東京千夜一夜

東京千夜一夜

東京を舞台に、中年男性が抱える悲哀を繊細に綴った人間ドラマ。一話完結のオムニバス形式で描かれる。

正式名称
東京千夜一夜
ふりがな
とうきょうせんやいちや
作者
ジャンル
不倫
関連商品
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あらすじ

42歳の冒険(上巻)

何事にも億劫になったと感じる42歳の関口文明は、子供の幼稚園の先生、中村ひとえに一目惚れする。口実を作ってひとえを呼び出した関口は、ついうろたえて告白してしまう。その後、イメチェンを図って少し自信をつけた関口は、再び彼女を呼び出す。すると、ひとえから「飲みに連れて行って」とせがまれ、デートを重ねることになる。夏が終わる頃、ひとえと一夜を共にした関口は、今までにない幸福感を嚙みしめる。ところがそんな中、ひとえは結婚のため田舎に帰ってしまうのだった。

危険な関係(上巻)

40歳を目前に控えた妻帯者の山岸は、友人の久藤から、人妻、寺泊直子を紹介される。山岸は彼女の美しさに危険な香りを感じつつもベットを共にするが、直子が不感症であると発覚する。しばらくして、直子は離婚。山岸は再び彼女を誘うが、交際を拒まれてしまう。それから半年後、山岸は直子から、51歳の男性と性的な関係抜きで結婚すると告げられる。それから何年か経ち、山岸は未亡人になった直子と付き合うようになる。しかし、子供が欲しいと願う直子には、子作り以外のSEXを拒まれていた。

天気雨(上巻)

冴えないサラリーマンの菊地三郎は、妻が出産で入院したため、妻の妹、淳子に身の回りの世話をしてもらうことになる。女子大学生の淳子にすっかり魅了された三郎だったが、オジサン化していく自分の人生において、無我夢中でSEXする機会などもうないのだと自戒する。そんな中、三郎は淳子との最後の夜に食事に出かけることとなる。

かわいい女(上巻)

山咲吾郎は、遊び人ながら、女性には誠心誠意尽くすことを信条としている。吾郎は、家庭や仕事にも恵まれて順風満帆な中、さらに自分にとって過去最高のいい女である亜紀という浮気相手と出会う。しかし、熱望していた亜紀との性関係には高ぶることがなく、山咲は絶望的な気分になる。そんな中、山咲は毎朝バス停で出会う女子高校生、沙織にいつしか心を動かされていく。熱病のような気持ちが抑えられなくなった山咲は、思い切って彼女を映画に誘うが、その一方で、おざなりにしていた亜紀からは、愛想をつかされてしまう。2度目のデートでホテルについて来た沙織は、山咲に金を要求し、会う度に要求金額は上がっていくのだった。山咲は、間違った夢を追ってしまったと、やっと気づくのだった。

フルハウス(下巻)

等々力つとむは、原宿に10億以上の価値のある家を所有していた。ある日彼は、妻の等々力永子から離婚を切り出される。つとむはしぶしぶ離婚に応じるが、永子は新たな結婚相手の川内と2階に住むと言い出す。精神的に追いつめられたつとむは、女子大生パブに勤める奈美と親しくなり、つとむのフィアンセを装う彼女と共に、1階で暮らし始める。そんなある日、自宅に戻ったつとむは、奈美と川内が不倫していたと、永子から聞かされるのだった。

漠(下巻)

平凡なサラリーマン課長の岡田は、今後の人生に漠然とした不安を抱えていた。そんな彼は接待時、地主の小田を殴って失神させ、その場から逃げ出してしまう。夜の街を徘徊していた岡田は、ひょんなことから女子大生のアパートに招かれる。翌朝、昨夜の失敗を悔やんでいる姿を、「だだっ子」みたいだと彼女に笑われてしまう。平凡な幸福に縛られていた人生を送っていることに気づかされた岡田は、スッキリした気分で出勤。そこで、ボクシング経験者の小田が、岡田のパンチを絶賛していたことを知る。

三流ボクサー(下巻)

