あらすじ
第1巻
時は19世紀末のロンドン。大英帝国は世界の4分の1を支配し、その繁栄を思うままに享受していた。しかしその繁栄の裏には、貴族達が下賎な者と見下す人々の多くの血と嘆きが存在しており、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティとその弟のルイス・ジェームズ・モリアーティも、そんな踏みにじられる側の人間だった。ウィリアムは貴族であるモリアーティ家に、養子として迎え入れられたものの、家人や使用人から冷たい仕打ちを受け、生活は不遇そのもの。身分社会への憎しみを募らせたウィリアムとルイスは、同じ想いを抱くモリアーティ家の長男であるアルバート・ジェームズ・モリアーティと共感し、理想のために貴族を殺し、社会を変える事を決意する。ウィリアム、ルイス、アルバートの三人は、共謀して自分達に冷たく当たったモリアーティ家の家族と使用人を火事に見せかけて殺し、アルバートの協力でその地位を乗っ取る事に成功する。
13年後、ウィリアムは表向きは若き天才大学教授として活躍し、裏では「犯罪相談役(クライムコンサルタント)」として悪徳貴族達の犯罪を暴き、虐げられる人々の恨みを晴らしていた。子供を悪徳貴族のダブリン男爵に見殺しにされた夫婦の恨みを晴らしたり、私利私欲のために麻薬をばら撒き、街娘を殺したダドリー・ベイルを誅したり、ウィリアムは貴族社会の闇を自らの天才的な頭脳で切り開いて行く。
第2巻
アルバート・ジェームズ・モリアーティは広がる新造アヘンの捜査をしていた。裏に大物貴族がかかわっているため、遅遅として進まぬ捜査に苛立つ軍部であったが、アルバートはこの事件を利用する事を思いつく。ウィリアム・ジェームズ・モリアーティはアルバートを助けるため、ダドリー・ベイルの事件で麻薬組織の恨みを買った事を逆に利用し、自らが誘拐される事を思いつく。そして弟を救出する事を名目としたアルバートは、「偶然」麻薬組織を摘発する事に成功する。そしてアルバートは麻薬事件を利用して陸軍上層部長官であるマイクロフト・ホームズと取引し、ウィリアムの手足となって働く組織「MI6」を設立する。
ロンドンに根を張り、意のままに動く組織を手に入れたウィリアムは、国を変えるための第一歩として、ロンドンを「犯罪都市」にする事を仲間に宣言する。民衆の目を覚まさせるために、劇的な死を利用しようと考えたのだった。そしてウィリアムは黒い噂の絶えないブリッツ・エンダース伯爵を最初の標的として選び、豪華客船ノアティック号を利用し、殺人事件を起こそうと計画する。しかしウィリアムは、そこでのちに宿敵となるシャーロック・ホームズと運命の出会いを果たす。短い時間の中でお互いの頭脳を認め合った二人は、お互いの存在を強く意識したのだった。ホームズとウィリアムが別れたあと、ウィリアムの殺人計画が始まり、エンダース伯爵は彼の意のままにあやつられ、一般人を衆人環視の中で殺してしまう。弁解の余地なく殺人事件の犯人になったエンダース伯爵は逃れる事が叶わぬと知り、絶望と怨嗟の言葉を残して自ら海に身を投げて死亡した。犯人が自殺した事で表向き殺人事件は解決したかに見えたが、ホームズは死体の違和感に気づき、これが仕組まれた物だと看破するのだった。ウィリアムはそんなホームズを不確定要素として危険視しながらも興味を示し、新たな事件を利用して彼を試してみようと考える。
第3巻
