あらすじ
仁科悠里と叶依麻
桐乃学園は今年から共学になった元女子校ということもあり、新たに入学した1年生男子はたったの10人だけだった。2学期を迎えても相変わらず学園内で浮いている中、志田葵、仁科悠里、各務ましろ、真山深の四人のイケメン男子は、「無駄部」に所属し、毎日どうでもいいような検証テーマを決めては活動していた。新たなテーマを少女漫画に定め、食パンをくわえて角でぶつかることで、恋に落ちるかどうかを検証しようと考えた悠里は、さっそく女子生徒の叶依麻と激しくぶつかることとなった。悠里は中学時代の失恋をいまだに引きずり、彼女なんていらないと公言していたものの、これをきっかけに依麻にすっかり心を奪われてしまう。同時に、衝突時に彼女が落としていった少女漫画原稿のペンの美しさに魅了される。悠里は依麻の所属する漫画部を訪ねて原稿を返却するが、依麻はなぜか悠里への敵対心をむき出しにする。実は依麻は、敬愛する少女漫画家の姫乃るん先生の新刊を発売日に書店へ買いに行っていたが、毎回悠里が依麻より先に保存用、読む用、布教用に複数冊を買ってしまうために自分が買うことができず、悠里を快く思っていなかったのだ。おかげで悠里のことが夢に何度も出てきたり、一日中頭から離れないと言う依麻に対し、漫画部の部員たちは、それは恋しているからではないかとツッコミを入れる。お互いの気持ちを素直に伝えられない悠里と依麻だったが、ある日、姫乃るん先生のサイン会が地元で開かれたことがきっかけで、二人は急速に距離を縮めることとなる。
志田葵と湯井芽李
志田葵は、元女子校で男子が10人しかいないのに、彼女ができないと嘆いていたが、実は葵には自分のことを大好きだと10年も言い続けている幼なじみの湯井芽李がいた。だが、超がつくほど鈍感な葵はそれを冗談ととらえ、芽李の気持ちにまったく気づいていなかった。そんな葵だったが、芽李の下駄箱が大量の落ち葉に埋め尽くされているのを見て、ほかの女子生徒から嫌がらせを受けていることを知る。しかし芽李は、男子に媚びを売ってキモいと陰口を叩く女性生徒三人に、物怖じすることなく三人ともかわいいのに悪口を言う時はブスになっていてもったいないと告げる。三人は芽李のその言葉に面食らい、言い返すこともできずにそそくさとその場を立ち去る。実は小学生の時、友達から軽いイジメを受けていた葵を、毅然とした態度で救ったのが芽李だった。そんな芽李のことをかっこいいと賞賛し、好きになりそうだと言った葵の言葉が忘れられず、葵にもっと好きなってもらうためにも、芽李は葵にとってかっこいい存在であり続ける必要があったのだ。一方、葵にとって芽李はヒーローのような存在だったが、芽李が虎井未希となかよくする姿を見て、モヤモヤする気持ちを感じるようになる。そして「無駄部」の仲間たちに背中を押され、葵は未希をデートに誘う。
各務ましろと詰出麗華
学園祭に向けて、「無駄部」は「ツンデレは本当にモテるのか」という企画を立案する。じゃんけんで負けた各務ましろが、企画書を届けに生徒会に向かうと、そこには生徒会長の詰出麗華がいた。企画書を見た麗華は、この企画は受理できないと取り付く島もなくましろに告げる。実は麗華自身がツンデレであり、自分がモテないからという理由からだった。しかし、麗華はましろが女装してゴスロリファッションを身にまとい、写真のモデルになってくれるなら企画を通してもいいと要求する。その条件をのんだましろは、連日の撮影を通し、ツンデレの麗華が時おり見せるデレた時のかわいらしさに惹かれていく。撮影も無事終わったあと、麗華はましろに相談を持ち掛ける。それは、無駄部の企画に便乗し、麗華が撮影した写真を展示する「ツンデレ写真館」を開催したいというものだった。ましろは告白ではないのかとがっかりするものの、同時に麗華は彼に対し、お友達になってあげてもいいと伝え、二人は急速に距離を縮めていく。