高校の同級会に出席した三流ボクサーの高橋修は、初恋の相手、中野葉子と再会するが、彼女は東大卒の銀行マン、加山との結婚を控えていた。アルバイト仲間の順子からは、修がボクシングを続ける目的がないように見えると言われ、トレーナーには引退をほのめかされる中、修は加山が葉子とは違う女性と歩く姿を目撃する。それ以降、葉子は修の試合を応援に来るようになる。彼女の応援を受けて試合に勝ち続けた修は、ついに日本ランキング3位の選手にも勝利。その勝利を機に意を決して葉子に告白するものの、振られてしまう。日本タイトル戦を目前に、ボクシングを続ける目的を失った修は引退を考えるが、そんな彼に順子は、日本チャンピオンになってから止めればいいと背中を押すのだった。

夜明けのパンク(下巻)

原宿の竹下通りでアクセサリーを売っている自称「パンク野郎」の青年は、銀行員だという中年男性に、「今日会社を無断欠勤した」と話しかけられる。蒸発するしかないと落ち込む銀行員は、パンク野郎のアパートに泊めてもらい、飲めない酒を勧められる。朝方、銀行員は寝癖で見事なパンクヘアになっていた。その姿を見たパンク野郎は、「セブンイレブン社員(7時から11時まで働く社員)」の彼らこそが真のパンクだと力説。季節が変わる頃、原宿支店の支店長にまで昇進した銀行員は、当時のお礼を言うためパンク野郎のもとを訪れる。そんな銀行員に対し、悩んだ時にこれを見ろと、パンク野郎はある写真を渡すのだった。

登場人物・キャラクター

関口 文明

エピソード「42歳の冒険」に登場する。サラリーマン課長の冴えない男性。年齢は42歳。妻と2人の子供がいるが、何事にもやる気が起きず、無気力に陥っていた。気が弱く、おどおどしたところがあるが、突然大胆な行動に出ることもある。子供の幼稚園の先生、中村ひとえに恋をして、10代の頃のようなときめきを感じるようになる。ひとえとの恋を経て、少しでも見栄えを良くしたいと、髪型を変えたりして、恋愛に積極的な中年男性に変貌していく。

山岸

エピソード「危険な関係」に登場する。40歳を目前に控えた男性。妻と2人の子供を持つ。最近、捉えどころのない寂しさに襲われるようになっており、久藤からの紹介を受けて、寺泊直子と会った。慎重な性格だが、一度関係を持ったあとは、直子の不感症の体が忘れられなくなり、そっけない彼女に執着し、振り回されるようになる。

菊地 三郎

エピソード「天気雨」に登場する。冴えないサラリーマンの男性。年齢は36歳。妻の菊地厚子とのあいだに初めての子供が生まれる。これを、どことなく他人事のように感じつつ、これから背負う重荷に少し怯えている。妻の入院中に家事のアルバイトにやって来た妻の妹、淳子の若さに魅了され、彼女とのあれこれを夢想して楽しんだり、オジサン化する自分と願望とのギャップに落ち込んだりと、忙しい日々を送っている。

山咲 吾郎

エピソード「かわいい女」に登場する。税理士の男性。年齢は40歳。妻との間に2人の子供がいる。時間と金の許す限り、女性に尽くすことを信条としている不良中年。最高の女と見なしていた不倫相手の亜紀と寝ても、どこか冷めている自分に絶望していた時、女子高校生の沙織に出会って夢中になる。しかし沙織の本性を知り、亜紀にも捨て去られ、屈折した薄ら笑いを浮かべる男に落ちぶれてしまう。

等々力 つとむ

エピソード「フルハウス」に登場する。普通のサラリーマンの男性。原宿に自分の育った家を持っている。優柔不断な性格で、妻の等々力永子に離婚を切り出され、「5億円払うから家を出ていってほしい」という提案に心を揺らしながら、自宅に愛着があって中々決断できずにいる。一方で、本来自分の生家である場所に居づらくなったことに複雑な気持ちを抱えている。 家庭的な山田久美と関係を持つが、彼女には物足りなさを感じる薄情な一面もある。