シャーロック・ホームズはジョン・H・ワトソンと友誼を育んだのも束の間、身に覚えのない殺人事件の犯人として捕まってしまう。レストレード警部の計らいで、ホームズは殺されたイーノック・J・ドレバー伯爵について調べ始める。死体の間近に残った「SHERLOCK」の血文字、死体に残った銃創の跡から犯人像を特定したホームズは、レストレード警部の協力を得て、ワトソンと独自の捜査を開始する。事件の背後にはノアティック号の事件と同じく巨大な陰謀があると確信したホームズは罠を仕掛け、背後の存在をあぶり出そうとするが失敗、折角の事件の手がかりを逃してしまう。しかし伯爵殺しの事件の方は、レストレード警部のもたらした情報によって、真犯人が幌馬車の御者のジェイファーソン・ホープである事を突き止める。ホープを問い詰め、犯人である事を自白させようとするホームズであったが、そこでホームズは逆にホープ自らを殺せば、ホームズの知りたがっている陰謀の真実を教える事を提案された。真実への誘惑に迷うホームズであったが、ワトソンの言葉によって誘惑をはねのけ、ホープを真犯人として連行する事に成功する。そしてホームズは見事無罪を証明し、ワトソンがホームズの活躍をまとめて本を作った事で、名探偵としての第一歩を踏み出し始めた。しかし、それらはすべてウィリアム・ジェームズ・モリアーティがホームズの資質を確かめ、名探偵に仕立て上げる目論見の一つだった。自分達の犯罪を暴き、貴族の横暴を白日のもとにさらす存在として、ウィリアムはホームズという名探偵を欲したのだ。ウィリアムはホームズの存在を満足げに眺めたあと、仲間達と共に闇へと去って行った。そして彼らは闇の中で苦しむ子ども達を助けるため、人狩りを楽しむ貴族達を粛清するために動き始める。
第4巻
MI6は陸軍上層部長官のマイクロフト・ホームズに、謀殺された工作員の調査を命じられた。戦争の行方をも左右する重要なミッションを、アルバート・ジェームズ・モリアーティはセバスチャン・モランに任せ、モランを自分の部下であるマネーペニーと共に送り出す。工作員の謀殺には敵国ではなく、自国の大物貴族であるグラハム・ダンダーデール公爵が絡んでいると摑んだモランは、調査を進める内にダンダーデール公爵が自らの過去にかかわっている事を知る。モランは自らの因縁に決着を着けるべくダンダーデール公爵と対峙するが、復讐心に囚われる事なく任務を完遂し、ダンダデール公爵に報いを受けさせ、戦争を回避する事に成功する。
一方、シャーロック・ホームズはジェイファーソン・ホープの裏にいた人物が、誰なのかをずっと気にしていた。数々の事件を解決してもまったく尻尾をつかませない「あの御方」に気持ちをいらつかせたホームズは、得意の推理力も鈍らせて空回りし、ジョン・H・ワトソンにもつい辛く当たってしまう。ワトソンとはケンカ別れし、一人で列車に乗るホームズはそこで偶然、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティとルイス・ジェームズ・モリアーティに出会う。「あの御方」についてウィリアムに相談するホームズは、短い時間の中でウィリアムと意気投合する。しかしそんな時間も束の間、列車内で殺人事件が発生する。悲鳴を聞き、現場に駆けつけたホームズとウィリアムが目にしたのは、遺体と、その側で佇む血まみれのワトソンの姿だった。
第5巻
シャーロック・ホームズは殺人事件の犯人として逮捕されそうになっているジョン・H・ワトソンを救うため、列車が駅に到着するまでに事件を解決しようと奔走する。現場に居合わせたウィリアム・ジェームズ・モリアーティも協力を申し出て、ホームズとウィリアムはそれぞれの視点から捜査を開始。二人は瞬く間に証拠を見つけて犯人を特定し、ワトソンの無実を証明する。ケンカ別れしたままだったため、気まずい雰囲気のワトソンとホームズであったが、事件解決をきっかけに仲直りし、再びコンビで動く事を約束し合うのだった。
一方その頃、イギリスのある場所で国家を揺るがしかねない大きな事件が巻き起こっていた。最重要機密の書類がアイリーン・アドラーという名の女性に盗まれ、行方知れずになってしまったのだった。この事態にマイクロフト・ホームズはMI6を使って書類を取り戻す事を決意、アルバート・ジェームズ・モリアーティに「アイリーンの抹殺」と「書類の奪還」の命を下した。そしてアルバートはウィリアムとルイス・ジェームズ・モリアーティと共に捜査に乗り出し始める。その当のアイリーンは偽の依頼を利用してホームズを罠にはめ、ホームズという存在を隠れ蓑にして市井に潜む事に成功していた。弱みを握られ、半ば強制的にアイリーンと奇妙な同居生活を続けていたホームズは次第にアイリーンに心を許し、交流を深めていく。そんな中、アイリーンのもとに一通の謎の手紙が届く。