真山深と曽我天音
「無駄部」の真山深は金持ちで運動神経抜群、成績トップで容姿端麗にもかかわらず彼女はいなかった。そんなある日、深のクラスに女子生徒が転入して来る。恋の予感を感じて、期待に胸をふくらませる深だったが、転入生は深のことを「犬」と呼ぶ、深の許嫁の曽我天音だった。実は天音は親同士が勝手に決めた婚約者で、二人が初めて会ったのは中学1年の時だった。なぜか二人は夜通しオセロの勝負をして深が負け続けた結果、深は骨の髄まで天音の犬となり、その後も3年間さまざまな勝負で負け続け、パシリ同然となっていたのだ。しかし、本当は天音は深に思いを寄せており、深を追いかけて転校してきたのだった。「お前は私の犬」という天音の言葉は、彼女なりの愛の告白だったが、当然深には伝わっていなかった。そのことについて天音から相談を受けた無駄部の部員たちは、次の中間試験で天音と深のどちらがトップを取れるかの勝負をしてはどうかと提案。深は、天音の犬を卒業するためにその勝負を受け、試験に向けて二人は図書室でいっしょに勉強する。そして、試験の結果発表の日を迎える。
登場人物・キャラクター
仁科 悠里 (にしな ゆうり)
桐乃学園高等部に通う1年生の男子。「無駄部」に所属している。黒髪でまじめな性格のイケメン。中学時代、彼女に食べ物を残さないよう注意してフラれたことをいまだに引きずっており、彼女はいらないと公言している。少女漫画が大好きで、特に「恋するキュンキュン丸」、通称「恋キュン」の作者である姫乃るん先生を敬愛している。同じく姫乃るん先生の熱烈なファンである叶依麻と、少女漫画のような出会いを経て恋に落ちる。
志田 葵 (しだ あおい)
桐乃学園高等部に通う1年生の男子。「無駄部」に所属している。茶髪でテンションがつねに高く、明るい性格のイケメン。自分はモテると自認しているが、入学して2学期を迎えても彼女ができずに思い悩んでいる。となりに住む幼なじみの湯井芽李から10年間も好きだと言い続けられているが、無駄部の仲間から「鋼鉄鈍感星人」と評されるほど鈍感なため、冗談だととらえて芽李の気持ちをまったく理解していない。
各務 ましろ (かがみ ましろ)
桐乃学園高等部に通う1年生の男子。「無駄部」に所属している。背が低く、かわいらしいタイプのイケメン。ヨガにハマっているなど、美の追求に余念がない。学園祭で行なう「ツンデレは本当にモテるのか」の企画書を届けに行ったことで生徒会長の詰出麗華と出会う。そこで女装しての写真モデルを依頼され、それがきっかけで麗華に惹かれていく。部員仲間からは「シロ」と呼ばれている。
真山 深 (まやま しん)
桐乃学園高等部に通う1年生の男子。「無駄部」に所属している。茶髪で刈り上げ部分が黒髪で、眼鏡をかけたイケメン。日焼けサロンやハワイに行き、全身小麦色に日焼けしている。元気一杯でテンションが高く、無駄部の中では一番騒がしい。城のような家に住む大金持ちで運動神経は抜群、成績もトップながら彼女はいない。親同士が勝手に決めた許嫁の曽我天音がいるが、中学1年の時にオセロの勝負で負け続けて以来、天音の犬としてパシリのような扱いを受けている。部員仲間からは「マヤ」と呼ばれている。野球が得意だったが、中学の時に肩を壊している。趣味は眼鏡集め。
叶 依麻 (かのう えま)
桐乃学園高等部に通う1年生の女子。漫画部に所属している。「恋するキュンキュン丸」、通称「恋キュン」の作者である姫乃るん先生の熱烈なファンで、叶依麻自身も漫画を描いている。姫乃るんの新刊をいつも仁科悠里に買い占められ、手にすることができないために悠里のことを快く思っていない。しかし、いつのまにか悠里が夢にも現れるようになり、頭から離れなくなる。それが恋であることに気づいておらず、学園では悠里のことを避けていた。
湯井 芽李 (ゆい めり)
