理央の兄で、茶髪をセンター分けにした小学校低学年くらいの男児。誘拐殺人事件に遭ってすでに故人だが、理央と優の母親には幻覚となって見えており、声も聞こえている。理央のために肉まんを買いに行った先で事件に巻き込まれる。

理央と優の母親 (りおとゆうのははおや)

理央と優の母親で、ミディアム丈の茶髪をセンター分けにしている。両耳が餃子になる怪病を患い、ラムネの診療所を受診した。また、実在しているかのように知覚する「真性幻覚」を患っており、すでに亡くなっている優の姿や言葉を見聞きしている。ほとんどの言葉は聞こえているが、優の死亡にまつわる発言や、優の幻覚を見ている事実に抵触する言葉は餃子に包まれて聞こえず、特に理央の言葉はすべて聞こえない。

青菜 春 (あおな しゅん)

クロのクラスメートの男子中学生。薄水色の髪を3か所、目玉の付いたヘアゴムでまとめている。独特な思想の持ち主で、話す内容が要領を得ない。しかし芸術面は秀でており、美術のコンクールはすべて優勝、校内で開いた個展にはファンが詰めかけるほどの人気となっている。ケガをしたラムネが退院する際に病院で出会った。頭からポップコーンが飛び出す怪病を患うが、その理由がわからず悩んでいた。

春の父親 (しゅんのちちおや)

青菜春の父親。まゆ毛を剃り落とした強面の男性で、会社を経営している。春を溺愛しているが、自分が経営している会社を継がせるために春の創作活動を禁止し、経営を学ばせようとしている。

レネット

「怪具の鬼才作家」と評される謎の人物。怪廻迷宮の内部に飾られている自画像では、近世ヨーロッパの王族のようなパフスリーブの男性装束を身につけ、頭部は中央に菱形の宝石が付いたリンゴとなっている。怪廻迷宮を作り出した人物で、死後、怪具にかかわっているさまざまな人間に怪廻迷宮への招待状を送付した。ガラスペンを愛用しており、息絶える瞬間もにぎり続けていたとされる。

場所

あかつき

ラムネが贔屓にしている怪具店。店主は彩芽が務め、丹己が店員として働いている。店の表側では駄菓子や骨董品を売っているが、扉をくぐった先で怪具を扱っている。人間をあやつるような危険な怪具は、彩芽しか手にできないように奥の扉の中に保管してあるが、それ以外の物はさほど厳重ではなく、ふつうの骨董品店とまちがえた空き巣に持ち出されたこともある。

怪廻迷宮 (かいかいめいきゅう)

レネットの遺作とされる「怪具」。満月の夜にしか開かない迷宮で、そこに隠されたレネットの遺骨を発見した者には宝物が授けられるといわれている。レネットの自宅内部に置かれている冷蔵庫が入り口となっており、内部にはスマホやカメラ、怪具の持ち込みが禁じられている。怪廻迷宮の中に入ると挑戦者それぞれに丸い蝋燭が灯され、その火が灯っているあいだにさまざまな難問を解き、鍵を七つ集めなければならない。また、遺骨が発見されれば怪廻迷宮は崩れ去るように設定されている。

その他キーワード

怪病 (かいびょう)

奇病と怪奇現象の中間にあるような症状。心が弱っていたり強いストレスを感じていたりする人間に「怪」と呼ばれるものが取り憑いて引き起こされる。症状と心因が関係していることが多く、ストレスの原因を解決することで快方に向かう場合が多い。

怪具 (かいぐ)

怪病を治療するために使用する道具。怪具店「あかつき」で購入することができる。怪と呼ばれるものが物に寄生して怪具になる場合と、怪病を治す過程で患者の体から採取したものを組み合わせて作る場合の2パターンが存在する。中には非常に危険な怪具もあるため、誰にでも扱えるわけではない。

障子目 (しょうじめ)

ラムネが患者の診察後に使用する、カード大の障子の怪具。二枚組になっており、一枚には目が描かれ、もう一枚には目の形の穴があいている。目の描かれた障子を患者に付けることで、そこから見える景色や音をもう一枚の障子から覗き見ることができる。

嚢中の爪錐 (のうちゅうのつめきり)

大きな目の付いた和布袋におさめられた錐の怪具。力は強いが気位が高く、非常に面食いでより好みが激しい。風采が立派で美しく、優れた知性と品性を持ち、内に高い才能を備えた男性しか使用することができない。また、ラムネも使いこなすことができない。

秋扇 (あきおうぎ)

一見するとふつうの扇だが、秋扇であおぐと男女の縁を切ることができる怪具。しかし秋扇を開くためには、使用者自身につながる縁を複数切る必要がある。使用者の縁を切るごとに秋扇が少しずつ開き、すべて開いた状態であおぐと他人の縁を一つ切ることができる。また、縁の深さと扇が開く幅は比例しており、浅い縁を複数切っても扇が全開にならないこともある。

猫蒲の穂 (ねこがまのほ)

一つ目の猫の頭が付いた、猫の尻尾のような形の怪具。猫蒲の穂を口にくわえると、誰にも姿が見えなくなる。しかし代償として使用者自身の存在感を失い、使いすぎると猫蒲の穂をくわえていないときも他人から認知されなくなってしまう。空き巣の男をあやつり、その存在感を食おうとしていた。

夜声真珠 (よごえしんじゅ)

二つ一組となった巻き貝のような形の怪具。愛し合った男女でなければ使用できないもので、離れた場所にいる男女が言葉を交わすことができる。ただし、話すほどに相手の貝の中にある真珠が膨らみ、互いの声を奪っていく。やがて互いの声がすべて消えるまで育った真珠を二人で食べることで、永遠の愛を誓える。

書誌情報

怪病医ラムネ 5巻 講談社〈シリウスKC〉

第1巻

(2018-04-09発行、 978-4065110478)

第2巻

(2018-09-07発行、 978-4065126608)

第3巻

(2019-08-08発行、 978-4065168608)

第4巻

(2020-12-09発行、 978-4065215760)

第5巻

(2021-03-09発行、 978-4065226117)

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