メディア化など
TVアニメ
・第1クール 2020年10月11日より
・第2クール 2021年4月4日より
CAST:斉藤壮馬、佐藤拓也、小林千晃 ほか
小説
埼田要介(著)
集英社JUMP jBOOKS
2018年11月2日「憂国のモリアーティ “ 緋色 ” の研究」
2019年11月1日「憂国のモリアーティ 禁じられた遊び」
2020年10月2日「憂国のモリアーティ 虹を視る少女」
ミュージカル
第1弾「MUSICAL 憂国のモリアーティ」
2019年5月10日~5月19日 天王洲銀河劇場
2019年5月25日~5月26日 柏原市民文化会館リビエルホール
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ:鈴木勝吾
シャーロック・ホームズ:平野良
第2弾「MUSICAL 憂国のモリアーティ Op.2 」
2020年7月31日~8月10日 天王洲銀河劇場
2020年8月14日~8月16日 京都劇場
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ:鈴木勝吾
シャーロック・ホームズ:平野良
第3弾「MUSICAL 憂国のモリアーティ Op.3」
2021年8月 東京 品川プリンスホテル ステラボール、大阪サンケイホールブリーゼ
舞台
第1弾「舞台 憂国のモリアーティ」
2020年1月10日~1月19日 EX THEATER ROPPONGI
2020年1月31日~2月2日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ:荒牧慶彦
アルバート・ジェームズ・モリアーティ:瀬戸祐介
ルイス・ジェームズ・モリアーティ:糸川耀士郎
第2弾「舞台 憂国のモリアーティ Case2」
2021年7月 新国立劇場 中劇場
キャスト:荒牧慶彦、瀬戸祐介、糸川耀士郎 ほか
コラボカフェ
2020年10月8日~11月18日
TVアニメ「憂国のモリアーティ」と東京カプコンカフェ池袋店とのコラボカフェイベント
登場人物・キャラクター
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ (うぃりあむじぇーむずもりあーてぃ)
「犯罪相談役(クライムコンサルタント)」を務め、数々の犯罪の陰で暗躍する頭脳明晰な青年。もとは孤児であったが、幼い頃から大人顔負けな頭脳を示し、弱い者が理不尽に虐げられる身分社会に憎悪を感じていた。その思想と魂がアルバート・ジェームズ・モリアーティの共感を呼び、アルバートの手引きでモリアーティ家に養子に入った。その後、機を見てモリアーティ家の次男である本物の「ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ」を家族諸共火事に見せかけて殺し、成り代わった。 以降、「ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ」を名乗って行動しているため本名は不明。表向きはダラムの大学の若き天才教授として数学教師をしており、裏では築き上げた自らの人脈を使って悪徳貴族を断罪したりしている。 「犯罪」と「死」は、民衆が身分階級の歪みに気づくために必要だと感じており、ロンドンを「犯罪都市」にする事を目論む。そのための犠牲は大義のためのものと割り切っているが、自分達も悪徳貴族と同じく「悪」として断罪されるべきだと覚悟を決めている。ただし、弟のルイス・ジェームズ・モリアーティだけは自由な世界で生きてほしいと願っており、なるべく犯罪にかかわらせたくないと考えていた。