桐乃学園中等部に通う3年生の巨乳美少女。志田葵の幼なじみで、となりの家に住んでいる。10年間にわたって葵のことを大好きだと言い続けているが、鈍感な葵には冗談だととらえられ、まったく相手にされていない。小学生の時に嫌がらせを受けていた葵を毅然とした態度で助けたことで、葵からはヒーローと認識されている。葵以外の「無駄部」部員からは「メリー」と呼ばれている。
詰出 麗華 (つんで れいか)
桐乃学園高等部に通う2年生の女子。生徒会長を務めている。名前どおりのツンデレで、ふだんは怒ったような厳しい表情をしている。各務ましろから「ツンデレは本当にモテるのか」という「無駄部」の学園祭企画書を渡された際は、ツンデレを自他共に認める詰出麗華自身がモテないからという理由で、一時は受理を断った。そして企画書を受け取る代わりに、ましろに女装して写真のモデルになって欲しいと条件を出す。
虎井 未希 (とらい みき)
湯井芽李が、最近なかよくしている他校の男子生徒。マッシュルームヘアで、ポーカーフェイスのイケメン。芽李といっしょにいる時に志田葵から凝視されたため、挑発するかのように未希をデートに誘い、それがきっかけで葵と芽李の恋を進展させることになった。虎井未希も芽李に好意を持っているが、芽李からは葵とののろけ話をされたり、葵とのデートに着ていく服の試着に付き合わされたりと、まったく相手にされていない。
七三 分吉 (しちさん わけきち)
桐乃学園高等部に通う1年生の男子。生徒会書記を務める。さわやかなイケメンながら、自分と友達になれるなんて幸運だと、なぜか上から目線の言動を取りがち。生徒会長の詰出麗華からは七三分吉にはまったく悪気はなく、非常に素直な変人と評されている。
曽我 天音 (そが あまね)
桐乃学園高等部に転入して来た1年生の女子。親同士が決めた真山深の許嫁で、中学1年の時に初めて深と出会った。オセロ勝負で夜通し勝ち続けた結果、それからは深のことを犬としてパシリ扱いしている。中学時代、野球に没頭する深を見て思いを寄せるようになり、「お前は私の犬」と呼んでいるのも曽我天音なりの愛の表現だったが、深にはまったく通じていない。高等部に転入して来たのも、女子に人気のある深に彼女ができることを心配していたためである。
志田 葎 (しだ りつ)
志田葵の兄。葵とは非常に仲がよく、幼い頃からお菓子やおもちゃ、服などなんでも半分ずつ分け合って過ごしてきた。しかし、自分の部屋に入ることだけは禁じており、葵が部屋に一歩でも入ると、デコピンか膝カックンの刑に処す。湯井芽李とも顔なじみで、芽李からは兄のように慕われている。
集団・組織
無駄部 (むだぶ)
桐乃学園高等部の仁科悠里、志田葵、各務ましろ、真山深の四人が所属する部活動。正式名称は「無形文化遺産代行保存部」。さまざまな文化を検証することを活動方針としているが、「人は夕日に向かってどこまで走れるか」「初恋はどんな味がするのか」など、くだらないことを毎日全力で検証して、SNSにアップしている。しかしフォロワーは部員だけで、掲載されている写真はいつもピンボケ。部員の四人はイケメンながら、「無駄口ばかりで無駄な部活をやっている」「イケメンの無駄遣い」と陰口を叩かれ、女子生徒からは「無駄部」と呼ばれている。
書誌情報
恋に無駄口 12巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉
第8巻
(2022-06-20発行、 978-4592223283)
第9巻
(2022-10-20発行、 978-4592223290)
第10巻
(2023-02-20発行、 978-4592223306)
第11巻
(2023-05-19発行、 978-4592224464)
第12巻
(2023-09-20発行、 978-4592224471)