岡田

エピソード「漠」に登場する。マンション建設会社で課長を務める男性。年齢は43歳。小太りな体型で眼鏡をかけている。郊外の一軒家に住んでおり、妻との間に2人の息子がいる。マンション用地の買い取り業務に従事しているが、接待の席で横暴な地主の小田を殴って失神させてしまう。そのまま蒸発してしまおうと思った小心者だが、女子大生に色々な意味で救われることとなる。 女子大生の不用心を説教するオジサンぽい真面目な性格。

高橋 修

エピソード「三流ボクサー」に登場する。ジュニア・ウェルター級のボクサーの男性。年齢は26歳。リングネームは「ジョー力石」。デビューから7年が経つが、日本ランカートップ10にも入っていない三流ボクサー。高校3年生の時、中野葉子に振られてしまい、ボクシングを始めた。未だに中野にこだわっている煮え切らない性格。のちに、順子に背中を押されて日本タイトルに挑戦し、連打とスタミナを武器に日本チャンピオンとなり、順子と結婚する。

パンク野郎 (ぱんくやろう)

エピソード「夜明けのパンク」に登場する。原宿の竹下通りでアクセサリーなどの小物を販売している青年。自分について話すのが嫌いな性格で、そのためミュージシャンを目指している様子。パンクファッションに身を包んでいるが、仕事には真面目に取り組んでいる。なんとなく自分を頼りにしているような銀行員をアパートに泊めたり、酒を勧めたりと、実は親切で優しい人物。

中村 ひとえ

エピソード「42歳の冒険」に登場する。関口文明の子供が通う幼稚園の先生。ロングヘアの美人で、健康的な色気がある女性。関口から突然告白されたものの、それを自ら後悔して「みすぼらしい中年の恋は自分で消化します」と撤回した彼の正直さに好感を持つ。自分から「飲みに連れて行ってください」と、積極的に誘い関口を距離を縮めていくが、結婚のため、関口に黙って帰郷してしまう。

村田

エピソード「42歳の冒険」に登場する。関口文明の部下の若い女性。関口が髪型を変える際にアドバイスを送った。関口の雰囲気が変わり、見栄えがよくなっていく姿を身近で見ており、「素敵になった」と発言するなど、関口に好感を持っていた。中村ひとえとの別れの傷が癒えたあとの関口と、付き合うようになる。

寺泊 直子 (てらどまり)

エピソード「危険な関係」に登場する。美貌も教養もある女性。年齢は26歳。5歳上のサラリーマンと結婚している時に、久藤を介して山岸と出会う。のちに離婚し、51歳の会計士と性関係抜きの再婚をしたものの、間もなく死別。離婚や再婚の際に、山岸を呼び出してたびたび性関係を持ち、継続的に付き合ったあとに子供を2人もうけた。 その後、時々訪ねて来られるのが子供のために一番よくないと、山岸を切り捨てる。ちなみに会計士の夫が亡くなって、まとまった額の遺産を手にしている。旧姓は「椿」。

久藤

エピソード「危険な関係」に登場する。山岸の学生時代からの友人の男性。遊び人で、人妻と女子大学生と付き合っている。「一度しかない人生、せいぜい楽しまなきゃ」というのが口癖で、付き合っている人妻の友達である寺泊直子を山岸に紹介した。のちに人妻の夫に腹を刺されて入院する。女性関係はおさまらなかったが、40代半ばで体力の衰えを自覚すると共に、女性への興味を失う。

淳子

エピソード「天気雨」に登場する。菊地三郎の妻、厚子の妹。明るい性格のチャーミングな女子大学生。厚子の入院中、三郎の家で家事のアルバイトをすることになった。アルバイトが最後の夜に三郎と外食した際、酔っ払って三郎に抱きつくなど、不用心で思わせぶりな素振りを見せる。

沙織

エピソード「かわいい女」に登場する。可愛い顔をした高校3年生の女子。山咲吾郎の顧客の娘。毎朝バス停で会う山咲に誘われ、デートに応じる。実はホテルにも簡単について行き、体を提供する代わりに金銭を要求することに慣れている、あばずれ娘だと判明する。