ルイス・ジェームズ・モリアーティ (るいすじぇーむずもりあーてぃ)
モリアーティ家の三男で、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティとアルバート・ジェームズ・モリアーティの弟。ウィリアムとは生まれが同じ実の兄弟関係だが、モリアーティ家には養子に入ったため、アルバートとは義理の兄弟関係になる。アルバートにウィリアムが招かれたのを契機に、いっしょにモリアーティ家に養子に入った。幼少時は心臓が弱かったが、モリアーティ家の養子になった際に手術を受けて体調を回復させるが、ウィリアムと共に家人や使用人から冷たい仕打ちを受け、不遇な生活を送っていた。 ウィリアムが「本物のウィリアム」と成り代わる際に起こした火事では、少しでもアルバートとウィリアムの助けになるように自らの手で顔に火傷をつけ、二人の言葉の説得力を高めた。 成長後もその火傷跡は残っているため、前髪を伸ばして火傷を隠すように髪型をセットしている。成長後は執務や連絡係としてウィリアムの仕事を補佐しており、ウィリアムや仲間達と共に身分社会を変えようと奔走している。ただしウィリアムからは、なるべく犯罪にかかわってほしくないとも思われており、実行犯的な仕事はなかなか任されなかった。 その事に疎外感を感じていたが、のちに思いの丈をウィリアムに伝え、共に闇を突き進む同志として認められた。
アルバート・ジェームズ・モリアーティ (あるばーとじぇーむずもりあーてぃ)
モリアーティ家の長男。穏やかな雰囲気を持つ好青年で、「ノブレスオブリージュ」の概念を何より大切にしている。しかし、実家を含め「ノブレスオブリージュ」とは程遠い貴族の実態に強い嫌悪感を示していた。そのため子供ながら天稟を示し、貴族社会への憎悪を示していたウィリアム・ジェームズ・モリアーティとは魂で共感し、彼と共に社会を変える事を決心。 ウィリアムとルイス・ジェームズ・モリアーティをモリアーティ家に養子として招いた。血のつながった父母や弟の差別的な言動に嫌気が差しており、ウィリアムと共に家族を謀殺。「本物の弟」を火事の事故に見せかけて殺し、ウィリアムとルイス・ジェームズ・モリアーティの成り代わりを手助けした。その後は軍人として働いており、イギリス陸軍で順調に出世していた。 そして麻薬事件とウィリアムの誘拐事件を利用して、マイクロフト・ホームズと取引を行い、MI6を設立。以降は表向きはペーパーカンパニー「ユニバーサル貿易社」の取締役として働き、裏ではMI6の指揮官「M」として動いている。
シャーロック・ホームズ (しゃーろっくほーむず)
警察が手に負えなくなった事件を解決する自称「諮問探偵(コンサルティングディテクティブ)」の青年。ノアティック号に偶然居合わせてウィリアム・ジェームズ・モリアーティと出会い、のちに起きた殺人事件に一人だけ疑問を感じたため、ウィリアムに強い興味を示される。そしてジェイファーソン・ホープを介して試された事で、本人が与り知らぬあいだに、ウィリアムの起こした犯罪を暴く「名探偵」として抜擢された。 とても好奇心の旺盛な性格をしているが、その好奇心を満たすために手段を選ばない危うい部分があり、ジョン・H・ワトソンからもその部分は何度も苦言を呈される事で、かろうじて踏みとどまっている。手柄には興味がないため、解決した事件の手柄はすべて警察に渡しているため、レストレード警部には信頼されているが、グレッグソンなど一部の警察には快く思われていない。 また優れた観察眼と鋭い頭脳を持つが、実の兄であるマイクロフト・ホームズには敵わず、出会い頭に勝負しては負ける事を繰り返しており、現在までの負け越し数は673を数える。身分社会には疑問を抱いており、現在の身分制度に左右される犯罪捜査を是正したいと「科学捜査」を推奨しており、犯罪捜査に科学が必要な事を証明したいと考えている。
マイクロフト・ホームズ (まいくろふとほーむず)
