悪魔が来りて笛を吹く

悪魔が来りて笛を吹く

東京で起きた凄惨な事件の犯人として疑われて自殺した父親の死に対し、疑惑を抱いた娘の依頼を受けた名探偵の金田一耕助が、不気味なフルートの音色から巻き起こる連続殺人の謎に迫っていく作品。横溝正史による人気ミステリー小説のコミカライズ。

正式名称
悪魔が来りて笛を吹く
ふりがな
あくまがきたりてふえをふく
原作者
横溝 正史
作者
ジャンル
推理・ミステリー
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概要・あらすじ

戦争の爪痕が色濃く残る昭和22年の東京を震撼させた凄惨な「天銀堂事件」。10人を毒殺したうえに宝石を強奪した凶悪犯として疑われた子爵の椿英輔は失踪し、そのまま自殺を遂げた。そんな父親の死に疑問を抱く娘の椿美禰子から依頼を受けた金田一耕助は、椿邸で行われる占い会へと赴く。そこで金田一が見たのは、砂占いで描き出された模様を、悪魔の紋章として怯える椿家の人々の姿だった。

そんな最中、不気味な笛の音が鳴り響き、死んだはずの英輔がフルートを手に現れ、何処ともなく姿を消す。その翌日、占い会に参加していた人物が死体となって発見されたことが口火となり、金田一は恐ろしい連続殺人事件へと巻き込まれていく。

登場人物・キャラクター

金田一 耕助 (きんだいち こうすけ)

探偵を生業にしている、飄々とした雰囲気の男性。ボサボサの頭にチューリップハットをかぶり、袴に下駄という独特の風貌をしている。椿英輔の失踪と自殺に疑念を抱いた椿美禰子に依頼され、椿邸へと赴く。潜入捜査でという依頼だったため、当初は新宮一彦の先輩を名乗っていた。第一の殺人発生後に素性を明かし、探偵として本格的に調査を開始する。

等々力 (とどろき)

刑事の男性。役職は警部。玉虫が殺害された事件の担当として椿邸にやって来た。金田一耕助とは顔見知りで、事件現場にもすんなりと招き入れている。その後は金田一とともに、椿邸で起こった連続殺人事件の調査をすることになる。

椿 美禰子 (つばき みねこ)

椿英輔と椿秌子の娘。父親である英輔の失踪と自殺に疑念を抱き、金田一耕助に捜査を依頼した。母親の秌子とは性格も容姿もまるで似ていない聡明な女性。父親である英輔を敬愛する一方、英輔を無視し続けていた母親の秌子や、椿家に関わる人物には嫌悪感を持っている。

椿 英輔 (つばき ひですけ)

椿秌子の夫で、椿美禰子の父親。椿家の当主で元子爵の男性。気が弱く大人しい性格をしており、秌子や新宮利彦、玉虫らに何を言われても反抗することはなかった。唯一の道楽がフルートで、自身で作曲した作品をレコードに録音していた。天銀堂事件の犯人として疑われたのちに失踪し、自殺を計る。

椿 秌子 (つばき あきこ)

椿英輔の妻で、椿美禰子の母親。誰もが目を奪われるほど若々しく美しい女性で、子供のように無邪気で純真な心を持っている。それゆえに悪意なく他人を傷つける言動をしてしまう。自身も英輔を粗末に扱っていたことを認めており、死んだ英輔が復讐に来るのではないかと怯えている。

新宮 利彦 (しんぐう としひこ)

椿秌子の兄で、43歳の男性。大空襲で焼け出された後、家族で椿邸の別棟に住んでいる。何の取り柄もないが、自分は選ばれた人間であるから、世間の人々は誰であれ自分に貢ぐ義務がある、という考えを持っている厄介な人物。自身の遺産を使い果たし、焼け出される以前から秌子に金の無心をしていた。

新宮 華子 (しんぐう はなこ)

新宮利彦の妻で、新宮一彦の母親。地味な見た目で、大人しい女性。利彦が暴言を吐くたびに戒めてはいるものの、すべて一蹴されている。元は財産持ちだったが、浪費家なうえに働こうとしない利彦によって、財産を食いつぶされてしまった。

新宮 一彦 (しんぐう かずひこ)

新宮利彦と新宮華子の1人息子。父親とは似ても似つかない容姿と性格をしており、常識的で礼儀正しい男性。椿美禰子が金田一耕助に調査を依頼したことを知っており、潜入時の金田一の素性を隠すのに一役買っている。椿英輔が育てていた西洋の花が咲く温室の世話もしていた。

玉虫 (たまむし)

椿秌子の母親の兄にあたる人物で、元伯爵。戦前は貴族院の大立者だった男性。非常に我が強くわがままな人物。自身の子供たちとは疎遠になっているが、秌子が玉虫を尊敬していることが縁となり、椿邸の別棟に住んでいる。占い会が行われた日の深夜、何者かによって殺害された。

菊江 (きくえ)

玉虫の小間使い。ショートボブの髪形をしたスタイルの良い美しい女性で、玉虫とはただならぬ関係。サバサバした性格で頭が良く、金田一耕助が新宮一彦の先輩だという嘘についても真っ先に疑っていた。普段は玉虫のことを「御前」と呼んでいるが、本人がいないときには「じいさん」と呼んでいる。

目賀 重亮 (めが しげすけ)

椿秌子の主治医をしている50代の男性。博士とも呼ばれている。秌子が実家にいた頃から担当医しており、椿邸へも頻繁に出入りしている。歳のわりに精力的で脂ぎった容姿をしており、金田一耕助いわく、底知れない空気を持つ人物。

三島 東太郎 (みしま とうたろう)

椿英輔の亡くなった友人の息子。復員した後、身寄りがなかったため、英輔を頼って椿家に世話になっている男性。目端の利く聡明な人物で、食料の買い出しなども率先してやっている。元貴族である椿家が、生活のため骨董品などを売りさばく際にも、目利きとして活躍している。

信乃 (しの)

椿家の一切を切り盛りしている椿秌子の婆や。秌子が椿家に嫁に入る前から一緒におり、結婚後も常に秌子の側で面倒を見ている。秌子が寝る際にも、寝室のふすま越しに待機している。

女将 (おかみ)

兵庫県須磨にある旅館の女将をしている中年の女性。この旅館に椿英輔が天銀堂事件の当日に宿泊していた、というアリバイがあったため、英輔の動向を探る金田一耕助らが訪れて話を聞いていた。旅館の近くに戦前、玉虫の別荘があったため、椿秌子や新宮利彦のことも知っている。

場所

椿邸 (つばきてい)

元子爵である椿英輔の邸宅で、事件の舞台となった場所。麻布六本木の1200坪という広大な敷地に建っている豪邸。椿英輔の家族や女中らが住む本邸のほかに別棟があり、そちらには新宮利彦の家族と玉虫らが住んでいる。もともとは新宮家の祖父から椿秌子に、遺産として渡った建物であった。

その他キーワード

天銀堂事件 (てんぎんどうじけん)

椿英輔が犯人と疑われた凄惨な事件。昭和22(1947)年1月15日、銀座の有名な宝石商「天銀堂」に東京都衛生局の腕章を付けた貴族的な好男子が来店。付近に伝染病が発生したからという理由で、店員に予防薬を飲ませた。しかし、実際に飲ませたのは猛毒の青酸カリで、男はそのまま宝石類を奪い逃走。被害金額は30万ほどだったが、10人もの死者を出した。

クレジット

原作

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