亜紀

エピソード「かわいい女」に登場する。山咲吾郎の愛人でロングヘアの美人。過去の浮気相手の中で一番レベルが高いと、山咲が絶賛するほどのいい女。女子高校生の沙織に夢中になっている山咲が、いつも上の空なので、別れを切り出す。山咲と付き合うまでは男性経験がまったくなかった真面目な人物。

等々力 永子

エピソード「フルハウス」に登場する。靴のファッションメーカーでデザイナーを務める女性。年齢は28歳。自称「翔んでる女」で、居酒屋で意気投合した若い川内に夢中になり、夫の等々力つとむに離婚を迫る。自分勝手でわがままな性格だが、生き生きとした魅力的な人物。

川内

エピソード「フルハウス」に登場する。25歳の男子大学院生。コンピューター関連の一流企業に就職が決まっている。飲み屋で意気投合した等々力永子と結婚し、彼女の元夫である等々力つとむも含めて同居することになる。眼鏡をかけたインテリ気取りの小生意気な男性で、人の感情に疎いところがある。のちに、つとむのフィアンセを装って居候していた奈美と浮気し、永子に離婚される。

奈美

エピソード「フルハウス」に登場する。キャンパスパブ「恋人」でアルバイトをしている女子大学生。原宿が大好きで、原宿に家を持つ等々力つとむのもとに、フィアンセを自称して押しかけて来た。バージンを自称しており、つとむに「俺に抱かれるか、この家を出て行くかどっちか選べ」と迫られるが、のらりくらりとかわしている。のちに川内と関係し、等々力永子に家を追い出される。

山田 久美

エピソード「フルハウス」に登場する。等々力つとむと同じ課に勤めるOL。離婚したつとむに積極的にアプローチしている。平凡な女性で、美人でもないが、家庭的で料理上手。つとむとの結婚を望んでおり、彼との関係を社内の人間に話したがっている。

女子大生 (じょしだいせい)

エピソード「漠」に登場する。中野のアパートで一人暮らしをしている女子大学生。酔って気持ち悪くなっていたところを岡田に介抱されたが、逆に具合が悪くなってしまった岡田を、親切心から家に招き入れる。素直で愛嬌のある女性で、人の善悪を判断することに自信を持っている。

小田

エピソード「漠」に登場する。都内に一等地を持つ地主の男性。岡田の課が接待を担当している。傍若無人な性格で、サラリーマンをバカにした発言を連発し、席につくのを嫌がったホステスを、100万円払うから呼び戻せ、と岡田に命令し、岡田のパンチをくらって失神する。実はボクシング経験者であり、自分をノックアウトした岡田のパンチを絶賛し、土地を売ろうと決めた変わり者。

中野 葉子

エピソード「三流ボクサー」に登場する。高橋修と同じ高校に通っていた美しい女性。同じ高校出身で東大卒の銀行マン、加山と結婚予定だったが振られてしまう。以降、修のボクシングの試合に応援に来るようになる。加山には高校時代、自分から近づいていったという噂がある。

順子

エピソード「三流ボクサー」に登場する。高橋修と同じ店でアルバイトしている女性。年齢は20歳。夜間の大学に通っている。修とはアルバイトの終業時に、一緒にお好み焼きを食べに行く仲で、修には「順」と呼ばれている。修のボクシングの試合は欠かさず応援に行っており、いつも修に的を得た意見やアドバイスを送っている。のちに修と結婚する。

加山

エピソード「三流ボクサー」に登場する。高橋修と同じ高校だった男性。クラスでトップの秀才で、一浪して東大に入り、現在は銀行に勤めている。高校時代から中野葉子と付き合い、結婚する予定だったが、中野を振り、別の女性に乗り換えた。新しい婚約者といることを修に問い詰められて、しどろもどろになってしまう弱腰な態度を見せる。

銀行員 (ぎんこういん)

エピソード「夜明けのパンク」に登場する。銀行に勤める中年男性。お堅い真面目な性格。会社を無断欠勤し、もう蒸発するしかないと考えて、行くところがないからと、パンク野郎の周りを一日中ウロウロしていた。キツイことをあっさりと口にするユニークなところがあり、どことなく放っておけない雰囲気を醸し出している。

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