シャーロック・ホームズの兄。イギリス陸軍情報部の長官を務めており、女王直属の特務機関を設立しようとしていたが、予算がなく設立を見送られていた。しかしアルバート・ジェームズ・モリアーティが、麻薬事件を利用して取引を申し出た事で特務機関を設立する事ができ、その見返りとしてアルバートをMI6の指揮官に任命した。 弟を超える観察力と頭脳を持つ非常に優秀な人物で、よく勝負をしてはシャーロックを打ち負かしている。
ジョン・H・ワトソン (じょんえっちわとそん)
アフガニスタン帰りの元軍医。負傷が原因で戦地から戻された紳士的な青年で、経済的に厳しかったため、友人の紹介でシャーロック・ホームズとルームシェアをする事になった。目的のためなら手段を選ばないホームズを諫めつつ、助手として事件の捜査を手助けしている。ホームズの手柄が警察(ヤード)に奪われるのを不満に思っており、ホームズの活躍を小説に書いて出版した。 ペンネームは「コナン・ドイル」で、初めての小説は「緋色の研究」という題名で発表し、大きな反響を呼んだ。
セバスチャン・モラン (せばすちゃんもらん)
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティに忠誠を誓う同士の一人。獰猛な目つきをした強面の青年で、普段はモリアーティ家の使用人として働いている。遊びなれた風体で、酒場で女を口説き、ギャンブルに興じながら荒くれ者や女性から情報を集め、ウィリアムの仕事を手助けしている。また公的には死亡扱いとなっているが、元は名家の生まれで軍人。 そのため銃の扱いには慣れており、難しい狙撃を難なくこなす腕前を持っている。アフガン戦争では隊長として工兵隊を率いていたが、味方の謀略によって部隊はセバスチャン・モランを残して全滅。事件の真相を知りたくてロンドンの闇に潜んでいる最中にウィリアムと出会い、その思想に共感し、復讐心を捨てて彼と共に歩む決心をしている。 グラハム・ダンダーデール公爵と長年の因縁に決着を着けたあとは、MI6の「六番目の工作員」として正式に就任した。
フレッド・ポーロック (ふれっどぽーろっく)
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティに忠誠を誓う同士の一人。華奢な体型をした少年で、身軽ですばやく、変装術にも長けている。女性や老婆といった、正体とはかけ離れた姿にも変装する事ができるほか、裏社会に根を張り、幅広い情報網を持っている。ウィリアムの「犯罪相談役」稼業の窓口的な役割も果たしており、ロンドンの犯罪ネットワークそのものと称されている。 普段はモリアーティ家の使用人として働いており、主に庭師の仕事を担当している。普段は余り自己主張をしたりしないが、弱い者が理不尽に虐げられるのには強い怒りを感じており、貴族達の「人狩り」を知った際には激昂した姿を見せた。
マネーペニー
MI6の女性諜報員。メガネをかけた理知的な雰囲気の持ち主。元はMI5に所属していたが、MI6設立にあたりアルバート・ジェームズ・モリアーティによって引き抜かれた。彼女自身もウィリアム・ジェームズ・モリアーティに忠誠を誓っており、アルバートからも強く信頼されている。謀殺された工作員の調査を命じられた際には、セバスチャン・モランのサポートを任され、いっしょに行動した。 その際にはウィリアムよりモランの過去を知らされていたため、彼が計画を乱す行動を起こさないか心配し、監視をしていた。
レストレード
スコットランド警察(ヤード)の中年の男性警部。シャーロック・ホームズの推理力を信頼しており、手柄を譲ってもらっている事もあり、彼の捜査には多少の無理をしても協力している。同僚のグレッグソン警部補がホームズに悪感情を持っているのを知っているため、ホームズには軽々しい行動を取らないように度々苦言を呈している。
ハドソン
