悪魔を憐れむ歌

悪魔を憐れむ歌

8年前に起こった未解決の猟奇殺人事件を追う刑事とその真犯人との出会いから、その事件の背景にある色々な人間模様が描かれる。物語にはさまざまな謎や伏線が張り巡らされ、それらの謎を解き明かしていく事も作品の大きな魅力となっているほか、作品内には精密な人体の描写が登場し、物語を盛り上げる役割を果たしている。「GOGOバンチ」で2016年10月から2018年2月まで連載されたのち、「月刊コミックバンチ」2018年4月より連載の作品。

正式名称
悪魔を憐れむ歌
ふりがな
あくまをあわれむうた
作者
ジャンル
サスペンス
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あらすじ

第1巻

2008年に北海道で発生した箱折連続殺人事件は、未解決のまま8年が経過した。その事件の第一発見者である刑事の阿久津亮平は、捜査一課から閑職へと追いやられながらも、今なおその事件を追っていた。そんなある日、阿久津は先輩刑事の真野から、事件の被害者の首の骨が独特な折れ方をしていた事を指摘される。真野から咽喉分野の専門家として四鐘彰久という医師を紹介された阿久津は、さっそく彼のもとを訪れ、事件解決の協力を依頼する。四鐘はその依頼を快諾するものの、実は彼こそが箱折連続殺人事件の真犯人だった。さらに阿久津の前には、週刊誌のライター、芽野屋ユカリが現れる。そしてユカリは、箱折連続殺人事件が警察内部による犯行であり、阿久津はその事実を知っているはずだと糾弾する。だがその直後、再び犯人による殺人事件が発生。阿久津はユカリの追及をかわしつつ捜査を開始する。

第2巻

箱折連続殺人事件の真犯人を追う阿久津亮平のもとに、イタリア警察からやって来たフランチェスコ・フィデリオという刑事が現れる。フィデリオは、日本で起こっている箱折連続殺人事件と類似した事件が、イタリアでも起こっていると語り、捜査への協力を持ちかけるが、阿久津は自分の手で真犯人を捕まえると彼の申し出を拒む。その後、阿久津は暴漢に襲われている芽野屋ユカリを助け、彼女から事件の鍵を握ると思われるSDカードを手に入れるのだった。その帰り道、阿久津は箱折連続殺人事件を最初に発見した時から現在までの事を思い返す。事件の被害者の遺体が入れ替わっていた事、その事を調べていた矢先に何者かに襲われ、1年以上昏睡状態だった事、共に事件の捜査を行っていた同僚の鏡晃太が警察の尋問にあって退職に追い込まれた事、そしてそれ以降の記憶が断片的に失われている事など、箱折連続殺人事件は不審な事の連続であった。その直後、阿久津のもとに新たな事件の被害者が発生したとの連絡が入る。

登場人物・キャラクター

阿久津 亮平 (あくつ りょうへい)

刑事の男性。8年前に起こった未解決の殺人事件「箱折連続殺人事件」の真犯人を突き止めるため、独自の捜査を進めている。かつて結婚していたが、妻が突如失踪したうえに離婚届だけを送って来たという経緯で、現在は独身となっている。箱折連続殺人事件の捜査を開始して程なく、何者かに襲われて昏睡状態に陥った事があり、その前後の記憶が一部抜け落ちている。強引な捜査手法をとるため、ほかの事件捜査の邪魔になる事も多く、警察内部では疎まれている。

四鐘 彰久 (しかね あきひさ)

医師を務めている男性。箱折連続殺人事件の捜査を進める阿久津亮平が事件のヒントを得るために真野から紹介された。専門は咽頭であり、つねに阿久津の口腔内に興味を示している。阿久津に対しては表向きは箱折連続殺人事件の捜査に協力しているものの、実は箱折連続殺人事件の真犯人であり、さまざまな秘密を抱えている。

芽野屋 ユカリ (めのや ゆかり)

週刊誌「新潮ダイアリー」の記者を務めている女性。相手が警察であっても臆する事なく強引な手法で取材し、鋭い切り口で情報を引き出す。編集部では、女性ながら強引な取材を行う芽野屋ユカリに対して快く思っていない者も多く、同じような境遇の阿久津亮平に興味を抱き、彼とは違った角度から箱折連続殺人事件の真相に迫っていく。

鏡 晃太 (かがみ こうた)

元警官の男性。阿久津亮平とは警察学校の同期であり、親友でもあった。警察学校での同期でありながら自分よりも先に刑事となった阿久津に対しては複雑な感情を抱いていた。阿久津と共に箱折連続殺人事件の真犯人の鍵を握ると考えられているが、現在は精神病院に収容されている。

橋田 健也 (はしだ けんや)

警察への内通者として働く男性。捜査一課に対して有力な犯罪者の情報を提供する事が主な仕事だが、婦女暴行事件の容疑者として警察からマークされていた。箱折連続殺人事件の鍵を握ると言われている「SDカード」を持っており、芽野屋ユカリにそのカードを託したあとに行方不明となる。

角鉢 正憲 (かどばち まさのり)

大学の講師を務めている男性。箱折連続殺人事件が発生した当時の刑事部長で、退官後は大学で犯罪心理学を教えながらテレビのコメンテーターとして活動していた。テレビでは折に触れて箱折連続殺人事件に関してコメントをしているが、既に「終わった事件」という認識であり、今なおその事件を追いかけている阿久津亮平を苦々しく思っている。

藤 暁嶺 (ふじ あかね)

刑事の男性。阿久津亮平の同僚でもあり、かつては共に箱折連続殺人事件の捜査を行っていた。現在は箱折連続殺人事件の捜査から外れ、ほかの事件の捜査を担当している。今なお箱折連続殺人事件の捜査を行っている阿久津に対して、表面上は冷たく接するものの、実際は彼の身を案じている。

真野 (まの)

刑事の男性。鑑識課に所属していた。箱折連続殺人事件の被害者の死体から特殊な殺害方法をされている事を見抜いた。現在は阿久津亮平に協力し、共に箱折連続殺人事件の真相を追っている。箱折連続殺人事件が警察内部と何らかの関係がある可能性を疑っているが、阿久津にはその事は話していない。

フランチェスコ・フィデリオ

イタリアから来た刑事の男性。イタリアで発生した事件が箱折連続殺人事件と極めて似ている事から、事件の犯人が同一人物ではないかと考え、日本へとやって来た。顔に大きな傷があり、家族を何者かに惨殺された過去を持っている。四鐘彰久とも何らかの関係がある事をほのめかし、阿久津亮平に捜査の協力を持ちかけるが、その申し出を断られる。

その他キーワード

箱折連続殺人事件 (はこおりれんぞくさつじんじけん)

阿久津亮平が真相を追っている殺人事件。被害者は全身の骨を折られた状態で小さな箱の中に押し込められて殺害されている事から「箱折連続殺人事件」の名前が付けられた。阿久津とその同僚の鏡晃太がこの事件の第一発見者だった事もあり、阿久津は事件を解決する事が自身の使命だと考えている。

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