シャーロック・ホームズの住む部屋の家主。永遠の17歳を自称する女性だが、ホームズは四捨五入すると三十代と言っている。数年前、ホームズに窮地を救ってもらったが、以降何かとそれを盾に家賃の支払いを渋られるため困っており、遂には堪忍袋の緒が切れてホームズを追い出そうとする。しかし、通りかかったスタンフォードの助言でルームシェアを取り入れ、ホームズの住まいにジョン・H・ワトソンを住まわせ、家賃を折半する事で落ち着いた。 普段はホームズには悪態をついているが、彼の事を本当に心配している。ホームズがアイリーン・アドラーを家に連れ込んだ際には対抗心をあらわにし、静かに女の戦いを繰り広げていた。
アイリーン・アドラー (あいりーんあどらー)
米国ニュージャージー州出身の元プリマドンナ。その正体は各国の王族や貴族を相手にする「高級娼婦」で、関係者からは「The Woman(あの女)」の通称で呼ばれている。身分の高い男性に取り入ってはスキャンダルや機密性の高い情報を手に入れ、それで見返りに身の安全を手にして来た。イギリス王室にもその手口で盗みに入り、国家を揺るがす「最重要機密」を盗んで逃げ出した。 非常に頭の回る人物でシャーロック・ホームズにも見破れない変装術の達人。ボヘミア国王に変装して偽の依頼をでっち上げ、ホームズを手玉に取って、最も安全な「名探偵の側」という場所を手に入れる事に成功する。
フォン・ヘルダー (ふぉんへるだー)
MI6に所属するドイツ人の技師。つねに目隠しをつけた青年で、MI6内では「Q」のコードネームで呼ばれている。テムズ川に隠された工房でMI6用の装備を作っており、銃のネジ一つで、その銃がどこで作られたのか特定するほど銃に関しては造詣が深い。また自らの作品には絶対の自信を持っており、セバスチャン・モランが自分の作った銃を乱暴に扱って壊した際には激昂していた。
集団・組織
MI6 (えむあいしっくす)
情報部の公には存在しないはずの第六課。マイクロフト・ホームズが設立した特務機関で、女王直属の機関として政治や議会に左右されず、独自の権限で動く事ができる。指揮官は「M」のコードネームを与えらたアルバート・ジェームズ・モリアーティが担当し、表向きはペーパーカンパニーである「ユニバーサル貿易社」として活動している。 軍隊でありながら特殊な命令系統のため、アルバートはウィリアム・ジェームズ・モリアーティの手足となる実働部隊としてMI6の存在を欲した。またマネーペニーのようにウィリアムに忠誠を誓った隊員もMI6の中には存在しており、のちにセバスチャン・モランも「六番目の工作員」として正式に就任している。
クレジット
- 原案
-
コナン・ドイル
- 構成
関連
憂国のモリアーティ―The Remains― (ゆうこくのもりあーてぃ ざ りめいんず)
三好輝の『憂国のモリアーティ』のスピンオフで、埼田要介原作の小説『憂国のモリアーティ』のコミカライズ作品。「最後の事件」のあと、再びイギリスに舞い戻ったウィリアム・ジェームズ・モリアーティが、発見した... 関連ページ:憂国のモリアーティ―The Remains―
書誌情報
憂国のモリアーティ 19巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2016-11-04発行、 978-4088808574)
第2巻
(2017-03-03発行、 978-4088810317)
第3巻
(2017-07-04発行、 978-4088811239)
第4巻
(2017-11-02発行、 978-4088811666)
第5巻
(2018-03-02発行、 978-4088813653)
第6巻
(2018-07-04発行、 978-4088814247)
第11巻
(2020-03-04発行、 978-4088822334)
第18巻
(2022-08-04発行、 978-4088832036)
第19巻
(2023-02-03発行、 978-4088833125)